【完結】初恋は淡雪に溶ける

Ringo

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♡afterstory♡公爵令嬢の挑戦

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いつものようにエメットとソファーに隣合って座り、何度か口付けをしてから届けられた本を手に持っていたアンジェリカ。

しかし一向に表紙を開こうとせず、やはり何処か具合でも悪いのかと心配するエメットが俯いている顔を覗き込む。


「アンジェ?どうかしたの?」


まさかお茶会で令嬢達から嫌がらせでも受けたのではないか…そう考えて側についていたはずのメリルへ視線で尋ねると、ニヨニヨと口元を蠢かせているだけ。

しかも何故か一礼すると部屋を出ていき…ギリギリまで閉めた扉の隙間から、ピンッと立てた親指を見せて引っ込めた。


(閉めすぎじゃないか?)


ふたりはまだ婚約者でしかなく、未婚の男女が誰もいない空間に在るなど言語道断。

指一本が入るかどうかになっている状態を正すべく腰をあげ…ようとして腕を引かれ、勢いよくソファーへと出戻る。


「アンジェ?…いや、ちょっと扉が…」


風でも吹けば閉じてしまう。

その位に薄く開いた扉から視線をアンジェリカに戻すと、目の前に顔があって…「え?」と思った瞬間に唇が重ねられた。

いつもとは違う立場にエメットは動揺する。

華奢な手に両頬を挟まれ、ソファーの上に膝立ちをしているアンジェリカによって上を向かされての口付けに…うっかり理性を手放しかけた。

細めた視界に映るのは、目を瞑り耳まで赤くして何度も角度を変えて口付けてくる愛しい婚約者。


「……アンジェ…」


唇が離れた一瞬に名前を呟き、腰に手を添え膝の間へ移るよう細い体を誘導する。

ビクリと震え…しかしゆっくりと逞しいエメットの太腿を越えたアンジェリカは、やはり膝立ちのまま口付けを続けた。


「………アンジェリカ……」


鼻先が触れ合う距離で再び名前を呼ばれ、心地いいバリトンの響きに甘い痺れを催す。


『愛する人のすべてを欲しいと願うのは必然の摂理よ。決して愚かしいことではないわ』


高潔なアリアネルの言葉が脳内に木霊する。

ずっと嫌悪していた。

元婚約者との時は、いつか迎える婚儀と初夜を思うだけで鳥肌と吐き気を催し、肌の触れ合いは元より“粘膜の触れ合い”など忌避すべきものだと…穢らわしいと。

だけどエメットは違う。

恥ずかしいながらも、いつからかもっと触れて欲しいと思うようになっていた。

口付けもなく過ごすことを寂しいと思うほどに。


「………エメット……」


愛しい…その想いが溢れて止まらなくなる。

もし運命の悪戯にエメットとの未来を奪われたなら、生きる希望を無くしてしまう。

その憂いを拭うように口付け…勇気を振り絞ってほんの少しだけ舌先を覗かせると、エメットの唇をちょん…と突っついた。






*.゜。:+*.゜。:+*.゜。:+*.゜






現在…エメットは理性と煩悩の狭間で激流に飲まれながら、衝撃体験に固まっている。


「…エメット……」


切なげに自身の名を呼ぶ婚約者が、先程から舌先でちょんちょんと唇を割ろうとしているのだ。

勿論、吝かでは無い。むしろしたい。

だが一度してしまえば箍が外れ、なし崩しになってしまいそうで……自信がないのが本音。

まだ婚約したばかりで、結婚式は一年後。

それまで乙女を散らすような事をするつもりはなく、実は初夜に対して並々ならぬ夢と理想を抱いているエメット。

どうする!?どうするべきなんだ!?と窮地に追い込まれ、腰に添える手がするりと落ちた。

その反応にアンジェリカは表情を悲痛に歪め、口付けをやめて「…ごめんなさい」とエメットから離れようとする。


「………アンジェリカ」


しかし再度腰に回された手に阻まれ、グイッと引き寄せられてエメットの胸元に抱き込まれた。

ドクドクと激しい鼓動に耳を寄せて、嫌わないで欲しいと願いながら大きな背中に手を回す。


「……ごめんなさい…はしたないことをして…」


後悔に声を震わせそう言い切ると、今更ながらの羞恥に襲われジワリと涙が滲んでしまう。

エメットが何も言わないことも不安を煽る。


「………あの……」


公爵令嬢らしからぬと叱ってもいいから何か言って欲しいと仰ぎ見て…息を飲んだ。


「…………エメット………?」


熱の篭った瞳…など可愛いものではなく、ギラつくそれは捕食者を思わせる。

とんでもない事をしてしまったんじゃ…と身を引こうとするが微動だに出来ず、心なしか熱い息遣いをする顔が近付いた。


「えっと……あの………」

「嫌だと思ったら引っぱたいていいから」


直後ガシリと後頭部を押さえられ、「えっ」と戸惑い開けた唇の隙間を割ってエメットの舌が侵入してきた。

ぬるりとした感触に驚き腰を引くが、そちらもガッチリ押さえ込まれているので動けない。

そうしている間にもエメットの舌は大胆な動きを見せ始め、逃げ惑うアンジェリカの舌を捕らえては執拗に絡みつく。

その様相はまさしく“貪る”という表現がピタリと当てはまるようなもので、呼吸の仕方が分からず苦しくなって固い胸板を叩いた。

ぷはっ…と涙目で呼吸をしたアンジェリカを、そうさせた犯人は優しい眼差しで見つめる。


「鼻で息をするんだよ」


どうして知っているの?と恨みがましい視線を向けるが、それにエメットが応えることはなく…また唇が重なると当然のように厚みのある舌が入り込み、アンジェリカの咥内を蹂躙した。









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