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第二章 世界を書き換える力
第51話 ルミナの真実――それは気高き理想と蹂躙
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――アマネ
アマネは気づいてしまった。気づいたからこそ、驚きよりも先に、底知れぬ恐怖がその心を満たしていく。
(ルミナの秘密は、これだったんだ……)
脳の奥が冷たくなる。理解した瞬間、世界の色が一段階暗く沈んだ気がした。
アマネの脳裏に、かつて交わしたアルトとの会話が蘇る。
『そもそもとして、どうして他種族との共存なんて成り立つの? 魔族と人間、ドワーフとエルフ、獣人族内の種族争い。相容れない対立が世界中にあるのに、どうしてこの国だけ?』
『私も正確な答えは返せないな。祖父である初代王リヴュレットが、今のルミナを生み出した。リヴュレットは己の理念と理想を見事、体現したということなんだが……そこへ行きつく過程の資料が、三百年前の帝国との戦火で失われていて、わからない部分が多い』
(――『資料』なんて初めからなかったんだ! だって、だって、ルミナは最初から――『そうだ』ったんだから!!)
彼女は無意識に親指の爪を強く噛んだ。
(それを行ったのは、初代国王リヴュレット。彼は短命だと聞いたけど、これで辻褄が合ってしまう! 彼は自分の全寿命と引き換えに、ルミナという世界を生み出したんだ!! 差別も諍いなく、誰もが共に歩める……狂気じみた理想郷を!!)
噛んだ爪に血が滲む。だが、その痛みが思考を鋭く研ぎ澄ませ、さらに深淵へと沈んでいく。
(ルミナの兵士の異常なまでの精強さ。あれはルミナを守るために『設定』された存在なんだ。彼らはルミナを愛し続ける限り、『運命』によって力を与え続けられる、因果の歯車……)
アマネはゆっくりと左右に首を振り、イロハとメールを睨みつけるように見つめた。
(二人の実力を目の当たりにして、びっくりした。でも、二人ともどんなに凄くても、その力は『私たちの世界の中にある力』。だけど、『運命』は違う!! あの力は――)
彼女は数歩前へ出ると、口元を自らの手で覆い、誰の耳にも届かぬ震える声で囁いた。
「外の世界の力……宇宙や次元の外側に位置する力。私たちも神様も、次元は違えど、『中にいる存在』。本来ならば、私たちでは触れることすらできない力――それが『運命』という力なのね。そんなもの、この世界に存在していいわけがない……」
怯えの混じる瞳でアルトを見つめる。
「人間だけじゃない。魔族だけじゃない。アルトは世界の敵よ。いえ、あの剣は世界の敵となる存在…………破壊しないと。どんな手を使ってでも破壊しないといけない。そして、それを求めたのは――」
アマネの視線が、激情を宿してイロハを射抜いた。
(イロハ、あなたね! 私はあの時、しっかり唇を見ていたわよ!!)
――あなた方を×××させて××います。××××ない、私のために――
「あなた方を利用させてもらいます。抗えない、私のために――」
そうアマネが発した瞬間、イロハがちらりとアマネに視線を送った。だが、すぐに何事もなかったかのように視線を外す……イロハの瞳は赤いのに、そこには熱がなかった。まるで、心だけが別の場所に置き去りにされているように。
アマネは彼女の存在に同情を交えつつも、苛立ちもまた同時に湧いてくる。
(『王命』、あれはアルトに逆らえないのでなく、剣に逆らえないワードなのね。剣とイロハは従属・隷属関係。だけど、剣に抗いたい。でも、自分ではそれができない。だから、私たちを巻き込んだ。私たちに脅威を伝え、自ずと破壊へ向かわせるために)
アマネは皮膚を突き破らんばかりの勢いで、手のひらに爪を立て握り締める。
(なんてことに巻き込んでくれたの!? 相手は神様も恐れる力なのよ!)
さらに、奥歯を噛み締めて、逃れられない己の心と向き合う。
(……だけど、脅威を知った今、それを無視できない!!)
彼女は再びアルトへ顔を向ける。
(アルトは自身の力を把握してない。それは剣がそうさせているのかも。もし、把握していれば、あいつはカイリ国譲渡の申し入れを快く受け入れた。だって、あの剣の効果がある限り、カイリは反発を忘れ、共存を受け入れるから)
握り締めていた手を解き、手のひらに残る爪の痕を、歪んだ表情でじっと見る。
(だけどね、これは心の蹂躙よ! 不可思議な力で、勝手に理想の思想に染めるなんて。初代国王リヴュレット! あんたは何をやらかしたのか理解してるの!! それが本当に『正しい』と思って行ったの!)
彼女は苦しげな声を漏らす。
「理想を高く掲げても、その階段は険しい。見上げても届かない。そう感じちゃう。でも、一歩一歩着実に歩み続けることが大事。それを力に頼って登りきるなんて、なんて馬鹿な真似を……」
アマネの膝が震えている……だが、真っ直ぐと先を見据え、自らの胸に、トン、と拳を置いた。
(剣の破壊。これが私の使命となる。パパに伝えても、きっと剣の力が邪魔をして理解してもらえない。だから、これが、勇者の娘――いえ、勇者としての使命だ)
彼女の後ろに立つギドラやメールも思いは違えど、それぞれの覚悟を胸に秘めていた。
(アルトを見極めねば。奴が力に呑まれるならば、どのような手を使っても命を奪う。それがたとえ、己の信念に反する卑怯な手であろうともな……)
(あの力は危険。アルト様を、あの力から解放しないと。命を奪う剣なんてなくても、私がいる。私が、守ってみせる!)
アマネは気づいてしまった。気づいたからこそ、驚きよりも先に、底知れぬ恐怖がその心を満たしていく。
(ルミナの秘密は、これだったんだ……)
脳の奥が冷たくなる。理解した瞬間、世界の色が一段階暗く沈んだ気がした。
アマネの脳裏に、かつて交わしたアルトとの会話が蘇る。
『そもそもとして、どうして他種族との共存なんて成り立つの? 魔族と人間、ドワーフとエルフ、獣人族内の種族争い。相容れない対立が世界中にあるのに、どうしてこの国だけ?』
『私も正確な答えは返せないな。祖父である初代王リヴュレットが、今のルミナを生み出した。リヴュレットは己の理念と理想を見事、体現したということなんだが……そこへ行きつく過程の資料が、三百年前の帝国との戦火で失われていて、わからない部分が多い』
(――『資料』なんて初めからなかったんだ! だって、だって、ルミナは最初から――『そうだ』ったんだから!!)
彼女は無意識に親指の爪を強く噛んだ。
(それを行ったのは、初代国王リヴュレット。彼は短命だと聞いたけど、これで辻褄が合ってしまう! 彼は自分の全寿命と引き換えに、ルミナという世界を生み出したんだ!! 差別も諍いなく、誰もが共に歩める……狂気じみた理想郷を!!)
噛んだ爪に血が滲む。だが、その痛みが思考を鋭く研ぎ澄ませ、さらに深淵へと沈んでいく。
(ルミナの兵士の異常なまでの精強さ。あれはルミナを守るために『設定』された存在なんだ。彼らはルミナを愛し続ける限り、『運命』によって力を与え続けられる、因果の歯車……)
アマネはゆっくりと左右に首を振り、イロハとメールを睨みつけるように見つめた。
(二人の実力を目の当たりにして、びっくりした。でも、二人ともどんなに凄くても、その力は『私たちの世界の中にある力』。だけど、『運命』は違う!! あの力は――)
彼女は数歩前へ出ると、口元を自らの手で覆い、誰の耳にも届かぬ震える声で囁いた。
「外の世界の力……宇宙や次元の外側に位置する力。私たちも神様も、次元は違えど、『中にいる存在』。本来ならば、私たちでは触れることすらできない力――それが『運命』という力なのね。そんなもの、この世界に存在していいわけがない……」
怯えの混じる瞳でアルトを見つめる。
「人間だけじゃない。魔族だけじゃない。アルトは世界の敵よ。いえ、あの剣は世界の敵となる存在…………破壊しないと。どんな手を使ってでも破壊しないといけない。そして、それを求めたのは――」
アマネの視線が、激情を宿してイロハを射抜いた。
(イロハ、あなたね! 私はあの時、しっかり唇を見ていたわよ!!)
――あなた方を×××させて××います。××××ない、私のために――
「あなた方を利用させてもらいます。抗えない、私のために――」
そうアマネが発した瞬間、イロハがちらりとアマネに視線を送った。だが、すぐに何事もなかったかのように視線を外す……イロハの瞳は赤いのに、そこには熱がなかった。まるで、心だけが別の場所に置き去りにされているように。
アマネは彼女の存在に同情を交えつつも、苛立ちもまた同時に湧いてくる。
(『王命』、あれはアルトに逆らえないのでなく、剣に逆らえないワードなのね。剣とイロハは従属・隷属関係。だけど、剣に抗いたい。でも、自分ではそれができない。だから、私たちを巻き込んだ。私たちに脅威を伝え、自ずと破壊へ向かわせるために)
アマネは皮膚を突き破らんばかりの勢いで、手のひらに爪を立て握り締める。
(なんてことに巻き込んでくれたの!? 相手は神様も恐れる力なのよ!)
さらに、奥歯を噛み締めて、逃れられない己の心と向き合う。
(……だけど、脅威を知った今、それを無視できない!!)
彼女は再びアルトへ顔を向ける。
(アルトは自身の力を把握してない。それは剣がそうさせているのかも。もし、把握していれば、あいつはカイリ国譲渡の申し入れを快く受け入れた。だって、あの剣の効果がある限り、カイリは反発を忘れ、共存を受け入れるから)
握り締めていた手を解き、手のひらに残る爪の痕を、歪んだ表情でじっと見る。
(だけどね、これは心の蹂躙よ! 不可思議な力で、勝手に理想の思想に染めるなんて。初代国王リヴュレット! あんたは何をやらかしたのか理解してるの!! それが本当に『正しい』と思って行ったの!)
彼女は苦しげな声を漏らす。
「理想を高く掲げても、その階段は険しい。見上げても届かない。そう感じちゃう。でも、一歩一歩着実に歩み続けることが大事。それを力に頼って登りきるなんて、なんて馬鹿な真似を……」
アマネの膝が震えている……だが、真っ直ぐと先を見据え、自らの胸に、トン、と拳を置いた。
(剣の破壊。これが私の使命となる。パパに伝えても、きっと剣の力が邪魔をして理解してもらえない。だから、これが、勇者の娘――いえ、勇者としての使命だ)
彼女の後ろに立つギドラやメールも思いは違えど、それぞれの覚悟を胸に秘めていた。
(アルトを見極めねば。奴が力に呑まれるならば、どのような手を使っても命を奪う。それがたとえ、己の信念に反する卑怯な手であろうともな……)
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