257 / 321
17巻
17-1
しおりを挟む第一章 迷宮へ行こう。続々・貴石編
僕は茅野巧。エーテルディアという世界の神様の一人、風神シルフィリールが起こしたうっかり事故で死んでしまった元日本人だ。
僕を死なせてしまったことに責任を感じたシルフィリール――シルがエーテルディアに転生させてくれたのだが……僕が最初にいたのは危険な森の中だった。
しかも、そこで双子の子供を保護した。後にその子達は水神様の子供だということが判明したが、今は僕の弟妹として一緒に暮らしている。
三人で冒険者としていろいろな国、街を訪れ、冒険者生活を楽しんでいる僕達は、今はレギルス帝国にある上級迷宮の攻略に勤しんでいた。
「「こんどはみどりだ!」」
一日だけ休養を取った翌日、僕達は再び『貴石の迷宮』に来ていた。
すると、一階層の森がエメラルドの森に変化しているではないか!
この迷宮の一階層は、木から地面まで宝石でできた森になっていて、定期的にダイヤモンド、サファイア、ルビー、エメラルドに変わる仕組みだ。いつ変わるか、何の宝石になるのかはランダム。完全に運任せなんだけどね。
ちなみに、魔物が出ないこともあって観光地になっている。
「運が良すぎないか?」
「タクミ、細かいことは気にするでない」
「「きにしな~い」」
アレン、エレナ、仮で従魔契約しているリヴァイアサンのカイザーは当たり前のように人のいない方向へと進んでいき、周囲に人がいないのを確認するとポキポキ枝を折っていく。通常の力ではびくともしないはずなのだが……簡単そうだ。
これで三種類目の枝を手に入れた。
あと採っていないのは、最初に見たダイヤモンドの枝だ。あの時は枝を採るっていうことを考えていなかったからな~。あの時採っていれば、この時点で全種類揃ったんだな。
「ディルも一緒に連れて来れば良かったか?」
カイザーが名前を挙げたのは、前回の迷宮攻略で同行してくれていた冒険者だ。
「あ~……僕達と行動するっていうディルさんの依頼は終了してるし、今度はまた違う依頼の予定も入っているからな~。一緒に来てもらうのは難しかったんじゃないか?」
僕達が多くの冒険者と遭遇し、絡まれそうな階層を突破したので、晴れてディルさんの役目は終了した。
だが彼は、今度は一階層で枝の欠片を手に入れるという依頼が舞い込んでいた。たぶん、これから忙しくなることだろう。
「さて、枝は確保したし、転移装置で移動しようか」
「「はーい!」」
「うむ」
というわけで、僕達は一階層をさくさく進み、一階層と二階層の間にある転移装置から、十一階層と十二階層の間の転移装置へと移動した。
そして、転移装置の間には誰もいなかったので、そこでフェンリルのジュール、飛天虎のフィート、サンダーホークのボルト、スカーレットキングレオのベクトル、フォレストラットのマイル、グリフォンのラジアンを呼び出した。
《あっ、転移装置! 約束通り迷宮だね!》
《わ~い。迷宮だ~》
《わ~い》
ジュールがすぐに転移装置に気がついて場所を特定すると、ベクトルとラジアンが転移装置の周りをくるくると回り出す。
ベクトルは契約獣の中では一番年上のはずなのだが……ラジアンと同い年のようだ。
《兄様、ここは『貴石の迷宮』でいいのかしら?》
「うん、そうだよ。そこの十二階層に行くところだ」
《どんな迷宮なのか楽しみなの!》
《兄上、早く行きましょう》
みんなわくわくしている様子だったので、僕達はすぐに十二階層へと移動した。
「「あかだ!」」
「なるほど、こうくるのか」
十二階層は、十一階層と色違い。全体が赤い岩の坑道だった。
《あれ? ここは『色彩の迷宮』?》
「いや、間違いなく『貴石の迷宮』だよ」
やっぱり『色彩の迷宮』に似ていると思うんだな~。
「「あっ! きた!」」
《え、何あれ!》
「ソルジャーアントだな」
《あらまあ~》
《黒くないよ!?》
真っ赤なソルジャーアントが現れると、アレンとエレナが倒すために嬉々として駆けていく。
ジュール達は本来の色ではないソルジャーアントを見て驚いていた。色違いは初めて見たようだな。
「十一階層は緑の坑道で、そこでは緑のソルジャーアントが出たよ」
《えぇ!? やっぱりここって『色彩の迷宮』じゃないの?》
「ははは~、違う違う」
ジュールはどうしてもここを『色彩の迷宮』にしたいようだ。でも、気持ちはわかる。
「ありみつ~」
「いっぱいあったよ~」
ドロップアイテムはやはり蟻蜜で、今度は赤色だった。
「やっぱり赤かったか~」
「「うん、あかだった!」」
《え、蜂蜜?》
「いや、蟻の蜜。まあ、蜂蜜みたいな甘いものだな」
《わ~、それも初めて聞いた~》
《私も初めて見たわ~》
ジュールとフィートは子供達が持ち帰った蟻蜜の瓶をまじまじと見つめていた。
迷宮の外でアント系の魔物に出会ったことはないが、そっちでは蟻蜜は手に入らないのかな? あ、でも、蜂の巣みたいに発見すれば手に入るわけじゃないから、やはり珍しいものなのか。
《兄上、この蟻蜜は兄上が作る甘味に使えるんですか?》
「うん、もちろん使えるよ」
《よし、いっぱい集めるぞ!》
《なになにー?》
《兄ちゃんに美味しいものを作ってもらうために、蟻蜜っていうものをいっぱい集めるんだよ》
《おぉ~、ラジアンもあつめる~》
ボルトがお菓子作りに使えるか確認すると、ベクトルとラジアンがわかりやすく張り切り出した。
「ラジアンはちょっと心配だから、誰か一緒に行動して!」
ソルジャーアントはロックアントの上位種なので、アレンとエレナにも物理でなく魔法で倒すように指示している。なので、ラジアンが突撃していくのだけは止めておく。
《兄様、大丈夫よ。私が見ているわ》
「フィート、お願いな」
フィートが見ていてくれるなら安心だ。
《あ、あかいのきたよ~》
《あらあら》
早速、ソルジャーアントを見つけたラジアンが走っていき、その後をフィートが追いかけていった。
……ラジアンって、戦闘狂になりつつあるのかな? それとも魔物本来の性分か?
悩むところである。
「……我の出番がないな」
ラジアンの成長具合を悩んでいると、カイザーが出遅れた……とばかりに僕の横に来る。
少しだけしょんぼりしている様子だ。
「これだけ戦力がいたら仕方がないね。僕なんて最近、めっきり魔物と対峙しなくなったよ」
特に進んで戦いたいというわけではないが、やはり何となく気になってしまう。
「カイザーは熟練者なんだから、みんなの戦いを見て助言してあげてよ。より良くなるようにさ」
「うむ、心得た」
「ああ、でも、カイザーは人型での戦闘は不慣れだから、それを考慮してよ」
「……うむ、まだいまいち手加減の具合がわからぬからな~。タクミ達といるためだ、努力しよう」
今はまだ他人と接する機会が少ないので問題は起きていないが、街中で家を破壊したとか、人とぶつかって骨を折った……なんてことは絶対に避けたいからな。
というか、カイザーっていつまで一緒にいるんだろう? ちょっと遊びに来た……という感じだと僕は思っていたが、わりとずるずると一緒にいるよな~。まあ、一緒にいるのが嫌っていうわけではないし、「いつまでいるの?」なんてことは僕が迷惑がっているみたいなので聞かないけどな。
「おにぃちゃん! ありみつ、いっぱいだよ!」
「あとね、あとね! あかくないのもあったの!」
アレンとエレナが蟻蜜を大量に抱えて戻ってきたのだが、蟻蜜の中には赤くない通常の黄金色の蟻蜜もあったようだ。
「いっぱい集めたな~。これ、使い切れるかな?」
「「だいじょうぶ! あまいのだいすき!」」
「食べるだけじゃなくて、おやつを作るのも手伝ってよ」
「「うん、てつだうよ!」」
そういえば、そろそろおやつの作り溜めをしようと思っていたけど、しないまま迷宮に来ちゃったな~。まあ、まだ《無限収納》には作り置きはあるし、大丈夫か。
「さてと、ここら辺の魔物は一掃したし、先に進もうか」
「「うん!」」
◇ ◇ ◇
十二階層をたっぷりと堪能した僕達は、十三階層へとやって来た。
「「あお~」」
今度は青い岩の坑道だった。
「なるほど。そうなると、次の階層は白……というか透明の坑道かな?」
「「なんで?」」
「一階層の森と同じ色かな~と思ってね。一階層の森は、緑、赤、青、透明だっただろう?」
「「おぉ~」」
何となくだが、この迷宮は一階層で見られる四色で成り立っているのではないかと思っている。
「はやくいって、たしかめよう!」
「きっと、とうめいだね!」
アレンとエレナが次の階層が気になるようで、さくさく十三階層を進もうとする。
「青の蟻蜜は集めないのか?」
「「……あつめる」」
たぶんこの階層でも現れるだろう青いソルジャーアントのドロップアイテムのことを言うと、二人はすぐに意見を翻した。
《アレン、エレナ、早速来たよ~》
「「たおす! ――《ウォーターブレード》」」
ジュールの呼びかけに、子供達は即座に魔法を放つ。
「「あおのありみつあったよ~」」
そして、お目当ての青の蟻蜜を手に入れていた。
「えっと……じゃあ、もう十四階層に行くかい?」
「まだダメ~」
「もっとあつめてからね~」
やはり瓶にして数個程度の蟻蜜では満足しなかったので、この階層でも蟻狩りを堪能してから十四階層を目指した。
◇ ◇ ◇
「「おぉ~」」
「やっぱり透明だったな~」
十四階層は思っていた通り、透明の坑道だった。まあ、透明と言っても透き通ったものでなく、少し濁った感じだけどな。
「透明の石か」
「「つかえる?」」
「ん~、使えるかどうかはわからないけど、珍しいものではあるな」
「「じゃあ、おみやげにする~」」
とりあえず、珍しいものなので、少しだけ採掘して回収しておくことにする。
もしかしたら、何かの使い道があるかもしれないしな。
《うわっ!》
「何だ? どうした?」
そこそこの石を手に入れ、本格的に十四階層を攻略しようと歩き始めると、突然、ベクトルが叫び声を上げた。驚いてそちらを見ると、ベクトルが地面に蹲っているではないか。
《穴に落ちた~》
「穴?」
《そう、穴。地面がへこんでいたんだけど、全然気づかなかった~》
ベクトルの言葉を聞いてから改めてよく周囲を見てみると、確かに少しへこんでいたり、逆に盛り上がっていたりする場所があった。
「他の階層みたいにボコボコしている場所が普通にあるけど、透明だから気づきづらいってことか。……危ないな」
普通に歩くだけでも油断したら転びかねない階層のようだ。
「みんな、走るのは禁止な」
「「《《《《《 《はーい》 》》》》》」」
「うむ」
とりあえず、危険なのでゆっくり歩くことにする。
「あ、嫌な予感がするんだけど……この階層、透明の魔物が出たりするのかな?」
「「「あ!」」」
見えない敵とか、危険すぎる。
「「なんかきそう~」」
「え、本当? もう見える範囲?」
「まだ~」
「これから~」
そんなことを考えていると、早速アレンとエレナの【気配感知】に何かが引っ掛かったらしい。
「「きた!」」
《白いソルジャーアントだね!》
「良かった。あれなら見えるね」
ほどなくして現れたのは、透明ではなく真っ白のソルジャーアントだった。見えない魔物に奇襲されなくて良かったよ。
「「《ウォーターブレード》」」
アレンとエレナはすかさず魔法を繰り出して、ソルジャーアントを倒すと、ドロップアイテムを走って拾いに行こうとする。
「走ったら駄目だって」
「「そうだった~」」
ドロップアイテムに向かって走るのはもう癖になっているようで、無意識だった模様。
「ありみつ、しろ~い」
「こっちのは、とうめい」
「え、両方あるのか?」
歩いてドロップアイテムを拾いに行くと、そこには二種類の蟻蜜があった。
「「りょうほうあるね~」」
「へぇ~。あ、うん、両方とも蟻蜜だね」
「「やったー」」
【鑑定】で確かめてみたが、両方ともしっかりと蟻蜜で、見た目は練乳とガムシロップだ。
「この二つは普通に使いやすそうだね」
「「そうなの?」」
「冷たい飲みものを甘くしたい時とか、いろいろとね」
「「いっぱいあつめる!」」
アイスコーヒーを甘くしたい時とかにとても良さそうだ。
今までもガムシロップっぽい蜜液というものがあったが、あれは甘味が薄くて少し水っぽいので、飲みものに入れるには使いづらかったのだ。
白いほうもミルク系の飲みもので使えるだろう。
あ、緑、赤、青の蟻蜜もかき氷のシロップとしては使えそうな気がする。今度、試してみよう。
《うわっ!》
「ラジアン!?」
再び蟻蜜集めを始めようとした時、今度はラジアンの叫び声が聞こえた。
慌ててラジアンのほうを見ると、壁にペット用の扉みたいなものがあり、パタパタと揺れていた。しかも、ラジアンの姿がないではないか!
「「ラジアン!」」
「ちょっと! アレンとエレナまで! 何で無警戒で飛び込むのさ!」
しかも、ラジアンの後を追うようにアレンとエレナもその扉に飛び込んでしまった。
僕は慌てて扉を開いて覗いてみると、扉の向こう側は滑り台のようになっていて、半地下らしき小部屋になっていた。
「アレン、エレナ、ラジアン、大丈夫か!?」
「「だいじょうぶ!」」
《だいじょうぶだよ~》
とりあえず元気そうな返事があったので、怪我などはしていないようだ。
だが、扉は僕が通るには少し小さめなので、後を追いかけることができない。
《お兄ちゃん、ボクも追いかけるよ》
《兄様、私も》
「そうだな、お願い」
《わかった》
《わかったわ》
小さくなったジュールとフィートなら扉を潜れるので、子供達を追って下へ滑り降りてもらう。
《むむ? ……オレは通れなそう》
「……無理して行かなくていいから」
ベクトルも扉を潜ろうとしていたが、小さくなっても通らなそうなので、嵌まって抜けなくなる前に止めておく。
……嵌まってしまうと、僕も下の様子を確認できなくなってしまうからな。
「おーい。戻ってこられそうか?」
《お兄ちゃん、ちょっと待ってね。アレンとエレナが興味津々に部屋を調べ始めちゃったから》
戻ってくるように声を掛けると、ジュールから待ったがかかった。
《何かあったんでしょうか?》
《きっとお宝があるの!》
ボルトとマイルならこの扉を潜れるが、二匹はあえてここに残ってくれているようだ。
「ふむ……まあ、魔物の気配はないようなので、問題はないのではないか?」
「魔物はいなくても、罠はあるかもしれないからな~」
「なるほど、その心配があるのか。どれ、我も下に行ってこよう」
カイザーはヘビ化すると、するすると降りていった。
「……自分で行けないのがもどかしい」
子供達が心配だが、何もできないのが微妙に嫌だった。
「「《ただいま~》」」
しばらくしてから、ようやく子供達が小部屋から戻ってきた。
「お帰り。ラジアン、怪我はないね」
《ないよ~。でも、びっくりした~》
「そうだな、急に落ちたらびっくりするよな。今度からは周りにも気を遣おうな」
《は~い》
ラジアンが落ちたのは事故だが、これを機に周囲への警戒も覚えてもらいたい。
「で、アレン、エレナ。罠があったら困るんだから、調べずに飛び込んだら駄目だぞ」
そして、アレンとエレナには少しばかり説教だ!
「「ラジアン、ひとりになっちゃう」」
「それは確かに可哀想だけど、確認をしないでアレンとエレナに何かあったほうがラジアンは悲しむと思うぞ」
「「むむむっ」」
アレンとエレナは僕が言った言葉について、眉間に皺を寄せながら真剣に考えている。
「もちろん、僕も悲しくなる」
「「……うにゅ~」」
トドメ、とばかりに僕の気持ちも伝えると、二人はへにゃりと泣きそうな顔をする。
「「……きをつける」」
説教というか泣き落としに近かったが、子供達の反省を促せたようだ。
「それじゃあ、反省はここまで! ――ところで、下の部屋からすぐに戻ってこなかったのは、何でなんだ?」
「「うにゅ……たからばこ……」」
「え、宝箱があったのか? ちょっと待って、もしかして開けた!?」
「「みゅ!」」
罠があったらどうするんだ! と、もう一度怒る必要があるのか即座に確認する。
《あ、お兄ちゃん、罠がないかどうかはカイザーに確かめてもらったよ》
「うむ、問題なかったぞ」
「あ、そうか。カイザーは【鑑定】が使えたね」
しっかり者のジュールとフィートが、ちゃんと確認してくれたようだ。
説教まがいなことは続けてやりたくないので、助かったよ。
《アレンちゃん、エレナちゃん、兄様は心配しているだけで怒っているわけじゃないから、宝箱に何が入っていたか教えましょう》
僕が驚いて大きい声を出したので、アレンとエレナは萎縮していたようだ。それをフィートが宥めてくれている。
……微妙にへこむ。やはり、僕は怒ることは苦手だな。
「大きい声を出してごめんな。それで、宝箱には何があったんだ? 教えてくれるか?」
「「あのね、あのね!」」
アレンとエレナを撫でながら宥めると、何とか子供達の気持ちを浮上させることができたようだ。
776
あなたにおすすめの小説
私を棄てて選んだその妹ですが、継母の私生児なので持参金ないんです。今更ぐだぐだ言われても、私、他人なので。
百谷シカ
恋愛
「やったわ! 私がお姉様に勝てるなんて奇跡よ!!」
妹のパンジーに悪気はない。この子は継母の連れ子。父親が誰かはわからない。
でも、父はそれでいいと思っていた。
母は早くに病死してしまったし、今ここに愛があれば、パンジーの出自は問わないと。
同等の教育、平等の愛。私たちは、血は繋がらずとも、まあ悪くない姉妹だった。
この日までは。
「すまないね、ラモーナ。僕はパンジーを愛してしまったんだ」
婚約者ジェフリーに棄てられた。
父はパンジーの結婚を許した。但し、心を凍らせて。
「どういう事だい!? なぜ持参金が出ないんだよ!!」
「その子はお父様の実子ではないと、あなたも承知の上でしょう?」
「なんて無礼なんだ! 君たち親子は破滅だ!!」
2ヶ月後、私は王立図書館でひとりの男性と出会った。
王様より科学の研究を任された侯爵令息シオドリック・ダッシュウッド博士。
「ラモーナ・スコールズ。私の妻になってほしい」
運命の恋だった。
=================================
(他エブリスタ様に投稿・エブリスタ様にて佳作受賞作品)
【完結】ドアマットに気付かない系夫の謝罪は死んだ妻には届かない
堀 和三盆
恋愛
一年にわたる長期出張から戻ると、愛する妻のシェルタが帰らぬ人になっていた。流行病に罹ったらしく、感染を避けるためにと火葬をされて骨になった妻は墓の下。
信じられなかった。
母を責め使用人を責めて暴れ回って、僕は自らの身に降りかかった突然の不幸を嘆いた。まだ、結婚して3年もたっていないというのに……。
そんな中。僕は遺品の整理中に隠すようにして仕舞われていた妻の日記帳を見つけてしまう。愛する妻が最後に何を考えていたのかを知る手段になるかもしれない。そんな軽い気持ちで日記を開いて戦慄した。
日記には妻がこの家に嫁いでから病に倒れるまでの――母や使用人からの壮絶な嫌がらせの数々が綴られていたのだ。
婚約破棄されないまま正妃になってしまった令嬢
alunam
恋愛
婚約破棄はされなかった……そんな必要は無かったから。
既に愛情の無くなった結婚をしても相手は王太子。困る事は無かったから……
愛されない正妃なぞ珍しくもない、愛される側妃がいるから……
そして寵愛を受けた側妃が世継ぎを産み、正妃の座に成り代わろうとするのも珍しい事ではない……それが今、この時に訪れただけ……
これは婚約破棄される事のなかった愛されない正妃。元・辺境伯爵シェリオン家令嬢『フィアル・シェリオン』の知らない所で、周りの奴等が勝手に王家の連中に「ざまぁ!」する話。
※あらすじですらシリアスが保たない程度の内容、プロット消失からの練り直し試作品、荒唐無稽でもハッピーエンドならいいんじゃい!的なガバガバ設定
それでもよろしければご一読お願い致します。更によろしければ感想・アドバイスなんかも是非是非。全十三話+オマケ一話、一日二回更新でっす!
【完結】20年後の真実
ゴールデンフィッシュメダル
恋愛
公爵令息のマリウスがが婚約者タチアナに婚約破棄を言い渡した。
マリウスは子爵令嬢のゾフィーとの恋に溺れ、婚約者を蔑ろにしていた。
それから20年。
マリウスはゾフィーと結婚し、タチアナは伯爵夫人となっていた。
そして、娘の恋愛を機にマリウスは婚約破棄騒動の真実を知る。
おじさんが昔を思い出しながらもだもだするだけのお話です。
全4話書き上げ済み。
お前は家から追放する?構いませんが、この家の全権力を持っているのは私ですよ?
水垣するめ
恋愛
「アリス、お前をこのアトキンソン伯爵家から追放する」
「はぁ?」
静かな食堂の間。
主人公アリス・アトキンソンの父アランはアリスに向かって突然追放すると告げた。
同じく席に座っている母や兄、そして妹も父に同意したように頷いている。
いきなり食堂に集められたかと思えば、思いも寄らない追放宣言にアリスは戸惑いよりも心底呆れた。
「はぁ、何を言っているんですか、この領地を経営しているのは私ですよ?」
「ああ、その経営も最近軌道に乗ってきたのでな、お前はもう用済みになったから追放する」
父のあまりに無茶苦茶な言い分にアリスは辟易する。
「いいでしょう。そんなに出ていって欲しいなら出ていってあげます」
アリスは家から一度出る決心をする。
それを聞いて両親や兄弟は大喜びした。
アリスはそれを哀れみの目で見ながら家を出る。
彼らがこれから地獄を見ることを知っていたからだ。
「大方、私が今まで稼いだお金や開発した資源を全て自分のものにしたかったんでしょうね。……でもそんなことがまかり通るわけないじゃないですか」
アリスはため息をつく。
「──だって、この家の全権力を持っているのは私なのに」
後悔したところでもう遅い。
婚約破棄 ~家名を名乗らなかっただけ
青の雀
恋愛
シルヴィアは、隣国での留学を終え5年ぶりに生まれ故郷の祖国へ帰ってきた。
今夜、王宮で開かれる自身の婚約披露パーティに出席するためである。
婚約者とは、一度も会っていない親同士が決めた婚約である。
その婚約者と会うなり「家名を名乗らない平民女とは、婚約破棄だ。」と言い渡されてしまう。
実は、シルヴィアは王女殿下であったのだ。
「お前との婚約はなかったことに」と言われたので、全財産持って逃げました
ほーみ
恋愛
その日、私は生まれて初めて「人間ってここまで自己中心的になれるんだ」と知った。
「レイナ・エルンスト。お前との婚約は、なかったことにしたい」
そう言ったのは、私の婚約者であり王太子であるエドワルド殿下だった。
「……は?」
まぬけな声が出た。無理もない。私は何の前触れもなく、突然、婚約を破棄されたのだから。
平民の娘だから婚約者を譲れって? 別にいいですけど本当によろしいのですか?
和泉 凪紗
恋愛
「お父様。私、アルフレッド様と結婚したいです。お姉様より私の方がお似合いだと思いませんか?」
腹違いの妹のマリアは私の婚約者と結婚したいそうだ。私は平民の娘だから譲るのが当然らしい。
マリアと義母は私のことを『平民の娘』だといつも見下し、嫌がらせばかり。
婚約者には何の思い入れもないので別にいいですけど、本当によろしいのですか?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。

