光の方を向いて

白石 幸知

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エピローグ いつか、きっと

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 あれから半年が経ち。また次の春が訪れた。
 五月に咲き乱れ、もう残すところ僅かとなった桜の花弁は、僕が一人座っているベンチの表面部分を桃色に彩っていく。ちょうどよい暖かさのなか、時折漏れそうになるあくびを噛み殺しつつ、僕は文庫本のページをめくっていく。公園の隅には、もう綿毛になったタンポポの綿毛が揺れている。

「……また休みの日なのに一人で本読んでる」
 ふと、視線を少しあげると、頬を膨らませた僕の友達の姿があった。彼女はそう言うと僕の隣に座って話を続けてくる。

「って言われても、別に遊びに誘われたわけじゃないから……僕はこれが普通、だし……」
「そんなに、本って面白い?」
「うん。面白いよ」
「それなら、私もちょっと読んでみようかなあ……」
「僕に合わせようとしているなら、無理にしなくていいよ。……別に茜が隣にいるぶんには、全然気にならないし」
「……そ、っか。そっか……そうなんだね、へへ、嬉しいこと言ってくれるね」

 僕が返す言葉に、茜は顔を破顔させ口元を緩める。
 柔らかい風が、僕と茜に凪いだ。すると、隅で揺れていたタンポポの綿毛が大空へと舞っていく。僕は、自然とその行き先を追い、やがて光の方を向く。

 忘れない。忘れられるはずなんてない。君と出会ったこと、過ごしたこと。
 約束の、こと。

 今すぐには無理かもしれないけど、いつか、さ。
 君に向かって、約束守ったよ、って報告できるように、頑張るから。だから、さ。

 君も、僕のこと、忘れないでいてくれると、嬉しいかな。
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