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フィローニャ一歳、プレゼントをもらう。

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「ではまず最初のプログラムは、プレゼント会です! 」

 進行担当の執事がそう言い、わああ! と会場が盛り上がる。

 カリアの側に事前に贈り物の箱が積まれているため、そこから各々が用意したものを選び、中身を出してフィローニャに直接上げるシステムだ。

 まずは使用人たちから。

「フィローニャ様、おめでとうございます! 花束です! 」
「あー! 」
「あ、こら、フィー! 」

 迷わず花部分を掴もうとしたフィローニャを、カリアが慌てて止めた。

「ごめんなさいね」
「いえいえ! 」
「あとで花瓶に飾っておきましょうね」

「次の方! 」
「お嬢様どうぞ。おもちゃです。フェンディ様のものには比べ物になりませんけど・・・」
「うー! 」
「意外に気に入ったみたいよ」

「フィローニャ様、リボンです。好きなようにお使いください」
「あー! 」
「はいはい、今つけてあげるわね」

「あ、えっと、お、おもちゃです! 」
「う! 」

「些細なものですが、画材です。どうぞ」
「あ! 」

「被りましたが、俺もおもちゃを・・・」
「うー・・・」

「わたしもおもちゃですが・・・」
「あー・・・」

 ようやく使用人の列が終わり、フィローニャは少しつまらなくなっていた。おもちゃばかりもらっているからかもしれない。

「次、アルクセウス様! 」
「あうあう! 」

 大好きな兄の名前に反応したフィローニャを見て、アルクセウスは嬉しくなる。

「フィローニャ、プレゼントだ」

 そう言ってアルクセウスは箱を開ける。中に入っていたのは、明るい水色を基調とした可愛らしいドレスだ。

「本当はなにか武器がいいのかと思ったんだが、隊の者に止められてな・・・」
「「「・・・・・・」」」

 アルクセウスの一言目に、その場にいた人たちは皆、心の中でその騎士に向かって親指を立てた。

「それでそいつに相談して選んだ。どうだ? 」
「あう! 」

 アルクセウスが選んだドレスは、リボンとフリルがふんだんに使われた、ふんわりとしたものだ。両肩に、ピンクのバラを模したコサージュがついていて、アクセントになっている。

「フィローニャ、おまえのためにリトルターンで特別に作らせたものだ」
「!?」

 リトルターンは国内最高級の服飾専門店で、多くの貴族が愛用店だ。オーダーメイドしようとすれば、軽く屋敷一つ分の金が吹き飛ぶ。
 わざわざ子供服のためにかける額ではない。

 ざわざわとした使用人たちを気にせず、フィローニャはドレスへ手を伸ばした。

「生地も最高級のシルクを頼んだ」
「うー」

 さらっとドレスを撫でたフィローニャは気に入ったようで、ずっとさわさわしている。

「でもこれ少し大きいわね」
「はい。子どもの成長は早くすぐ着られなくなると言われたので、思い切ってプレデビュタントのものにしました」
「じゃあプレデビュタントまで大切にしておきましょう」

 アルクセウスからのプレゼント、プレデビュタントのドレス。


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