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17巻
17-2
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「「おにぃちゃん! そうびへんこうのうでわがあったの!」」
「え!? 装備変更の腕輪が?」
隠し部屋? 罠部屋? どちらかわからないが、ラジアンが落ちた先にあった部屋には探していた魔道具があったようだ。
「え、凄い! 本当に?」
「うむ、間違いないな。この腕輪は、服装が二通り登録できるもののようだ。我の耳飾りよりも性能が良いものだ」
「あれ? カイザーのものは一つしか登録できないものなのか?」
「うむ、タクミとお揃いの服を登録しておる」
登録できる服装の数は一つと固定ではなく、いろいろ登録できるものもあるようだ。
「「カイザーだけずる~い」」
「アレンもおにぃちゃんとおそろいのきたーい!」
「エレナもおそろいしたーい!」
アレンとエレナは服の登録数ではなく、服のお揃いのほうに食いついた。
「……今度、似たような服を作るか?」
「「つくる!」」
とはいっても、僕の服はシルが用意してくれたものだから性能は良いが、形自体は普通のシャツに上着なんだけどな~。まあ、二人が喜ぶのなら作ることは問題ない。むしろ、いろいろな服を作って着せてみたいっていう気持ちのほうが大きい。
「欲しかった魔道具が早々に手に入ったのは幸運だったな」
《そうだね! でも、その魔道具は数が欲しいし、まだまだこれからだよ!》
ジュールの言葉にフィート達も同意するように頷く。
自分達が【人化】スキルを手に入れた時のために、準備万端にしておきたいようだ。
「じゃあ、この魔道具は誰が持っておく?」
《ん? お兄ちゃん、ボク達はまだ人化できないよ?》
「人化できた時、これがないと困るんだろう? カイザーが人化した時、裸で困ったみたいだしな」
「……うむ」
場所にもよるが、人化した時に裸で彷徨うと、大変なことになりかねない。
「どんな姿に変化するかわからないから、とりあえず大きめなマントかコートあたりを登録しておいて、羽織れるようにしておけばいいかな?」
裸にコートも変態を連想するが……まあ、他人に知られなければいいだろう。
《おぉ! それもそうだね! じゃあ、女の子が優先で、フィートかマイルがいいかな》
《ぼくもそれでいいと思います》
《残念だけど、そうだね。早くオレの分も貰えるように頑張ろう!》
《ラジアンも~》
男の子契約獣達は、全員紳士だったようだ。良い子達だな~。
《わたしは後でいいの! だから、フィートが持っていてなの!》
《でも、いいのかしら? 私が無駄に持っているよりも、兄様達が活用したほうがいいんじゃない?》
「僕は普通に着替えれば事足りるから問題ないよ」
「アレンも!」
「エレナもだよ!」
僕もアレンもエレナも、冒険者としての活動時も休日も似たような格好だからな。急に着替えたりする場面はほとんどない。
《ありがとう。じゃあ、私が持っているわ。兄様、手間になるけど、街でマントをよろしくね》
「僕が選んで買ってもいいけど、せっかくだからフィート自身が好きな色のマントを選びなよ。街歩きの時に呼ぶからさ」
《わぁ、楽しみ~。兄様、ありがとう》
《羨ましいなの~》
「その時はマイルも一緒にマントを選んでおくか。次に装備変更の魔道具が手に入ったらマイルの番なんだしな」
《わーいなの!》
街に戻ったらすぐにフィートとマイルを呼んで買いものさせてあげよう。
《あ、オレ、良いことを思いついた! 聞いて、聞いて!》
「……ベクトル、何を思いついたんだ?」
買いものの予定が決まったところで、ベクトルが何か名案を思いついたようだ。……本当に名案かどうかは聞いてみないとわからないけどな。
《あのね、あのね! 森っぽい色のマントを登録しておいて、森でマントを被れば隠れられるよ! だから、人化できなくても使えるんじゃない?》
「……」
《わ~、ベクトルにしてはとても良い案を思いついたね~》
《ジュール! オレにしてはって酷い! オレだって良い案を出せるんだよ!》
ベクトルにしては本当に良い案だと思う。
「フィートが持つ予定の魔道具は二通り登録できるみたいだし、二個目はベクトルの案を採用するか?」
《そうね。兄様、そうしましょう》
とりあえず、一つ目の登録はフィート好みのマント、二つ目の登録は隠れ蓑用のマントにすることに決まった。
《じゃあ、お兄ちゃん、そろそろ先に進もうか! 何だかこの迷宮では欲しいものが手に入るような気がするからどんどん進もうよ!》
「それもそうだな」
ジュールの言う通り、欲しいと思っていた魔道具が十四階層で手に入ったのは幸先が良いよな。この調子でマジックリングが手に入るといいよな~。
《よし! じゃあ、先に進むためにもまずは蟻蜜集めからだね!》
「「おー!」」
「ん?」
話の流れ的にすぐに次の階層を目指すのかと思いきや、透明と白の蟻蜜集めは諦めないで決行するらしい。
「……まあ、いいんだけどね」
使えるものなので、僕は子供達の好きにさせることにした。
「……集めたな」
「「がんばった!」」
《ラジアンもがんばったよ!》
その結果、勤勉にソルジャーアント狩りをする子供達によって、大量の蟻蜜を手に入れた。
◇ ◇ ◇
蟻蜜大量入手により攻略に勢いが増した子供達は、十五階層の緑の石の森、十六階層の赤い石の森、十七階層の青い石の森、十八階層の透明の石の森と……一階層と同じ色の似たような森だが、かなり格落ちした雰囲気の階層を次々と攻略していった。
それも……一日一階層よりも早いペースでね。
「「十九かいそうだー!」」
《また坑道になったね》
「ふむ、これは……ガラスのようだな」
そして、到着した十九階層は緑のガラスの坑道だった。
「緑の坑道に戻ったってことは、四色の坑道と森でひと括り、素材が変わって繰り返す感じかな?」
《私達は見ていないけれど、十一階層が緑の岩の坑道だったのかしら?》
「うん、そうだよ」
《なるほどです。では、次の階層が青のガラスの坑道でしたら、兄上の考えが正解ですね》
《行ってみればわかるよ。だから、早く行こうよ!》
僕とフィートとボルトで迷宮の構造について話していると、ベクトルが早く行こうと急かしてくる。それも、僕の背中をぐいぐいと押しながらね。
「わかった、わかった」
《も~なの! ベクトル、少しは落ち着くの!》
《だって、早く進みたいんだも~ん》
マイルに怒られてもベクトルは気にしていないな。
「アレンもはやくいきたーい」
「エレナもいきたい!」
「さっきまで採掘していなかったか?」
「「おわった~」」
とりあえず、いくつか手に入れるべくガラスの坑道を割っていた子供達だが、もう満足したらしい。
《お兄ちゃん、採掘したガラスの塊はこれだよ。収納してね》
「……いつのまにこんなに割ったんだよ」
ジュールが大小様々のガラスの山の番をしていた。
「よくこの大きさのものが採れたな~」
僕が注目したのは、僕が抱えられないほどの大きさのガラスの塊だ。
《良い感じに突き出していたから、根元を狙ったらコロッていってたね~》
「「コロッといった!」」
「ははは~。まあ、何かに使えるかもしれないしな~……」
「「そうなの! だから、かいしゅうして!」」
こうやって死蔵品が増えていくんだよな~。
というか、僕の《無限収納》って、まだ容量は大丈夫なのだろうか? 魔力量によって容量は大きくなり、僕の魔力はかなりあるので無限に近いとは思うが……無限ではないよな?
これについては、シルに確認しておいたほうがいいかな?
まあ、今のところ〝そろそろ無理そう〟などと思ったことはないので、まだ余裕はあるだろう。
「それじゃあ、進むか」
「「おー!」」
緑のガラスを回収してから、僕達は十九階層の攻略を始めた。
「「てやっ!」」
開始早々、ガラス製っぽい見た目の巨大なバッタが現れたのだが、アレンとエレナの蹴りで粉々になってしまった。
《……ジャイアントグラスホッパーの変異種かな?》
《……そうみたいね。通常とは違うガラスの身体だったものね》
《……ガラスだと、いつ身体が壊れるかわからなくて生きづらそうだね》
ジュール、フィート、ベクトルは、粉々になったジャイアントグラスホッパーを不憫そうに見つめていた。
《こなごな~。アレンおにーちゃんとエレナおねーちゃん、すご~い》
《ドロップアイテムに変わるの!》
《あれは……瓶ですね。中に何が入っているんでしょうか?》
地面に散らばっていた粉々のガラスがドロップアイテムに変わると、キラキラとした粉が入ったガラス瓶だった。ガラス瓶はいくつかあったのだが、どれも違う色だ。
「「おにぃちゃん、これなーに?」」
「えっと……ガラスの粉だな?」
「「ガラス?」」
「うん、ガラスの粉。ガラス製品、コップとかを作る時に混ぜたり、あとは塗料もだね。ペンキとかに混ぜるみたいだな」
「「……まあまあだね」」
残念ながら僕達にとっては使い道のなさそうな品だ。
だからなのか、子供達はあまり嬉しそうではない。どう頑張ってもお土産とかにもならなそうだしな~。これならまだガラス玉のほうが喜んだだろう。
「アレン、エレナ、またジャイアントグラスホッパーが来たぞ」
「「たおしてくる~」」
カイザーに敵の存在を教えられた子供達は、すぐさまジャイアントグラスホッパーに向かっていった。
《また粉々なの!》
《ドロップアイテムはまた瓶っぽいわね。ということは、またガラスの粉かしら?》
あっという間に倒してしまった子供達は、また別の色のガラスの粉を持って帰ってきた。
《つぎはラジアンもたおしたい!》
「「いいよ~」」
次にジャイアントグラスホッパーが現れた時は、ラジアンが戦うことになったようだ。
そして、すぐに現れたジャイアントグラスホッパーをラジアンは危なげなく倒してみせた。
「ラジアンだと粉々じゃなくて、バラバラって感じになったな」
《タクミおにーちゃん、なかみがちがうよ~?》
「本当だね。粉以外もドロップアイテムはあるんだな」
ラジアンが持ち帰ってきたドロップアイテムを見ると、アレンとエレナと同じような瓶ではあったが、中身が粉ではなくシーグラスのような欠片っぽいものが詰め込まれていた。
《粉々にして倒したら粉で、バラバラにして倒したら欠片って、『巨獣の迷宮』のお肉と同じ原理かな?》
「ああ、なるほど! その可能性はありそうだな」
「「おぉ!」」
『巨獣の迷宮』では通常のドロップアイテムは肉の塊なのだが、木っ端みじんにして倒した時だけひき肉が手に入った。ジュールの推察の通り、それと同じ原理っぽいものが働いているのかもしれないな。
「「ためしてみる!」」
「試すのはいいけど、手加減しすぎて倒しきれなかった時は危ないからな。ドロップアイテムになるまで油断するなよ」
「「わかった~」」
粉々のほうはもうやっているので、試すとなると損害を与えないように倒すことになる。そうなると、魔物の息が絶えておらず、瀕死の状態で最後の悪足掻きなどされると厄介である。
「「ガラスだまだった~」」
「こっちは、しましま~」
「こっちのは、おはなだよ~」
そうして、試した結果、小指の爪くらいのトンボ玉が手に入ったようだ。
《あら、これは可愛いわね》
《本当なの! これならお土産にも良さそうなの!》
「「そうなの! だから、いっぱいあつめたい!」」
縞模様だったり花模様が入っていたりするガラス玉は子供達とフィート、マイルの女の子組には受けがいいようだ。ということは、後見としてお世話になっているルーウェン伯爵家の女性達、レベッカさん達にも喜ばれる可能性があるということで、やはりというかなんというか……お土産集めが開始されることとなった。
《むむ……手加減が難しいな~。欠片になっちゃったよ》
「うむ、これは我らには向いておらんな」
「「もう! ベクトルとカイザーはけんがくね!」」
ベクトルとカイザーには向く作業ではなかったようで、アレンとエレナから戦力外通告を受けていた。
「いろんな色、模様の玉があるみたいだけど、ベース、もしくは模様が緑なんだな~」
「「ほんとうだ!」」
戦力外が出たとしても僕達の戦闘力は問題なく、次々とトンボ玉は集められていった。
すると途中で、わりとカラフルな感じで集まっていると思っていたトンボ玉が、どこかしらに緑色が入っていることに気がついた。
「じゃあ、つぎのかいそうでは、あか?」
「それで、つぎがあおで、そのつぎがとうめい?」
「そんな気がするな」
「「よし、あつめよう!」」
「……だよね~」
確実にそう言うと思ったが、赤、青、透明のガラスの坑道でもトンボ玉集めは続けることが決まった。
「じゃあ、緑はそろそろいいかい?」
「「うん! 二十かいそうにいこう!」」
というわけで、二十階層に行くため、十九階層の攻略をさくさく進めることになった。
◇ ◇ ◇
「「あつめるぞぉ!」」
二十階層に到着した途端、アレンとエレナはジャイアントグラスホッパー探しを開始した。
《わ~、待ってよ~》
「「ベクトルはダメ~」」
《えぇ!? 今度はちゃんと手加減するよ!》
「「ダメ~」」
《……そ、そんな~》
ベクトルがアレンとエレナの後を追いかけようとしていたが、二人から止められていた。
やはりここでも戦力外通告が出されたようだ。
「……わ、我は?」
「「ダメ~」」
同じようにカイザーも戦力外通告が出されていた。
《ラジアンもダメー?》
ベクトルとカイザーに続き、ラジアンも恐る恐るアレンとエレナを窺っていた。
ラジアンがジャイアントグラスホッパーを倒す力加減は、普通の攻撃だとバキッと割れてドロップアイテムはトンボ玉に。良い攻撃になればバラバラになってドロップアイテムはシーグラスになるのだ。
バラバラにしてしまうベクトルとカイザーが駄目だから、自分も駄目なのか不安になったようだ。
「ラジアンはいいよ~」
「れんしゅう、れんしゅう」
《がんばる!》
兄と姉なアレンとエレナは、弟であるラジアンの失敗は問題ないと、さすがに戦力外通告などはしなかった。
それを見ていたベクトルとカイザーは、羨ましそうにラジアンを見ていた。
「ベクトルとカイザーからしたら戦い甲斐のない相手だろう。諦めて見学してなよ」
《確かに弱いけど、オレも遊びたい~》
「うむ、みんなでわいわいと戦うのが良いのだ」
ジャイアントグラスホッパーはそれほど強くない魔物だが、戦闘を楽しむ……という感じではなく子供達とドロップ集めを楽しみたいようだ。
「しょうがないな~」
「ちゃんとてかげんする?」
あまりにもしょんぼりとする様子を見て、アレンとエレナはベクトルとカイザーの参加も認めたようだ。
《するする! 参加してもいい!?》
「ちゃんと手加減するぞ!」
「「じゃあ、いいよ」」
《ありがとう!》
「うむ!」
そうして、第二回ジャイアントグラスホッパー狩りが開始された。
《うん、やっぱり赤系統のガラス玉がほとんどだね》
やはり、赤の坑道では赤ベースや赤い模様のトンボ玉ばかりであった。
「どれもかわいいね~」
《そうね。どれも可愛いわ~》
《本当に可愛いの!》
女の子組は集めたトンボ玉を見つめ、嬉しそうに語り合っていた。
《お兄ちゃん、エレナはもちろんだけど、フィートとマイルにもあのガラス玉で何か作ってあげてよ。お願い》
「もちろんだよ。だけど……ガディア国に戻ってからレベッカさん達と相談して装飾品でも作ってもらおうと思っていたんだけど……あの様子なら、すぐに作ってもらったほうがいいのかな?」
フィートとマイルの様子を見て、ジュールが僕にお願いする形で提案を持ちかけてきたが、僕も二匹の様子を見て、何か作ってあげたいと思っていたところだ。
ただ、トンボ玉はお土産にすると張り切っていたので、レベッカさん達にトンボ玉を見せてから作るものを考えようと思っていたのだ。
《あ~、どうだろう? あ、二回作ればいいんじゃない? あの三人でお揃いと、ママ達とお揃いとね。幸い、フィートとマイルも収納系の魔道具は持っているんだし、その日の気分で使い分ければいいじゃん!》
「それもそうだな~」
僕はマントを買いに行く時にでも、宝飾品店に寄ろうと決めた。
《ところで、お兄ちゃん。マジックリングに私物を入れておいても怒らないよね?》
「怒らないよ。というか、そんなことで怒られると思われているの!?」
《いやいや、全然思っていないよ。ただ確認しただけだよ》
「僕としては、むしろどんどんお気に入りのものを集めてほしいくらいだよ。というか、今まで我慢させていたんじゃないかと思っているよ」
《大丈夫、我慢しているわけじゃないよ。でも、これからはちょっと欲張りになってみるよ》
「なりな、なりな。そのためにもジュール用のマジックリングを早く手に入れたいよな~。あ、マイル用とラジアン用もだな」
マジックリングは仕事の運搬関係で使用するのはもちろんだが、緊急時に必要になりそうなもの、私物はもちろん、お気に入りの宝物を集めて入れておくのに使用してもらいたい。
あ、ベクトルには今のところ常に空にしておくように言ってはいるが、獲物の溜め込みをしないことが確定すれば、宝物も許可する予定ではいる。
《心配しなくても、きっとすぐに手に入るよ~》
「そうだといいんだけどな~」
ジュールは何故か魔道具は絶対に手に入ると自信満々のようだった。
「え!? 装備変更の腕輪が?」
隠し部屋? 罠部屋? どちらかわからないが、ラジアンが落ちた先にあった部屋には探していた魔道具があったようだ。
「え、凄い! 本当に?」
「うむ、間違いないな。この腕輪は、服装が二通り登録できるもののようだ。我の耳飾りよりも性能が良いものだ」
「あれ? カイザーのものは一つしか登録できないものなのか?」
「うむ、タクミとお揃いの服を登録しておる」
登録できる服装の数は一つと固定ではなく、いろいろ登録できるものもあるようだ。
「「カイザーだけずる~い」」
「アレンもおにぃちゃんとおそろいのきたーい!」
「エレナもおそろいしたーい!」
アレンとエレナは服の登録数ではなく、服のお揃いのほうに食いついた。
「……今度、似たような服を作るか?」
「「つくる!」」
とはいっても、僕の服はシルが用意してくれたものだから性能は良いが、形自体は普通のシャツに上着なんだけどな~。まあ、二人が喜ぶのなら作ることは問題ない。むしろ、いろいろな服を作って着せてみたいっていう気持ちのほうが大きい。
「欲しかった魔道具が早々に手に入ったのは幸運だったな」
《そうだね! でも、その魔道具は数が欲しいし、まだまだこれからだよ!》
ジュールの言葉にフィート達も同意するように頷く。
自分達が【人化】スキルを手に入れた時のために、準備万端にしておきたいようだ。
「じゃあ、この魔道具は誰が持っておく?」
《ん? お兄ちゃん、ボク達はまだ人化できないよ?》
「人化できた時、これがないと困るんだろう? カイザーが人化した時、裸で困ったみたいだしな」
「……うむ」
場所にもよるが、人化した時に裸で彷徨うと、大変なことになりかねない。
「どんな姿に変化するかわからないから、とりあえず大きめなマントかコートあたりを登録しておいて、羽織れるようにしておけばいいかな?」
裸にコートも変態を連想するが……まあ、他人に知られなければいいだろう。
《おぉ! それもそうだね! じゃあ、女の子が優先で、フィートかマイルがいいかな》
《ぼくもそれでいいと思います》
《残念だけど、そうだね。早くオレの分も貰えるように頑張ろう!》
《ラジアンも~》
男の子契約獣達は、全員紳士だったようだ。良い子達だな~。
《わたしは後でいいの! だから、フィートが持っていてなの!》
《でも、いいのかしら? 私が無駄に持っているよりも、兄様達が活用したほうがいいんじゃない?》
「僕は普通に着替えれば事足りるから問題ないよ」
「アレンも!」
「エレナもだよ!」
僕もアレンもエレナも、冒険者としての活動時も休日も似たような格好だからな。急に着替えたりする場面はほとんどない。
《ありがとう。じゃあ、私が持っているわ。兄様、手間になるけど、街でマントをよろしくね》
「僕が選んで買ってもいいけど、せっかくだからフィート自身が好きな色のマントを選びなよ。街歩きの時に呼ぶからさ」
《わぁ、楽しみ~。兄様、ありがとう》
《羨ましいなの~》
「その時はマイルも一緒にマントを選んでおくか。次に装備変更の魔道具が手に入ったらマイルの番なんだしな」
《わーいなの!》
街に戻ったらすぐにフィートとマイルを呼んで買いものさせてあげよう。
《あ、オレ、良いことを思いついた! 聞いて、聞いて!》
「……ベクトル、何を思いついたんだ?」
買いものの予定が決まったところで、ベクトルが何か名案を思いついたようだ。……本当に名案かどうかは聞いてみないとわからないけどな。
《あのね、あのね! 森っぽい色のマントを登録しておいて、森でマントを被れば隠れられるよ! だから、人化できなくても使えるんじゃない?》
「……」
《わ~、ベクトルにしてはとても良い案を思いついたね~》
《ジュール! オレにしてはって酷い! オレだって良い案を出せるんだよ!》
ベクトルにしては本当に良い案だと思う。
「フィートが持つ予定の魔道具は二通り登録できるみたいだし、二個目はベクトルの案を採用するか?」
《そうね。兄様、そうしましょう》
とりあえず、一つ目の登録はフィート好みのマント、二つ目の登録は隠れ蓑用のマントにすることに決まった。
《じゃあ、お兄ちゃん、そろそろ先に進もうか! 何だかこの迷宮では欲しいものが手に入るような気がするからどんどん進もうよ!》
「それもそうだな」
ジュールの言う通り、欲しいと思っていた魔道具が十四階層で手に入ったのは幸先が良いよな。この調子でマジックリングが手に入るといいよな~。
《よし! じゃあ、先に進むためにもまずは蟻蜜集めからだね!》
「「おー!」」
「ん?」
話の流れ的にすぐに次の階層を目指すのかと思いきや、透明と白の蟻蜜集めは諦めないで決行するらしい。
「……まあ、いいんだけどね」
使えるものなので、僕は子供達の好きにさせることにした。
「……集めたな」
「「がんばった!」」
《ラジアンもがんばったよ!》
その結果、勤勉にソルジャーアント狩りをする子供達によって、大量の蟻蜜を手に入れた。
◇ ◇ ◇
蟻蜜大量入手により攻略に勢いが増した子供達は、十五階層の緑の石の森、十六階層の赤い石の森、十七階層の青い石の森、十八階層の透明の石の森と……一階層と同じ色の似たような森だが、かなり格落ちした雰囲気の階層を次々と攻略していった。
それも……一日一階層よりも早いペースでね。
「「十九かいそうだー!」」
《また坑道になったね》
「ふむ、これは……ガラスのようだな」
そして、到着した十九階層は緑のガラスの坑道だった。
「緑の坑道に戻ったってことは、四色の坑道と森でひと括り、素材が変わって繰り返す感じかな?」
《私達は見ていないけれど、十一階層が緑の岩の坑道だったのかしら?》
「うん、そうだよ」
《なるほどです。では、次の階層が青のガラスの坑道でしたら、兄上の考えが正解ですね》
《行ってみればわかるよ。だから、早く行こうよ!》
僕とフィートとボルトで迷宮の構造について話していると、ベクトルが早く行こうと急かしてくる。それも、僕の背中をぐいぐいと押しながらね。
「わかった、わかった」
《も~なの! ベクトル、少しは落ち着くの!》
《だって、早く進みたいんだも~ん》
マイルに怒られてもベクトルは気にしていないな。
「アレンもはやくいきたーい」
「エレナもいきたい!」
「さっきまで採掘していなかったか?」
「「おわった~」」
とりあえず、いくつか手に入れるべくガラスの坑道を割っていた子供達だが、もう満足したらしい。
《お兄ちゃん、採掘したガラスの塊はこれだよ。収納してね》
「……いつのまにこんなに割ったんだよ」
ジュールが大小様々のガラスの山の番をしていた。
「よくこの大きさのものが採れたな~」
僕が注目したのは、僕が抱えられないほどの大きさのガラスの塊だ。
《良い感じに突き出していたから、根元を狙ったらコロッていってたね~》
「「コロッといった!」」
「ははは~。まあ、何かに使えるかもしれないしな~……」
「「そうなの! だから、かいしゅうして!」」
こうやって死蔵品が増えていくんだよな~。
というか、僕の《無限収納》って、まだ容量は大丈夫なのだろうか? 魔力量によって容量は大きくなり、僕の魔力はかなりあるので無限に近いとは思うが……無限ではないよな?
これについては、シルに確認しておいたほうがいいかな?
まあ、今のところ〝そろそろ無理そう〟などと思ったことはないので、まだ余裕はあるだろう。
「それじゃあ、進むか」
「「おー!」」
緑のガラスを回収してから、僕達は十九階層の攻略を始めた。
「「てやっ!」」
開始早々、ガラス製っぽい見た目の巨大なバッタが現れたのだが、アレンとエレナの蹴りで粉々になってしまった。
《……ジャイアントグラスホッパーの変異種かな?》
《……そうみたいね。通常とは違うガラスの身体だったものね》
《……ガラスだと、いつ身体が壊れるかわからなくて生きづらそうだね》
ジュール、フィート、ベクトルは、粉々になったジャイアントグラスホッパーを不憫そうに見つめていた。
《こなごな~。アレンおにーちゃんとエレナおねーちゃん、すご~い》
《ドロップアイテムに変わるの!》
《あれは……瓶ですね。中に何が入っているんでしょうか?》
地面に散らばっていた粉々のガラスがドロップアイテムに変わると、キラキラとした粉が入ったガラス瓶だった。ガラス瓶はいくつかあったのだが、どれも違う色だ。
「「おにぃちゃん、これなーに?」」
「えっと……ガラスの粉だな?」
「「ガラス?」」
「うん、ガラスの粉。ガラス製品、コップとかを作る時に混ぜたり、あとは塗料もだね。ペンキとかに混ぜるみたいだな」
「「……まあまあだね」」
残念ながら僕達にとっては使い道のなさそうな品だ。
だからなのか、子供達はあまり嬉しそうではない。どう頑張ってもお土産とかにもならなそうだしな~。これならまだガラス玉のほうが喜んだだろう。
「アレン、エレナ、またジャイアントグラスホッパーが来たぞ」
「「たおしてくる~」」
カイザーに敵の存在を教えられた子供達は、すぐさまジャイアントグラスホッパーに向かっていった。
《また粉々なの!》
《ドロップアイテムはまた瓶っぽいわね。ということは、またガラスの粉かしら?》
あっという間に倒してしまった子供達は、また別の色のガラスの粉を持って帰ってきた。
《つぎはラジアンもたおしたい!》
「「いいよ~」」
次にジャイアントグラスホッパーが現れた時は、ラジアンが戦うことになったようだ。
そして、すぐに現れたジャイアントグラスホッパーをラジアンは危なげなく倒してみせた。
「ラジアンだと粉々じゃなくて、バラバラって感じになったな」
《タクミおにーちゃん、なかみがちがうよ~?》
「本当だね。粉以外もドロップアイテムはあるんだな」
ラジアンが持ち帰ってきたドロップアイテムを見ると、アレンとエレナと同じような瓶ではあったが、中身が粉ではなくシーグラスのような欠片っぽいものが詰め込まれていた。
《粉々にして倒したら粉で、バラバラにして倒したら欠片って、『巨獣の迷宮』のお肉と同じ原理かな?》
「ああ、なるほど! その可能性はありそうだな」
「「おぉ!」」
『巨獣の迷宮』では通常のドロップアイテムは肉の塊なのだが、木っ端みじんにして倒した時だけひき肉が手に入った。ジュールの推察の通り、それと同じ原理っぽいものが働いているのかもしれないな。
「「ためしてみる!」」
「試すのはいいけど、手加減しすぎて倒しきれなかった時は危ないからな。ドロップアイテムになるまで油断するなよ」
「「わかった~」」
粉々のほうはもうやっているので、試すとなると損害を与えないように倒すことになる。そうなると、魔物の息が絶えておらず、瀕死の状態で最後の悪足掻きなどされると厄介である。
「「ガラスだまだった~」」
「こっちは、しましま~」
「こっちのは、おはなだよ~」
そうして、試した結果、小指の爪くらいのトンボ玉が手に入ったようだ。
《あら、これは可愛いわね》
《本当なの! これならお土産にも良さそうなの!》
「「そうなの! だから、いっぱいあつめたい!」」
縞模様だったり花模様が入っていたりするガラス玉は子供達とフィート、マイルの女の子組には受けがいいようだ。ということは、後見としてお世話になっているルーウェン伯爵家の女性達、レベッカさん達にも喜ばれる可能性があるということで、やはりというかなんというか……お土産集めが開始されることとなった。
《むむ……手加減が難しいな~。欠片になっちゃったよ》
「うむ、これは我らには向いておらんな」
「「もう! ベクトルとカイザーはけんがくね!」」
ベクトルとカイザーには向く作業ではなかったようで、アレンとエレナから戦力外通告を受けていた。
「いろんな色、模様の玉があるみたいだけど、ベース、もしくは模様が緑なんだな~」
「「ほんとうだ!」」
戦力外が出たとしても僕達の戦闘力は問題なく、次々とトンボ玉は集められていった。
すると途中で、わりとカラフルな感じで集まっていると思っていたトンボ玉が、どこかしらに緑色が入っていることに気がついた。
「じゃあ、つぎのかいそうでは、あか?」
「それで、つぎがあおで、そのつぎがとうめい?」
「そんな気がするな」
「「よし、あつめよう!」」
「……だよね~」
確実にそう言うと思ったが、赤、青、透明のガラスの坑道でもトンボ玉集めは続けることが決まった。
「じゃあ、緑はそろそろいいかい?」
「「うん! 二十かいそうにいこう!」」
というわけで、二十階層に行くため、十九階層の攻略をさくさく進めることになった。
◇ ◇ ◇
「「あつめるぞぉ!」」
二十階層に到着した途端、アレンとエレナはジャイアントグラスホッパー探しを開始した。
《わ~、待ってよ~》
「「ベクトルはダメ~」」
《えぇ!? 今度はちゃんと手加減するよ!》
「「ダメ~」」
《……そ、そんな~》
ベクトルがアレンとエレナの後を追いかけようとしていたが、二人から止められていた。
やはりここでも戦力外通告が出されたようだ。
「……わ、我は?」
「「ダメ~」」
同じようにカイザーも戦力外通告が出されていた。
《ラジアンもダメー?》
ベクトルとカイザーに続き、ラジアンも恐る恐るアレンとエレナを窺っていた。
ラジアンがジャイアントグラスホッパーを倒す力加減は、普通の攻撃だとバキッと割れてドロップアイテムはトンボ玉に。良い攻撃になればバラバラになってドロップアイテムはシーグラスになるのだ。
バラバラにしてしまうベクトルとカイザーが駄目だから、自分も駄目なのか不安になったようだ。
「ラジアンはいいよ~」
「れんしゅう、れんしゅう」
《がんばる!》
兄と姉なアレンとエレナは、弟であるラジアンの失敗は問題ないと、さすがに戦力外通告などはしなかった。
それを見ていたベクトルとカイザーは、羨ましそうにラジアンを見ていた。
「ベクトルとカイザーからしたら戦い甲斐のない相手だろう。諦めて見学してなよ」
《確かに弱いけど、オレも遊びたい~》
「うむ、みんなでわいわいと戦うのが良いのだ」
ジャイアントグラスホッパーはそれほど強くない魔物だが、戦闘を楽しむ……という感じではなく子供達とドロップ集めを楽しみたいようだ。
「しょうがないな~」
「ちゃんとてかげんする?」
あまりにもしょんぼりとする様子を見て、アレンとエレナはベクトルとカイザーの参加も認めたようだ。
《するする! 参加してもいい!?》
「ちゃんと手加減するぞ!」
「「じゃあ、いいよ」」
《ありがとう!》
「うむ!」
そうして、第二回ジャイアントグラスホッパー狩りが開始された。
《うん、やっぱり赤系統のガラス玉がほとんどだね》
やはり、赤の坑道では赤ベースや赤い模様のトンボ玉ばかりであった。
「どれもかわいいね~」
《そうね。どれも可愛いわ~》
《本当に可愛いの!》
女の子組は集めたトンボ玉を見つめ、嬉しそうに語り合っていた。
《お兄ちゃん、エレナはもちろんだけど、フィートとマイルにもあのガラス玉で何か作ってあげてよ。お願い》
「もちろんだよ。だけど……ガディア国に戻ってからレベッカさん達と相談して装飾品でも作ってもらおうと思っていたんだけど……あの様子なら、すぐに作ってもらったほうがいいのかな?」
フィートとマイルの様子を見て、ジュールが僕にお願いする形で提案を持ちかけてきたが、僕も二匹の様子を見て、何か作ってあげたいと思っていたところだ。
ただ、トンボ玉はお土産にすると張り切っていたので、レベッカさん達にトンボ玉を見せてから作るものを考えようと思っていたのだ。
《あ~、どうだろう? あ、二回作ればいいんじゃない? あの三人でお揃いと、ママ達とお揃いとね。幸い、フィートとマイルも収納系の魔道具は持っているんだし、その日の気分で使い分ければいいじゃん!》
「それもそうだな~」
僕はマントを買いに行く時にでも、宝飾品店に寄ろうと決めた。
《ところで、お兄ちゃん。マジックリングに私物を入れておいても怒らないよね?》
「怒らないよ。というか、そんなことで怒られると思われているの!?」
《いやいや、全然思っていないよ。ただ確認しただけだよ》
「僕としては、むしろどんどんお気に入りのものを集めてほしいくらいだよ。というか、今まで我慢させていたんじゃないかと思っているよ」
《大丈夫、我慢しているわけじゃないよ。でも、これからはちょっと欲張りになってみるよ》
「なりな、なりな。そのためにもジュール用のマジックリングを早く手に入れたいよな~。あ、マイル用とラジアン用もだな」
マジックリングは仕事の運搬関係で使用するのはもちろんだが、緊急時に必要になりそうなもの、私物はもちろん、お気に入りの宝物を集めて入れておくのに使用してもらいたい。
あ、ベクトルには今のところ常に空にしておくように言ってはいるが、獲物の溜め込みをしないことが確定すれば、宝物も許可する予定ではいる。
《心配しなくても、きっとすぐに手に入るよ~》
「そうだといいんだけどな~」
ジュールは何故か魔道具は絶対に手に入ると自信満々のようだった。
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