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第3章
64話 死にかけの魔族
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「魔族……?」
俺は、牢屋の中に居る人物を見て呟く。シクの講義では、魔族の特徴として見た目は人間族ソックリだが、頭にツノが生えていると学んだ。
また、人数が物凄く少ない種族為、見る事は稀らしい。
他にはどの種族よりも身体能力が高いと習ったな……
俺達が牢屋の目の前に近付いても魔族は一切反応せず、うつ伏せに倒れている。
恐らく、弱っていて動く元気が無いのだろう。
「お兄さん、魔族って物凄く珍しいんじゃないの?」
「その通りだ。シクも言っていたが滅多に会えるものではないらしい」
「アトス様、魔族ってそんなに珍しいんですか?」
「あぁ、魔族自体人数が少ないのもあるが、魔族は基本一人行動しか取らないからな」
俺達が牢屋の前で話していると、魔族が反応して、顔を上げた。声が枯れていて何を言っているか分からず、言葉になっていない事を言っている。
多分、助けてくれ的なニュアンスだと、仕草や表情で察知出来る。
「この魔族さんはなんでオーク達に捕まったんだろうね?」
「確かにな」
「……」
俺とロピが話している脇で、チルだけは、何故か魔族が気になるのか、黙ってジーッと魔族を見ている。
「そもそも、なんで魔族は基本一人行動なんだろうね? 人数多過ぎてもモンスターに食べられるけど、少ないと大変じゃない?」
「魔族の場合は身体能力が、とんでもなく高いから一人でも生き抜けるんだろう」
「なら、なんでオーク達に捕まったんだろ? 仮に悪さしても逃げ切れそうだけど」
「それは、確かに謎だな」
「……ジー」
チルはさっきから何故そんなに魔族が気になるのだろう?
「お兄さん、魔族以外にも珍しい種族っているのかなー?」
「そりゃー、居るだろうけど、俺は人間族と獣人族、オーク族、ゴブリン族しか見た事ないな」
「私もお兄さんと同じー」
「……ジー」
ロピは流石に気になり始めたのかチルに問いかける。
「チ、チルちゃん? なにをそんなにさっきから見ているのかなー?」
「……ジー」
「お姉ちゃん、チルちゃんが何を見ているのか、き、気になるなー」
チルはロピの掛け声が聞こえないのか、魔族から目を離さない。魔族は俺達の気配には気付いているが、顔を上げる力が残っていない様だ。
そして、チルは何を思ったのか牢屋に近付いた。魔族がその気になれば牢屋の隙間から手を出してチルの事を掴めるくらいには近付いているのだ。
「──ッチルちゃん!? あ、危ないよ!」
「姉さん、離して」
「だ、ダメだよ。何されるか分からないよ!」
ロピの必死の制止も意味は無く、チルは牢屋に近付き魔族を更に観察している。
「お、お兄さん! 最近本当にチルちゃんが私の言う事聞いてくれなくなったー!!」
流石にチルに危険もあるし、ロピが可哀想になった為、俺は助け舟を出す。
「チル、何か気になるのか?」
「はい。アトス様、申し訳ございません、まだ何が気になるかは分からないですが、観察させて下さい」
「それなら、牢屋からもう少し離れようか。俺もロピもチルの事が心配だ」
「……分かりました」
チルは素直に牢屋から少し離れた場所に移動してくれた。それを見たロピは安堵のため息を漏らす。そして、コッソリ俺に言う。
「ありがとう、お兄さん」
やっぱり、ロピはいい姉だな。
それから、しばらくの間チルは魔族を観察した後に突然移動を始めた。
「チルちゃん、どこ行くの!?」
「……」
いつも通りロピの話を聞かずにチルは建物を出て先程のオークが門番をしている場所まで移動した。
「ん? 随分長く見学していたな」
「あの、あの中にいる魔族はなんで捕まったんですか?」
チルは、ここに来てから俺とロピ以外に一度も話していなかったので、オークに話しかけた事に俺は少し驚いた。
「あの魔族か? 俺は詳しく知らないが、ディング様とグダが牢屋に入れとけって言ってたな」
「なら詳しい理由は分からないのですか?」
「あぁ。なんで牢屋に入れているかまでは知らない」
それから、少し考えた後にチルは俺の前までやってきた。
「アトス様、お願いがあります」
「ん? なんだ?」
「あの、魔族がなんで牢屋に捕まっているか理由を聞き出して欲しいです」
「チルちゃん、なんでそんな事が知りたいの?」
「……理由は無い。なんか昔の私達を見ているみたいで……」
「……」
それを聞いてロピとチルは暗い表情になった。
チルは、魔族の姿を見て昔の自分達と重なったと言う。
あの時のロピとチルはスラム街で酷い生活をしていた。
俺は二人をシクと重ねた。そしてチルは魔族を自分に重ねた……。
「捕まえた理由を聞いて、チルはどうしたいんだ?」
「理不尽な理由だったら、逃してあげたいです!」
チルの真剣な眼差しに、本気度が垣間見れ俺は頷く。
「分かった。帰ったらディングとグダに聞いてみようか」
「お願いします!」
それから俺達はディング達がモンスターの討伐に成功し村に帰ってきた事を聞き、ディングの家に戻る事にした。
俺は、牢屋の中に居る人物を見て呟く。シクの講義では、魔族の特徴として見た目は人間族ソックリだが、頭にツノが生えていると学んだ。
また、人数が物凄く少ない種族為、見る事は稀らしい。
他にはどの種族よりも身体能力が高いと習ったな……
俺達が牢屋の目の前に近付いても魔族は一切反応せず、うつ伏せに倒れている。
恐らく、弱っていて動く元気が無いのだろう。
「お兄さん、魔族って物凄く珍しいんじゃないの?」
「その通りだ。シクも言っていたが滅多に会えるものではないらしい」
「アトス様、魔族ってそんなに珍しいんですか?」
「あぁ、魔族自体人数が少ないのもあるが、魔族は基本一人行動しか取らないからな」
俺達が牢屋の前で話していると、魔族が反応して、顔を上げた。声が枯れていて何を言っているか分からず、言葉になっていない事を言っている。
多分、助けてくれ的なニュアンスだと、仕草や表情で察知出来る。
「この魔族さんはなんでオーク達に捕まったんだろうね?」
「確かにな」
「……」
俺とロピが話している脇で、チルだけは、何故か魔族が気になるのか、黙ってジーッと魔族を見ている。
「そもそも、なんで魔族は基本一人行動なんだろうね? 人数多過ぎてもモンスターに食べられるけど、少ないと大変じゃない?」
「魔族の場合は身体能力が、とんでもなく高いから一人でも生き抜けるんだろう」
「なら、なんでオーク達に捕まったんだろ? 仮に悪さしても逃げ切れそうだけど」
「それは、確かに謎だな」
「……ジー」
チルはさっきから何故そんなに魔族が気になるのだろう?
「お兄さん、魔族以外にも珍しい種族っているのかなー?」
「そりゃー、居るだろうけど、俺は人間族と獣人族、オーク族、ゴブリン族しか見た事ないな」
「私もお兄さんと同じー」
「……ジー」
ロピは流石に気になり始めたのかチルに問いかける。
「チ、チルちゃん? なにをそんなにさっきから見ているのかなー?」
「……ジー」
「お姉ちゃん、チルちゃんが何を見ているのか、き、気になるなー」
チルはロピの掛け声が聞こえないのか、魔族から目を離さない。魔族は俺達の気配には気付いているが、顔を上げる力が残っていない様だ。
そして、チルは何を思ったのか牢屋に近付いた。魔族がその気になれば牢屋の隙間から手を出してチルの事を掴めるくらいには近付いているのだ。
「──ッチルちゃん!? あ、危ないよ!」
「姉さん、離して」
「だ、ダメだよ。何されるか分からないよ!」
ロピの必死の制止も意味は無く、チルは牢屋に近付き魔族を更に観察している。
「お、お兄さん! 最近本当にチルちゃんが私の言う事聞いてくれなくなったー!!」
流石にチルに危険もあるし、ロピが可哀想になった為、俺は助け舟を出す。
「チル、何か気になるのか?」
「はい。アトス様、申し訳ございません、まだ何が気になるかは分からないですが、観察させて下さい」
「それなら、牢屋からもう少し離れようか。俺もロピもチルの事が心配だ」
「……分かりました」
チルは素直に牢屋から少し離れた場所に移動してくれた。それを見たロピは安堵のため息を漏らす。そして、コッソリ俺に言う。
「ありがとう、お兄さん」
やっぱり、ロピはいい姉だな。
それから、しばらくの間チルは魔族を観察した後に突然移動を始めた。
「チルちゃん、どこ行くの!?」
「……」
いつも通りロピの話を聞かずにチルは建物を出て先程のオークが門番をしている場所まで移動した。
「ん? 随分長く見学していたな」
「あの、あの中にいる魔族はなんで捕まったんですか?」
チルは、ここに来てから俺とロピ以外に一度も話していなかったので、オークに話しかけた事に俺は少し驚いた。
「あの魔族か? 俺は詳しく知らないが、ディング様とグダが牢屋に入れとけって言ってたな」
「なら詳しい理由は分からないのですか?」
「あぁ。なんで牢屋に入れているかまでは知らない」
それから、少し考えた後にチルは俺の前までやってきた。
「アトス様、お願いがあります」
「ん? なんだ?」
「あの、魔族がなんで牢屋に捕まっているか理由を聞き出して欲しいです」
「チルちゃん、なんでそんな事が知りたいの?」
「……理由は無い。なんか昔の私達を見ているみたいで……」
「……」
それを聞いてロピとチルは暗い表情になった。
チルは、魔族の姿を見て昔の自分達と重なったと言う。
あの時のロピとチルはスラム街で酷い生活をしていた。
俺は二人をシクと重ねた。そしてチルは魔族を自分に重ねた……。
「捕まえた理由を聞いて、チルはどうしたいんだ?」
「理不尽な理由だったら、逃してあげたいです!」
チルの真剣な眼差しに、本気度が垣間見れ俺は頷く。
「分かった。帰ったらディングとグダに聞いてみようか」
「お願いします!」
それから俺達はディング達がモンスターの討伐に成功し村に帰ってきた事を聞き、ディングの家に戻る事にした。
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