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【大人風味】祖父母とのお茶会
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王太子妃の座を狙い、悪逆の限りを尽くしていた侯爵家が処刑され消えた。それに伴い、ひとりの男とその両親も。
「…美味しい?」
「とっても。マリウスも食べる?」
ラシュエルに薬を盛っていた実行犯の副料理長が、その生を終える時に言っていた…
『妃殿下は、青色の果物をお好みです』
その言葉通り、確かにラシュエルには青色をした果物がよく出されていたように思う。
「これはね、マリウスが視察で不在の時は毎日食べていたの」
葡萄のように小さな実をつけたものを、ひとつひとつ大切そうに口に運んでいる。口元に、果汁が零れて思わず舐め取った。
「──っ、マリウス…」
「うん、美味しい」
顔を赤くして、小さな実を僕の顔に近付け…
「ほら…マリウスの瞳と一緒」
だから食べていたのだと、そう恥ずかしそうに微笑む姿が愛しくて…ラシュエルの指ごと小さな実を頬張った。
「マリウスっ──」
「もう体は平気?」
「…だいぶ楽になってきたわ」
薬を絶ってからラシュエルは少しずつ回復してきており、今ではだいぶ落ち着いてきた。公務も回数を増やし、執務も徐々に戻しつつある。
「王妃様にはご迷惑をおかけしたわよね…」
「まだまだ現役だからと張り切っていたよ」
ラシュエルがすべき仕事は、療養するにあたり母上が代行してくれていた。
「あとでちゃんとお礼がしたいわ」
「そうだね、お祖父様にも」
そう言えば、お祖父様が愛人を囲っていた離宮を出てお祖母様の元に移ったらしい。父上達が生まれて間もなく別居となったと聞いていたのに、何がどうしてこうなったのか…かなり仲睦まじいと使用人達が話していたが信じがたい。
「今日はもう湯浴みをしてゆっくりしよう」
「ゆっくり?」
口角をあげて笑みを浮かべるのは、間違いなくエドワードの妹なのだと思わせる。
「ゆっくりは…しないかな?」
「ゆっくりしてもいいのよ?」
「…意地悪はダメだよ、ほら行こう」
手を引いて浴室に向かえば、クスクス笑いながらも抵抗することなくついてきてくれる。あとどのくらいで薬の効果が消えるのか…子が宿るまで分からないけれど、僕は変わらずにラシュエルを愛し注ぎ込むだけ。
本音を言えば、ラシュエルとの房事を禁止されなくてよかった…いや、子が出来たらそれこそ暫くは禁止されるのか。
「マリウス?」
ラシュエルの服と下着を脱がせ、そのまま裸を凝視し固まってしまっていた。なんとなく、まだ薄いこのお腹に子が宿るのかと思い昂って。
「…ラシュエルを孕ませたい…」
「え…」
きょとんとする様子が可愛くて、深く口付け舌を絡めながら自分の服を乱暴に脱ぎ捨てていく。
細くて柔らかい体は、僕がどれだけ激しく愛し攻め立てても壊れることなく受け入れてくれ、優しく触れるだけでしとどに潤いを増す。
「ラシュエルっ…」
夜毎愛しているのに、いくら抱いてもラシュエルを求めて疼きがやむことはない。我慢できず早急に入り込もうと、そこはいつでも僕を優しく包み込んでくれる。
「…ラシュエル…っ…」
「マリウス…っ」
温かくて…時には熱いくらいに感じるラシュエルの中は、一度入れば二度と出ていきたくない感情に支配されそうになる。
きゅうきゅうと締め付けられれば、あっという間に理性が吹き飛んで夢中で腰を打ち付ける。
言葉通り震えるほどの快感から吐精をしても、子種を満遍なく塗り込むように腰を回して余韻に浸ればその快感からまた硬度を取り戻して律動を開始する、その繰り返し。
「ラシュエル…気持ちいい…っ、愛してる」
僕の子種とラシュエルの密が混ざり合い、くちゅくちゅと響く音がより昂らせて腰が止まらない。
ラシュエルの甘い嬌声…突くたびに締め付け畝る襞の動き…溢れる密…全てが愛しい。けれど、この快感をほかの女で得たいなど思わない。
愛しているから抱きたい…それだけ。
「ラシュエル…気持ちいい?」
「きもち、いい…っ」
冷静な振りをして緩慢な動きに変えても、鼓動は速いし本当は激しく穿ちたい…それでも、一緒に気持ち良くなりたいからラシュエルの様子を見ながらトントンと奥を突く。
…まぁ…一発目は無我夢中で放ったけれども。
「…っどこが好き…?」
「お、く…っ、あ、そこもっ…」
結局のところ全部で、だけど奥をコツコツするとより甘い声をあげる。子を宿す神聖な場所の入り口は、ラシュエルが昂ればそれだけ強く吸い付いてきて、僕の子種を早く早くと強請る。
「まだ…っだよ…」
ドレスを強請られるより、高価な宝石を強請られるより…僕にしか与えられない贈り物を、乱れながら強請る姿がたまらない。
「もっと…もっと…っ…マリウスッ…」
突けば突くほど奧は解れて、固く守られているはずの場所に僕を招き入れようとするから、力強く打ち込めば僅かに先が飲み込まれて吐精感が襲ってくる。
「ラシュエル…っ、、」
腰を掴み、より密着させれば隙間なく出入りする自分自身が卑猥で厭らしい。
「出すよ、、飲んで…っ」
暴力的なまでに激しく穿ち、ラシュエルが達したのを追い掛けるように解き放つ。
「あ、あ、、」
どくどくと流れ込む子種に恍惚とした表情で喜ぶから…一滴残らず奥へ届けるようにぐいっと腰を押した。
「…ラシュエル…」
極限まで速まった鼓動が落ち着くのを待ち、盛大に達して脱力したままのラシュエルを抱えて浴室へと移動する。
温かい湯が張られた浴槽に浸かれば、くたりと寄りかかってくるラシュエルが可愛い。
「…大丈夫?」
「ん…大丈夫…」
ちゃぷ…ちゃぷ…と湯で遊ぶ後ろから抱き締め、たっぷりと中に注いだばかりのお腹を触れば華奢な手を重ねてきた。
「最初はどっちがいい?男の子か女の子」
「どちらでもいいけど…欲を言えば、ラシュエルによく似た娘は欲しいかな」
「でもきっと髪色は銀ね」
「ラシュエルの髪色好きなのにな…」
淡くてキラキラ光る金髪は、昔から僕のお気に入りだ。娘も同じならいいのに。
「でも、見た目ラシュエルなのに僕の髪色って言うのも…なかなかいいね」
「そうでしょ?わたくしはマリウスによく似た男の子がいいわ。幼い頃のあなたを思わせてくれそうで楽しみなの」
「…ベタベタしないでね」
いくら息子と言えど、僕のラシュエルを独占されて構われなくなるのは嫌だ。なんなら母乳すらあげさせたくない。
「それを言うならマリウスもよ?わたくしの事を放って娘ばかり可愛がったら、寂しくなってしまうわ…ちゃんと構ってね?」
「しつこいくらいに構うよ…ねぇ…母乳も飲んでいい?」
「いいけど…子供の分は残してね?」
「………」
「マリウス?」
その時はその時で考えよう。今はまだふたりの時間だから、思う存分じゃれ合おう。
今夜もまだまだ愛し足りない。
********
「そう言えば、そろそろ都合がつきそうだよ」
「サラの故郷?」
「子が出来たら遠出も出来なくなるしね、その前に行ってきたらと父上達も賛成してくれた」
サラの出生や血筋については、タイミングを見てラシュエルに話すことになっている。本来は譲位されてからが通例らしいけれど、既に僕がお祖父様から聞いていたことが起因した。
「青薔薇を持たせるようにって」
「そう…サラも喜ぶわ」
北の辺境地まで、ナルジスカの王女がどのようにして辿り着いたのか…共に姿を消した婚約者はどうしているのか。そして、果たしてサラはその婚約者の子供なのか。
北に行けば、何かしら手掛かりがあるかもしれない。お祖父様が既にあらかた調べてはいるだろうけれど、見落としている点もあるはずだ。
「ねぇ、マリウス」
「ん?」
「お祖父様とお祖母様…仲直りしたのかしら」
愛人を全て切り、お祖母様が暮らす離宮へと引っ越したお祖父様。離宮からは殆ど出ず、なんなら寝室から出てこない日も多いとか。
「大妃様…お綺麗だったわ」
確かに、お祖母様は孫までいるとは思えないほどに美しい女性だと思う。実際、その年齢も若いけれど。
「かなり若くしてご結婚されたのよね?」
「そうだね…お祖母様が父上を身籠ったのは、まだ14歳の時だったらしいし。早く結婚したいとお祖父様がかなりごねたそうだよ」
「…でも、多くの女性をお側に置いたのね」
お祖父様の気持ちは推し量れない。好いて自分のものにと望んだ女性を孕ませ、それなのに他の女性も囲うなんて。
「お祖父様は…どうして妾は持たれなかったのかしら。多くの女性を側に置いても、婚姻されたのはお祖母様だけでしょう?」
「確かにね…子もお祖母様が生んだふたりだけだし、何かしら考えていたのかな」
「…マリウスはダメよ…たとえ婚姻しなくてもダメ…傍にいるのはわたくしだけ」
いもしない存在に、今後もあり得ることのない事に嫉妬しては、その心の歪みを直すかのように求め合う。もう何度も繰り返してきたこと。これからも繰り返すであろうこと。
「ラシュエル…愛してるよ」
「わたくしも、マリウスを愛してるわ」
******
北へ向かうまで数日となったよく晴れた日、お祖父様から呼び出しを受けてラシュエルと共に離宮へと赴いた。
「ドキドキする…」
落ち着いた色合いで、けれどどこか温もりを感じるお祖母様の離宮。庭に用意された席に座りお祖父様達を待っているのだけれど、ラシュエルはソワソワとして落ち着かない。とは言っても、それに気付くのは僕くらい。
「結婚式にも参列はなかったしね。ちゃんと会うのは初めてに近いくらい?」
「えぇ…幼い頃に少しだけ…あ…」
「いらしたね」
お祖母様の腰を抱いて、優雅な足取りでこちらに向かってくるお祖父様は何故かしたり顔。
「よく来たな、ラシュエルも久し振りだ」
鷹揚に話し出すお祖父様の隣で、お祖母様は優しい笑みを浮かべている。
「本当に久し振りね」
「お久し振りでごさいます」
「固いのはやめて、楽しみましょう」
実のところ、僕もお祖母様とはあまり交流がないに等しい。そのくらい離宮に籠られていたから。
「口に合うかしら。最近のお気に入りなのだけど、蜂蜜を垂らしてみて?」
そう言って出されたお茶を見ると、薄い青色をしていた。言われるがまま少し蜂蜜を垂らすと、青色からピンクに変わった。
「素敵…」
青色のお茶に銀のスプーン…それが淡い金色の蜂蜜を垂らせばピンク色に。なんだこれ!?
ラシュエルは、僕達のような色合いを持つお茶をキラキラと目を輝かせて見ている。
「凄いでしょう?まるであなた達を表したようなお茶なの。味もスッキリとして美味しいわよ」
楽しそうに話すお祖母様に、相変わらず腰を抱いたままニコニコしているお祖父様。僕達の存在など気にもしていない。
「…美味しい」
「ね?良かったわ、口に合って。ラシュエルはお茶が好きだと聞いていたから、是非お薦めしたくて呼んだの。これは妊娠中でも安心よ」
「まぁ…ありがとうございます」
本当に美味しい…スッキリとして、朝や執務中に飲んだら気分も晴れそうだ。ラシュエルを思わせる色をしているし。
「初めて頂くお茶ですわ」
「そうだと思うわ。ナルジスカ産だもの」
「「え…?」」
あまりにも普通に出された名前に、僕とラシュエルは声を合わせて驚いてしまった。
「安心して、先ほど言ったように妊娠中でも飲める安全なものよ。そもそも、あの薬だって用法を守れば害はないの」
お祖母様は避妊薬を取り寄せる原因となったお祖父様をジロリと睨むが、それすらも愛しいといったように頬に口付けている。
「…もうっ!話をするんじゃありませんの?」
「そうだな、さっさと終わらせて戻ろう」
一頻りお祖母様を愛でて、お茶をひとくち含んで茶器を置くと空気が変わった。
「北へ行くそうだな」
あぁ、やっぱりこの事だ。
「はい、サラを連れて向かいます」
「そうか…では、改めてラシュエルにも話しておこう。デュスランには伝えてある。サラとナルジスカ王国についてだ」
ラシュエルが理解しようと頭を働かせているのが伝わってくる。ごめんね、話せておければ戸惑わせることもなかったのに。
「ナルジスカ王国は────」
お祖父様から語られる真実と悲劇に、ラシュエルは溢れそうになる涙を必死で耐えていた。
「サラ…」
「この事はまだ秘する必要がある。今は手を引いているナルジスカも、裏では調査と捜索を続けている…恐らくサラにも影がついているだろう」
表向き滅びかけているナルジスカの生き残り…消えた王女の忘れ形見であるサラ。その身に危険がないとは言い切れない。
「産み捨てられたのが北の辺境地であった事や、齢10歳にして公爵家に入ったことが幸いした」
「あの…わたくしの父はこの事を…」
「知らんはずだ。だがあの男はなかなか食えんからな…知っていて、もしくは気付いていて黙っている可能性もある」
「そう…ですか……」
義父の顔を思い出すと、確かに食えない人だと納得出来た。そしてエドワードはよく似ている。
「辺境伯夫妻には俺からも手紙を書いておくから何かあれば頼れ。それでなくとも王太子夫妻が出向くのだから、警備は万全だろうがな」
確かに…それに、あの女辺境伯がいればちょっとやそっとじゃ薙ぎ払って終わりだろうな。
「それでも気を抜くなよ、マリウス。ラシュエルを狙う輩はまだまだいるぞ」
「──っ、承知しています」
まさかの脅しを受け、用は済んだとばかりにさっさと戻っていくお祖父様達を見送ると思わず溜息が出た。
新婚旅行にもなる北行きを楽しみにしていたのに、余計な波風を立てないでほしい。
「…大人気ですわね、マリウス」
「僕だけじゃなくてラシュエルもだよ」
何はともあれ、もうすぐ北の辺境地だ。サラの姉とも呼べる人の墓参りもあわせて、充実した楽しい時間だけ過ごせればいい。
「…美味しい?」
「とっても。マリウスも食べる?」
ラシュエルに薬を盛っていた実行犯の副料理長が、その生を終える時に言っていた…
『妃殿下は、青色の果物をお好みです』
その言葉通り、確かにラシュエルには青色をした果物がよく出されていたように思う。
「これはね、マリウスが視察で不在の時は毎日食べていたの」
葡萄のように小さな実をつけたものを、ひとつひとつ大切そうに口に運んでいる。口元に、果汁が零れて思わず舐め取った。
「──っ、マリウス…」
「うん、美味しい」
顔を赤くして、小さな実を僕の顔に近付け…
「ほら…マリウスの瞳と一緒」
だから食べていたのだと、そう恥ずかしそうに微笑む姿が愛しくて…ラシュエルの指ごと小さな実を頬張った。
「マリウスっ──」
「もう体は平気?」
「…だいぶ楽になってきたわ」
薬を絶ってからラシュエルは少しずつ回復してきており、今ではだいぶ落ち着いてきた。公務も回数を増やし、執務も徐々に戻しつつある。
「王妃様にはご迷惑をおかけしたわよね…」
「まだまだ現役だからと張り切っていたよ」
ラシュエルがすべき仕事は、療養するにあたり母上が代行してくれていた。
「あとでちゃんとお礼がしたいわ」
「そうだね、お祖父様にも」
そう言えば、お祖父様が愛人を囲っていた離宮を出てお祖母様の元に移ったらしい。父上達が生まれて間もなく別居となったと聞いていたのに、何がどうしてこうなったのか…かなり仲睦まじいと使用人達が話していたが信じがたい。
「今日はもう湯浴みをしてゆっくりしよう」
「ゆっくり?」
口角をあげて笑みを浮かべるのは、間違いなくエドワードの妹なのだと思わせる。
「ゆっくりは…しないかな?」
「ゆっくりしてもいいのよ?」
「…意地悪はダメだよ、ほら行こう」
手を引いて浴室に向かえば、クスクス笑いながらも抵抗することなくついてきてくれる。あとどのくらいで薬の効果が消えるのか…子が宿るまで分からないけれど、僕は変わらずにラシュエルを愛し注ぎ込むだけ。
本音を言えば、ラシュエルとの房事を禁止されなくてよかった…いや、子が出来たらそれこそ暫くは禁止されるのか。
「マリウス?」
ラシュエルの服と下着を脱がせ、そのまま裸を凝視し固まってしまっていた。なんとなく、まだ薄いこのお腹に子が宿るのかと思い昂って。
「…ラシュエルを孕ませたい…」
「え…」
きょとんとする様子が可愛くて、深く口付け舌を絡めながら自分の服を乱暴に脱ぎ捨てていく。
細くて柔らかい体は、僕がどれだけ激しく愛し攻め立てても壊れることなく受け入れてくれ、優しく触れるだけでしとどに潤いを増す。
「ラシュエルっ…」
夜毎愛しているのに、いくら抱いてもラシュエルを求めて疼きがやむことはない。我慢できず早急に入り込もうと、そこはいつでも僕を優しく包み込んでくれる。
「…ラシュエル…っ…」
「マリウス…っ」
温かくて…時には熱いくらいに感じるラシュエルの中は、一度入れば二度と出ていきたくない感情に支配されそうになる。
きゅうきゅうと締め付けられれば、あっという間に理性が吹き飛んで夢中で腰を打ち付ける。
言葉通り震えるほどの快感から吐精をしても、子種を満遍なく塗り込むように腰を回して余韻に浸ればその快感からまた硬度を取り戻して律動を開始する、その繰り返し。
「ラシュエル…気持ちいい…っ、愛してる」
僕の子種とラシュエルの密が混ざり合い、くちゅくちゅと響く音がより昂らせて腰が止まらない。
ラシュエルの甘い嬌声…突くたびに締め付け畝る襞の動き…溢れる密…全てが愛しい。けれど、この快感をほかの女で得たいなど思わない。
愛しているから抱きたい…それだけ。
「ラシュエル…気持ちいい?」
「きもち、いい…っ」
冷静な振りをして緩慢な動きに変えても、鼓動は速いし本当は激しく穿ちたい…それでも、一緒に気持ち良くなりたいからラシュエルの様子を見ながらトントンと奥を突く。
…まぁ…一発目は無我夢中で放ったけれども。
「…っどこが好き…?」
「お、く…っ、あ、そこもっ…」
結局のところ全部で、だけど奥をコツコツするとより甘い声をあげる。子を宿す神聖な場所の入り口は、ラシュエルが昂ればそれだけ強く吸い付いてきて、僕の子種を早く早くと強請る。
「まだ…っだよ…」
ドレスを強請られるより、高価な宝石を強請られるより…僕にしか与えられない贈り物を、乱れながら強請る姿がたまらない。
「もっと…もっと…っ…マリウスッ…」
突けば突くほど奧は解れて、固く守られているはずの場所に僕を招き入れようとするから、力強く打ち込めば僅かに先が飲み込まれて吐精感が襲ってくる。
「ラシュエル…っ、、」
腰を掴み、より密着させれば隙間なく出入りする自分自身が卑猥で厭らしい。
「出すよ、、飲んで…っ」
暴力的なまでに激しく穿ち、ラシュエルが達したのを追い掛けるように解き放つ。
「あ、あ、、」
どくどくと流れ込む子種に恍惚とした表情で喜ぶから…一滴残らず奥へ届けるようにぐいっと腰を押した。
「…ラシュエル…」
極限まで速まった鼓動が落ち着くのを待ち、盛大に達して脱力したままのラシュエルを抱えて浴室へと移動する。
温かい湯が張られた浴槽に浸かれば、くたりと寄りかかってくるラシュエルが可愛い。
「…大丈夫?」
「ん…大丈夫…」
ちゃぷ…ちゃぷ…と湯で遊ぶ後ろから抱き締め、たっぷりと中に注いだばかりのお腹を触れば華奢な手を重ねてきた。
「最初はどっちがいい?男の子か女の子」
「どちらでもいいけど…欲を言えば、ラシュエルによく似た娘は欲しいかな」
「でもきっと髪色は銀ね」
「ラシュエルの髪色好きなのにな…」
淡くてキラキラ光る金髪は、昔から僕のお気に入りだ。娘も同じならいいのに。
「でも、見た目ラシュエルなのに僕の髪色って言うのも…なかなかいいね」
「そうでしょ?わたくしはマリウスによく似た男の子がいいわ。幼い頃のあなたを思わせてくれそうで楽しみなの」
「…ベタベタしないでね」
いくら息子と言えど、僕のラシュエルを独占されて構われなくなるのは嫌だ。なんなら母乳すらあげさせたくない。
「それを言うならマリウスもよ?わたくしの事を放って娘ばかり可愛がったら、寂しくなってしまうわ…ちゃんと構ってね?」
「しつこいくらいに構うよ…ねぇ…母乳も飲んでいい?」
「いいけど…子供の分は残してね?」
「………」
「マリウス?」
その時はその時で考えよう。今はまだふたりの時間だから、思う存分じゃれ合おう。
今夜もまだまだ愛し足りない。
********
「そう言えば、そろそろ都合がつきそうだよ」
「サラの故郷?」
「子が出来たら遠出も出来なくなるしね、その前に行ってきたらと父上達も賛成してくれた」
サラの出生や血筋については、タイミングを見てラシュエルに話すことになっている。本来は譲位されてからが通例らしいけれど、既に僕がお祖父様から聞いていたことが起因した。
「青薔薇を持たせるようにって」
「そう…サラも喜ぶわ」
北の辺境地まで、ナルジスカの王女がどのようにして辿り着いたのか…共に姿を消した婚約者はどうしているのか。そして、果たしてサラはその婚約者の子供なのか。
北に行けば、何かしら手掛かりがあるかもしれない。お祖父様が既にあらかた調べてはいるだろうけれど、見落としている点もあるはずだ。
「ねぇ、マリウス」
「ん?」
「お祖父様とお祖母様…仲直りしたのかしら」
愛人を全て切り、お祖母様が暮らす離宮へと引っ越したお祖父様。離宮からは殆ど出ず、なんなら寝室から出てこない日も多いとか。
「大妃様…お綺麗だったわ」
確かに、お祖母様は孫までいるとは思えないほどに美しい女性だと思う。実際、その年齢も若いけれど。
「かなり若くしてご結婚されたのよね?」
「そうだね…お祖母様が父上を身籠ったのは、まだ14歳の時だったらしいし。早く結婚したいとお祖父様がかなりごねたそうだよ」
「…でも、多くの女性をお側に置いたのね」
お祖父様の気持ちは推し量れない。好いて自分のものにと望んだ女性を孕ませ、それなのに他の女性も囲うなんて。
「お祖父様は…どうして妾は持たれなかったのかしら。多くの女性を側に置いても、婚姻されたのはお祖母様だけでしょう?」
「確かにね…子もお祖母様が生んだふたりだけだし、何かしら考えていたのかな」
「…マリウスはダメよ…たとえ婚姻しなくてもダメ…傍にいるのはわたくしだけ」
いもしない存在に、今後もあり得ることのない事に嫉妬しては、その心の歪みを直すかのように求め合う。もう何度も繰り返してきたこと。これからも繰り返すであろうこと。
「ラシュエル…愛してるよ」
「わたくしも、マリウスを愛してるわ」
******
北へ向かうまで数日となったよく晴れた日、お祖父様から呼び出しを受けてラシュエルと共に離宮へと赴いた。
「ドキドキする…」
落ち着いた色合いで、けれどどこか温もりを感じるお祖母様の離宮。庭に用意された席に座りお祖父様達を待っているのだけれど、ラシュエルはソワソワとして落ち着かない。とは言っても、それに気付くのは僕くらい。
「結婚式にも参列はなかったしね。ちゃんと会うのは初めてに近いくらい?」
「えぇ…幼い頃に少しだけ…あ…」
「いらしたね」
お祖母様の腰を抱いて、優雅な足取りでこちらに向かってくるお祖父様は何故かしたり顔。
「よく来たな、ラシュエルも久し振りだ」
鷹揚に話し出すお祖父様の隣で、お祖母様は優しい笑みを浮かべている。
「本当に久し振りね」
「お久し振りでごさいます」
「固いのはやめて、楽しみましょう」
実のところ、僕もお祖母様とはあまり交流がないに等しい。そのくらい離宮に籠られていたから。
「口に合うかしら。最近のお気に入りなのだけど、蜂蜜を垂らしてみて?」
そう言って出されたお茶を見ると、薄い青色をしていた。言われるがまま少し蜂蜜を垂らすと、青色からピンクに変わった。
「素敵…」
青色のお茶に銀のスプーン…それが淡い金色の蜂蜜を垂らせばピンク色に。なんだこれ!?
ラシュエルは、僕達のような色合いを持つお茶をキラキラと目を輝かせて見ている。
「凄いでしょう?まるであなた達を表したようなお茶なの。味もスッキリとして美味しいわよ」
楽しそうに話すお祖母様に、相変わらず腰を抱いたままニコニコしているお祖父様。僕達の存在など気にもしていない。
「…美味しい」
「ね?良かったわ、口に合って。ラシュエルはお茶が好きだと聞いていたから、是非お薦めしたくて呼んだの。これは妊娠中でも安心よ」
「まぁ…ありがとうございます」
本当に美味しい…スッキリとして、朝や執務中に飲んだら気分も晴れそうだ。ラシュエルを思わせる色をしているし。
「初めて頂くお茶ですわ」
「そうだと思うわ。ナルジスカ産だもの」
「「え…?」」
あまりにも普通に出された名前に、僕とラシュエルは声を合わせて驚いてしまった。
「安心して、先ほど言ったように妊娠中でも飲める安全なものよ。そもそも、あの薬だって用法を守れば害はないの」
お祖母様は避妊薬を取り寄せる原因となったお祖父様をジロリと睨むが、それすらも愛しいといったように頬に口付けている。
「…もうっ!話をするんじゃありませんの?」
「そうだな、さっさと終わらせて戻ろう」
一頻りお祖母様を愛でて、お茶をひとくち含んで茶器を置くと空気が変わった。
「北へ行くそうだな」
あぁ、やっぱりこの事だ。
「はい、サラを連れて向かいます」
「そうか…では、改めてラシュエルにも話しておこう。デュスランには伝えてある。サラとナルジスカ王国についてだ」
ラシュエルが理解しようと頭を働かせているのが伝わってくる。ごめんね、話せておければ戸惑わせることもなかったのに。
「ナルジスカ王国は────」
お祖父様から語られる真実と悲劇に、ラシュエルは溢れそうになる涙を必死で耐えていた。
「サラ…」
「この事はまだ秘する必要がある。今は手を引いているナルジスカも、裏では調査と捜索を続けている…恐らくサラにも影がついているだろう」
表向き滅びかけているナルジスカの生き残り…消えた王女の忘れ形見であるサラ。その身に危険がないとは言い切れない。
「産み捨てられたのが北の辺境地であった事や、齢10歳にして公爵家に入ったことが幸いした」
「あの…わたくしの父はこの事を…」
「知らんはずだ。だがあの男はなかなか食えんからな…知っていて、もしくは気付いていて黙っている可能性もある」
「そう…ですか……」
義父の顔を思い出すと、確かに食えない人だと納得出来た。そしてエドワードはよく似ている。
「辺境伯夫妻には俺からも手紙を書いておくから何かあれば頼れ。それでなくとも王太子夫妻が出向くのだから、警備は万全だろうがな」
確かに…それに、あの女辺境伯がいればちょっとやそっとじゃ薙ぎ払って終わりだろうな。
「それでも気を抜くなよ、マリウス。ラシュエルを狙う輩はまだまだいるぞ」
「──っ、承知しています」
まさかの脅しを受け、用は済んだとばかりにさっさと戻っていくお祖父様達を見送ると思わず溜息が出た。
新婚旅行にもなる北行きを楽しみにしていたのに、余計な波風を立てないでほしい。
「…大人気ですわね、マリウス」
「僕だけじゃなくてラシュエルもだよ」
何はともあれ、もうすぐ北の辺境地だ。サラの姉とも呼べる人の墓参りもあわせて、充実した楽しい時間だけ過ごせればいい。
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