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41.陽光の宮
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「帰って……くれない?」
「そうなんだ。ここにいるオメガの彼女たち――まあ、何人かは『彼』でもあるけれど――彼女たちはもう、今のヴェリオスの本当の姿を知ってしまっている。だから王宮から出すには、記憶の消去魔法をかける必要があるのだけれどね」
アレクシはふうっとため息をついた。
「ただ、この魔法には本人の承諾が必要なんだ。個人の記憶を操作する以上、それは当然のことだろう? でも……」
視線を落としたアレクシは、静かに言葉を続けた。
「いまここにいるオメガたちは、それぞれ故郷でつらい目にあってきたらしい。意に沿わぬ結婚を強いられたり、オメガであることを隠すために閉じ込められていたり。――そういう人たちばかりなんだ。だから、帰りたくないと言う。むしろ、この『陽光の宮』での生活を望んでるんだよ。
あと、彼女たちは最低限の使用人しか置かずに済むように、この宮での仕事も分担して手伝ってくれているし、なによりヴェリオスのことも可愛がってくれていて、離れたくないとか、なんとか……」
アレクシは窓の外に目を向け、穏やかな陽の光が差し込む中庭を見つめた。
「結界内での生活に制限はあるけど、それでもここでは、誰にも責められない。見下されない。罵られたり、傷つけられることもない。むしろ、大切にされていると感じている。だからこそ、過去を忘れて、この場所で生きなおしたいと願ってるんだろうね」
淡く寂しげな笑みが、アレクシの口元に浮かぶ。
「ソル、君はもしかすると誤解しているかもしれないが、ここはオメガを閉じ込める場所ではない。帰りたい者には、きちんと送り届ける手配も用意してある。
実際、そう望むものは、すでに何人も故郷に帰っている。
……でも今ここにいる彼女たちは、『陽光の宮』で生きることを、自分で選んでるんだ」
俺は、その言葉に、思わず言葉をなくした。
「けれど、いつまでもこのままではいられない。
だからこそ、ヴェリオスを本来の姿に戻さなければならないんだ。
この宮を守るためにも――ここにいるオメガたちの未来を守るためにもね」
アレクシの真剣な表情―ー。
いつも飄々としていたこれまでとは打って変わって、どこか国を背負う者としての覚悟をにじませていた。
俺はそっとカップを置き、静かに口を開いた。
「アレクシ様……。一月の約束が過ぎたら、俺にもその記憶消去の魔法をかけるおつもりですか?」
アレクシはほんの一瞬だけ目を伏せ、それから俺をまっすぐに見て、小さく頷いた。
「そうだね。もちろん、そうなる。
一月が経って、ソルが本当に村に帰りたいと望むなら、そのときは記憶を消して、元の生活に戻ってもらう。
――でも、本当に、君はそうなるかな?」
「アレクシ様……俺は、一月が過ぎたら、必ず村に――」
言いかけた俺は、はっとして立ち上がった。
「駄目ですっ、ヴェリオス様!」
だが、もう遅かった。
いつの間にか、アレクシの背後から忍び寄っていたヴェリオスが、迷いもせずに手にした泥団子をアレクシの頭めがけて、投げつけていた。
「勝手に、私のソルと仲良くするな! この金ピカ頭がっ!」
アレクシの頭上で、泥団子が無残に炸裂した。
「そうなんだ。ここにいるオメガの彼女たち――まあ、何人かは『彼』でもあるけれど――彼女たちはもう、今のヴェリオスの本当の姿を知ってしまっている。だから王宮から出すには、記憶の消去魔法をかける必要があるのだけれどね」
アレクシはふうっとため息をついた。
「ただ、この魔法には本人の承諾が必要なんだ。個人の記憶を操作する以上、それは当然のことだろう? でも……」
視線を落としたアレクシは、静かに言葉を続けた。
「いまここにいるオメガたちは、それぞれ故郷でつらい目にあってきたらしい。意に沿わぬ結婚を強いられたり、オメガであることを隠すために閉じ込められていたり。――そういう人たちばかりなんだ。だから、帰りたくないと言う。むしろ、この『陽光の宮』での生活を望んでるんだよ。
あと、彼女たちは最低限の使用人しか置かずに済むように、この宮での仕事も分担して手伝ってくれているし、なによりヴェリオスのことも可愛がってくれていて、離れたくないとか、なんとか……」
アレクシは窓の外に目を向け、穏やかな陽の光が差し込む中庭を見つめた。
「結界内での生活に制限はあるけど、それでもここでは、誰にも責められない。見下されない。罵られたり、傷つけられることもない。むしろ、大切にされていると感じている。だからこそ、過去を忘れて、この場所で生きなおしたいと願ってるんだろうね」
淡く寂しげな笑みが、アレクシの口元に浮かぶ。
「ソル、君はもしかすると誤解しているかもしれないが、ここはオメガを閉じ込める場所ではない。帰りたい者には、きちんと送り届ける手配も用意してある。
実際、そう望むものは、すでに何人も故郷に帰っている。
……でも今ここにいる彼女たちは、『陽光の宮』で生きることを、自分で選んでるんだ」
俺は、その言葉に、思わず言葉をなくした。
「けれど、いつまでもこのままではいられない。
だからこそ、ヴェリオスを本来の姿に戻さなければならないんだ。
この宮を守るためにも――ここにいるオメガたちの未来を守るためにもね」
アレクシの真剣な表情―ー。
いつも飄々としていたこれまでとは打って変わって、どこか国を背負う者としての覚悟をにじませていた。
俺はそっとカップを置き、静かに口を開いた。
「アレクシ様……。一月の約束が過ぎたら、俺にもその記憶消去の魔法をかけるおつもりですか?」
アレクシはほんの一瞬だけ目を伏せ、それから俺をまっすぐに見て、小さく頷いた。
「そうだね。もちろん、そうなる。
一月が経って、ソルが本当に村に帰りたいと望むなら、そのときは記憶を消して、元の生活に戻ってもらう。
――でも、本当に、君はそうなるかな?」
「アレクシ様……俺は、一月が過ぎたら、必ず村に――」
言いかけた俺は、はっとして立ち上がった。
「駄目ですっ、ヴェリオス様!」
だが、もう遅かった。
いつの間にか、アレクシの背後から忍び寄っていたヴェリオスが、迷いもせずに手にした泥団子をアレクシの頭めがけて、投げつけていた。
「勝手に、私のソルと仲良くするな! この金ピカ頭がっ!」
アレクシの頭上で、泥団子が無残に炸裂した。
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