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ーーー夏目の家ーーー

【07】

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「明楽、?起き上がれる?もう全部測ったけど数値的には今日は調子良さそうだよ。」


昨日、夏目と色々あり一週間だけ俺の気持ちの整理がつくまで待ってくれる事になった。
俺は自分から手を広げ夏目に起こせと言う。夏目ははいはい、と言うと俺を抱きしめながらゆっくり体を起こす。何故か今日は唇も少し潤ってて精神も安定している。嵐の前の静けさとでも言うのだろうか、思い当たることは一つ、2週間後に発情期が来る予定だ。まだ自分の事をΩだとハッキリとした自覚もないし受け入れている部分と受け入れられない部分がある。だから自分の感情をグチャグチャにする発情期は嫌いだ。


「ん、調子いい。」


「なら唇にちゅーしていい?舌は入れないから」


俺は答えるのが恥ずかしくてでも怖くない。夏目なら嬉しいし、自分の夏目でいるっていう証拠ができるようで嬉しい。
目を瞑り夏目の方を向くと夏目は俺の頬に手を置き、触れるだけのキスをした。


「今日は普通のご飯食べてみよっか。塩分とか栄養は考えてあるからいっぱい食べていいよ。匂いもできるだけおさえたから、食べてみない?」


夏目に手を引かれてリビングの方に行くともちもちのパンとジャム、サラダ、コーンポタージュが2人分置いてあった。でも量が少し多すぎる。いつもは普通のお茶碗一杯分のお粥でお腹がいっぱいになるためコンビニのおにぎりぐらいの大きさのパンとサラダにコップ一杯分のコーンポタージュは多すぎる。


「食べれなかったら残してね。パンは今さっき焼きあがったやつだから少し熱いかも」


「ん、いただきます」


パンまで自作とか夏目は女子力とやらの塊だな。でもそれは夏目が言った通り匂いは抑えめでほんのりミルクの味がした。コーンポタージュも飲みやすい温度でサラダも新鮮だった。


「今日はいつもより食べてるね」


「美味しい、俺、このパン好き」


いつもより早い手でパクパクと食べていると夏目はコーンポタージュにパンを少し付けるともっと美味しくなると教えてくれた。いざ、コーンポタージュに付けてみるとコーンの優しい味わいとふわふわのミルクパンの相性が良く俺は全部完食する。


「おかわりは?」


「もう、お腹いっぱい。夏目、ありがと、」


夏目と2人だけの時くらいはフードをしないと決めた。お母さんが大っ嫌いな運命の番どうのこうのが頭をよぎったが番になりたいと言ってくれているのにトラウマを話もせずただ隠すだけのは失礼な気がして俺はフードとネックウォーマーを脱いでいる。

夏目といるとお母さんは優しい気がする。どうしようと悩んでいるとお母さんが背中を押してくれているような錯覚さえ芽生え始める。お母さんに面と向かってありがとうとは言えなかったものの行動には表していた。だから俺は幸せになってお母さんに産んでくれてありがとうと言わなきゃ行けないと思う。

それに夏目となら幸せになれそうだ。

確かに俺も運命という大義名分というだけでお父さんにDVをされた挙句別れる事になったお母さんが嫌う気持ちはわかる。さっきも言ったが夏目となら幸せになれると思う。
こんなにも大切にしてくれる夏目だから安心して身を任せたい。俺は知っているのだ、夏目の部屋にはダンボールが積んであることをそしてその中はガラス製の食器で家にある透明のプラスチック製の食器は夏目が俺のために買ったものだと。


「ねぇ、明楽。マンションの中に庭園とブランコがあるの。貸し切ったから行ってみない?明楽さえよければ少し歩いた所に公園もあるよ。」


不特定多数の目に晒されるのは怖いけど夏目が一緒なら頑張れる気がした。


「どっちも行きたい」


「分かった。じゃぁ、近くの公園で遊んでからマンションの庭園に行こっか。」


「うん!」


季節はそろそろ夏の終わりを迎えるらしくたまに北風が寒いくらいの日もあるんだとか。ここ2日、テレビニュースでも薄手のカーディガンを携帯しましょうと言っているくらい肌寒いらしい。

俺は夏目にもらったTシャツの上に薄い黒のパーカーを着る。夏目は長袖のワイシャツに灰色の薄いセーターと黒いズボンを着た。ここに来た最初、夏目は俺の部屋を用意してくれたが1人寝が苦手な俺はつい不安になって夏目の部屋に住み着くようになってしまった。自分の部屋のクローゼットの中は夏目が度々買い足してくれるおかげで服に困ったことは無い。ただ夏目のへんな趣味に困ることはある。たまに透け透けのパンツが入っているが俺は俺を夏目のパンツを入れる棚に放り込む。それを見た時の夏目の反応が今でも思い出すとたまに笑えるくらいだ。あの困惑したようなやっぱりかと言うような顔は予想していたけどまさか本当にされるとは思っていなかったらしくお腹を抱えて笑っていた。それにつられて俺もお腹が痛くなるまで笑い転げた。


「それじゃ、行こっか。お手手繋ご?」


俺は夏目と手を繋いで玄関を出た。ここに来てから約2ヶ月、入院してから約3ヶ月。初めての外出だ。外に出るとはやり北風が少し肌寒いくらいで肌にひんやりと馴染んだ。オートセキュリティのマンションは家に住んでる人以外が入るためには入るためのQRコードが必要らしい。

一歩外に出れば土曜の朝の通勤ラッシュで行き交う人々、みんなが各々の制服を着ていた。
俺はさりげなく歩道側を歩かされ、手をつなぎながらこれから行く公園のことを聞いた。ここのマンションの区画は比較的治安がいいがすぐ隣の区画はお世辞にも治安が宜しくないらしい。そして不運なことにこのマンションはそことの間ぐらいにあり抜け道や裏路地がかなりちかいのだとか。
歩きながら夏目に口酸っぱく勝手にうろちょろしない事、工場の周りには行かない事を約束させられた。

隣の区画の治安の悪さは見るからにで空き缶やタバコがむき出しで捨ててある。そして大通りの中には小さく入り組んだ小道が沢山あった。


「明楽、あそこは見ちゃダメだよ。」


「はぁい」


でも細い道から1人の人影が見えた。黒い特服を着、1人でこちらに向かってくる。夏目は慌てて俺とその人との間に入りその人の顔が見えるぐらいの距離になった。雪也くんのような栗色の髪の毛とお人形さんのように整った顔、でも雪也くんは白い特服だったはずだ。


「あれ、雪也じゃん。秀和から逃げてきたの?」











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