【完結】欲しかったのは…

Ringo

文字の大きさ
8 / 12

歪んだ歯車 ※王女side

しおりを挟む
オーランド様の元に嫁いでから伯爵家本館で暮らすようになり、あの日芽生えた命がすくすくと育つのを楽しみながら過ごす日々。

大きなお腹を撫でてのんびりしていたら、別館の様子を見に行かせていた使用人が戻ってきた。


「そう…生まれたのね」


隣国から戻った際に『彼女のお腹には俺の子がいるから第二夫人とする』と言われ、婚約解消に慌てた彼女がオーランド様に無理をさせたのでは?と思っていたのに産み月は私よりもずっと早い。

もっと早く出会えていたのなら、間違いを犯させることなどなかったのにと悔やまれる。


「ご両親もいらっしゃるのよね?じゃぁ、お祝いに伺った方がいいかしら。トリシアさんにも何かお祝いの品を贈らなくちゃ」

「そのような必要はないと旦那様より申し付かっております。大旦那様達もこちらには立ち寄らずにお帰りになるそうです」

「そうなの?残念だわ」


お忙しいのかしら。

思えば、お義父様とお義母様にお会いしたのは本館で暮らすようになった時のご挨拶が最初で最後だ。とても仲のよいご夫婦らしいので、領地からあまり出てこないと使用人達は言っていた。

それでも、体調を気遣うお手紙や贈り物をお義母様から頂いていたし、私もお返しをお贈りしたりして友好な関係を築けている。

こちらに移り住んでから、まだ慣れないだろうと気遣われて一度も夜会に出席したことはないけれど、産後落ち着けば久し振りにお洒落して夜会や舞踏会に出てみるのもいい。

隣国の王女という肩書き故かお茶会も呼ばれなくなってしまったし、気にしないでと手紙を送ったけれど未だに遠慮されている。


「…オーランド様にお会いしたいわ」


伯爵家本館の準備が整うまでは王宮の客間で過ごすようにと言われ、会えない寂しさから解放されると思っていたのにオーランド様はいらっしゃらない。

聞けば王太子専属騎士として王宮に滞在していることが多く、自宅に毎日のように帰ることはないらしい。

そしてその貴重な自宅での時間を、オーランド様は本館ではなく別館で過ごされる。やはり突然打ち捨てるような事は出来ない優しさがあって、出産に向けて最後の情けをかけているのだと思えば何も言わずに見守ることにした。


「それも私に子が生まれるまでの我慢ね」


彼女の出産に向けて長めの休みを取ったと聞いているけれど、私の時は辞めてしまうんじゃないかとソワソワしてしまう。私との美しい子供を見たら、きっと離れるなんて出来ないもの。


「早く生まれてきてね」


美しくて可愛らしい私達の赤ちゃん。








──────────






「オーランドさまぁ!!!いやぁ!いたいっ!助けて!!オーランドさまぁぁぁ!!!


耐えきれないほどの痛みのなか、ただ浮かぶのは愛しいオーランド様の美しいお顔。あまりに痛くて辛くて苦しくて、だけどこれさえ終わればオーランド様とゆっくり過ごせるのだと思えば頑張れる気もしてくる。


「いやぁぁぁぁぁぁ!!」


そして、私は自分によく似た女の子を生んだ。





──────────





「オーランド様は?」


出産して一月が過ぎても二月が過ぎてもオーランド様が本館に戻ることはなく、義両親も一度だけ子供の顔を見に来てから訪れなくなった。


「旦那様はご多忙ですので」


嘘。私は知ってる。あの人が我が儘を言ってオーランド様を別館に縛り付けていることを。

本館の使用人はニコリともしなくて何を考えているのか分からないけれど、きっと私の境遇を憐れんで気を遣わせてしまっている。


「お忙しいのね…それならトリシアさんをお誘いしてお茶でもしようかしら」


隣国ではお母様達が妃同士でよくしていたから、私も正妻として第二夫人を慮ろうと思ったのだけれど…周りの空気が殺伐とした。私が何かされるとでも思っているのかしら。


「マリーベル様…それはお控えください。別館に赴くこと、トリシア様とご子息にお会いすることは旦那様より禁じられています」

「そうなの?オーランド様も心配症ね」


でも私のために心配してくれているのなら、大人しく過ごしてお戻りを待とう。



いつかオーランド様は目が覚める。

いつかけじめがつく。

いつか私だけを愛してくれる。



そう思いながらいくつかの季節を過ごし、娘の誕生日は盛大なパーティーでもしようかと考えていたところに衝撃的な報せが届けられた───







「トリシア様が…ご懐妊…?」





しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

どんなあなたでも愛してる。

piyo
恋愛
遠征から戻った夫の姿が変わっていたーー 騎士である夫ディーノが、半年以上の遠征を終えて帰宅した。心躍らせて迎えたシエラだったが、そのあまりの外見の変わりように失神してしまう。 どうやら魔女の呪いでこうなったらしく、努力しなければ元には戻らないらしい。果たして、シエラはそんな夫を再び愛することができるのか? ※全四話+後日談一話。 ※毎日夜9時頃更新(予約投稿済)&日曜日完結です。 ※なろうにも投稿しています。

贖罪の花嫁はいつわりの婚姻に溺れる

マチバリ
恋愛
 貴族令嬢エステルは姉の婚約者を誘惑したという冤罪で修道院に行くことになっていたが、突然ある男の花嫁になり子供を産めと命令されてしまう。夫となる男は稀有な魔力と尊い血統を持ちながらも辺境の屋敷で孤独に暮らす魔法使いアンデリック。  数奇な運命で結婚する事になった二人が呪いをとくように幸せになる物語。 書籍化作業にあたり本編を非公開にしました。

夫が運命の番と出会いました

重田いの
恋愛
幼馴染のいいなづけとして育ってきた銀狼族の族長エーリヒと、妻ローゼマリー。 だがエーリヒに運命の番が現れたことにより、二人は離別する。 しかし二年後、修道院に暮らすローゼマリーの元へエーリヒが現れ――!?

公爵令嬢のひとりごと

鬼ヶ咲あちたん
ファンタジー
城下町へ視察にいった王太子シメオンは、食堂の看板娘コレットがひたむきに働く姿に目を奪われる。それ以来、事あるごとに婚約者である公爵令嬢ロザリーを貶すようになった。「君はもっとコレットを見習ったほうがいい」そんな日々にうんざりしたロザリーのひとりごと。

王子を身籠りました

青の雀
恋愛
婚約者である王太子から、毒を盛って殺そうとした冤罪をかけられ収監されるが、その時すでに王太子の子供を身籠っていたセレンティー。 王太子に黙って、出産するも子供の容姿が王家特有の金髪金眼だった。 再び、王太子が毒を盛られ、死にかけた時、我が子と対面するが…というお話。

婚約破棄された夜、最強魔導師に「番」だと告げられました

有賀冬馬
恋愛
学院の祝宴で告げられた、無慈悲な婚約破棄。 魔力が弱い私には、価値がないという現実。 泣きながら逃げた先で、私は古代の遺跡に迷い込む。 そこで目覚めた彼は、私を見て言った。 「やっと見つけた。私の番よ」 彼の前でだけ、私の魔力は輝く。 奪われた尊厳、歪められた運命。 すべてを取り戻した先にあるのは……

【完結】亡くなった人を愛する貴方を、愛し続ける事はできませんでした

凛蓮月@騎士の夫〜発売中です
恋愛
【おかげさまで完全完結致しました。閲覧頂きありがとうございます】 いつか見た、貴方と婚約者の仲睦まじい姿。 婚約者を失い悲しみにくれている貴方と新たに婚約をした私。 貴方は私を愛する事は無いと言ったけれど、私は貴方をお慕いしておりました。 例え貴方が今でも、亡くなった婚約者の女性を愛していても。 私は貴方が生きてさえいれば それで良いと思っていたのです──。 【早速のホトラン入りありがとうございます!】 ※作者の脳内異世界のお話です。 ※小説家になろうにも同時掲載しています。 ※諸事情により感想欄は閉じています。詳しくは近況ボードをご覧下さい。(追記12/31〜1/2迄受付る事に致しました)

旦那様に愛されなかった滑稽な妻です。

アズやっこ
恋愛
私は旦那様を愛していました。 今日は三年目の結婚記念日。帰らない旦那様をそれでも待ち続けました。 私は旦那様を愛していました。それでも旦那様は私を愛してくれないのですね。 これはお別れではありません。役目が終わったので交代するだけです。役立たずの妻で申し訳ありませんでした。

処理中です...