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---夏目と番になる---
【09】
しおりを挟む「それは・・・私にははっきりしないとは名言出来ません」
「そういう事だよ。万が一の為にも入院の書類は渡すから書いて貰えないかな?」
「家族にそれを伝えることは出来ません…」
震える手先に力を入れ、きよかちゃんは迷いなく言う。即答だ。
余程家族に知られて罵倒されたくないのだと。まぁ、それはそうか
「きよかちゃんはさ家族と縁を切る気は無い?」
きよかちゃんが助かる道に進むには家族と縁を切るしかない。
縁を切るのなら未成年で法律の元にΩだけが利用出来る、Ω保護制度を紹介できる。これは家族に受け入れて貰えない未成年のΩを保護する目的で制定されたもので、雪也はそれを使って秀和の所に転がり込んだ。
繋がりがある五親等(ほぼ他人)までの親戚に協力を仰いで養子にするなり成人まで保護するなりするパターンとそれが出来ない場合は施設で預かる。前者は断っても断らなくても自由できよかちゃんの家族にはきよかちゃんの意思で事後報告にするか事前報告にするか決めれるため逃げるが勝ち状態にできる。
施設も有名なホテルの跡地だったりして対応もとてもいい。毎月生活費が渡されバイトをしてもその額は変わらない、セキュリティも万全でまさに夢のような国だ。なぜここまで余裕があるのかというとΩにしか上位種のαを産むことが出来ないから、そして上位種のαが多ければ多いほどその国は潤う。
そもそもΩ自体の数も年々少なくなっている。そして必然的に近い将来上位種のαが少なくなってしまう。αはβとβの夫婦から生まれることもあるが上位種の劣化版。その上位種は相性のいいαとΩの元にしか生まれないため、貴重な存在だ。そして上位種αの子供ともなればほぼ居ない。
さて、きよかちゃんはどうしたい
「切りたいです…。でも産んでもらっておいてそれは」
「全然大丈夫だよ。これ、その方法のパンフレット二週間後にまたどうしたいか聞くね。」
「ありがとうございます。」
きよかちゃんは俺に深く頭を下げると帰った。
その後はホームページにいい感じのαがいると思って近寄ってくる雌豚共が多かった。
「夏目先生、お疲れ様です」
「看護師長、お先に失礼しますね」
ふくよかな体をした50代の看護師長に挨拶をして俺は佐野を拾いに上の階へ行った。挨拶をしてナースステーションから夏目の診察室に行くとそこにはげっそりとした夏目がいた。
「ぁぁ゛あ、疲れた。お前の所に紹介状を出したらお前の所の看護師がわざわざここに来た。余計なことをベラベラと喋って帰っていった。」
「あーそれはキツいね。問題児ちゃん達家で待ってるから早く帰ってあげよ。」
「それもそうだな。」
シャワールームで匂いを流してお互い別の香水をこれでもかと言うほどかけて俺の車に乗った。
家まで15分程度で今日は7時ちょっと過ぎに家につくと思う。いつもは6時半までに帰宅しているため、明楽は心配しているかもしれない。俺はメールボックスを確認するがメールはお昼で止まっていた。雪也と遊んでいるからか帰りが遅くなる連絡に既読さえ付いていない。
この時間帯から通りかかった繁華街は賑わいを見せ始め、風俗の客引きが歩き始めている。
そして夕飯時で食べ物屋があるところら辺はもっと混んでいた。
「明楽も雪也も外出してないから大丈夫だよ。」
明楽のスマホにダウンロードしたGPSは指定した場所から出ると通知がくるよう設定した。だから俺は毎日安心して仕事にいっている。秀和は雪也にダウンロードしたのを毎朝消されて毎日心配しているみたいだ。
マンションの敷地に入り車を止めると駐車場のエレベーター前のセンサーにカードをかざし中に入る。
「ただいまー」
家に入るといつも走って迎えに来る明楽の気配も雪也の気配もない。
「明楽?雪也?」
リビングにも2人の姿は無く、明楽の部屋からゲームのBGMだけが流れてくる。さてはゲームし疲れて寝たな。
「明楽の部屋にいるみたいだし。着替えてから行こう」
「そうだな、ハンガー寄越せ」
「はいよ」
俺は佐野にハンガーを渡すとスーツのジャケットをハンガーにかけた。今日は6時から院内で会議があるはずだったが都合の悪い医師が多く延期となってしまった。そして外部の人たちも来るためスーツに白衣という珍しい組み合わせでみんな過ごしていた。
「はーっ、スーツは疲れるね」
「肩が凝りそうだ」
俺は明楽の部屋のドアをノックし中に入った。電気も付けないでなにをしているのかとナイトテーブルの弱い光を付けると二人は抱き合って眠っていたのだった。
「はぁ…可愛い。」
俺はスマホのカメラを取り出し、何枚も写真を取る。二人で一つの枕を使い抱き合いながら眠る二人は体格差がほとんどないため兄弟のようで超絶可愛い。それに加えてあどけない寝顔が反則的に可愛い。
枕元には最近二人がハマってやり込んでいるゲームの画面が映し出されており、そこには【コンテニューをしますか? はい・いいえ】というエンドロール画面があった。俺は二人のスマホの電源を落とすとナイトテーブルに置いてあるケーキの皿を持ってリビングに戻った。
俺が出てきても中々出てこない二人に秀和は痺れを切らし、部屋に入る。そして萌え死にした。
反則的に可愛い二人だ。
皿を洗いあれから30分たった頃、時刻は8時を迎えようとしていた。そろそろ起こさないと夜眠れないだろうと俺は部屋の電気を付ける。
「おはよう、よく眠れた?」
すぐに起きてきたのは寝起きも悪くない雪也、そしてもぞもぞと毛布の中に入るのは明楽
「あーやっべ、寝すぎた」
俺は明楽の膝を立て横向きにし明楽の足をベッドから下ろしながら体を手前に引いて起こした。
雪也が寝ていたそこに俺は座るとまだ寝ぼけている明楽の脈拍、血圧を測りメモを取る。もうこれは職業病だ。
「おはよう、明楽。体調はどう?」
「悪くない。パンケーキありがと」
男を誘うような目をして俺の肩にもたれ掛かり俺を見つめる。その後はにかっと笑う。
今日も俺の明楽が可愛い。一生外に出したくないぐらいだ。
もう3日後に迫った旅行も心配すぎる、万が一のための対策はしているが心配は付き物。また変なナンパ師に絡まれでもしたら殺しそうだ。
なにも無いといいけど。
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