巡る祝詞

瀬模 拓也

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ニエ ?歳

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ぽつぽつと水滴が屋根を打つ音が聞こえる。
季節は梅雨、だろうか

「雨、ですか?」

雨の音に消されてしまいそうな声しかでない。

「起きたか?」

外を見ていた八百万芥様がこちらを向いてくれました。

「ごめんなさいね、最近は寝てばかりで」

「気にするな」

いつだったかのように口を指で持ち上げて八百万芥様が笑います。

「あまり深酒はダメですよ。それからそろそろお花も植え替えないと、寒くないからと言って暖めないでお食事してはダメですよ」

思ったことがどんどん口から出てきます、そんな私をやっぱり八百万芥様は笑って見ています。

「それだけ口が達者ならまだ大丈夫そうだな」

そう、今はまだなのでしょう。だから話しておきたいことも言っておきたいこともまだまだあるのに。

「私は」

天井を仰いだ私を八百万芥様は顔を近づけて聞いてくれる。

「神様になりたいんですよ」

きょとんとした顔が目に映って思わず笑ってしまった。

「ふふ、とんでもないこと言い出す耄碌したかって思ったでしょう」

「因果な商売だぞ」

八百万芥様は苦笑いはしたけれど頷きはしなかった。


「そうすればずっと八百万芥様の元でお仕えできるでしょう」

夢見るように目を瞑ったのでどんな顔をしていたのかは分からないけれど次に目を開け時はまた外を向いていました。

「神、とはなんなんだろうな?」

私にか、それとも自分に言ったのか分からない声音で八百万芥様が呟いた。

「人と同じように機嫌が良いと他者に施しを与え機嫌が悪いと人と同じように他へ当たり散らす」

流石は神様難しいことをお考えになる。私ももっと学ばなければ。でも。

「でも、私は八百万芥様が怒ったり笑ったりしてくれて嬉しいですよ」

「怒ったことはないだろう?」

「ありますよ、何度も。お酒を隠した時だって魚を逃がした時だって」

「あれは」


静かだった小屋の中に笑い声が響いてまた静かになる。


「ありがとうございます」

ふいに私が言葉を紡ぐ。

「どうしたんだ急に?」

八百万芥様は不思議そうな顔をするけれど私には感謝の気持ちでいっぱいだった。

ありがとう、私を拾ってくれて
ありがとう、私に名前をくれて
ありがとう、私に笑顔をくれて

感謝してもしきれない。ありがとうを言っても言い切れない、だから。


「これからは顔を見るたびにありがとうを言いますね」
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