僕とあなたの地獄-しあわせ-

薔 薇埜(みずたで らの)

文字の大きさ
137 / 152
終章 経営惨憺

133

しおりを挟む

あれから4年がたった冬のある日。
この2ヶ月密かに企んできた計画にようやく進展があった。

あの後変わらず大事にしてくれてた静のおかげで、自傷癖の方はすっかりなりを顰め当時の傷跡を身体に残すのみとなっていた。

その一方で大事に大事にしてもらえたせいで、静以外の感覚はもう全く感じることが出来なくなっていた。
静に触れてる時はそのついでのように周りのこともわかるけど、一度離れた途端に何を触っても誰に触れられても気づくことが出来ない。
まあ元々一人の時に家から出ることはほとんどなかったし、家にいても特に不便ではなかったけどね。

それから一昨年、僕たちが大学を卒業して静がうちの製薬会社で雅兄の秘書をやるって初めて聞いた時、それと同時に一緒に住もうって言ってくれた。
雅兄が結永さんとデキちゃった婚だって聞いた時はびっくりしたけど、なんかその関係で事情を知ってる人が欲しいとかなんとか、そこで静に白羽の矢が立ったんだって。

元々僕と離れる気がないからうちに就職するつもりではあったみたいだけど、タイミングもいいしこの期に雅兄と両親に静のことを紹介してちゃんと一緒に住むことになった。
だから静が仕事の時間以外はずっと一緒にいるし、静と一緒にいる時は普通の人だから困ることもなくてもうこの生活にも随分慣れてしまった。
それに一緒に住むってなった時に静のマンションも僕のアパートの部屋も手放して二人で生活出来る所に引っ越そうって話になったんだけど、僕の極度の人見知りってことで落ち着いたこの状態はこれ以上良くはならないみたいで、その関係でこの慣れた生活圏である商店街から離れられなかった。
それで元々住んでいたところからそう遠くない立地で今の部屋を探して周りの変化がほとんどないようにしてもらった。
商店街の人たちも武蔵さんもみんないい人たちで、僕の無痛症のことも理解してくれてるし静とも仲良いから本当に住みやすくて助かっている。

そう、生活自体は僕の中で十分充実していて満足しているんだけど、一つだけ一番大事なことが大きく心に引っかかっていた。

出会ってからずっと、きっとあの時よりもっとお互いが大好きで大切な存在になってる。
僕からはもちろん静からも離れないって、ずっと一緒にいるって誓って同棲を始めたほぼ同時期に籍も入れた。
それからも気持ちは変わってないし、もう1年ちょっと経った。

それなのに何度お願いしても未だに静は番にだけはしてくれなかった。

しおりを挟む
感想 9

あなたにおすすめの小説

【完結】愛されたかった僕の人生

Kanade
BL
✯オメガバース 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 お見合いから一年半の交際を経て、結婚(番婚)をして3年。 今日も《夫》は帰らない。 《夫》には僕以外の『番』がいる。 ねぇ、どうしてなの? 一目惚れだって言ったじゃない。 愛してるって言ってくれたじゃないか。 ねぇ、僕はもう要らないの…? 独りで過ごす『発情期』は辛いよ…。

【完結済】あの日、王子の隣を去った俺は、いまもあなたを想っている

キノア9g
BL
かつて、誰よりも大切だった人と別れた――それが、すべての始まりだった。 今はただ、冒険者として任務をこなす日々。けれどある日、思いがけず「彼」と再び顔を合わせることになる。 魔法と剣が支配するリオセルト大陸。 平和を取り戻しつつあるこの世界で、心に火種を抱えたふたりが、交差する。 過去を捨てたはずの男と、捨てきれなかった男。 すれ違った時間の中に、まだ消えていない想いがある。 ――これは、「終わったはずの恋」に、もう一度立ち向かう物語。 切なくも温かい、“再会”から始まるファンタジーBL。 全8話 お題『復縁/元恋人と3年後に再会/主人公は冒険者/身を引いた形』設定担当AI /c

奇跡に祝福を

善奈美
BL
 家族に爪弾きにされていた僕。高等部三学年に進級してすぐ、四神の一つ、西條家の後継者である彼が記憶喪失になった。運命であると僕は知っていたけど、ずっと避けていた。でも、記憶がなくなったことで僕は彼と過ごすことになった。でも、記憶が戻ったら終わり、そんな関係だった。 ※不定期更新になります。

番解除した僕等の末路【完結済・短編】

藍生らぱん
BL
都市伝説だと思っていた「運命の番」に出逢った。 番になって数日後、「番解除」された事を悟った。 「番解除」されたΩは、二度と他のαと番になることができない。 けれど余命宣告を受けていた僕にとっては都合が良かった。

運命じゃない人

万里
BL
旭は、7年間連れ添った相手から突然別れを告げられる。「運命の番に出会ったんだ」と語る彼の言葉は、旭の心を深く傷つけた。積み重ねた日々も未来の約束も、その一言で崩れ去り、番を解消される。残された部屋には彼の痕跡はなく、孤独と喪失感だけが残った。 理解しようと努めるも、涙は止まらず、食事も眠りもままならない。やがて「番に捨てられたΩは死ぬ」という言葉が頭を支配し、旭は絶望の中で自らの手首を切る。意識が遠のき、次に目覚めたのは病院のベッドの上だった。

【完結済】極上アルファを嵌めた俺の話

降魔 鬼灯
BL
 ピアニスト志望の悠理は子供の頃、仲の良かったアルファの東郷司にコンクールで敗北した。  両親を早くに亡くしその借金の返済が迫っている悠理にとって未成年最後のこのコンクールの賞金を得る事がラストチャンスだった。  しかし、司に敗北した悠理ははオメガ専用の娼館にいくより他なくなってしまう。  コンサート入賞者を招いたパーティーで司に想い人がいることを知った悠理は地味な自分がオメガだとバレていない事を利用して司を嵌めて慰謝料を奪おうと計画するが……。  

36.8℃

月波結
BL
高校2年生、音寧は繊細なΩ。幼馴染の秀一郎は文武両道のα。 ふたりは「番候補」として婚約を控えながら、音寧のフェロモンの影響で距離を保たなければならない。 近づけば香りが溢れ、ふたりの感情が揺れる。音寧のフェロモンは、バニラビーンズの甘い香りに例えられ、『運命の番』と言われる秀一郎の身体はそれに強く反応してしまう。 制度、家族、将来——すべてがふたりを結びつけようとする一方で、薬で抑えた想いは、触れられない手の間をすり抜けていく。 転校生の肇くんとの友情、婚約者候補としての葛藤、そして「待ってる」の一言が、ふたりの未来を静かに照らす。 36.8℃の微熱が続く日々の中で、ふたりは“運命”を選び取ることができるのか。 香りと距離、運命、そして選択の物語。

人生はままならない

野埜乃のの
BL
「おまえとは番にならない」 結婚して迎えた初夜。彼はそう僕にそう告げた。 異世界オメガバース ツイノベです

処理中です...