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---夏目と番になる---

【13】

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ホテルの周辺は観光地になっていた。火曜日なこともあって客は大半が外国人と仕事に向かう社会人だったが流石は観光地、人が多い。

それなりに有名な所らしく大きな道があって道の両端にお土産屋さんが並び、食べ物屋さんが並び神社やいろんなものがあった。


初めは4人で回っていた。けど昨晩、雪也くんが見事なまでのフラグを回収したらしい。雪也くんが乗っかったは言いものの結局ズッコンバッコンされて、朝から腰が痛いらしく別々に観光することになった。


「クレープ食べない?」


「食べない。怖い」 


「だからさっき言ったじゃん、手繋ごって。」


「ん」


俺は夏目の左手を掴んで歩き始める。やはりガヤガヤし始めると怖くなってくるし首に何かないのがたまに怖くなる。
誰か知らない人に顔を見られるのも少し怖いしこんな大勢の中夏目のせいで注目されるのだから視線が痛い。

どこに行っても夏目は目立つ、猫っ毛の金髪は珍しくないのになぜか目を引かれる。
こいつのせいでさっきから何度、絡まれてると思ってる。その度に何度となく女の子に間違われて俺まで絡まれる始末。


「えーお兄さん一緒に回りませんかー?」


谷間を強調する女の子の集団が寄ってきた。案の定夏目が絡まれる。俺はそれを尻目に同じような状況になることが多い佐野を見ると今日は雪也くんが男の人に絡まれていた。雪也くんに絡みつく害虫に容赦はないと範囲を絞ってフェロモンで圧力をかけていた。慌てて逃げていく男たちと『俺の強さをおもいしったぁ!』とでも言わんばかりの顔で笑う。佐野に絡みついた方がまだ生きて帰れると思ってしまった。

女の子達は高校生みたいで思い思いに俺を道の端に押しやると夏目の腕を取って体を擦り合わせる。

さっきまでそこに俺がいたのに。


「連れがいるから一緒に回れないし、君たち高校生でしょ?俺が犯罪者になっちゃうしごめんね」


「えー私たち言いませんからぁーそれにあれも上手ですよ?」


高校生のそういう発言にもイライラするしそれをハッキリ断らない夏目の職業病にもイライラする。
どうせ俺なんかよりも胸があって柔らかい女の子のほうがいいんだろ。


「夏目、俺なんかより女の子がいい?」


「そんなわけないじゃん。高校生から誰かに体を擦り寄せるモラルのない女の人より大切な番だから。明楽に比べたらじゃがいも以下だよ。今日も可愛いね」


高校生はこの夏目の純粋な一言にKOだ。顔を真っ赤にして喚きながら去っていった。俺はそれが面白くなり夏目と目を合わせて笑う。

そしてそういう雰囲気になり裏路地へ引っ張りこまれる。

すると夏目の腕が背中に回ってきて深くキスされた。
頭を固定され逃げられなくされ、夏目はわざとくちゅ、くちゅ、と音を立てて俺を辱める。


「な、っめ、くるひ、・・・」


腰も抜け駆けて夏目に支えられ、飲み込めなかったよだれが口の端から落ちていく。


「ごめんごめん。次は何か買いに行こっか。」


夏目は虚ろな俺を引っ張り明るいところに出た。

お昼時になったことでもっと人が増えまた夏目が絡まれるのかと嫌気がさしていると、背後に凄い圧を感じた。

振り向くとそこには沢山のたい焼きとクレープを丸呑みする雪也くんと機嫌が悪い佐野だ。流石にこのオーラじゃ誰も寄ってこないだろうよ。


「お昼は何食べたい?」


「カツ丼!カツカツ!」


「げ、雪也まだ食うの?」 


夏目は引き気味に雪也くんの胃に入った物が入っていた紙やプラスチックを指さす。左のゴミ袋に食ってはゴミを捨てを繰り返す雪也くんは今度はカツ丼がご所望。

少し歩いた先にカツ丼がある店が何件かある。夏目はスマホでカツ丼も食べれて俺が食べれそうなお粥があるお店を検索した。


「夏目、俺は食べないからいい」


「だーめ、一口でいいから食べて」


検索条件にヒットしたのは一番近くのお粥専門店だった。
実の所食べ歩きをしている人々とすれ違う度に臭ってくる食べ物の匂いに吐きそうになっていた。

店に入ると内装は平安ら辺がモチーフで初めて見る道具が沢山あった。個室は靴を脱いで入るパターンで俺と雪也くん、夏目と佐野に別れた。
世界観を統一するためかメニュー表も斬新な木の板で浮き彫り、お粥は上から吊り下げてあるこの鍋のようなものに入れ、火をつけ日の周りに石を置いて温めるらしい。

度々世界観を壊すようなカツ丼や、カレーなどそういうメニューに俺は思わず吹き出してしまう。


「明太粥とカツ丼大盛り!セットドリンクはお茶で!」


見事に世界観をぶち壊す様な注文と雪也くんのでかい声に店員が驚く。世界観を守るために従業員は小袖といわれる短い着物にしびらという着物を羽織って腰布で固定した服で髪の毛は鎖骨あたりでくくるという質素な服装だ。ここまで服装のルールが厳しいとやる気を無くすのではと思ったがよく見ると店員はみんな楽しそうに働いている。


「雪也くん腰大丈夫?」


「ひでぇ、歩く度に痺れる。秀和の上に乗ったまでは良かったんだよ。そこからは動けなくて」


雪也くんはカツ丼を口にかきこみながら言う。俺も温まってきたお粥をお茶碗に注ぎスプーンで口をつける。


「ってかアイツらのセックスは優しいように見えて激しい」


「先に意識なくなっちゃうの申し訳ないな…棗はそれでいいんだろうけど、俺は気持ちよすぎて怖い」


明太子のお粥は味が染みてて美味しいと感じた。夏目のご飯でもない、最初の一口を食べさせてもらった訳でもない。

けど俺の胃はお茶碗の半分の量でもう無理だと悲鳴をあげた。  


「食べてやろっか?」


「うん、お願い」


雪也くんは俺のにも手をつけ始める。そしてまた夏目の話をした。


「夏目のもう嫌だって所までいじめてくるから気持ちよくて、でも粗相をする度に淫乱って思われてないかなって心配になるんだよ。」
 

「あーめっちゃ分かる。もっと優しくしてもらいたいよなーラストら辺で呼吸が出来なくなるのも辛い」



結局俺たちはこういう運命なのだろうか。俺は雪也くんが食べ終わると夏目と佐野の個室に入った。ちょうど右隣のブースで見た感じ俺たちの左は故障中らしくて入るなと書いてある。


「早いね、もう食べなくていいの?はい、お薬」


俺は夏目に渡された薬を飲む。今でも夏目先生に診察してもらっているため前よりも飲まないといけない薬だけになり最近は体調がいい。










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