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終章 経営惨憺
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しおりを挟むあれから4年がたった冬のある日。
この2ヶ月密かに企んできた計画にようやく進展があった。
あの後変わらず大事にしてくれてた静のおかげで、自傷癖の方はすっかりなりを顰め当時の傷跡を身体に残すのみとなっていた。
その一方で大事に大事にしてもらえたせいで、静以外の感覚はもう全く感じることが出来なくなっていた。
静に触れてる時はそのついでのように周りのこともわかるけど、一度離れた途端に何を触っても誰に触れられても気づくことが出来ない。
まあ元々一人の時に家から出ることはほとんどなかったし、家にいても特に不便ではなかったけどね。
それから一昨年、僕たちが大学を卒業して静がうちの製薬会社で雅兄の秘書をやるって初めて聞いた時、それと同時に一緒に住もうって言ってくれた。
雅兄が結永さんとデキちゃった婚だって聞いた時はびっくりしたけど、なんかその関係で事情を知ってる人が欲しいとかなんとか、そこで静に白羽の矢が立ったんだって。
元々僕と離れる気がないからうちに就職するつもりではあったみたいだけど、タイミングもいいしこの期に雅兄と両親に静のことを紹介してちゃんと一緒に住むことになった。
だから静が仕事の時間以外はずっと一緒にいるし、静と一緒にいる時は普通の人だから困ることもなくてもうこの生活にも随分慣れてしまった。
それに一緒に住むってなった時に静のマンションも僕のアパートの部屋も手放して二人で生活出来る所に引っ越そうって話になったんだけど、僕の極度の人見知りってことで落ち着いたこの状態はこれ以上良くはならないみたいで、その関係でこの慣れた生活圏である商店街から離れられなかった。
それで元々住んでいたところからそう遠くない立地で今の部屋を探して周りの変化がほとんどないようにしてもらった。
商店街の人たちも武蔵さんもみんないい人たちで、僕の無痛症のことも理解してくれてるし静とも仲良いから本当に住みやすくて助かっている。
そう、生活自体は僕の中で十分充実していて満足しているんだけど、一つだけ一番大事なことが大きく心に引っかかっていた。
出会ってからずっと、きっとあの時よりもっとお互いが大好きで大切な存在になってる。
僕からはもちろん静からも離れないって、ずっと一緒にいるって誓って同棲を始めたほぼ同時期に籍も入れた。
それからも気持ちは変わってないし、もう1年ちょっと経った。
それなのに何度お願いしても未だに静は番にだけはしてくれなかった。
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