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第2章 林間学校&葵 編
部活動開始
しおりを挟む──放課後。
「よぉーし、部活に行くか!」
今日は待ちに待った部活に行く日だ。俺は本当に本当に心待ちにしていた。
「……そうね。」
俺はいつにも増してハイテンションだが、雫は少しだけ緊張しているのか口数がいつもより少なくなっていた。
俺と雫はまず初めにサッカー部の顧問の先生に挨拶に行くため移動を開始する。
確か顧問の先生の名前は……若宮先生と言ったかな。奈緒先生に予め聞いておいたのだ。
もう、そろそろ部活が始まる時間だ。部活が始まると、先生が職員室からいなくなってしまう可能性がある。そうなると探すのが大変だし、1度部活を中断して貰わないといけなくなる。それは先輩達に申し訳ない。なので、善は急げだ。俺と雫は部活が始める前に職員室急いで向かった。
「──失礼します。」
2人で職員室へ入り、顧問の先生を探す。
職員室に突然男の俺が現れた事で、それなりに職員室がザワついたが、別に俺は気にしない。こういうのには日々を過ごすうちに慣れたのだ。
「いないね。」
「……そう、ね。」
若宮先生はおばあさん先生と聞いていて、見つけるのは簡単なはずなのだけど……職員室に若宮先生らしき先生は見当たらない。
「──優馬君と雫さん。職員室に来たのは部活の事ですか?」
すると、職員室にたまたまいた奈緒先生から呼び止められた。
「はい、そうですけど?」
「一足遅かったですね。若宮先生なら既に部活に行ってしまいましたよ。」
「そ、そうだったんですか。じゃあ、直接部活に行きます。」
若宮先生はどうやら行動が速い先生らしいな。
俺と雫は奈緒先生にお礼をして職員室を出た。
☆☆☆
サッカー部はグランドで活動をしているはずなので、荷物を持って外に出た。
ここから奥の方のグランドでサッカー部が活動しているのが見えた。
「おぉーやってるやってる!」
まだ、遠くで顧問の先生がいるかは分からないけど、目的地が分かったので後はそこに行くだけだ。
「行こ、雫。」
「……えぇ。」
流石に手は周りの目があるので繋がないが、どうにかして雫の緊張を解してあげたいなとは思った。
そんなことを考えながらグランドを見ていると、校舎側のグランドで活動している野球部の練習風景が俺の目に入る。
この高校の野球部は全国常連の超強豪校らしくて、エグいハードな練習を行っていた。見てても辛いと分かる。
「お!あれって、もしかして春香か?」
そんな野球部を見ていると、土まみれ汗まみれの春香を見つけ、つい声を出してしまった。
春香はかなり集中しているようで、俺から見られている事には一切気付いていない。そんな春香は圧倒的身体能力で練習から他を圧倒していた。
瞬間的な判断能力、それに呼応するかのように動く筋肉、そこから圧倒的な瞬発力が作り出され、ボールの前まで移動する。そしてボールをワザと難しく捕り、練習をしている。度胸もすごいや。
春香が1年生でまだ部活に入りたてとは思えないほどの存在感を放っていた。
野球のルールを余り知らない俺でも凄いと賞賛を送ってしまいたくなる。応援したくなる。さすがスポーツ推薦は伊達じゃないと思った。
そんな俺は少しだけ春香の事を見すぎだったのだろうな……
気付くと、俺の目の前に立っていた雫が俺を見て顔を膨らませていた。
「あ……雫、どうか……したの?」
「……春香の事、見すぎ。早く部活行こ。」
なんだろう。さっきまで緊張してガチガチだった雫だけど、今の雫は何故か俺の事を引っ張るくらいに部活に行きたがっていた。緊張が解れた?みたいだから、まぁ結果オーライかな。
「あ、ちょっと待ってよ、雫。」
俺と少しだけ距離を取って歩く雫。これは雫が拗ねている時によくやる行動だ。
なので、いつも通り俺は雫を追い掛けるのであった。
☆☆☆
グランドに着くと、丁度サッカー部は練習の試合をしていた。
サッカー部は野球部ほどの超強豪校などでは無いが、それなりに強い部で全国出場も充分に狙えるという。なので、見てて分かるが一人一人のサッカーの技術が高かった。
この感じ……懐かしいっ!と、久々のサッカーに懐かしさと興奮を感じつつ、俺は眺めていた。体は既に疼き、今にも参加させてもらいたいほどだった。
「……ねぇ、あそこにいるのが顧問の先生なんじゃない?」
そんな俺を他所に、雫がグランドの端っこの方に座っている顧問の先生らしき人物を見つけた。なので俺達はその人の元へと向かった。
顧問の先生らしき人はやはり顧問の若宮先生のようで、赤いジャージ姿の60代くらいのおばあさんだった。
「あのーすいません。若宮先生ですか?」
部活の邪魔はしないようにと配慮しながらも、先生に聞こえるように言う。
「そうだけど、って……君は男の……新入生の?」
「はい、神楽坂 優馬です。サッカー部に入部希望の1年です。」
「……後、雨宮 雫です。」
俺と雫はすかさず名前を言った。
「おぉ!そう言えば……そうだったねぇ。」
若宮先生は少し訛っている話し方をし、話すスピードもとても穏やか。なので、包容力がとてつもなく感じた第一印象だった。
「ようこそ、サッカー部へ。歓迎するよ。」
微笑みで、俺達を部活に迎え入れてくれた。
☆☆☆
俺達と若宮先生の軽い挨拶が終了した所を見計らってか、休憩中だったサッカー部の先輩と同級生達がどっと俺達の元へと押し寄せて来た。
皆はまだ俺がマネージャーとして入部する事に実感がわかずに動揺しているようで、俺と会話することでようやく実感を得る事が出来ているという何ともとんでもない状況に陥っていた。
「今日からこのサッカー部にマネージャーとして入部する事になりました、神楽坂 優馬です。皆さんのサポートを精一杯頑張ってするのでよろしくお願いします。」
なので、ちゃんと挨拶をしておいた。
次は雫だ。
「……雨宮 雫です。私もマネージャーです。皆さんのサッカーの技術の向上の為に日々精進してサポートをしていきますのでよろしくお願いします。」
2人で頭を下げた。
するとすぐに拍手喝采が巻き起こり、歓喜や驚愕、感動の声が聞こえた。それぐらい皆は嬉しかったのだろう。
「2人はマネージャーだから、うちの部の先輩マネージャーである、白金。2人に手取り足取りマネージャーについて教えてあげなさい。」
白金……って、もしかして。
「はぁーい、わかりました。」
「あれ、椎奈先輩何で!?」
やはり椎名先輩だった。
椎名先輩とは生徒会で顔見知りだったが、まさかこんな所で出会うとは思っても見なかったため驚きを隠せなかった。
「あらあら、2人は知り合いだったかい?」
「はい。生徒会で同じで……」
「じゃあ大丈夫ねぇ。後は白金に任せるよ。」
「はいはいー」
椎名先輩は軽いテンションで敬礼のポーズをとる。
先生の前でそんな軽い反応をして怒られないのかとヒヤヒヤしたが……特に問題は無いようだった。
……う、うん。甘い部活なのかな?おかしいな?
「さぁさぁ、皆は大会も近いのだからすぐに練習を再開よ。休んでる暇なんてありませんよ。」
少し厳しめの声で若宮先生は声を張り上げる。
それを聞いて、俺は案外優しそうな先生と思っていた第一印象を変えた。そしてそこから行われたハードハードハードな練習は少しだけ俺を絶句させた。見た目に反して……若宮先生はかなりのスパルタ先生のようだった。
☆☆☆
「まぁーよろしくね優馬君と雫さん。」
「「(……)よろしくお願いします。」」
俺と雫は声を合わせて挨拶する。俺は普通だが、雫はまだ慣れない感じだ。雫は初対面だから仕方がない。まぁ、俺だって話した事があるのはほんの数回程度だけど、雫よりかは楽に話せるので俺が2人の仲介役となる。
「じゃあ説明するから、ついてきてねー」
そう椎奈先輩が言い、後をついて行くと到着したのはサッカー部の部室だった。グランドからは少し離れた校舎の裏にひっそりと建てられた部室。月ノ光高校の本校舎同様、外見は綺麗で大きな部室だった。
──が、
「じゃあ……失礼します。」
俺は椎名先輩の次に入ると……
「──ぉっ!」
入った瞬間に鼻に汗臭が通り抜けた。全運動部共通の中々にキツイやつだ。
ぐっ……でも、俺にとっては大変懐かしい臭いで……昔の記憶が今にも舞い戻って来そうだった。
だけど決定的に違うことがある。それはこの汗の臭いは全て、確定で女の子達だけの汗で構成されているという事だ!
だから、嫌な臭いを“嫌”と脳が感じなかった。
「……優馬?」
そんな俺を見て察したのか、ジト目で俺を見つめる雫。そして、ことの重大性に1番遅く気付いた椎名先輩が焦りながら俺の手を掴み部室の外へと連れ出した。
「や、やっぱりダメだよー」
「え、え、なんでですか?」
「こんな環境の悪い部室に優馬君を入れる訳にはいかないからねー」
え、確かに部室は物が散らかっていて汚い。それに、下着とかのちょっとやばい物も見えたし……
「いやいや、そんなお気遣いなんて無用ですよ。」
でも、俺もマネージャーなのだ、そんなの気にしないつもりだ。
「大丈夫大丈夫。選手達もかーなり気にすると思うから。」
「は、はぁ……」
本気で拒否されてこれ以上言っても無駄だと気付いた俺は潔く引き下がるのであった。
結局その後、俺は一切部室には立ち入り禁止となった。
俺が部室に入ることが許されたのは、俺が部活に参加してから3日後で、ピカピカに掃除され消臭された部室になった時からだった。
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