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ーーー夏目の家ーーー
【04】
しおりを挟む「夏目と俺で作ったチームは今も残っててその6代目が今預かってる問題児の雪也だ。」
佐野も若い頃暴れ回ってただけあって雪也が暴れ回るのにはなにも注意しなかったらしい。けど雪也さんはΩでそれを知った佐野は今までのように簡単に行かせる事ができないって判断、佐野は昔仲の良かったΩが敵の族に犯され侮辱され自殺したのを知ってて雪也さんにもそうなって欲しくないからこうやってどうにか打開策を探してると。
殴られたりするのは怖いけど佐野がいう雪也という人物に会ってみたくなった。同じΩなら怖くないし一般社会にとけ込めなくても一般社会で生きてるΩのしかも歳が近い子の話を聞いてみたかった。雪也さんは俺の3つしたで17歳、雪也さんの話をする時の佐野は頬が緩みきっていて俺まで微笑ましくなった。
「雪也も初代頭に会えるなら喜んでメンチ切りにくるぞ。」
「メンチ作るの上手なの?俺、メンチカツは好きだよ」
そう言うと佐野さんは「明楽はいい子だったもんな」と吹き出すように笑った。メンチを切るとは相手を睨みつけて無言の圧をかけることらしい。普通のΩはβと違ってαの威圧も怖がらないから雪也さんは怖いものしらずに生きてるみたい。
俺もメンチを切ろうと壁を睨みつけるが歌舞伎役者の寄り目みたいになってしまった。
夏目の面白い話をしているとあっという間に12時になり俺はよろよろと立ち上がってリビングに行く。
今日こそは夏目と決めたここまで食べるという目印まで食べたい。俺の小さなお皿には3つ目盛りがあって一番下のメモリが赤、真ん中のメモリが緑、そして一番上のメモリが青だ。最低青の線まで食べると夏目と決めたが俺は中々青の線まで食が進むことはない。大抵コンビニの3つ入りおにぎりの一個分ぐらいで吐きそうになる。
「佐野なにか飲む?コーヒーかお茶か水しかないけど」
「コーヒーでいい。」
佐野さんはオープンキッチンの目の前にあるダイニングテーブルの席についた。テーブルには4つ椅子がありこないだ夏目が「4つの方がバンスもいいし見た目もいいから」と言っていたことを思い出す。
俺はポットでお湯を沸かし木の木のコップにコーヒーを注いだ。ポットが出来上がる前に自分のお粥もレンジに入れ温める。どちらも同じぐらいのタイミングで出来上がりトレーに入れてテーブルまで運ぶ。
「いたたぎます。」
俺は手を合わせてお粥をほうばりはじめる。鮭が入ったお粥は夏目らしい優しい味がしてとても美味しい。夏目は俺に気を使って自分もお粥を食べ申し訳なさそうにおかずを食べることが多い、俺の調子がいい日はサンドイッチなんかを作ってくれて美味しく食べている。
佐野もコーヒーを飲みながらスマホでどこかにメールを打っていた。どうやら佐野の家はみんな暴走族上がりで離婚した母親が連れていった弟も流れで暴走族をしているらしい。それでその弟も雪也さんと同じ暴走族で雪也さんがまた遊びに行ったのでは無いかと確認をしているとか。
「あいつはまた・・・近くうろつき回ってるみたいだから夏目が帰ってきたら回収しに行く」
「なら連れてきてよ!!面白そう」
「夏目がいいって言うなら連れてくる」
佐野さんは度々スマホの新着メールを確認していた。俺も佐野から夏目のヤンチャ期について聞きながら食べていると楽しくて気がつけば緑の線まで食べていた。俺の頑張りを目に見えるようにしてくれる夏目の努力のお陰か緑の線まで食べれたのが嬉しくてたまらない。俺はスマホでお皿を撮って夏目に送った。するとすぐに『頑張ったね、お薬はちゃんと飲んだ?ご褒美にプチケーキかってくるからいい子で待ってて』と帰ってくる。
俺は流れるような慣れた手つきで薬をプチプチし、飲み込む。
「それで夏目はよく学校を抜け出してカツアゲでアゲた金を隣県で散財してた。キャバとか大好きだった」
そんな話をしていると玄関が開き、夏目が帰ってきた。でもなんかもう一人いる気がする。夏目のとは違う足音に騒ぎ声、また知り合いのお医者さんでも連れてきたのかとリビングの入口を除くとそこには血だらけの特服を着た少年が夏目に首元を引きずられながら入ってくる。
「あの、夏目?その人は?」
匂いでΩだと分かった俺は安心し声をかける。その少年は佐野の姿を見るやいなやギクッ!と顔を強ばらせて玄関に向かって走った。ガチャガチャとうちからもロックがかかった鍵に気が付かずもたもたしていると夏目に捕まりまた引きずられながらリビングにやってくる。
「夏目、おかえり」
「雪也もおかえり、久しぶりの散歩は楽しかったか?」
佐野と夏目が揃うとなんか威圧感が半端ない。なんというかカッコイイ大人の雰囲気だ。
これが雪也さんか、可愛い見た目とは裏腹に雪也さんは白い特服が真っ赤になっており顔も少し腫れていた。
「秀和、この優男はだれだ!!路地に居たらいきなり掴まれてこのザマだ、柊ともはぐれた」
「それはお前が会いたがっていた初代頭だ。また勝手に出かけただろ、もう族とは足を洗う約束だったろ」
バツの悪そうな顔をした雪也さんは俺を見つけると同じΩが珍しいのか話しかけてくる。不思議と俺も同じΩとは話ができるらしくすぐに打ち解けた。
そして今日は佐野と雪也くんの連絡先を交換した所で俺が疲れて眠った。久しぶりに同じΩと喋った気がする。
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