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ーーー入院中ーーー
【01】
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『明楽ー朝だよ~ご飯食べよっか!お母さんもう家出るから食べてねぇ?!』
俺は最低な人間だった。
女手1つ、お世辞にもいい子だと人様に褒められるような性格をしていない俺を育てるのは大変だったと思う。ちょうど3年前の今日この日、俺は最後のお母さんの声を無視した。『明日は楽に生きよう!ね、?明楽』それが口癖だったお母さんはDVを受けながらも俺を産み、育ててくれたのに。俺は思春期を拗らせ反抗ばかりをしていた。
世界中の全人類に聞いてもきっとみんな俺の事を最低人間と言うだろう。下等でアルファの孕袋であるオメガの俺を文句も言わずに育ててくれたお母様に恩返しひとつさえ出来なかった。いや、やらなかった。そして俺はお母さんの俺のために残した【万が一のための、明楽のお金!】と書かれた通帳からお金を下ろし二十歳だというのに働きもせず時の流れに身をまかせる。
「聞いてる?ーーーこら。お口の中噛んじゃだめ、首も引っ掻いちゃダメだよ。」
だけど案外時の流れに乗れないこともある。
俺が過去にしたお母さんへの罪はどう足掻いても消えない。
お母さんが作ってくれたお弁当を捨てたこともあった、なんで俺をオメガに産んだんだと喚き散らかすこともあった。
それでも謎に俺に対して優しく微笑み『ごめんね、明楽。お母さんもオメガだから分かるけど、オメガの恋も楽しいよ』と繰り返す。
俺の頬を撫でる過去の中のお母さんの感情が妄想、幻覚、幻聴で流れるように伝わってくる。『なんでお前を産んだんだ』、『お前のせいで生きていけない』と言っているようで内職のしすぎからくる乾燥したお母さんの手は俺の頬を叩く。
気がつけばまた口の中を噛み締め、首を守りそして自分を傷つけた。
「首、消毒したいから手離そっか。フードも外そ?」
優しく俺に話しかける俺の主治医ーー夏目 直樹は1年前から通っている精神科に務める医者でめんどくさくて最低な俺と根気よく話をしたがる。俺が措置入院をさせられた時だって『お話しよう』と決して暇ではないのに無視する俺に一方的に話しかけてきた。
信用はしている。が首元を晒す訳にはいかない。アルファは怖い生き物だ、俺たちを孕ませた後でも運命というクソッタレた物を見つけその運命を大義名分に使い子供がいるオメガを独りにする。そんなアルファに俺の首元は絶対に晒したくない。首輪を付けているがそれでも無理だ。
『明楽?アルファに項は絶対見せたらダメだからね』
そうだよね、お母さん。お母さんの言うことを聞いていればいいよね。そうだよね。
「明楽くーん、無視しないで~。俺、悲しくなっちゃうから。」
前通ってた精神科の医者とそりが合わず無理やり俺の処置をし始めたアイツに嫌気がさし転々と病院を変えてきたがここは正解だ。夏目は無理に俺のフードを外そうとしない。
「俺は別の方向向いとくから、消毒してこれ塗ってね。」
そう言って夏目は後ろを向いたが俺はフードを被ったまま適当に首の傷を消毒し軟膏を塗った。
その後も夏目は一言も話さない俺を無視し、一方的に話し始める。だけど俺はそれが心地いい。夏目は人を見ることに優秀で些細な行動からもその人の感情を予測して話す。ほら、今も。俺が噛みすぎて滲んだ唇を緩めたのも全部見られている。
ここは国が設置した数少ない重度に精神がイカれてしまった人達の受け皿だ。俺だって今は入院中だ。俺は入院に同意した覚えはない。妄想幻覚が激しくなり空を飛んでいる気分で飛び降りたら下には消防士の救助用マットが敷き詰められていたのがつい数週間前の話。そして俺は強制的にここにぶち込まれた。
同意書を見る前にお母さんの実家に送られたらしいがそこに書かれていたのは知らない人の名前だったらしい。もしかしたらお母さんは3年前恋人同士だったあの人と籍を入れていたのだろうか。あの時俺は『ババアが恋してんじゃねぇ゛よ ! !年増の癖に』と言い放った
そしてもう1つのもしかしたらに祖父母はその義父と連絡が取れているかもしれないがある。
「それでねー明楽くん。ここ数日体重の増減が激しいよね。ゼリーとかなら食べれる?」
「・・・ーーむり、食べたくない」
そう言うと夏目はベッドに体を預けオーバーテーブルに資料を散りばめた。それは色とりどりのフルーツゼリーで真夏の南国をテーマとした期間限定のスイーツのチラシだ。
「食べたいのある?」
どれも美味しそうだがどんな味だっけと思い返す。シュワシュワのソーダの味がしたっけ、それとも苦い味だっけ。俺は記憶の中にあるその味を探していた。
「これ、明楽くんみたいだね。真っ白な肌に時々ほんのり赤色、美味しそうな明楽くんにそっくりないちごアイスだよ。」
真っ白か、、…確かに3年間ほとんど外には出てないもんな。前はあんなに黒かった髪の毛も真っ白になり毛先はパサパサだ。前はなんだかんだ言いながらお母さんが買ってくる少し高めのシャンプーを好き好んで使っていた。俺は夏目に買い与えられたシロクマのフードを深く被りチラシを見る。
普通、医者が一人の患者に物を贈るのはよろしくないが何故かこの病棟の触れてはいけない。触れてこない話、俺以外の俺に関する秘密らしい。院長が前注意をしてきたが夏目と少しして部屋から出てくると納得した顔をして了承がでた。この病院ではいつ自殺をしようとするか分からない問題児が寄せ集められ医者と寝る時以外同じ部屋でマンツーマンで日々を過ごす。
「これ、、食べてみたい」
俺はさっきのいちごアイスを指さした。夏目は「分かった。明日持ってくるね。でもいきなり冷たいものは胃が痛くなっちゃうから食べる時は少しずつだよ?」と言う。そんなの分かりきってるのに。
「おまえ、なんでそんなに俺に構うんだ?」
「そりゃー明楽くんが大切で大切でたまらないからだよ。大好きだから、お願いだから心配させないで」
後半寂しそうに笑う夏目の表情を見てないふりして俺は夏目の他愛ない話(一方的)を聞いた。
お母さんごめんなさい、今俺、お母さんを置いて幸せを感じちゃった。ごめんね
そう思い俺は今日も自分の肉が盛り上がった傷だらけの首を引っ掻く。
俺は最低な人間だった。
女手1つ、お世辞にもいい子だと人様に褒められるような性格をしていない俺を育てるのは大変だったと思う。ちょうど3年前の今日この日、俺は最後のお母さんの声を無視した。『明日は楽に生きよう!ね、?明楽』それが口癖だったお母さんはDVを受けながらも俺を産み、育ててくれたのに。俺は思春期を拗らせ反抗ばかりをしていた。
世界中の全人類に聞いてもきっとみんな俺の事を最低人間と言うだろう。下等でアルファの孕袋であるオメガの俺を文句も言わずに育ててくれたお母様に恩返しひとつさえ出来なかった。いや、やらなかった。そして俺はお母さんの俺のために残した【万が一のための、明楽のお金!】と書かれた通帳からお金を下ろし二十歳だというのに働きもせず時の流れに身をまかせる。
「聞いてる?ーーーこら。お口の中噛んじゃだめ、首も引っ掻いちゃダメだよ。」
だけど案外時の流れに乗れないこともある。
俺が過去にしたお母さんへの罪はどう足掻いても消えない。
お母さんが作ってくれたお弁当を捨てたこともあった、なんで俺をオメガに産んだんだと喚き散らかすこともあった。
それでも謎に俺に対して優しく微笑み『ごめんね、明楽。お母さんもオメガだから分かるけど、オメガの恋も楽しいよ』と繰り返す。
俺の頬を撫でる過去の中のお母さんの感情が妄想、幻覚、幻聴で流れるように伝わってくる。『なんでお前を産んだんだ』、『お前のせいで生きていけない』と言っているようで内職のしすぎからくる乾燥したお母さんの手は俺の頬を叩く。
気がつけばまた口の中を噛み締め、首を守りそして自分を傷つけた。
「首、消毒したいから手離そっか。フードも外そ?」
優しく俺に話しかける俺の主治医ーー夏目 直樹は1年前から通っている精神科に務める医者でめんどくさくて最低な俺と根気よく話をしたがる。俺が措置入院をさせられた時だって『お話しよう』と決して暇ではないのに無視する俺に一方的に話しかけてきた。
信用はしている。が首元を晒す訳にはいかない。アルファは怖い生き物だ、俺たちを孕ませた後でも運命というクソッタレた物を見つけその運命を大義名分に使い子供がいるオメガを独りにする。そんなアルファに俺の首元は絶対に晒したくない。首輪を付けているがそれでも無理だ。
『明楽?アルファに項は絶対見せたらダメだからね』
そうだよね、お母さん。お母さんの言うことを聞いていればいいよね。そうだよね。
「明楽くーん、無視しないで~。俺、悲しくなっちゃうから。」
前通ってた精神科の医者とそりが合わず無理やり俺の処置をし始めたアイツに嫌気がさし転々と病院を変えてきたがここは正解だ。夏目は無理に俺のフードを外そうとしない。
「俺は別の方向向いとくから、消毒してこれ塗ってね。」
そう言って夏目は後ろを向いたが俺はフードを被ったまま適当に首の傷を消毒し軟膏を塗った。
その後も夏目は一言も話さない俺を無視し、一方的に話し始める。だけど俺はそれが心地いい。夏目は人を見ることに優秀で些細な行動からもその人の感情を予測して話す。ほら、今も。俺が噛みすぎて滲んだ唇を緩めたのも全部見られている。
ここは国が設置した数少ない重度に精神がイカれてしまった人達の受け皿だ。俺だって今は入院中だ。俺は入院に同意した覚えはない。妄想幻覚が激しくなり空を飛んでいる気分で飛び降りたら下には消防士の救助用マットが敷き詰められていたのがつい数週間前の話。そして俺は強制的にここにぶち込まれた。
同意書を見る前にお母さんの実家に送られたらしいがそこに書かれていたのは知らない人の名前だったらしい。もしかしたらお母さんは3年前恋人同士だったあの人と籍を入れていたのだろうか。あの時俺は『ババアが恋してんじゃねぇ゛よ ! !年増の癖に』と言い放った
そしてもう1つのもしかしたらに祖父母はその義父と連絡が取れているかもしれないがある。
「それでねー明楽くん。ここ数日体重の増減が激しいよね。ゼリーとかなら食べれる?」
「・・・ーーむり、食べたくない」
そう言うと夏目はベッドに体を預けオーバーテーブルに資料を散りばめた。それは色とりどりのフルーツゼリーで真夏の南国をテーマとした期間限定のスイーツのチラシだ。
「食べたいのある?」
どれも美味しそうだがどんな味だっけと思い返す。シュワシュワのソーダの味がしたっけ、それとも苦い味だっけ。俺は記憶の中にあるその味を探していた。
「これ、明楽くんみたいだね。真っ白な肌に時々ほんのり赤色、美味しそうな明楽くんにそっくりないちごアイスだよ。」
真っ白か、、…確かに3年間ほとんど外には出てないもんな。前はあんなに黒かった髪の毛も真っ白になり毛先はパサパサだ。前はなんだかんだ言いながらお母さんが買ってくる少し高めのシャンプーを好き好んで使っていた。俺は夏目に買い与えられたシロクマのフードを深く被りチラシを見る。
普通、医者が一人の患者に物を贈るのはよろしくないが何故かこの病棟の触れてはいけない。触れてこない話、俺以外の俺に関する秘密らしい。院長が前注意をしてきたが夏目と少しして部屋から出てくると納得した顔をして了承がでた。この病院ではいつ自殺をしようとするか分からない問題児が寄せ集められ医者と寝る時以外同じ部屋でマンツーマンで日々を過ごす。
「これ、、食べてみたい」
俺はさっきのいちごアイスを指さした。夏目は「分かった。明日持ってくるね。でもいきなり冷たいものは胃が痛くなっちゃうから食べる時は少しずつだよ?」と言う。そんなの分かりきってるのに。
「おまえ、なんでそんなに俺に構うんだ?」
「そりゃー明楽くんが大切で大切でたまらないからだよ。大好きだから、お願いだから心配させないで」
後半寂しそうに笑う夏目の表情を見てないふりして俺は夏目の他愛ない話(一方的)を聞いた。
お母さんごめんなさい、今俺、お母さんを置いて幸せを感じちゃった。ごめんね
そう思い俺は今日も自分の肉が盛り上がった傷だらけの首を引っ掻く。
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