【完結】欲しかったのは…

Ringo

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隣国へ ※王女side

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オーランド様は呪われてしまったの?そうおもうほどに、目を覚ますことなくいつまでも本館にはお戻りにならない。

少し前から体調も崩し、お医者様が言うには流行りの風邪らしいがとても怠くて苦しい。使用人に何度もオーランド様を呼んで欲しいと頼んでいるのに、訪れる気配は一向にしない。


「オーランド様…」


そういえば私の子供はどうしてるだろう。暫く見かけていない、もうすぐ五歳になる私によく似た美しい子供。愛に溢れた子沢山家族に憧れていたけれど、オーランド様にお会いすることもないから家族が増えることもない。

そんな私とは対照的に、トリシア様は先日双子の赤ちゃんを生んで四人の子を持つ母となった。新しい国王の即位に伴い専属騎士から側近として執務に携わるようになったオーランド様も、別館にお戻りになる事が増えて育児にも積極的らしい。

別館と本館の間にある庭園では、よく家族で楽しそうに過ごしている様子を見かけるのだと使用人達が噂しているのを聞いた。

いつまでもオーランド様を縛り付けるトリシアさんと話をしたくても、私が別館に行くことは許されていないし、そもそも体調が悪くて部屋から出ることも叶わない。





******





「マリーベル」

「…お姉様……」


凡そ五年振りにお会いするお姉様は三人目の子を身籠っていて、そんななか私の見舞いの為にお忍びで伯爵家へとやって来た。


「国へ戻りなさい」


何度となく言われてきた事だけれど、私は愛するオーランド様の傍にいたいし守りたいからと断り続けてきた。必ずオーランド様は目覚める…そう信じてきたし今も信じている。第二夫人にばかり構っているように見えるのも、責任感と罪悪感からそうしているに過ぎないのだから。


「嫌です…私はオーランド様の妻として、伯爵家の女主人としてここにいます」


たとえ第二夫人を気遣い伯爵家主催の夜会やお茶会が別館で行われていても、伯爵家としての執務や業務が別館で第二夫人と執り行われていても、私が正妻であり本質であることは変わらない。

あの日、オーランド様は求めて深く愛してくれたのだから間違いはない。


「いい加減に現実を見なさい。こちらに来てからオーランドに一目も会うことなく、一度たりて本館に足を運んでこないのがどういう事か分からないほど愚かなの?」

「それは…きっとトリシアさんが我が儘を仰っているのです。本館に…私に会いに行こうとするのを止めていらっしゃるんだわ」

「子供も四人生まれているのよ?」

「オーランド様を縛り付けるために無理を強いているからです。お優しい方だから、トリシアさんの求めに応じているに違いありません」


だけど本音を言えば私のことを求めて欲しい。あの日のように、強く激しく求めて欲しい。


「マリーベル…あなた、自分が生んだ娘がどうしているのか知ってるの?」

「娘…私の美しい娘ですか?」


どうしているのか…生んで一年ほどは何度か見かけていたし、私によく似た美しい娘をオーランド様に見てほしくて別館に連れていくように使用人を向かわせた事もある。

そういえばもう何年も見かけていない。


「あの子はあなたの母親の実家に養子に出されたのよ…もう四年になるわ」

「そうですか…それならまた子を作らないと」

「誰と?なんのために?」

「オーランド様とに決まっています。私はオーランド様と愛に溢れる子沢山の家庭を築かなくてはなりません」

「その愛に溢れる子沢山な家庭はトリシアとふたりで築いているから必要ないわ」

「それは紛い物ですから」


王女である私と築くべきものが本物。トリシアさんとは仮初めの時間を過ごしているだけ。


「あなた、一度でもオーランドから愛を囁かれたはあるの?」

「あります。あの日、オーランド様は何度も愛してると私に……」


確かに言った。

初めての私を乱暴なほどに抱いて、何度も何度も子種を注いで…何度も愛してると…


『愛してる──トリシア』


突然頭に響いた声に思考が止まる。あの日、私を抱きながらオーランド様が呼んだのは…


「目を覚ましなさい、マリーベル。あの日オーランドが酔いに任せてあなたを抱いたのは間違いないし、その責任を取るために正妻という立場を与えた。けれど愛したわけじゃない」

「それ…は……」

「あれ以来、オーランドはトリシアとふたりの時以外でお酒を口にすることはないわ。同じ過ちは繰り返さない為…トリシアを二度と傷付けないようにする為に」

「過ち…お姉様は、私とオーランド様の事を過ちだと仰るんですか?」

「それ以外に何があるの?」

「真実の愛があります!!」


たとえ名を呼ばれたことがなくても、たとえ五年以上お会いしていなくても、たとえ愛を囁かれたことがなくても、真実の愛は私にある。


「呆れて何も言えないわね。女主人だと言うけれど、伯爵家主催の夜会や執務補佐は誰がやっているの?社交に伴われているのは誰?使用人が奥様と呼ぶのは誰のこと?」

「トリシアさんが縋っているからです!だから執務は別館でするしかないし、社交に出向かないのも名前で呼ばれるのも元王女である私に皆さんが遠慮してしまうからだわ!私は女主人として本館をお守りしています!」

「そう…それで?そのお守りしてる本館に、オーランドはいつ戻ってくるの?」

「目を覚ませば戻られます!」


私に助けられたからこそ貴族としてあれたと、貧しい思いをせずにすんだのだと。


「もう何を言っても無理ね。少しは冷静になって妄想から抜けたかと思っていたのに…残念よ」


そう言ってお姉様が差し出してきた書類を見て目眩がした。どこまでオーランド様はトリシアさんに洗脳されているのか、と。


「離縁…通知…?」

「オーランドからの申請を王家として認めたわ。隣国の両陛下とあなたの母親も認めている。あなたの意思がどうであろうと離縁を命じます」


そんな…離縁なんかしたら、オーランド様を誰が守るというの?誰が目覚めさせるの?


「本日を以て離縁とします。体調が戻り次第、隣国へと帰りなさい」


呆然としたままの私を置いて、お姉様は部屋から出ていった。






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