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第139話 祝福
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「フィリップ・ヴェルジーの逃亡により、勝者はテオドール・ダンデス!
ここに、テオドール・ダンデスの優勝を宣言する!」
一時騒然としていた会場を収めるかのように、近衛師団長が高らかに告げ知らせた。
そしてそれを合図に、控えていた楽団からラッパの音が鳴り響く。
舞台の中央にはテオドールとなぜか俺。
その端のあたりには、目を閉じた王女とそれを抱きかかえるオーバン。
そして赤ん坊を抱いて泣きじゃくる白髪の女性。
ーーさっぱり意味がわからない。
「おいっ、一体なにがどうなっているのかはわからんが、とりあえず優勝だ。
ところで隣にいるのは一体誰だ?」
駆け寄ってきた近衛師団長が、こそこそとテオドールに話しかける。
「私の婚約者です」
テオドールはこれみよがしに俺をぎゅっと引き寄せた。
「テオっ?」
「婚約者? 聖騎士は結婚するのか? それはおめでとう。
……うーん、それなら、まあいいか。じゃあ君、とりあえずこのままここにいて。
いまから王のお出ましだ」
「へ?」
ーー俺は今すぐここから退散したいのですけどっ!?
「叔父様っ、見てください!」
テオドールが興奮した面持ちで、観客席を見上げた。
「わあっ!!」
たくさんの花が、上から降ってきた。
「ジュール、テオドール、おめでとうっ!」
シャンタルお姉様が真っ赤な花を俺たちに向かって投げる。
「素晴らしい試合だったわ! 最後の方は全然見えなかったけど!」
お母様からは、薄桃色の花がいっぱい!
「ジュール、なぜお前がそこにいるのかはわからんが、とにかくよかった!
今後はテオドールの結婚相手として恥ずかしくないふるまいをしろ!」
お小言とともに、水色の花を投げてくるお父様。
「……って、え? なんで、俺が、テオドールの結婚相手って……」
「叔父様、ご家族の皆様はもうみんな知っているんですよ。
俺が、この試合に優勝して、王にジュール叔父様との婚姻を認めてもらうつもりだということを……」
テオドールはそれぞれの花を一本ずつ手にすると、俺にそれを渡してくれた。
「え? 王に、婚姻を認めてもらうって、相手は……、俺だったのっ!?」
俺の言葉にテオドールは苦笑した。
「ああ、やっぱり、何もおわかりになっていなかったのですね。
ダンデス伯爵は、ジュール叔父様に聖騎士の伴侶としての心得を説いた、と俺に話してくれていましたが……」
「は? なにそれ!? そんなの、全然っ……、って、ああ!」
ーー聖騎士にふさわしい人間になれって、そういう意味だったんかい!!
お父様にしろ、俺にしろ、言葉が足りなさすぎて大事なことが何一つ相手に伝わっていない!!
「ごめん、テオ! 俺、いろいろと誤解してて……、もしかして、このことって、国王陛下やシャルロット殿下も……」
「ええ、もちろん、全員ご存知のことです。陛下との謁見のあとも、叔父様は何も俺に言ってくださらないので、俺は叔父様が俺との婚姻を嫌がっているのかと心配していたら、あろうことか叔父様はオーバンの口車に乗せられて、俺が王女と結婚するというありもしない妄言をすっかり信じ込みっ……!」
何を思い出したのか、テオドールはぎりぎりと歯ぎしりする。
ーーってことは、シャルロット殿下が剣術大会を楽しみにしていたというのも、俺とテオドールを応援してくれていただけのことであって……、それを俺はお門違いな嫉妬を王女に対して……。
「ああっ! 俺は恥ずかしい勘違いばかりっ! もうっ、穴があったら入りたいっ!」
頭を抱える俺に、テオドールは破顔した。
「ふふっ、また俺のマントの中に入りますか? ……さあ、国王陛下がいらっしゃいましたよ」
ーーそして、俺とテオドールは、晴れて国王陛下の許しを得て、義理の叔父と甥という関係でありながら、その婚姻を認められたのだった。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
闘技場には、高らかにラッパの音が鳴り響いた。
「さあ、魔力切れの殿下に変わって、私達がお祝い申し上げますわっ!」
最前列の令嬢3人が立ち上がり、その魔力を天に向かって放出した。
「わあっ……!!」
空から舞い降りてきたのは、色とりどりの花びらだった。
まるで雪みたいに、美しい花びらが闘技場の舞台に降り積もっていく。
「綺麗だね、テオドール」
俺がテオドールを見上げると、テオドールは神妙な面持ちでその場に片膝をついた。
「テオ……?」
「ジュール・ダンデス様。初めてお目にかかったその日から、ずっとあなたをお慕いしておりました。
どうか、この私……、テオドールと結婚してください」
差し伸べられた手を、俺はきつく握った。
「ありがとう。テオドール。こんな俺を好きになってくれて。
俺も、君のことが大好きで……、今は心から愛してる。
君とずっと一緒に人生を歩んでいきたい。
ーー結婚しよう」
ここに、テオドール・ダンデスの優勝を宣言する!」
一時騒然としていた会場を収めるかのように、近衛師団長が高らかに告げ知らせた。
そしてそれを合図に、控えていた楽団からラッパの音が鳴り響く。
舞台の中央にはテオドールとなぜか俺。
その端のあたりには、目を閉じた王女とそれを抱きかかえるオーバン。
そして赤ん坊を抱いて泣きじゃくる白髪の女性。
ーーさっぱり意味がわからない。
「おいっ、一体なにがどうなっているのかはわからんが、とりあえず優勝だ。
ところで隣にいるのは一体誰だ?」
駆け寄ってきた近衛師団長が、こそこそとテオドールに話しかける。
「私の婚約者です」
テオドールはこれみよがしに俺をぎゅっと引き寄せた。
「テオっ?」
「婚約者? 聖騎士は結婚するのか? それはおめでとう。
……うーん、それなら、まあいいか。じゃあ君、とりあえずこのままここにいて。
いまから王のお出ましだ」
「へ?」
ーー俺は今すぐここから退散したいのですけどっ!?
「叔父様っ、見てください!」
テオドールが興奮した面持ちで、観客席を見上げた。
「わあっ!!」
たくさんの花が、上から降ってきた。
「ジュール、テオドール、おめでとうっ!」
シャンタルお姉様が真っ赤な花を俺たちに向かって投げる。
「素晴らしい試合だったわ! 最後の方は全然見えなかったけど!」
お母様からは、薄桃色の花がいっぱい!
「ジュール、なぜお前がそこにいるのかはわからんが、とにかくよかった!
今後はテオドールの結婚相手として恥ずかしくないふるまいをしろ!」
お小言とともに、水色の花を投げてくるお父様。
「……って、え? なんで、俺が、テオドールの結婚相手って……」
「叔父様、ご家族の皆様はもうみんな知っているんですよ。
俺が、この試合に優勝して、王にジュール叔父様との婚姻を認めてもらうつもりだということを……」
テオドールはそれぞれの花を一本ずつ手にすると、俺にそれを渡してくれた。
「え? 王に、婚姻を認めてもらうって、相手は……、俺だったのっ!?」
俺の言葉にテオドールは苦笑した。
「ああ、やっぱり、何もおわかりになっていなかったのですね。
ダンデス伯爵は、ジュール叔父様に聖騎士の伴侶としての心得を説いた、と俺に話してくれていましたが……」
「は? なにそれ!? そんなの、全然っ……、って、ああ!」
ーー聖騎士にふさわしい人間になれって、そういう意味だったんかい!!
お父様にしろ、俺にしろ、言葉が足りなさすぎて大事なことが何一つ相手に伝わっていない!!
「ごめん、テオ! 俺、いろいろと誤解してて……、もしかして、このことって、国王陛下やシャルロット殿下も……」
「ええ、もちろん、全員ご存知のことです。陛下との謁見のあとも、叔父様は何も俺に言ってくださらないので、俺は叔父様が俺との婚姻を嫌がっているのかと心配していたら、あろうことか叔父様はオーバンの口車に乗せられて、俺が王女と結婚するというありもしない妄言をすっかり信じ込みっ……!」
何を思い出したのか、テオドールはぎりぎりと歯ぎしりする。
ーーってことは、シャルロット殿下が剣術大会を楽しみにしていたというのも、俺とテオドールを応援してくれていただけのことであって……、それを俺はお門違いな嫉妬を王女に対して……。
「ああっ! 俺は恥ずかしい勘違いばかりっ! もうっ、穴があったら入りたいっ!」
頭を抱える俺に、テオドールは破顔した。
「ふふっ、また俺のマントの中に入りますか? ……さあ、国王陛下がいらっしゃいましたよ」
ーーそして、俺とテオドールは、晴れて国王陛下の許しを得て、義理の叔父と甥という関係でありながら、その婚姻を認められたのだった。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
闘技場には、高らかにラッパの音が鳴り響いた。
「さあ、魔力切れの殿下に変わって、私達がお祝い申し上げますわっ!」
最前列の令嬢3人が立ち上がり、その魔力を天に向かって放出した。
「わあっ……!!」
空から舞い降りてきたのは、色とりどりの花びらだった。
まるで雪みたいに、美しい花びらが闘技場の舞台に降り積もっていく。
「綺麗だね、テオドール」
俺がテオドールを見上げると、テオドールは神妙な面持ちでその場に片膝をついた。
「テオ……?」
「ジュール・ダンデス様。初めてお目にかかったその日から、ずっとあなたをお慕いしておりました。
どうか、この私……、テオドールと結婚してください」
差し伸べられた手を、俺はきつく握った。
「ありがとう。テオドール。こんな俺を好きになってくれて。
俺も、君のことが大好きで……、今は心から愛してる。
君とずっと一緒に人生を歩んでいきたい。
ーー結婚しよう」
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