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◇式前30日の記録
37.思わぬ展開
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「ふんっ!ハニーの創った世界など小さいではないか。我の創った世界は何倍も広いのであるぞ?その中から選びに選び抜いてやろう。待ってろ我の白い娘!」
『ヤダーーーー!テオルドが良いのです!ワタシにはテオルド以外の選択肢は要りません!』
「そうよそうよ!もう結婚も決まってるんだからやめなさいよ!」
「そんなもの如何様にでもなる。記憶を消すか?存在を消してやっても良いぞ?遠慮するな。もっと良い伴侶を当てがってやる」
全くリリアと女神の言葉に耳を貸さない紅白の父神。もうリリアはパニックだ。
『.................父神様。それは僕では、いけませんか?』
『シトランーー!何言ってるの!ややこしくなるからヤメテーーー!』バサバサバサッ
「ふむ。良いだろう。候補に入れてやろうぞ」
『なんでーーーー!女神様ぁーーっ助けて下さい!』
顔をピクピクさせギギギと父神を睨みつける女神。踏ん反り返る父神。辺りはズンッとした空気が支配した。だがどちらも譲る気は無い様だ。
「ーーっもうっもう!本当最悪!ええ良いわ。勝負よ!こうなったらやってやろうじゃないの!私が選んだ子と貴方が選んだ子。より優れている方を私の白い娘の伴侶にしてやるわ。それから私が勝ったら.........貴方!二度と私に口出ししないで!良いわね?」
「ふふん。良いだろう。今から選出して来てやる。そうだな.........ハニーの世界で言う1日待て。良いな?」
「それ以上は待たないわよ」
「ああ。言葉は違えない」
そう言って何故か女神の頬にムチュッとキスを残し、父神は風を巻き起こしながら姿を消してしまった。
『......何これ...........酷い.........なんて勝手なの.........そして何気に父神様は女神様を.........そう言えばハニーって呼んで。いや、それはどうでも良いか.........兎に角.........これは.........これは.........』
頬を手でゴシゴシ擦りながらプンスカ怒る女神を呆然と見つめ呟くリリア。
『逃げても無駄だよ?』
リリアはビクンッと羽を揺らす。頭の上からシトランの顔が擦り寄って来る。
『シトラン!さっきと言ってる事が違うわ!次見掛けたらって言って.........ん?次.........って?』
『今さ。先程一度別れたろ?』
『酷いわーーーっ!騙したのね!』
羽でシトランをパチパチ叩く。
『ふふ。騙してなんていないさ。僕は外に居たんだ。でも君が泣いてる声がしたような気がして急いで中に入っただけ。そしたら父神様がいらしたのさ。嘘じゃないよ』
『うぅ。ワタシは唯、人間の姿に戻してもらいに来ただけなのに.........なんでこんな事に.........っ』
へにゃりと地面に座り込む。
『(どうしよう.........無視したってだめよね?怒ってテオルドの記憶を消しちゃうかも。最悪存在を消されてしまうかも知れない?どうしたら.........ああ!テオルド!!)』
すると女神がクルリとこちらを向く。
「鍛えるわよ」
『へ?』
「負けられないの」
『あ、はい!勿論!でも、どうやって?』
「あの子を地下国へやる。そして鍛えるわ」
『ち、ちかこく?何処ですかそこは?』
「簡単に言うと、「地獄」よ!」
『女神様~~~!落ち着いて下さい!!テオルド逃げて~~っ!』
「『悪気』をたんまり吸わすのよ。《邪道化》を強化させれば無双出来るわ!」
『む、無双?で、でも悪気を取り込み過ぎると危険ですよね?テオルドにそんな事させるなんて.........』
「.........負けたいの?」
もう女神は優しい女神では無く、まるで邪神かの形相で唯の夫婦喧嘩した後の嫁になっていた。ピリピリとした空気が漂う。
リリアはその姿に怯えながらも勇気を振り絞り聞いてみる。
『で、でも、1日しか猶予が無いんですよね?』
「心配しなくても此処は私の世界よ。1日で30日間くらいの次元は曲げてやるわ。さあ、行くわよ私の白い娘。勝ちに行くわよ!!」
もう誰得なのか訳が分からない。だが、確かにテオルドには申し訳無いが負けてもらう訳にはいかないのだ。2人の未来が掛かっている。
するとどこからとも無くブブブブブと複数の羽音が聞こえて来た。
ルビーの様に輝く赤い花に群がる彩どり豊かな蜂達。その中でも一際大きなイカつい蜂が上空に留まり何か指示をしている。真っ赤な身体に緑の胴体。その長い細い脚には白い大きな瓶をぶら下げていた。
『あ!あ!ピンジャー!!』
「シャ?シャー!!」
「ん?そう、今日はケイコウリオルの蜜の収穫日だったわね。ふうん.........丁度良いわ。紅蜂の精霊。アナタも行くわよ」
「シャー!」
他の蜂に瓶を渡しスイッと此方に飛んでくる。クルクルとリリアの周りを飛ぶピンジャー。
『ピンジャー!会いたかった久しぶりね!嬉しいよ!』
「シャーシャー♪」
「じゃ、地上へ行くわよ」
そう言うと女神はリリアとピンジャーを連れ光の粒子を撒き散らしながら一気に地上へ向かった。
先程までの喧騒が嘘の様に静まり返る宮殿の王座の前で1羽残されたシトラン。
『.................これは思わぬ展開になったな。ふふっ。さあ、僕も行かなくちゃ。本当はもう少し後で攫う予定だったけど.........良い場が出来た。リリア。僕はね、しつこいんだ。覚悟してね?』
そう独言るとクッと長い喉で笑い、大きなシラサギは翼をバサッと広げ太くて長い脚で地を蹴り宮殿の外へと飛び去って行った。
『ヤダーーーー!テオルドが良いのです!ワタシにはテオルド以外の選択肢は要りません!』
「そうよそうよ!もう結婚も決まってるんだからやめなさいよ!」
「そんなもの如何様にでもなる。記憶を消すか?存在を消してやっても良いぞ?遠慮するな。もっと良い伴侶を当てがってやる」
全くリリアと女神の言葉に耳を貸さない紅白の父神。もうリリアはパニックだ。
『.................父神様。それは僕では、いけませんか?』
『シトランーー!何言ってるの!ややこしくなるからヤメテーーー!』バサバサバサッ
「ふむ。良いだろう。候補に入れてやろうぞ」
『なんでーーーー!女神様ぁーーっ助けて下さい!』
顔をピクピクさせギギギと父神を睨みつける女神。踏ん反り返る父神。辺りはズンッとした空気が支配した。だがどちらも譲る気は無い様だ。
「ーーっもうっもう!本当最悪!ええ良いわ。勝負よ!こうなったらやってやろうじゃないの!私が選んだ子と貴方が選んだ子。より優れている方を私の白い娘の伴侶にしてやるわ。それから私が勝ったら.........貴方!二度と私に口出ししないで!良いわね?」
「ふふん。良いだろう。今から選出して来てやる。そうだな.........ハニーの世界で言う1日待て。良いな?」
「それ以上は待たないわよ」
「ああ。言葉は違えない」
そう言って何故か女神の頬にムチュッとキスを残し、父神は風を巻き起こしながら姿を消してしまった。
『......何これ...........酷い.........なんて勝手なの.........そして何気に父神様は女神様を.........そう言えばハニーって呼んで。いや、それはどうでも良いか.........兎に角.........これは.........これは.........』
頬を手でゴシゴシ擦りながらプンスカ怒る女神を呆然と見つめ呟くリリア。
『逃げても無駄だよ?』
リリアはビクンッと羽を揺らす。頭の上からシトランの顔が擦り寄って来る。
『シトラン!さっきと言ってる事が違うわ!次見掛けたらって言って.........ん?次.........って?』
『今さ。先程一度別れたろ?』
『酷いわーーーっ!騙したのね!』
羽でシトランをパチパチ叩く。
『ふふ。騙してなんていないさ。僕は外に居たんだ。でも君が泣いてる声がしたような気がして急いで中に入っただけ。そしたら父神様がいらしたのさ。嘘じゃないよ』
『うぅ。ワタシは唯、人間の姿に戻してもらいに来ただけなのに.........なんでこんな事に.........っ』
へにゃりと地面に座り込む。
『(どうしよう.........無視したってだめよね?怒ってテオルドの記憶を消しちゃうかも。最悪存在を消されてしまうかも知れない?どうしたら.........ああ!テオルド!!)』
すると女神がクルリとこちらを向く。
「鍛えるわよ」
『へ?』
「負けられないの」
『あ、はい!勿論!でも、どうやって?』
「あの子を地下国へやる。そして鍛えるわ」
『ち、ちかこく?何処ですかそこは?』
「簡単に言うと、「地獄」よ!」
『女神様~~~!落ち着いて下さい!!テオルド逃げて~~っ!』
「『悪気』をたんまり吸わすのよ。《邪道化》を強化させれば無双出来るわ!」
『む、無双?で、でも悪気を取り込み過ぎると危険ですよね?テオルドにそんな事させるなんて.........』
「.........負けたいの?」
もう女神は優しい女神では無く、まるで邪神かの形相で唯の夫婦喧嘩した後の嫁になっていた。ピリピリとした空気が漂う。
リリアはその姿に怯えながらも勇気を振り絞り聞いてみる。
『で、でも、1日しか猶予が無いんですよね?』
「心配しなくても此処は私の世界よ。1日で30日間くらいの次元は曲げてやるわ。さあ、行くわよ私の白い娘。勝ちに行くわよ!!」
もう誰得なのか訳が分からない。だが、確かにテオルドには申し訳無いが負けてもらう訳にはいかないのだ。2人の未来が掛かっている。
するとどこからとも無くブブブブブと複数の羽音が聞こえて来た。
ルビーの様に輝く赤い花に群がる彩どり豊かな蜂達。その中でも一際大きなイカつい蜂が上空に留まり何か指示をしている。真っ赤な身体に緑の胴体。その長い細い脚には白い大きな瓶をぶら下げていた。
『あ!あ!ピンジャー!!』
「シャ?シャー!!」
「ん?そう、今日はケイコウリオルの蜜の収穫日だったわね。ふうん.........丁度良いわ。紅蜂の精霊。アナタも行くわよ」
「シャー!」
他の蜂に瓶を渡しスイッと此方に飛んでくる。クルクルとリリアの周りを飛ぶピンジャー。
『ピンジャー!会いたかった久しぶりね!嬉しいよ!』
「シャーシャー♪」
「じゃ、地上へ行くわよ」
そう言うと女神はリリアとピンジャーを連れ光の粒子を撒き散らしながら一気に地上へ向かった。
先程までの喧騒が嘘の様に静まり返る宮殿の王座の前で1羽残されたシトラン。
『.................これは思わぬ展開になったな。ふふっ。さあ、僕も行かなくちゃ。本当はもう少し後で攫う予定だったけど.........良い場が出来た。リリア。僕はね、しつこいんだ。覚悟してね?』
そう独言るとクッと長い喉で笑い、大きなシラサギは翼をバサッと広げ太くて長い脚で地を蹴り宮殿の外へと飛び去って行った。
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