僕の婚約者は悪役令嬢をやりたいらしい

Ringo

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王太子妃教育

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 僕達は13歳の頃から王太子宮で同居している。

 王太子妃に宛てがわれる部屋はすっかりラシュエルの私物で埋め尽くされ、一緒に過ごすのは僕の部屋との間にある“王太子夫妻用”の部屋。

 まだ夫婦ではないけど。

 甘えたなラシュエルは僕にピッタリくっついて過ごし、何も言わず席を立とうものなら泣きそうな顔になる。


「何処に行くの……?」

「何処にも行かないよ、新しい本を取ってくるだけ。何も言わずに立ち上がってごめんね」


 謝って軽く口付けると「わたくしも一緒に行きます」と言ってついてきた。

 普段から甘えたではあるけど“正妃の務め”なる教育が施された日は特に甘えたがる。

 今日はその日だった。

 ─殿下は好意を寄せられて然るべき存在
 ─側妃や愛妾を管理できてこそ正妃の器
 ─殿下には多くの子孫を残す責務がございます


 初潮が始まった13歳から側妃や愛妾についての慣習が講義されるようになり、ラシュエルは一時期体調を崩して塞ぎこんだ。

 心配して理由を尋ねても教えてはくれず、妃教育が辛くて婚約を解消されてしまうのではないかと不安な日々を送っていた。

 どんな内容なのかを知らずに。


『暫く王太子妃教育を休ませたい』


 憔悴するラシュエルの肩を抱いたノビエラ公爵にそう言われた時には目の前が真っ暗になって、足元がぐらつき絶望の淵に落とされた。


『いっ、いやだ!!別れたくない!!王太子妃がいやなら僕も王太子になんてならない!!ラシュエルを愛してるんだ!!お願いだ…っ、お願いします…僕からラシュエルを奪わないで……っ!!』


 ボロボロと泣き崩れた僕をラシュエルはそっと抱き締めてくれて。


『わた…っ、わたくしも傍にいたい…っ…わたくしも愛してます……っ』


 わんわん泣きながら抱き合う僕らを離すべきではないと判断した周囲は、暫く講義を休み王太子宮でゆっくりふたりで過ごすことになった。

 そこで初めて知った王太子妃教育の内容に愕然とし、怒りに満ち溢れた状態で父上に直談判。


『側妃を持てと言うなら王太子を辞退します』

『何も結婚してすぐの話ではないぞ。男児を3年以内にひとりでも儲ければ必要ない』

『っ~~~何人でも作ってやる!!』


 そんな捨て台詞を吐いて乱暴に部屋を出た。

 今となればもっと冷静になれなかったものかと思えるけど…もし期限内に男児が生まれなくとも側妃を持つつもりはない。


「ねぇ、ラシュエル。覚えてる?もしも子供が出来なかったらって話した時のこと」


 適当に本を選びながらそう問いかける。


「えぇ…わたくしはどのような状況でもマリウス様と共におります」


 変わらぬ答えにホッとして抱き締めた。


「僕も…ラシュエル以外いらない」


 王族として、貴族として生まれ育った僕達がそこから抜け出して生きていこうなど無謀な考え。

 それでも…そうだとしても、最期まで共に生きるのはラシュエルがいい。

 もしもの時の為に体を鍛え、個人財産を運用し増やしておこう。

 平民の暮らしを知っておく必要もある。


「マリウス様……愛してる」

「僕も愛してるよ」


 平民は婚姻前に契るのも普通らしい。

 羨ましいと思っているなんて言ったら笑うだろうか……いや、わたくしもって言いそうだな。


「ラシュエル…そろそろ寝ようか」

「……はい」


 ひとつになれるまで3年。

 その日を心待ちにして、今は仮初でも君の温もりに浸っていたい。






 ✼••┈┈••✼••┈┈••✼••┈┈••✼••┈┈••✼






 静かに寝息を立てているラシュエルを見つめながら、つい先程までの光景を思い出し…


『それ以上は、あっ、ダメっ、』

『大丈夫、っ、奥には挿れないから…っ』


 碌でなしな男が言う台詞だったなと苦笑してしまうが、少しだけ割り入った時に感じた熱が未だに残って疼いてしまう。

 いつもなら擦り合わせたり太ももに挟んで吐精するだけなのに、今日はどうしてもラシュエルの中に入りたくて無理やり押し込んだ。


『あっ、だめっ、赤ちゃん出来ちゃ、あっ、』


 うっかり散らしてしまうところだった。

 仮に散らして奥へ吐き出しても、念の為にと避妊薬を飲んでいるから子供は出来ない。

 下へと手を伸ばして柔らかな下生えを掻き分ければ、秘する場所はふたりのものでぐっしょりと濡れていて、それを混ぜるように指を動かしながら…絡めたものを中へと塗り込む。


「……っ………ん…………マリウス…さま…?」

「起こしちゃったね、ごめん。もう1回」

「な…に…あっ、、」


 夢現のラシュエルに有無を言わせず屹立の先端を押し込み腰を揺らすと、クポクポと卑猥な音が響いて甘い嬌声がそれに重なる。


「気持ちいいよ、ラシュエル……っ…これからはこうやって愛し合おう…っ」






 喘ぎ過ぎでぐったりしてしまったラシュエルを抱き締め労わっていると、もじもじしながら上目遣いで見つめてきた。


「どうした?」

「……これでもう…初夜も辛くないかなって」

「ん?」

「だって……殆ど入っていたでしょう?すごく苦しかったもの」

「……………………いや」

「え?」

「……………………半分も入っていない…というか先端を入れた程度…かな」

「…………えっ!?あんなに大きかったのに!?」

「嬉しいけどそれ以上は言わないで」


 また襲いたくなるから。





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