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ニエ 16歳
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山の朝は空気が澄んで気持ちがようございます。
私は自然と鼻歌を歌っていました。
「八百万芥様、朝ですよ」
酒の壺を抱えたまま高いびきをかく八百万芥様を声で起こします。
「んー?」
あくびをして寝直そうとする八百万芥様から枕を奪います。
「駄目ですよ。朝なんですから、それと深酒はほどほどにしてくださいね」
「そう言うことは人間風情に言ってくれ」
一際大きなあくびをしてようやく起き上がってくれました。
その後は八百万芥様の髪を梳かします。長い銀色の毛は朝日に当たるととても綺麗です。
「八百万芥様は本当にお酒が好きですねぇ」
転がった酒壺を片付けながら私は笑う。
「もっと欲しいくらいだがな」
「ダメですよ。体に悪いんですから」
「だからそう言うことは人間風情に」
朝酒をしようと手を伸ばす八百万芥様からお酒を遠ざける。
「それに、これ以上酒壺が増えたら困ります。私がいないとあっという間に部屋が散らかってしまうんですから」
「そんなことは」
「ありますよ、いつだったか私が病で寝込んだとき」
他愛の無い会話も全てが愛おしい。
生け贄になった日から八百万芥様は村に厄をもたらしていない。いつかの日にその事を聞いたことがある、そうしたら八百万芥様は笑いながら「もたらした方がいいか?」と聞いてきた。
「そうしたらまた生け贄の子が来ますね」
私が笑顔で返すと八百万芥様は頭を抱えてしまった。
「勘弁してくれ」
残念、沢山の子供に囲まれれば八百万芥様ももっと楽しいと思ったのに。
季節は春、気候も丁度よく小屋の外に台を出して二人で碁を打ち始めました。
「なあ、ニエ」
「なんでしょう?」
勝っているのに八百万芥様は何故か悩んでおりました。
「その、人は恋しくないか?」
「八百万芥様がいます」
「アタシは神だ!」
良い手が浮かびそうで浮かばず気もそぞろになってしまいます。
「ニエももう16だ、その」
苦虫を噛み潰したような顔をなさいます。
「村に降りたくはないのか?」
熟考していたので八百万芥様の言葉がよく理解できません。私は首を傾げました。
「八百万芥様は私がいなくても寂しくないのですか?」
暇を出したいということなのだろうか。
でもそうなればきっと八百万芥様とは二度と会えない気がしていた。それに今さら村に戻っても誰も覚えていないだろう。
この季節を感じられる場所でお酒好きの神様との暮らしは私に取って全てになっていた。
「私は寂しいですよ」
嘘偽りの無い気持ち、いつも八百万芥様には向けてきた。
「アタシは」
もごもごと八百万芥様が顔を赤くして何かを呟く。よく聞き取ろうと顔を近づけるとそっぽを向かれてしまった。
「その程度の碁打ちじゃまだまだ嫁の貰い手はないな!」
確かに碁の腕前はいくらやっても上がる気がしなかった。でも今の私に取っては勝つことよりもこの時間が大切になっていた。
「そうしたら八百万芥様に貰って頂きます」
元より生け贄に捧げられた身だ。その事は少しも忘れたことはない。けれども八百万芥様はなぜか台から崩れ落ちてしまった。
私は自然と鼻歌を歌っていました。
「八百万芥様、朝ですよ」
酒の壺を抱えたまま高いびきをかく八百万芥様を声で起こします。
「んー?」
あくびをして寝直そうとする八百万芥様から枕を奪います。
「駄目ですよ。朝なんですから、それと深酒はほどほどにしてくださいね」
「そう言うことは人間風情に言ってくれ」
一際大きなあくびをしてようやく起き上がってくれました。
その後は八百万芥様の髪を梳かします。長い銀色の毛は朝日に当たるととても綺麗です。
「八百万芥様は本当にお酒が好きですねぇ」
転がった酒壺を片付けながら私は笑う。
「もっと欲しいくらいだがな」
「ダメですよ。体に悪いんですから」
「だからそう言うことは人間風情に」
朝酒をしようと手を伸ばす八百万芥様からお酒を遠ざける。
「それに、これ以上酒壺が増えたら困ります。私がいないとあっという間に部屋が散らかってしまうんですから」
「そんなことは」
「ありますよ、いつだったか私が病で寝込んだとき」
他愛の無い会話も全てが愛おしい。
生け贄になった日から八百万芥様は村に厄をもたらしていない。いつかの日にその事を聞いたことがある、そうしたら八百万芥様は笑いながら「もたらした方がいいか?」と聞いてきた。
「そうしたらまた生け贄の子が来ますね」
私が笑顔で返すと八百万芥様は頭を抱えてしまった。
「勘弁してくれ」
残念、沢山の子供に囲まれれば八百万芥様ももっと楽しいと思ったのに。
季節は春、気候も丁度よく小屋の外に台を出して二人で碁を打ち始めました。
「なあ、ニエ」
「なんでしょう?」
勝っているのに八百万芥様は何故か悩んでおりました。
「その、人は恋しくないか?」
「八百万芥様がいます」
「アタシは神だ!」
良い手が浮かびそうで浮かばず気もそぞろになってしまいます。
「ニエももう16だ、その」
苦虫を噛み潰したような顔をなさいます。
「村に降りたくはないのか?」
熟考していたので八百万芥様の言葉がよく理解できません。私は首を傾げました。
「八百万芥様は私がいなくても寂しくないのですか?」
暇を出したいということなのだろうか。
でもそうなればきっと八百万芥様とは二度と会えない気がしていた。それに今さら村に戻っても誰も覚えていないだろう。
この季節を感じられる場所でお酒好きの神様との暮らしは私に取って全てになっていた。
「私は寂しいですよ」
嘘偽りの無い気持ち、いつも八百万芥様には向けてきた。
「アタシは」
もごもごと八百万芥様が顔を赤くして何かを呟く。よく聞き取ろうと顔を近づけるとそっぽを向かれてしまった。
「その程度の碁打ちじゃまだまだ嫁の貰い手はないな!」
確かに碁の腕前はいくらやっても上がる気がしなかった。でも今の私に取っては勝つことよりもこの時間が大切になっていた。
「そうしたら八百万芥様に貰って頂きます」
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