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第二章 シボラ商会
第三十八話 新産業
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今回は空を飛んで超特急でハンズィール子爵領まで行く。
隣領とはいえ、男爵領の南隣だから山脈に阻まれているのだ。地道に陸路で行くと時間がかかってしまう。
今後もお世話になるだろう司教に恩を売るため、可及的速やかに任務を終えなければならない。
よって、全力で空を飛んでいる。
「「「「うわぁぁぁーーー!」」」」
「落ちないよね……?」
「空飛んでるーー!」
「グァ♪」
「ふむ。空は久々だな」
「こちらの空も良いものです」
「「……」」
大人組とアルはビビっていて、女性陣は神経が図太いのか大はしゃぎだ。
羅漢コンビはともかく、となりに座っているカーティルと神父様は居心地が悪いのか無言で外を見ている。
馬車は進行方向に対して横向きの座席で、バラムとフルカスはそれぞれ先頭で向かい合って座っている。
そして神父様の座席はバラムの隣なのだが、これは何も知らない神父様を生贄にした我が商会員の策略だ。
カーティルも誰かを犠牲にしようと思ったが失敗し、フルカスの横に座った。
まぁわずかな抵抗でバラムの隣は回避していたが。
もちろん、バラムは全て知っていて座っている。
大人組のささやかな抵抗は、後の彼らの訓練に反映されることだろう。
「皆様、馬車の外を御覧ください。当機はまもなく南方の山脈上空に到達します。是非とも絶景をお楽しみ下さいませ」
観光できるように幌馬車の幌を畳み、骨組みだけを残したんだからね。
観光は帰りだけだけど、移動中も楽しんで欲しい。慈愛に満ちた商会長からのサプライズである。
「ほう。資源が豊富な山ではないか」
「これからが楽しみですね」
【順風耳】のおかげで話している内容が把握できるのだが、大人組は余裕がないのか無言だ。
メイベルとユミルは、小声で話すグリムの解説を聞いているらしい。
山についての感想を言っているのは羅漢コンビのみ。
感想が少しズレているけど、楽しんでくれてるなら良かった。
「皆様、当機はまもなくハンズィール子爵領に到着します! 作戦を開始するので気を引き締めてください!」
「作戦って!? あったっけ!?」
「ディーノくん! シスターを助ける! これが作戦だ!」
ディーノの質問を適当に答え、ハンズィール子爵領の領都付近に着陸する。
領都は山の裾野にある湖の南側にあり、湖を使った漁業と観光業が主要産業らしい。
「それは目的だろ!?」
ディーノが最年長だからか、全員の思いを背負ったような顔をしている。
「グァ!」
「さ、作戦ですよね……?」
「グァ♪」
「「「「おいっ!」」」」
優秀な秘書がディーノの言葉を封殺する。
「うむ、うむ!」
「カルム、どうやって助けるの?」
今度はメイベルからの質問だ。
「まずは複数の班に分かれる。次に、隠形で姿を消してこっそりと侵入する。見つかったときは変身で髪の色を変えて逃走し、そのまま陽動をしてもらう予定。身バレして追及された場合に備えて不正の証拠も得られればいいけど、金品には手を触れないように!」
神父様は隠形がないけど、俺の班だから大丈夫だろう。
「あとはシスターを助けて、隠した馬車で領から離脱する! 以上!」
「「「「「最初っから言えよ!」」」」」
「ありがとう」
「どういたしまして」
「イチャイチャすんな!」
「アル……ヤキモチ妬かないの」
「……ムカつく」
ちなみに、以前から俺とメイベルの仲の良さをからかってくる者はいた。
彼らに対しては、一貫して「妹みたいなものです」と答えていた。
しかしメイベルは不満だったようで、ある日ママンに呼び出されて説教されることに。
曰く、こんな可愛い子は産んでいない。
曰く、あなたに妹はいない。
曰く、あなたは不能なのか?
等々。
懇々とありがたい説教を聞くはめになった。
というか、子どもに不能とか……と思わなくもなかったが、ママンに「心の問題よ!」と言われて反論を断念。
それからは妹扱い禁止で、一人の女性として接するよう約束させられた。
まぁアルはからかうというよりは、徒党を組むことを阻止しようとする意味合いが強いけど。
アルは妹に激甘で、アルの妹はメイベルに懐いている。俺とメイベルが徒党を組めば、アルに勝ち目はないのだ。
「アル。帰りにお小遣いあげるから、ステラちゃんのお土産を買おう!」
「……うん。何がいいかな」
「この領は一応観光業が有名だから、何か特産でもあるでしょ」
話している間も移動している。
さすがに町の近くで降りるわけにはいかなかったから、少し離れた位置で降りたのだ。
馬車を【魔導眼】の収納へ入れ、徒歩で町に向かっている。
「ねぇ……馬車にあったけど、それはいったい何?」
アルは私兵団三人衆が背負っているものが気になっているようだ。
神父様も気になっているらしく、俺に視線を向けている。
「言ってもいいけど、私兵団が持ちたくないって言いそうだからなぁ。途中で寄る湖に着けば分かるよ?」
「……オレたち、何を持たされてるんだ……?」
「ディーノはよかったね! シスターに食事をさせるための調理器具があったからね!」
「心の底から料理人でよかったと思ってる!」
のらりくらりと誤魔化している間に湖に到着した。
「ようやく答えが分かるよ! さぁ中身を湖にぶちまけてくれ!」
「……いいのか?」
「子爵閣下の大好物らしいから大丈夫! 僕からの贈り物だよ! しかも新しい産業にもなるはず!」
私兵団三人衆は疑いの目を向けながら袋を開ける。
「「「うわっ!!!」」」
「ど、どうした……?」
「どうしたの?」
私兵団の結束力が高まってるね。
「か、蛙だ……」
「「……蛙を……湖に?」」
ディーノとアルがドン引きしているが、メイベルや召喚獣組は顔色一つ変えていない。
何故なら、彼ら彼女らは捕獲組だからだ。
メイベルも淡々とこなした作業なんだから私兵団もできるはず。
「さぁ! 早く!」
力持ちのラルフは蛙を多めに。
そこそこ筋肉があるジェイドにはオタマジャクシを多めに。
一番細身のゲイルには卵を多めに持たせていた。
彼らが持っていた蛙は、男爵本家の双子兄を丸呑みにした蛙の子どもだ。
ニコライ商会が隣領を通ったときに、蛙の肉と皮を大量購入してくれたらしい。珍味として有名らしく、定期的に食べられたらいいみたいな話をしたんだとか。
この話は「都会はすごいなぁ」と話していたニコライ商会の従業員の会話を、ディーノが食堂で聞いていたらしく、料理中にポロッと話した内容を参考にしている。
ディーノは気づいてないようだが、この作戦は彼が発端なのだ。
「うわぁーー! ゲコゲコがいっぱいいるねーー!」
「……今更どうした?」
「ディーノ、酷いよ! 子どもらしくはしゃいでるのにー!」
「こんな嫌がらせをする子どもは、絶対クソガキだ!」
「……私兵団のみんなっ! 今回の作戦はディーノくん発案と言っても過言ではない!」
「「「「……ついに、か……」」」」
「おいっ! 嘘をつくな!」
「ニコライ商会が食堂で話していたんでしょ?」
「――それで……蛙をっ!?」
「はい」
口は災いの元というが、ディーノは現在進行形で身をもって体験していることだろう。
固まっているディーノを放置して、シスターの救出作戦を進めていく。
「まずは班分けだね。特徴を表す班名も言うからね!」
何故か私兵団は両手を握り合わせて祈っている。
「モフモフ班は、ユミル・グリム・僕・メイベル・神父様の五人組。神父様のフォローは僕たちが担当するからね!」
「よろしく頼む」
「グァ♪」
ユミルが神父様の肩をポンと叩く。
「ユミルも任せてと言っています」
「ありがとう」
「グァ!」
モフモフ班のほんわかとした雰囲気とは違い、死刑宣告を受ける直前のような顔をしている私兵団と、隠し切れていない笑みで私兵団を見つめるバラム。
「残りは八人か……。二つに分けるか!」
私兵団の心情としては、召喚獣組と私兵団で分けて欲しいんだろうな。
「次はバラム班」
「うむ。部下は誰か楽しみだ」
全員の真剣な眼差しが突き刺さる。
「迷うなー! 訓練も兼ねているからなー!」
「じゃあ私兵団に譲るべきじゃないかな?」
さすがアル。俺も同じ事を思った。
私兵団をそのまま起用した方が訓練になるかなって。
でもねー……補給部隊長と補佐官が実戦訓練をするっていうことは少ないだろうから、今後のためにいろいろ経験して欲しいと思う。
だって、バラムが普通の行動をするはずがないからね。
「まぁジェイドは決定かな」
「なんで!?」
「私兵団の団長だから」
「くっ!」
「頼むぞ」
「は、はいっ!」
ジェイドの肩にバラムの手が置かれたことでジェイドは絶対に逃げられないと悟ったようで、気をつけの姿勢で待機している。
「あとはディーノとアルかな」
「「なんで!?」」
「戦闘能力と体力に不安があるから。でもバラムがいれば大抵のことは何とかなるかなって。君らの安全のためなんだよ!」
「いやいやいや! フルカスさんやカーティルさんも十分強うそうだよ!?」
「強いけど、やることが違うからさ」
「「……やること?」」
ディーノもアルも必死だな。
バラムが見ているのに全力で拒否ったら、あとで怖い目に遭うかもしれないのに……。
「モフモフ班はシスターの救出が最優先。フルカスたちは子爵の不正の証拠を盗ってくることが最優先。フルカスは探し物を見つけるのが得意らしいからさ」
「……俺たちは?」
「……陽動班」
「「やっぱり!」」
ジェイドとディーノの大人組は息ピッタリだ。
二人で頑張ってバラムを支えて欲しい。
「ついでにお土産も買って来なよ! 救出後は時間がないと思うしね! 食材も買っていいんだよ!」
「「……お金下さい」」
「はい! どうぞー!」
「「ありがとうございます」」
一応買い物という目的を果たせそうということで、ありがたそうにお金を受け取っていた。
「残りはフルカス組! 金品以外の不正の証拠を持ってきて。男爵家と教会、それとバカラ子爵領に関するものは全部ね!」
「御意」
「それじゃあ、各々作戦開始!」
「グァァァ♪」
隣領とはいえ、男爵領の南隣だから山脈に阻まれているのだ。地道に陸路で行くと時間がかかってしまう。
今後もお世話になるだろう司教に恩を売るため、可及的速やかに任務を終えなければならない。
よって、全力で空を飛んでいる。
「「「「うわぁぁぁーーー!」」」」
「落ちないよね……?」
「空飛んでるーー!」
「グァ♪」
「ふむ。空は久々だな」
「こちらの空も良いものです」
「「……」」
大人組とアルはビビっていて、女性陣は神経が図太いのか大はしゃぎだ。
羅漢コンビはともかく、となりに座っているカーティルと神父様は居心地が悪いのか無言で外を見ている。
馬車は進行方向に対して横向きの座席で、バラムとフルカスはそれぞれ先頭で向かい合って座っている。
そして神父様の座席はバラムの隣なのだが、これは何も知らない神父様を生贄にした我が商会員の策略だ。
カーティルも誰かを犠牲にしようと思ったが失敗し、フルカスの横に座った。
まぁわずかな抵抗でバラムの隣は回避していたが。
もちろん、バラムは全て知っていて座っている。
大人組のささやかな抵抗は、後の彼らの訓練に反映されることだろう。
「皆様、馬車の外を御覧ください。当機はまもなく南方の山脈上空に到達します。是非とも絶景をお楽しみ下さいませ」
観光できるように幌馬車の幌を畳み、骨組みだけを残したんだからね。
観光は帰りだけだけど、移動中も楽しんで欲しい。慈愛に満ちた商会長からのサプライズである。
「ほう。資源が豊富な山ではないか」
「これからが楽しみですね」
【順風耳】のおかげで話している内容が把握できるのだが、大人組は余裕がないのか無言だ。
メイベルとユミルは、小声で話すグリムの解説を聞いているらしい。
山についての感想を言っているのは羅漢コンビのみ。
感想が少しズレているけど、楽しんでくれてるなら良かった。
「皆様、当機はまもなくハンズィール子爵領に到着します! 作戦を開始するので気を引き締めてください!」
「作戦って!? あったっけ!?」
「ディーノくん! シスターを助ける! これが作戦だ!」
ディーノの質問を適当に答え、ハンズィール子爵領の領都付近に着陸する。
領都は山の裾野にある湖の南側にあり、湖を使った漁業と観光業が主要産業らしい。
「それは目的だろ!?」
ディーノが最年長だからか、全員の思いを背負ったような顔をしている。
「グァ!」
「さ、作戦ですよね……?」
「グァ♪」
「「「「おいっ!」」」」
優秀な秘書がディーノの言葉を封殺する。
「うむ、うむ!」
「カルム、どうやって助けるの?」
今度はメイベルからの質問だ。
「まずは複数の班に分かれる。次に、隠形で姿を消してこっそりと侵入する。見つかったときは変身で髪の色を変えて逃走し、そのまま陽動をしてもらう予定。身バレして追及された場合に備えて不正の証拠も得られればいいけど、金品には手を触れないように!」
神父様は隠形がないけど、俺の班だから大丈夫だろう。
「あとはシスターを助けて、隠した馬車で領から離脱する! 以上!」
「「「「「最初っから言えよ!」」」」」
「ありがとう」
「どういたしまして」
「イチャイチャすんな!」
「アル……ヤキモチ妬かないの」
「……ムカつく」
ちなみに、以前から俺とメイベルの仲の良さをからかってくる者はいた。
彼らに対しては、一貫して「妹みたいなものです」と答えていた。
しかしメイベルは不満だったようで、ある日ママンに呼び出されて説教されることに。
曰く、こんな可愛い子は産んでいない。
曰く、あなたに妹はいない。
曰く、あなたは不能なのか?
等々。
懇々とありがたい説教を聞くはめになった。
というか、子どもに不能とか……と思わなくもなかったが、ママンに「心の問題よ!」と言われて反論を断念。
それからは妹扱い禁止で、一人の女性として接するよう約束させられた。
まぁアルはからかうというよりは、徒党を組むことを阻止しようとする意味合いが強いけど。
アルは妹に激甘で、アルの妹はメイベルに懐いている。俺とメイベルが徒党を組めば、アルに勝ち目はないのだ。
「アル。帰りにお小遣いあげるから、ステラちゃんのお土産を買おう!」
「……うん。何がいいかな」
「この領は一応観光業が有名だから、何か特産でもあるでしょ」
話している間も移動している。
さすがに町の近くで降りるわけにはいかなかったから、少し離れた位置で降りたのだ。
馬車を【魔導眼】の収納へ入れ、徒歩で町に向かっている。
「ねぇ……馬車にあったけど、それはいったい何?」
アルは私兵団三人衆が背負っているものが気になっているようだ。
神父様も気になっているらしく、俺に視線を向けている。
「言ってもいいけど、私兵団が持ちたくないって言いそうだからなぁ。途中で寄る湖に着けば分かるよ?」
「……オレたち、何を持たされてるんだ……?」
「ディーノはよかったね! シスターに食事をさせるための調理器具があったからね!」
「心の底から料理人でよかったと思ってる!」
のらりくらりと誤魔化している間に湖に到着した。
「ようやく答えが分かるよ! さぁ中身を湖にぶちまけてくれ!」
「……いいのか?」
「子爵閣下の大好物らしいから大丈夫! 僕からの贈り物だよ! しかも新しい産業にもなるはず!」
私兵団三人衆は疑いの目を向けながら袋を開ける。
「「「うわっ!!!」」」
「ど、どうした……?」
「どうしたの?」
私兵団の結束力が高まってるね。
「か、蛙だ……」
「「……蛙を……湖に?」」
ディーノとアルがドン引きしているが、メイベルや召喚獣組は顔色一つ変えていない。
何故なら、彼ら彼女らは捕獲組だからだ。
メイベルも淡々とこなした作業なんだから私兵団もできるはず。
「さぁ! 早く!」
力持ちのラルフは蛙を多めに。
そこそこ筋肉があるジェイドにはオタマジャクシを多めに。
一番細身のゲイルには卵を多めに持たせていた。
彼らが持っていた蛙は、男爵本家の双子兄を丸呑みにした蛙の子どもだ。
ニコライ商会が隣領を通ったときに、蛙の肉と皮を大量購入してくれたらしい。珍味として有名らしく、定期的に食べられたらいいみたいな話をしたんだとか。
この話は「都会はすごいなぁ」と話していたニコライ商会の従業員の会話を、ディーノが食堂で聞いていたらしく、料理中にポロッと話した内容を参考にしている。
ディーノは気づいてないようだが、この作戦は彼が発端なのだ。
「うわぁーー! ゲコゲコがいっぱいいるねーー!」
「……今更どうした?」
「ディーノ、酷いよ! 子どもらしくはしゃいでるのにー!」
「こんな嫌がらせをする子どもは、絶対クソガキだ!」
「……私兵団のみんなっ! 今回の作戦はディーノくん発案と言っても過言ではない!」
「「「「……ついに、か……」」」」
「おいっ! 嘘をつくな!」
「ニコライ商会が食堂で話していたんでしょ?」
「――それで……蛙をっ!?」
「はい」
口は災いの元というが、ディーノは現在進行形で身をもって体験していることだろう。
固まっているディーノを放置して、シスターの救出作戦を進めていく。
「まずは班分けだね。特徴を表す班名も言うからね!」
何故か私兵団は両手を握り合わせて祈っている。
「モフモフ班は、ユミル・グリム・僕・メイベル・神父様の五人組。神父様のフォローは僕たちが担当するからね!」
「よろしく頼む」
「グァ♪」
ユミルが神父様の肩をポンと叩く。
「ユミルも任せてと言っています」
「ありがとう」
「グァ!」
モフモフ班のほんわかとした雰囲気とは違い、死刑宣告を受ける直前のような顔をしている私兵団と、隠し切れていない笑みで私兵団を見つめるバラム。
「残りは八人か……。二つに分けるか!」
私兵団の心情としては、召喚獣組と私兵団で分けて欲しいんだろうな。
「次はバラム班」
「うむ。部下は誰か楽しみだ」
全員の真剣な眼差しが突き刺さる。
「迷うなー! 訓練も兼ねているからなー!」
「じゃあ私兵団に譲るべきじゃないかな?」
さすがアル。俺も同じ事を思った。
私兵団をそのまま起用した方が訓練になるかなって。
でもねー……補給部隊長と補佐官が実戦訓練をするっていうことは少ないだろうから、今後のためにいろいろ経験して欲しいと思う。
だって、バラムが普通の行動をするはずがないからね。
「まぁジェイドは決定かな」
「なんで!?」
「私兵団の団長だから」
「くっ!」
「頼むぞ」
「は、はいっ!」
ジェイドの肩にバラムの手が置かれたことでジェイドは絶対に逃げられないと悟ったようで、気をつけの姿勢で待機している。
「あとはディーノとアルかな」
「「なんで!?」」
「戦闘能力と体力に不安があるから。でもバラムがいれば大抵のことは何とかなるかなって。君らの安全のためなんだよ!」
「いやいやいや! フルカスさんやカーティルさんも十分強うそうだよ!?」
「強いけど、やることが違うからさ」
「「……やること?」」
ディーノもアルも必死だな。
バラムが見ているのに全力で拒否ったら、あとで怖い目に遭うかもしれないのに……。
「モフモフ班はシスターの救出が最優先。フルカスたちは子爵の不正の証拠を盗ってくることが最優先。フルカスは探し物を見つけるのが得意らしいからさ」
「……俺たちは?」
「……陽動班」
「「やっぱり!」」
ジェイドとディーノの大人組は息ピッタリだ。
二人で頑張ってバラムを支えて欲しい。
「ついでにお土産も買って来なよ! 救出後は時間がないと思うしね! 食材も買っていいんだよ!」
「「……お金下さい」」
「はい! どうぞー!」
「「ありがとうございます」」
一応買い物という目的を果たせそうということで、ありがたそうにお金を受け取っていた。
「残りはフルカス組! 金品以外の不正の証拠を持ってきて。男爵家と教会、それとバカラ子爵領に関するものは全部ね!」
「御意」
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