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---夏目と番になる---

【18】

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「おいひー夏目ってばハンバーグ上手」


「高校の時から作ってるからね。そりゃぁ上手くなるよ」


「そういえばさー夏目の特攻服って今もあるの?」


昔はヤンチャしてたって聞いたし、夏目のことなら大切に持ってそうだ。俺は椅子にすわり足をブラブラさせながら夏目のハンバーグを食べる。


「食べ終わったら持ってくるから大人しく食べてて」


そう言われ俺はまた1口ハンバーグを口に入れる。じゅわっと広がる肉汁と夏目お手製のミートケチャップが混ざり合い俺の舌の上でワルツを踊り出す。あーうめぇ。たまらんのだよ。がっはっはぁ!


「明楽、気持ち悪くない?」


「大丈夫!夏目ご飯おかわり!!」


夏目は小さいお皿にご飯をつぐと俺の前においた。一日2号あれば足りるくらいなのに今日は足りなさそうだ。美味しくて止まらない。

食べ終わるのに30分くらいかかり俺は食後のひと時を楽しんでいた。夏目は物置部屋の奥から古いダンボールを持ってきて中を広げていく。
そこには夏目の特攻服と呼ばれるヤンキーが着る服が二枚とシャツやらタスキ、ハチマキが沢山入っていた。昔のヤンキーは鉄砲を持っている人が多く防弾チョッキを中に着込むのが普通になっていたらしい。

俺は色あせた一枚の集合写真を手に取る。真ん中にドサッと座り込むのは若い頃の夏目だろうか、でも今と全然違う。顔は鋭くこちらを睨みつけ、口にはタバコまで咥えている。そしてその右に佐野が立っており、左には俺とそっくりな男の子が夏目のタバコを取ろうとしていた。その子は佐野から借りてきたのだろうブカブカの特攻服には『夏目と佐野はタバコをやめろ』とデカデカと手縫いの文字が塗ってあった。やれやれと言うような佐野の顔と夏目の面倒くさそうな雰囲気がなんとも言えない。


「ふふっ、ほんとにそっくりだ。もしかして佐野の特攻服って雪也くんの?」


「そうそう、卒業前に足を洗ったけど捨てるのは勿体なくて次の代の総長に押し付けたんだよ、あいつ」


洗礼か何かと勘違いした次の代の人達がまた次の代に引き継いで行ったのだろう。10年ぶりに佐野の特攻服は雪也くんの手によって帰って行った。

夏目の特攻服には背中にドーン!と神風、そしてエンブレム、族の名前。少し下には初代頭 夏目直樹とどデカく刺繍され右肩には喧嘩上等とまで書いてある。俺は厨二心の塊につい面白くなり笑う。


「夏目、これ着てみてよ。あー面白い。夏目ってば本当にヤンチャだったんだね。」


「俺は散々着たから明楽着てみてよ」


「えー俺がー?」


俺はその厨二心満載の服に袖を通す。やはり夏目のは大きくてダボッとなってしまう。今でも俺の見えない所でヘビースモーカーなのにこの時代はもっと酷かったんだろうなと思いながらカメラを向ける夏目にピースする。


「族、行ってみる?雪也そーちょーは中々辞めないから秀和が潰すとかなんとか言ってたよ。俺も潰すのは大賛成かな」


「えー潰しちゃダメ、雪也くんの居場所が無くなっちゃうよ。行く!行く行く!!」


「千里の命日も近いし千里の部屋の様子も見たい」


今も変わらない形で残ってるらしい千里さんの部屋はみんなから大切にされてた証なんだなと思う。初めて千里さんの話をした夏目の顔は悲しそうで泣き出しそうだったのに今は少し明るい顔をしていた。


「俺も夏目の黒歴史発掘しに行く!」


「尚も更新中の雪也に失礼だよ」


「あっ、」


俺と夏目は目を合わせて笑う。でも雪也くんの特攻服姿は綺麗だ。戦場にまう天使様みたいで可愛い。でもうちに血の着いた服で上がるのはやめて欲しいかな。雪也くんを匿った事がバレたら怒られるの俺だし


夏目は旅行から帰ってきた雪也くんと佐野に連絡を入れるとすぐにOKサインがでた。


「行く時はこれ着てちょっと驚かせに行こうかな」


今の代は夏目の顔は写真の中でしか知らないらしく挨拶という名のカチコミをする気らしい。
佐野は雪也くんのせいで週一通いになってしまっているのが現状。族をやめても族をやめようとしない恋人に頭を抱え、そもそも族から足を洗おうとしない弟にも手を焼いているとか。












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