28 / 54
28.特別じゃ無い
しおりを挟む
「なっ.................何故.................何故.........何故.................!」
枢機卿はブルブル震え出す。リクルソナの信者を始め兵士、魔術師すらも驚愕の顔で固まり動けない。
ある文献に妖精を使役する事が出来る金の目を持つ者の存在が書かれていた。それは過去偶然にハリシュダに船が行き着いた商船の船乗りが書いたと言う覚え書きだった。その島にはあらゆる色が溢れ、穏やかな刻を刻んでいた。一つ一つは生きた妖精の光。森を作り、島の気候すら操る。オランの木が生茂る白い奥には街があり、其処は妖精の子孫が暮らしている。小高い丘には王宮が建てられて、花が所狭しと綺麗に植えられており、年若い王と、年若い王太子が島の長として崇められたていた。いや、妖精を使役していた。と。
王太子は日々の鍛錬として、妖精に《神聖魔法》を使わせて剣や魔法の使い方を訓練していた。妖精達とは仲の良い様子だった.........
など、相変わらず警戒心の無いふんわりな日々を送っていた事柄が書かれていた。
それはいつしかちょっとした話題になり、リクルソナでは妖精の国ハリシュダは桃源郷のような扱いになっていた。ミストルード教としては教典に無い妖精などと言う存在は認められないのだが、妖精の力を使役する事が出来る金の瞳の王太子に注目したのだ。
いつの時代も中途半端な力は更に上の知恵者に利用される。
ハリシュダの国を探し出すのに4年も掛かった。その間にも『聖女』の身柄を手中に収めようと何度も手の者をやるがいずれも帰っては来なかった。
3年半前、2人の『聖女』は同時に婚姻をしてしまい、益々手に入れ難くなった。相手がバドワージウ国王と筆頭魔術師だったからだ。
ある情報が持たらされ、3ヶ月前に見つかったハリシュダの島国は、やはり妖精の国で、美しい島だった。制圧部隊が上手く商人を装い懐に入り込み、油断した所で人質を取り王太子を拘束し連れ帰る。勿論妖精を引き連れて。妖精は万能だった。全ての属性が揃っているのだ。王太子を薬漬けにし、思考を奪った。ディスターは眠り続けている。もう、後、数回の投薬で儚くなるだろう。追い詰められた妖精達は、指示に従うしか無かった。
だが、転移の魔法を使える唯一の妖精がいる事をリクルソナ国は知らなかったのだ。助けを求め友好国であるこのバドワージウに転移していた事を........知らない。
****
「ゆ.................許せん!許せん!!こんな下らない方法で我が国の長きに渡る構想を無に返すなど!おい!妖精共!!もう一度元に戻れ!この国を焼くのだ!早くしろ!」
「.................妖精は大地には勝てないよ、枢機卿。何度やっても同じだ。本当の《神聖魔法》とは違うらしいからな。この力は大地から来てるらしいよ?」
「何故そんな事を知っているのだ!お前はなんなんだ!レジン王!何故ハリシュダが友好国なのだ!そんな事が出来るはず......... 」
「出来るよ。まあ、色々あってね。後は誠意と感謝。仁と義さ。何事にも必要なんだよ、相手を敬い手を差し伸べる。俺は何にも特別じゃ無いからな。それしか.........無いんだよ、ふふ」
ジャリッと砂を踏み鳴らしゆっくりと前へ歩みを進めるレジン。
「さあ、俺の妻を返して貰おうか。それと.........愛剣もな」
バドワージウ国の兵士に前と後ろを挟まれるリクルソナの兵士達。魔術師ももう魔力切れを起こしている。
「.........それから.........お仕置きも、だな」
枢機卿はブルブル震え出す。リクルソナの信者を始め兵士、魔術師すらも驚愕の顔で固まり動けない。
ある文献に妖精を使役する事が出来る金の目を持つ者の存在が書かれていた。それは過去偶然にハリシュダに船が行き着いた商船の船乗りが書いたと言う覚え書きだった。その島にはあらゆる色が溢れ、穏やかな刻を刻んでいた。一つ一つは生きた妖精の光。森を作り、島の気候すら操る。オランの木が生茂る白い奥には街があり、其処は妖精の子孫が暮らしている。小高い丘には王宮が建てられて、花が所狭しと綺麗に植えられており、年若い王と、年若い王太子が島の長として崇められたていた。いや、妖精を使役していた。と。
王太子は日々の鍛錬として、妖精に《神聖魔法》を使わせて剣や魔法の使い方を訓練していた。妖精達とは仲の良い様子だった.........
など、相変わらず警戒心の無いふんわりな日々を送っていた事柄が書かれていた。
それはいつしかちょっとした話題になり、リクルソナでは妖精の国ハリシュダは桃源郷のような扱いになっていた。ミストルード教としては教典に無い妖精などと言う存在は認められないのだが、妖精の力を使役する事が出来る金の瞳の王太子に注目したのだ。
いつの時代も中途半端な力は更に上の知恵者に利用される。
ハリシュダの国を探し出すのに4年も掛かった。その間にも『聖女』の身柄を手中に収めようと何度も手の者をやるがいずれも帰っては来なかった。
3年半前、2人の『聖女』は同時に婚姻をしてしまい、益々手に入れ難くなった。相手がバドワージウ国王と筆頭魔術師だったからだ。
ある情報が持たらされ、3ヶ月前に見つかったハリシュダの島国は、やはり妖精の国で、美しい島だった。制圧部隊が上手く商人を装い懐に入り込み、油断した所で人質を取り王太子を拘束し連れ帰る。勿論妖精を引き連れて。妖精は万能だった。全ての属性が揃っているのだ。王太子を薬漬けにし、思考を奪った。ディスターは眠り続けている。もう、後、数回の投薬で儚くなるだろう。追い詰められた妖精達は、指示に従うしか無かった。
だが、転移の魔法を使える唯一の妖精がいる事をリクルソナ国は知らなかったのだ。助けを求め友好国であるこのバドワージウに転移していた事を........知らない。
****
「ゆ.................許せん!許せん!!こんな下らない方法で我が国の長きに渡る構想を無に返すなど!おい!妖精共!!もう一度元に戻れ!この国を焼くのだ!早くしろ!」
「.................妖精は大地には勝てないよ、枢機卿。何度やっても同じだ。本当の《神聖魔法》とは違うらしいからな。この力は大地から来てるらしいよ?」
「何故そんな事を知っているのだ!お前はなんなんだ!レジン王!何故ハリシュダが友好国なのだ!そんな事が出来るはず......... 」
「出来るよ。まあ、色々あってね。後は誠意と感謝。仁と義さ。何事にも必要なんだよ、相手を敬い手を差し伸べる。俺は何にも特別じゃ無いからな。それしか.........無いんだよ、ふふ」
ジャリッと砂を踏み鳴らしゆっくりと前へ歩みを進めるレジン。
「さあ、俺の妻を返して貰おうか。それと.........愛剣もな」
バドワージウ国の兵士に前と後ろを挟まれるリクルソナの兵士達。魔術師ももう魔力切れを起こしている。
「.........それから.........お仕置きも、だな」
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
68
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる