秋のソナタ

夢野とわ

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 夕食はまたカレーだった。
ここのところ、と言うよりも、僕の家はカレーが多い。
ポークカレーをすくって食べる。
母の作ったカレーはやはりおいしい。
「朝のチラシくばりどう?」
「全然ダメ」
母が自分を、納得させるように、全然ダメを何度もくり返した。
「お母さん、近ごろ疲れやすいのよ。前のほうが動きやすかったわ」
体重がふえぎみなのかしらね、と母が言った。
「朝それだけくばれれば充分だと思うけどね」
僕の家はあまりテレビをつけない。
母は好きなタレントもいないようだし、世の中ぎらいなのかと思う。
えんせい的な僕の母。
父がフロから出てきた。
父もカレーを食べはじめる。

「さいきん、妙に嬉しそうだな、みきと」と父が僕に言った。
「別に」と僕が父に返すようにして、言う。
言い忘れたが、僕の名前は森みきと。
森が名字で、名前がみきとだ。
「カレーおかわりしてね」母が言った。
おかわりしたカレーをもそもそと食べながら、色々考える。
ねぇ。あたしのこと、ずっと見ている?
あの時、かれんは、たしかにフフンと笑っていた。
おとなしそうなかれんがあんな表情をするのが、意外だった。
高山かれん。
京都から転校してきたと言った。
かれんも今ごろカレーでも食べているのだろうか。
しかし、うどんも残していたし――
「ごちそうさま」
色々とむねが詰まって二杯目のカレーを残してしまった。
「お皿あらってね」
母の声をしり目に、二階にあがってゆく。

部屋のなかで、ぼうっと高山かれんのことを思う。
細い手。
細い首。
そして、すきとおるような、白い顔。
少し僕は自分のことも思う。
人並みのふつうの顔。特に芸能人ににているわけでもなく、特にハンサムでもない、僕の顔。
それにくらべて、高山かれんと言ったら――
そのまま、ウトリウトリとして眠りに落ち込んでしまいそうになる。
まずい、このままでは洋服のまま寝てしまいそうだ。

「ねぇ。あたしのこと。ずっと見ている?」

そのまま机の上で眠りに落ち込んでしまった。

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