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42.やきもち
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「うわっ、な、なんだっ、これは酷い。僕の美しい髪が泥まみれじゃないか!!」
頭から泥をかぶったアレクシは、金色の髪の一房をつまみ上げて見つめ、顔をしかめた。華やかな装いの中、その泥汚れがいやに目立つ。
「私が寝ているあいだに、こっそりソルを連れ出して、二人で楽しくおしゃべりなんて……! この金ピカ頭っ、絶対に許さない!」
ヴェリオスは両手を高く掲げる。その掌の上に、瞬く間に魔力の渦が現れ、周囲の空気がビリビリと震え始めた。
「おい、やめるんだ! ヴェリオス、君は昨日、この宮を壊さないと約束したばかりだろう!」
応戦の構えを見せたアレクシも、右手に魔力を集め始める。互いの尋常でない魔力が、じりじりと対峙する。
「うるさいっ! それとこれとは別の話だ! ソルといったい何を話していたんだっ!?」
ヴェリオスの頭上で魔力の渦が大きくなっていく。その足元では、銀の尾が地面を何度も力強く打ちつけていた。
「ふっ……、一丁前にやきもちか。僕たちはね、君のようなお子様にはわからない、大人の話をしていたのさ」
わざとヴェリオスの癇に障るような言い方だ。自慢の金髪を汚されたことが、よほど腹に据えかねたのだろう。
「ヴェリオス――忠告しておこう。嫉妬深い男は、嫌われるぞ?」
「うるさい、うるさい、うるさーいっ!」
ヴェリオスの両の瞳が、金色に輝く。
――まずい、このままではまた、この宮が破壊されてしまう。
「やれるものならやってみればいいさ! 悔しかったら早く大人になることだ、ヴェリオス!」
アレクシは余裕の笑みを浮かべたまま、魔力の光をさらに強める。
「ああ、やってやるとも! 前からお前のことなんて、大っ嫌いだったんだからなっ!」
ヴェリオスが両手を振り下ろそうとした、その瞬間――。
「駄目ですっ、ヴェリオス殿下っ!」
俺は背後からヴェリオスに飛びつき、しっかりと抱きとめた。
「……っ、離せっ!」
「駄目です、殿下。すぐにカッとなってはいけません。今、アレクシ様と俺は、まさに殿下のことを話していたところなんですよ」
俺の言葉に、ヴェリオスの体から一気に力が抜けていくのが分かった。
「……私のことを?」
「そうです。アレクシ様は、見かけによらず恥ずかしがり屋なので、ついあんなふうに言葉がきつくなってしまうんです。でも本当は、心からヴェリオス殿下を案じておられます。俺も殿下のために、何ができるか一緒に考えていたところなのです」
俺はヴェリオスを一層強く抱きしめた。すると、彼の銀色の尾が、また俺の足首に巻きついてくる。
「ソルが……、私のために?」
ヴェリオスが振り返って、じっと俺を見上げる。
俺は微笑んで、うなずいた。
「ええ。俺にできることなら、なんでも殿下のためにして差し上げたいと思っていますよ」
尾の巻きつきは、さらに強まる。
「僕は恥ずかしがり屋なんかじゃないぞ! ……しかし、ソルの言っていることは、おおむね正しい」
アレクシが、肩についた泥を何度も払いながら言った。
「ヴェリオス、僕は君のことを心配しているからこそ、こうしていろいろと口うるさく言っているのだ」
俺はヴェリオスの泥だらけの小さな手を、そっと拭う。
「殿下、昨日も言いましたよね。年長者には敬意をもって接しないと」
ヴェリオスは、しばし口をへの字に曲げたまま沈黙していたが、やがて素直にうなずき、アレクシに向き直った。
「……泥団子をぶつけてしまって、ごめんなさい。アレクシ叔父様」
頭から泥をかぶったアレクシは、金色の髪の一房をつまみ上げて見つめ、顔をしかめた。華やかな装いの中、その泥汚れがいやに目立つ。
「私が寝ているあいだに、こっそりソルを連れ出して、二人で楽しくおしゃべりなんて……! この金ピカ頭っ、絶対に許さない!」
ヴェリオスは両手を高く掲げる。その掌の上に、瞬く間に魔力の渦が現れ、周囲の空気がビリビリと震え始めた。
「おい、やめるんだ! ヴェリオス、君は昨日、この宮を壊さないと約束したばかりだろう!」
応戦の構えを見せたアレクシも、右手に魔力を集め始める。互いの尋常でない魔力が、じりじりと対峙する。
「うるさいっ! それとこれとは別の話だ! ソルといったい何を話していたんだっ!?」
ヴェリオスの頭上で魔力の渦が大きくなっていく。その足元では、銀の尾が地面を何度も力強く打ちつけていた。
「ふっ……、一丁前にやきもちか。僕たちはね、君のようなお子様にはわからない、大人の話をしていたのさ」
わざとヴェリオスの癇に障るような言い方だ。自慢の金髪を汚されたことが、よほど腹に据えかねたのだろう。
「ヴェリオス――忠告しておこう。嫉妬深い男は、嫌われるぞ?」
「うるさい、うるさい、うるさーいっ!」
ヴェリオスの両の瞳が、金色に輝く。
――まずい、このままではまた、この宮が破壊されてしまう。
「やれるものならやってみればいいさ! 悔しかったら早く大人になることだ、ヴェリオス!」
アレクシは余裕の笑みを浮かべたまま、魔力の光をさらに強める。
「ああ、やってやるとも! 前からお前のことなんて、大っ嫌いだったんだからなっ!」
ヴェリオスが両手を振り下ろそうとした、その瞬間――。
「駄目ですっ、ヴェリオス殿下っ!」
俺は背後からヴェリオスに飛びつき、しっかりと抱きとめた。
「……っ、離せっ!」
「駄目です、殿下。すぐにカッとなってはいけません。今、アレクシ様と俺は、まさに殿下のことを話していたところなんですよ」
俺の言葉に、ヴェリオスの体から一気に力が抜けていくのが分かった。
「……私のことを?」
「そうです。アレクシ様は、見かけによらず恥ずかしがり屋なので、ついあんなふうに言葉がきつくなってしまうんです。でも本当は、心からヴェリオス殿下を案じておられます。俺も殿下のために、何ができるか一緒に考えていたところなのです」
俺はヴェリオスを一層強く抱きしめた。すると、彼の銀色の尾が、また俺の足首に巻きついてくる。
「ソルが……、私のために?」
ヴェリオスが振り返って、じっと俺を見上げる。
俺は微笑んで、うなずいた。
「ええ。俺にできることなら、なんでも殿下のためにして差し上げたいと思っていますよ」
尾の巻きつきは、さらに強まる。
「僕は恥ずかしがり屋なんかじゃないぞ! ……しかし、ソルの言っていることは、おおむね正しい」
アレクシが、肩についた泥を何度も払いながら言った。
「ヴェリオス、僕は君のことを心配しているからこそ、こうしていろいろと口うるさく言っているのだ」
俺はヴェリオスの泥だらけの小さな手を、そっと拭う。
「殿下、昨日も言いましたよね。年長者には敬意をもって接しないと」
ヴェリオスは、しばし口をへの字に曲げたまま沈黙していたが、やがて素直にうなずき、アレクシに向き直った。
「……泥団子をぶつけてしまって、ごめんなさい。アレクシ叔父様」
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