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猫と北風
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あいかわらず虎太郎はわたしの腕の中で、その乱暴な手足をモジャモジャと動かしている。
「もう放してあげたら?」
見かねた佐川さんが、困ったような笑い顔で言った。
「しかたないな。可愛い子には旅をさせよ、だ」
手を完全に離すが早いか否か、わずかに開けていた扉の隙間から、我が家の愛猫はぴゅうと一目散に逃げていってしまった。まるで北風のように。
手のひらと鼻先には、フカフカと柔らかな、混じりけのない温もりが残されている。
わたしにも、佐川さんにも、必要だったもの。
「冬があるからこそ、余計にあったかく感じられるんだよね」
じっと手を見つめながらそうつぶやくと、佐川さんは優しい笑みを漏らした。
「本当に、元気になったねぇ」
その声と、笑顔は、いつだってわたしの心に、苺のシロップにも似た甘ったるさを連れてくる。それは胸にじんわりと沁みわたり、わたしを少しずつ回復させてゆく。
明日は、近くのコンビニまで、仕事帰りの佐川さんを迎えにいってみようかな。虎太郎と一緒に。
(猫と北風~fin~)
「もう放してあげたら?」
見かねた佐川さんが、困ったような笑い顔で言った。
「しかたないな。可愛い子には旅をさせよ、だ」
手を完全に離すが早いか否か、わずかに開けていた扉の隙間から、我が家の愛猫はぴゅうと一目散に逃げていってしまった。まるで北風のように。
手のひらと鼻先には、フカフカと柔らかな、混じりけのない温もりが残されている。
わたしにも、佐川さんにも、必要だったもの。
「冬があるからこそ、余計にあったかく感じられるんだよね」
じっと手を見つめながらそうつぶやくと、佐川さんは優しい笑みを漏らした。
「本当に、元気になったねぇ」
その声と、笑顔は、いつだってわたしの心に、苺のシロップにも似た甘ったるさを連れてくる。それは胸にじんわりと沁みわたり、わたしを少しずつ回復させてゆく。
明日は、近くのコンビニまで、仕事帰りの佐川さんを迎えにいってみようかな。虎太郎と一緒に。
(猫と北風~fin~)
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みんなの感想(9件)
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退会済ユーザのコメントです
感想ありがとうございます!
とても嬉しいです!
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本当にありがとうございました!
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景綱さん、いつもありがとうございます(´Д⊂ヽ
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けど、なんだかあったかい気持ちにさせられました。
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そんな魔法あったらいいですね。
景綱さん、いつもありがとうございます!
あったかい気持ちになって頂けて、嬉しいです♪
本当に、猫が人間の姿になって現れたらどう思うのでしょう?それが自分と一緒に暮らしている猫だったら、気づくのかな?と考えてしまいます(笑)