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四の巻~平成美女は平安(ぽい?)世界で~

64 呑気な一行

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 義鷹と芙久子の一行は、足取りも軽く人里離れた山奥の祖父の隠れ家に向かっていた。

「もう、ここまで来れば大丈夫。姫、のんびり花でも愛でながらゆっくりいこう」
 義鷹は、不安そうに急ぎ足でついてきた芙久子にそう言った。
 その言葉に従者である是延や亜里沙もほっと緊張をときほぐす。
 いくつかのを通り抜け安全と思われるところまで来たのだった。

 空は高く青く広がり、小鳥がさえずり道々には見事な山桜が咲き誇っていた。

「いや~、しかし見事な快晴!まるで世界がお二人を祝福しているかのようですね~」と是延がいう。
「ほんに!風に舞う桜の花びらも祝福の花吹雪のようですわね~」と亜里沙が答える。
「おっ、祝福の花吹雪だなんて、上手いこと言うなあ~さすが亜里沙殿」と、是延が返す。

「本当にきれいね~」と芙久子がうっとりとため息をつく。
「いや、芙久姫のほうが何倍も綺麗だ」と、義鷹が憚る事無くのたまう。

 ボンッとまるで体中の血液が全部顔に集まってきたかのように芙久子が真っ赤になる。
「ああ、そんなに赤くなって、なんて可愛らしい」と、さらに義鷹が言葉を重ねる。

「「はいはい」」と是延と亜里沙が口から砂糖を吐き出しそうな顔で相槌をうつ。

 こんな感じで非常に明るく、かる~いノリの一行は何処からどう見ても、まさかの主上おかみに逆らっての駆け落ちだなどと言う思いつめた空気は微塵も無かった。
(まぁ、実際は逃げる事のほどもなかったという事ではあるのだが、その事はまだ一行には伝わってはいない。今頃いそいそと是安が園近からの文を携え土産も携え旅支度中である)

 元々、変わり者で有名だった義鷹の祖父の隠れ家は、右大臣家でもごく一部の者しか知らされていないし、その道のりも、それほど険しくもないものの滝の裏側の洞窟を通ったり、蔦草の生い茂る壁のからくりなどを経て行かなければたどり着かない。
 よほどの事がない限り右大臣家の者以外がたどり着くことなどあり得ず、追手の心配すら殆どしていないお気楽な状態だ。
 そして、日も落ちる頃、一行は、大きな門の前にたどり着いた。

「え?ええっ?何このおっきな門。お寺の山門みたい?」
 芙久子は驚いた。
「は~、さすがは右大臣家の先代様ですね~」と亜里沙も感心したように頷いた。
 そして門をくぐると、そこには美しい庭園と建屋が見えた。

「え?これのどこが隠れ家?」漫画だったら芙久子の目は点々になっているところだ。

「お気に召しませんか?」

「いえ、そう言う事ではなくて、あの…隠れ家って言ってたし、もっと寂れた感じの小屋みたいなのを想像してたというか…」

「え、小屋?」義鷹はちょっと驚いたように聞き返したのだった。
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