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ーーー明楽のプチ家出ーーー

【02】

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俺の頬には夏目の手が振り下ろされていた。気がつくとじんじん痛くて涙も滲んでくる。


「帰るよ」


冷たい声で夏目はそれだけ言うと無言で俺の手を引き車に乗った。そして車に乗ると大きなため息をつく。
俺のせいで夏目を悲しくさせてしまった。俺は自分の突発的で愚かな行動を悔いる。


「なつめ、っ…、?」


返事はなく夏目はただ車を走らすばかりだ。

俺は夏目を怒らせた、嫌いになられたかもしれない。夏目がいないと俺は、やだ、夏目、






「なつめってば、ごめん、から無視しないでっ、」


部屋に押し込まれるようにして家に入った俺は夏目に手を引かれソファーに投げられる。夏目なのに夏目じゃないみたいで俺は震えた。

いつものなつめならこんな事しないし威圧を怖がるから少しも使わない。


「あーやばい、怖がらせてごめんね。お話しよっか」


夏目は俺を抱きしめ、頭を撫でた。まだ怖いけど俺が夏目にどうしたい、どうされたいって伝えないと終わらない。恋のステージならきっと曲がり角だらけでも最後は真っ直ぐなはず。


「何が嫌だったの?」


「わ、笑わないでね。俺ね、夏目に子供無理って言われたのが悲しくて」


ポカーンとする夏目、あれ、もしかして俺の早とちりだったの?え、恥ずかしいんだけど。
俺は夏目の胸に抱かれ頭を上げずに夏目を抱き返す。
きっと今の俺は顔を真っ赤にしているだろう


「鬱と妊娠は相性が悪くてね、明楽が落ち着くまでは無理って意味で言ったの。ごめんね、分かりにくかった。
明楽の子供なら何人でもほしいな」


「ぅ…っ、ごめん、なつめ、ごめんなさぃ、心配させて」


溢れてくる涙は夏目への愛情なのだろう。背中を擦りながら頭を撫でてくれる夏目の手がいつも通り優しい


「いいよ。それよりもう勝手に家、出ちゃダメだからね?」


「ん、ごめんなさい」


「他に嫌な事はある?」


夏目は俺の涙でグチャグチャになった顔をハンカチで拭く。顎を持ち上げられ無理やり夏目と視線を合わされた俺に夏目は『ぶっさいく、笑顔はこうだよ』と頬を上に引っ張られる。こっちの方がブサイクじゃん!


「女の子にくっつかないでぇ、おれだけにして」


「いつも明楽だけだよ。明楽の前で下品な言葉使いたくないから、今度からはちゃんと断るね。」


「病院の患者に俺みたいにさるのやめて」


「?俺明楽以外にあそこまでしたことないよ?」


そして俺は撫でられながら眠った。眠る寸前まで撫でてくれる夏目の手が離れ難い。


俺は重度の夏目依存者で夏目の傍から離れると禁断症状が出てしまうどうしようも無い人になってしまった。

俺が感じていた感情は夏目に否定されたのが悲しかったのと絡んでくる子達と夏目の患者さんへの嫉妬だった。

そして俺は夏目に包まれるようにして眠りに落ちた。
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