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夫婦間の決まり事~その3~

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【妻はひとりで外出してはならない】

これが最も重要とされている決まり事。

今となっては4人の子を持つ母となった桜も何かと忙しく、家から出ることはそうそう無い。

6人家族が必要とする家事を全て担い、特に手間暇をかけた料理にはかなりの時間を要している。

それでも昔…まだ結婚する前はそれなりに出掛けてはショッピングなどを楽しんでもいた。

しかしある出来事…はのちに後述するが、それを機に現在は外商を招くかネットショップを巡るのみである。






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「透くん、今度の木曜日にお母さんが外商さんと来るって言ってたの。いい?」

「木曜日?いいよ、今回は何を買うの?」


透と桜の実家はかなりの富裕層であり、身の回り品を買いに自ら出向くことはあまりない。

好みや流行を把握した外商が自宅を訪ね、その場に持ち込まれた物から購入を決める。


「冬物のお洋服とブーツ、あとは子供達のものも一緒にお願いしてる。透くんのスーツも仕立て上がったから持ってきてくれるみたい」

「子供の成長は早いよね、すぐ着られなくなる」


支払いは実家持ち。

透が反論する間も与えず、父親達がそうした。


『お前は孫達の将来に向けて貯蓄でもしていろ』


そう言うが本心はただ孫を甘やかしたいだけで、溺愛する孫と桜に『ありがとう』と言われたいが為なのだと分かっている。

とは言え家計が助かるのも事実なので、やりたいようにやらせる事にした。


「あの…下着も新調していい?」


4人も産んでいるのに照れる妻が可愛らしく、顎を掬って唇を重ねる。

リビングで遊ぶ子供達はキッチンで触れ合う両親を見ても気にする様子はない。

いつもの事すぎて見慣れているのだ。


「大林さん呼ぶ?」


大林とは桜の下着のデザインから制作までを一手に担っている女性デザイナー。

小さな店を経営しており、同僚であり桜の先輩でもある人物からの紹介で知り合った。

店自体は小さいが顧客は多く、質と機能性を備えた豊富なデザインが評判を呼んで新しく大きな工房を別に構えたほど。

数年前から桜の下着は彼女が担当している。


「うん…じゃぁ、近々連絡してみるね」

「日時が決まったらそれだけ教えて」

「分かった 」


大林との連絡を取り合うのは桜のみ。

たとえ桜の為だとしても透が他の女性とやり取りするのを嫌がるからだ。


「あのさ…俺のお願い聞いてもらえる?」

「お願い?」


愛する夫の頼みとあらば…と頷いた桜だったが、その内容に頬を赤らめてしまう。


「そんな顔されると…クルね」

「もうっ!!…大林さんに相談…してみる…」

「お願いします」


今度は薔薇色に染まった頬へキスし、透は足取り軽くご機嫌な様子で子供達のおやつを持ってリビングへと向かった。

ひとり残された桜は熱い頬を両手で押さえ、何年経っても何人産んでも変わらず向けられる夫の愛情と欲情に悶えていた。






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ひと月後、透の希望を取り入れた下着が大林本人によって届けられた。

繊細に編み込まれたレースをふんだんに使用し、まるで天使の羽根を思わせるようなデザイン。


「真っ白で素敵…流石ですね、大林さん」

「このレースはまだ日本に流通していない逸品ですから、桜さんだけの特別品です。お似合いになられると思いますよ。サイズに問題はないと思いますがご試着なさってみて下さい」


手に取った桜は満面の笑みを浮かべるが、いざ試着しようとして翳りを見せた。


「どうかしました?何か気になる点でも?」

「いえ…あの…まだ完全に体型が戻ったわけではないから…本当に似合うかなって…」


家事と育児の合間にストレッチをしたり、なるべく体を動かしては努力している。

それでもまだ妊娠でたるんだままの所もあり、それを見たり触ったりしては落ち込んでいた。

だから気分転換に新しい下着を欲したのだが、あまりの素敵さに気後れしてしまう。


「必ずお似合いになられますよ」

「…そうでしょうか…」

「出産後は多くの女性が体型の変化に悩まれるものです。運動したり食事制限をしたり…かく言う私もそうでしたからね」


大林も2人の子を持つ母親。

だからこそ出産後に悩む女性達の心に寄り添った商品を手掛ける事も出来、それも含めて高い評価と人気を維持している。


「もし宜しければ、こちらも如何でしょう」


そう言って差し出してきたのは補正下着。

今回の下着とデザインを合わせたもので、一見するとレース生地のボンテージのように見えた。


「見た目は華奢な作りをしていますが、しっかりと引き締める効果があります。あとこちら…お揃いでガーターベルトとストッキングなんかも作ってみたんですよ」


流石は商売人。

職人として滾ったのも事実だが、透の趣味嗜好と桜の好みを完璧に把握している彼女は確信を持ってそれらを持参していた。

必ず購入する…と。


「……凄い…綺麗だわ……」


読み通り桜は食いつき、ひとつひとつを丁寧に手に取ってはゆっくりと眺め、先程まであった不安からくる翳りなど無意識に霧散させた。


「補正効果でサイズに変更が出れば調整も可能ですし、また新しくお作りも致します。こちらのレースは色違いもございますし、デザインはそのままで幾つかご用意も可能ですよ」

「…そうなの?」

「えぇ。今のところ赤と黒、それから薄いピンクが取り寄せ出来ますね」

「……全部…は贅沢かしら…」

「旦那様は反対なさらないかと」


自信ありげに断言する大林の言う通り、透が桜の物欲に文句を言うことは無い。

それが下着なら尚更である。

むしろジャンジャン購入して欲しいとさえ思っており、その中に自分の好みもさりげなく取り入れさせていた。

まして今回は普段は使用しないガーターベルトまで付いたフルセット。

透が反対するはずがないと大林は確信している。

実際に試着してみた桜も頬を紅潮させ、姿見に映る自分の姿を角度を変えて何度も確認しては満足そうな笑みを浮かべた。


「…じゃぁ…同じものを色違いで…」

「畏まりました」


アッサリと商談を成立させた大林は満足気に頷くと、手早く注文書を出して内容を記載していく。

今はそれなりに名も知れた人気デザイナーとなったが、ブランドが大きくなるに連れて予算と睨めっこする日々も増えてしまう。

立川夫妻…特に透は予算など度外視で品質とデザインを求めてくれるので、大林としても楽しんで仕事が出来る上顧客だった。


「型は同じものを使用致しますので、今回より納品は早く出来るかと思います」

「分かりました。宜しくお願いします」


商品を受け取り、大林を見送る桜。

支払いは透のクレジットで落とされる。

富裕層のひとり娘として生まれ育ち、自分でお財布を開ける事をしたことは殆どない。

何が幾らなのかひとつも知らない世間知らずなところもあるが、周りがそれを良しとしているので本人も気にしたことはなかった。

ちなみに今回のフルセットは56,000円。

特注品でもあり海外から生地を取り寄せた事でかなりの高額となっている。


「……透くん…喜んでくれるかな…」


ガウンの前を開いて試着したままでいる姿を鏡に映し、期待に胸を膨らませた。






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子供達が寝静まってから帰宅した透は、ソワソワする桜の様子に首を傾げながら食事を終えて入浴も済ませ、赤ん坊と桜がいる寝室へと入った。


「もう寝たの?」

「うん。おっぱいもよく飲んだから」


ふくふくした赤ん坊は、既にベビーベッドの中でぐっすり眠っている。

子供達が『赤ちゃんも一緒がいい!!』とねだっているが、流石にまだ早いと却下し夫婦の寝室で過ごさせていた。


「いっぱい飲んで大きくなれよ」


ベビーベッドの中を覗き込んで柔らかい頬をつついていると背後から「透くん」と呼ばれ、「どうした?」と振り向けば頬を染めた桜がガウンの合わせを握りこんで立っている。


「あの…今日、大林さんがいらして…」

「あぁ、そうだったね。どうだった?気に入るものを買えた?」

「…うん……着てみたんだけど…見る?」

「着てるの?見たい」


さぁどうぞ…とばかりに桜を正面にしてベッドの縁に座り、モジモジとガウンの合わせに手をかける様子を静かに窺い待つ。

就寝前だと言うのにガウンのままで、ストッキングも履いていることにはすぐ気付いた。

隠されている全貌を想像してしまい、透の下半身は既に熱を持っている。


「…あんまり見ると…恥ずかしい……」

「恥ずかしくないから早く脱いで」


笑顔のまま急かすように言われて意を決した桜はガウンの前を開き、大林が『渾身の一作』と自画自賛したフルセットを身に着ける姿を晒した。


「………天使かよ…いや女神……?」


そう呟いた透の目は全身を舐めるように這い、愛欲に満ちた瞳を見て桜は安堵する。


「……似合う?」

「似合う。ちゃんとガウン脱いで回ってみて」

「……はい」


言われるがままに脱ぎ、透が指示する通りにゆっくりと回って見せた。

気になっていた腹部はしっかりと補正されて引き締まっており、可愛いだけに見えるショーツもお尻の形を綺麗にまとめてくれている。

そして何より、授乳中で未だ以前より大きいままの胸は美しく盛り上がるようにブラジャーに包まれ、くっきり作られている谷間は扇情的。

腰から伸びたベルトは太腿の中腹あたりでストッキングを留めており、全身を白のレースで覆う桜はさながら初夜を迎えた新婦のようだった。


「…これはヤバい…」

「え……やっぱり変…?」


ゴクリと唾を飲んで発した透の言葉に一瞬で不安な様相を見せたが、それは杞憂だったのだとすぐに思わされた。


「あっ…!!」


グイッと手を引かれてあっという間にベッドの上へと押し倒され、今度は上から見下ろされる形で透からの視姦を受ける。

その苛烈とも思える視線に戸惑いベッドをずり上がれば、その後を追うように獣じみた動きで透も乗り上げてきた。


「あ、あの…」

「ヤバいよ桜…これはヤバい…」


流石にどうヤバいのか察し、夫からの熱すぎる視線を全身に浴びて体が火照り出す。

そしてジリジリと追い詰められながら膝を立てると、透の視線はチラリと顔を覗かせた部分へ釘付けとなった。


「あっ、」


構造を思い出した桜は思わず隠そうと手を伸ばすが直ぐに掴んで阻止されてしまい、次いでトンッと押されてベッドに背を落とす。


「やっ、待って、」

「待つわけないでしょ」


桜の抵抗などなんの意味も持たず、両足首を片手で簡単に纏めるとグイッと高く持ち上げ、空いている方の手をショーツへと伸ばした。


「だめっ、待って、」

「待たないってば。静かにして、起きちゃうよ」


そう言われてしまえば口を噤む他なく、けれど拘束から逃げようと身を捩るもあえなく撃沈。

そっと触れた指先で数回なぞり、通常ならあるはずのない切れ目に滑り込ませた。


「んっ…!!」


思わずあげた声を抑えるように自ら両手で口を塞いで夫を仰ぎ見れば、口元を愉悦に綻ばせる様子に触れられている場所がひくついてしまう。


「いい子だ…そのまま塞いでてね」


ぶんぶんと首を振って抗議するが、透はニッコリ笑うだけで聞き入れようとはしない。


「いい仕事をしてくれたよ…本当に」


夫婦の営みの質と絆をより高めるスパイスになるような下着を…と望んだ透の希望を見事叶えた下着は、股の部分に薄く切れ目が入っているので難なく指を抜き差し出来る。

当然、それ以上のものも。


「…今度、これを着けてデートしようか」


何の為にとは聞かずとも分かる。


「ちょっと我慢出来ない…」


言うが否や指を抜くと今度は足を開かせ、いつの間に取り出していたのか質量のある熱いものを宛てがい、愛撫がそこそこな事に「ごめんね」と呟き一気に奥まで貫いた。


「ん………っ!!」


すぐ傍では赤ん坊が寝ているから声を漏らすことは出来ないと必死で耐えるが、そんな様子も透を煽る要因となって腰の動きは強く速くなる。


「エッロ…っ…」


妊娠中のように手加減する必要もない為、妻の媚態に欲情して本能のまま快楽を貪るように腰を振っては心地よく締め付ける隘路を味わう。

そして視線を繋がりに向ければ、純白の下着を割って己の肉棒が乱暴に出入りしており、その光景にまた滾って全力で奥を穿った。


「あぁヤバい…っ、最高だよ桜…っ…」

「んっ、んっ、」


覆い被さり耳元で小さく囁き、けれど穿つ速度と強さは変えずに攻め立てながら、口を塞いでいる手を外して深く口付ける。

上と下で繋がり溶け合うような錯覚に襲われ、更にどちらからも淫靡な音が奏でられてふたりの快楽は絶頂に向かい、やがて桜が達したことでキツく締め付け腰を震わせると、それに刺激されて透も深淵へと勢いよく吐精した。


「…っ、ヤッバ……これはダメだ…っ…」


グリグリと奥へと擦り付けながらそんな事を呟き口付けて舌を絡め余韻をも貪り、急ぎ襲われた形の桜は快楽の海に漂いぼんやりと受け入れる。





その後、デートの際はこのタイプに統一されるようになり、夫婦の絆はより深いものとなった。






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