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第3章 学園に通おう

111話 執務室

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 アッキーと一緒に最低限の人数で執務室に向かう。

 結局、ユニさんとイヴァンさん、ミゲルくんとツヴァイくん以外はみんなまだちょっと震えてたエミールくんについて残ってくれた。

「いや、本当にすまなかったな。
 完全に我のミスだ。弟や爺共に悪気があったわけじゃないのは分かって欲しい」

「まあ、言ってみれば防犯装置の誤作動だしね。
 怪我人も出なかったしアッキーもあんまり気にしないで」

「そう言ってくれるのは嬉しいがなぁ……」

 まだ気にしている様子のアッキー。

 エミールくんが結構ショック受けちゃったみたいだからなぁ。

「エミールくんは後で様子を見てみるよ。
 だから、本当にそんなに気にしないで」

 自分のことでアッキーが落ち込んでるって知ったら、それこそエミールくんが気にしちゃうかもしれないし。

「うむ、分かった。
 後のことはお前に任せよう。すまぬな」

「いいっていいって、可愛いアッキーとエミールくんのためだもん」

 ひと肌でもふた肌でも脱ぐよ。

「ほぉ、師匠だけじゃなくって、エミールのためでもあるんですか?」

 おっと、僕の浮気に敏感なユニさんまで話に混じってきた。

 ちなみに、敏感なのは推奨するためだ。

 今もくっつけようとする気が満々に見える。

 未だにこの件についてはユニさんがなにを考えているのかよく分からないけど、最近はユニさんにとっても友だちが増える感覚なのかな?と思うようになってきた。

 嬉しいことに、僕の恋人たちはみんな仲良くしてくれてるし。

「そりゃ、お預かりしている大事な子だからね」

「まあ、今はそういうことにしておいてあげましょう」

 なんかユニさんがニヤニヤしている。

 本心で言ってるから靄とかは出ていないと思うんだけどな?

 ……まあ、エミールくん可愛いかっこいいし、気をつけよう。



 ――――――



 長い廊下を進んでいると、ある扉の前でアッキーが止まった。

 ここが執務室ってことなんだろう……けど。

 その割には、まだ先に2部屋あるっぽい。

 今までみたいにユニさんちを模して作っているなら、執務室の隣は当主の寝室でその先はないはずだけど……。

「さて、ここが執務室だ」

 やっぱり執務室らしい。

 となると先の2部屋のうち1部屋は寝室として、もう1部屋はなんだろう?

 まあ、とりあえず執務室を片付けてみんなと合流したら聞いてみよう。

「ここにも先程と同じツタが彫られている。
 ここはここで先程とは別の人間に入室許可の登録をすることが可能だ」

 つまり、プライベートエリアに入れる人のうちでも、さらに執務室に入れる人を絞ることが可能ってことか。

「今は、お前と恋人連中、あとイヴァン坊が設定されているはずだ。
 もしものときの解除も、先程と同じくお前が柱に触れればいい」

 なるほど、と思いながら執務室に入るアッキーに続いていく。

 執務室の中はやっぱりユニさんちの執務室を小さくしただけって感じだった。

 今度は本当にそのままって感じで、机や椅子、応接用といった感じのテーブルとソファ、書棚なんかの棚まで全部用意されていた。

 当然中身はなんにも入ってないけど、必要なものを入れればすぐにでも使えそうな感じだ。

「家具、全部揃えてくれたんだ?」

「うむ、お前がいつ来てもいいように私室周りから埋めていったらしい」

 なるほど、そうなると寝室とかも出来上がってる感じなのかな?

 やっぱり、精緻な彫刻が彫られた執務机を撫ででそのスベスベしてて凄い気持ちいい手触りを楽しんだ。

 執務室の彫刻を彫ってくれた人は鳥が好きみたいで、いたるところに鳥が彫られてた。

 天井にはひとつ大きめの魔力結晶があって、あれが明かり代わりなのかもしれない。

「さて、ではさっさと防衛機構の説明に移ろうか。
 とりあえず、ハル、執務机の椅子に座るが良い」

 アッキーに言われた通り執務机のなんかやたらと豪華な鳥が彫られた椅子に座る。

 あ、椅子のクッション部分もさっき教えてもらったエルフ織かな?サラサラしてて気持ちいい。

「えっと、私達も聞いていていいんでしょうか?」

 確かに、防犯装置の説明って考えるとあんまり色んな人に聞かせるのはまずいのかな?

 僕としてはもしものときのためにむしろユニさんたちには聞いておいてほしいくらいだけど。

「構わんと思うぞ。
 根本的な事柄はハルの魔力がないと出来ないようになっているからな」

「そういうことなら、僕としてはみんなにも聞いといてほしいかな」

 そっちのほうが色々と安心だ。

 そういうことならと、みんな執務机の周りに寄ってきてくれる。

「うむ、では始めるぞ。
 まずは、机の真ん中に手をつけろ。
 右でも左でも、もっと言えば足でも顔でもお前の体の一部ならどこでも構わん。」

 そうなんだ。

 とは言え変なところを付ける必要もないので右手をつく。

 ……てっきり机が光りだしたりでもするのかな?と思ったけど特になにも起こらない。

「お前たちには特に変化は感じられないだろうか、この時点ですでに魔法的には指示待ち状態になっている。
 この状態で受け付ける指示は2つ。
 操作起動と侵入者撃退だな」

「え?操作起動はともかく侵入者撃退ってなに?」

 いきなり不穏な単語出てきたぞ。

「その名の通り、この部屋や屋敷に侵入してきたものを撃退するための機構だな。
 『倒れろ』と言うことでこの部屋にいるお前以外のすべての生物が瞬時に昏倒する。
 『全て倒れろ』で同様の効果が屋敷全体に広がる。
 試してみるか?」

 アッキーは楽しそうだけど、そんな怖いこと出来るはずがない。

 頭をブンブン振っている僕を見てアッキーが楽しそうに笑ってる。

 ……そのアッキーを恐ろししいものでも見るかのような顔でみんなが見てる。

「師匠……そんな気軽に使えて良い規模の魔法じゃないと思いますが……」

「まあ、防衛機構だからな。
 必要だろ?」

「いえ、それはそうなんですが……」

 確かに防犯って意味じゃこれ以上無いけどさ。

 間違っても口に出さないようにしよう。

「まあ、後で誰かを実験台に一度試しておけ。
 効果が分からんままでいるのも問題だからな」

 ……それはそうか。

 後で誰かに頼んでみよう。

「い、命に別条はないんだよね?」

「うむ。生命に直接的な影響はない。
 一瞬で昏倒するので倒れた時にけがをするかもしれないという程度だな」

 それならひとまずは安心……かな?

「ん?アッキーにも効果あるの?」

 アッキーはもちろん、エルフさんたち相当強いらしいけど、効果あるのかな?

「もちろんだ。
 もともとエルフの里で運用する予定の防衛機構だからな。
 我どころか爺連中でも気絶するぞ」

 おおう……。

「あともうひとつの機能として、操作用の人工精霊を呼び出すんだが……」

 人工精霊?

 いや、それはそれで気になるけど、それよりなんか続きを渋っているアッキーが気になる。

「どうしたのアッキー?」

 なに?さっきの防犯装置より言いづらいことがあるの?

「い、いや……身内の恥を晒すようでちょっとな……」

 え?なにそれ?どういう事?

「初めて人工精霊を呼び出すには、設定したパスワードを口にする必要があるのだが……。
 仮設定のまま変えるのを忘れていてな……」

 そう言って、アッキーはみんなに聞こえないように僕の耳にパスワードを耳打ちする。

 ……な、なるほど、これは恥ずかしい。

「え?これ言わないとダメなの?」

「うむ。
 パスワードの変更はいくらでも出来るが、とりあえずは一度起動のために口に出さないといかん」

 ……お、おおう。

 ミッくん……なんて恥ずかしいことをさせるんだ……。

 今度、しっかり時間をかけてお仕置きしてやる。
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