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10話
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「清水、話し合おう」
朝起きてすぐ、のどやかな朝食時間に東雲が真剣な顔で話し出す。
「え、何を??ぼくなにかした?」
むしろ何もしてなさすぎと言われるのかもしれない。だってリードは全て東雲だし、昨日のご飯の用意も東雲だ。朝食もいつの間にか起きていた東雲が作っていて、食欲をそそる香りが漂っている。手を繋ぐのも、キスだって東雲だし…いやいや、本当にぼくなにもしてなくない?
「百面相してるとこ悪いんだけどね、清水はなにもしてないよ。ただほら、都合のいい関係って言ったってさ、嫌なこととかあるじゃない?」
嫌なこと、嫌なこと……ほんの二週間程度しか東雲と過ごしていないが、嫌なことをされた覚えがない。甘やかされるだけ甘やかされているし、ご飯も仕事終わりにしょっちゅう行くせいで痩せた体重も戻っている。むしろ少し太ったくらいで困っている。ということは、やっぱり東雲に何かしたのだろうか?
「うんうん何もされてないね俺。いやさ、面倒くさいって自分で言ってたけどそんなことないし、セックスだってして良いんだよね?」
ぷはっ、と飲みかけのお茶を吹き出して咳込んでしまう。あまりにも真剣な顔でそんなことを言うものだから、拍子抜けしてしまった。
「俺、清水に甘えて欲しいんだよね」
こぼした飲み物を拭きながら東雲は続ける。
「嫌なことは嫌って言って欲しいし好きなことは好きって言って欲しい、したいことも全部聞くから」
清水の手を取る東雲が清水を自身の膝の上に座らせて腰に手を回し清水を見上げた東雲が片手を頬へと滑らせる。
「こうやって触れるのは嫌?」
首を振る。
「抱きしめるのは?」
また、首を振る。
「じゃあ」
キスは、と言い終わる前に清水からキスをした。それが清水の精一杯の応えだった。東雲の瞳が三日月のように弧を描いて微笑みに変わる。清水からしたはずのキスはいつの間にか東雲に奪われて熱を持った舌が入り込んでくる。腰を持たれ逃げられないまま噛みつかれるようなキスに東雲の肩を持つ。
「嫌なら嫌って言わないと、ね?」
「や、じゃない…もっとしてほしい、」
「うん、いい子」
後頭部に添えられた手がゆるりと動き、カラーの下にあるうなじを撫でていく。力の抜けた体を支えている東雲の顔が離れ、大きく息を吸った。
「もう少しゆっくりしたら出かけよう、ショッピングとかどう?」
「ん……いいよぼくも行きたい」
くて、と体重を東雲に預け、返事をした。
「俺の家に置いておく服とか買おうよ」
「服?でもぼくあんまりセンスないよ」
「俺が選んであげる。あとは好みの歯ブラシとか化粧水とか」
「あんまり考えたことなかったかも…あ、東雲が塗ってくれたやつなに?あれすごい」
「あれ?清水に塗ったやつ?気に入ったなら使っていいよ清水専用にしよう」
「さすがに自分で買うよ」
「あはは、良いの良いの俺があげたいだけだから」
きっと東雲は世話好きなんだな、と抱きしめながらテレビを見る東雲を見て思う。「俺がしたいから」と言われてしまうと何も言えない。でも初めてだ、何も言えないのが嫌じゃないなんて。
東雲の言う通りほどよくだらだらと過ごした二人は買い物へと向かい、センスの良い東雲が選ぶ服はどれも清水が選ばないもので新鮮だったし、ああだこうだと言いながら見るショッピングは楽しかった
「じゃあまた月曜日ね」
「うん、荷物持たせちゃってごめん」
「これは俺の家で使うものだから」
「…ありがとう、また月曜日」
初めての泊まりは終了。くしゃりとまた頭を撫でた東雲が帰っていく。ひらひらと手を振る東雲に小さく手を振って、清水は帰路へとついた。
……こんなに楽しいなんて、ずるいなぁ。
東雲の恋人は、と言いそうになったのを堰き止めて、電車の窓から遠く空を見上げた。
朝起きてすぐ、のどやかな朝食時間に東雲が真剣な顔で話し出す。
「え、何を??ぼくなにかした?」
むしろ何もしてなさすぎと言われるのかもしれない。だってリードは全て東雲だし、昨日のご飯の用意も東雲だ。朝食もいつの間にか起きていた東雲が作っていて、食欲をそそる香りが漂っている。手を繋ぐのも、キスだって東雲だし…いやいや、本当にぼくなにもしてなくない?
「百面相してるとこ悪いんだけどね、清水はなにもしてないよ。ただほら、都合のいい関係って言ったってさ、嫌なこととかあるじゃない?」
嫌なこと、嫌なこと……ほんの二週間程度しか東雲と過ごしていないが、嫌なことをされた覚えがない。甘やかされるだけ甘やかされているし、ご飯も仕事終わりにしょっちゅう行くせいで痩せた体重も戻っている。むしろ少し太ったくらいで困っている。ということは、やっぱり東雲に何かしたのだろうか?
「うんうん何もされてないね俺。いやさ、面倒くさいって自分で言ってたけどそんなことないし、セックスだってして良いんだよね?」
ぷはっ、と飲みかけのお茶を吹き出して咳込んでしまう。あまりにも真剣な顔でそんなことを言うものだから、拍子抜けしてしまった。
「俺、清水に甘えて欲しいんだよね」
こぼした飲み物を拭きながら東雲は続ける。
「嫌なことは嫌って言って欲しいし好きなことは好きって言って欲しい、したいことも全部聞くから」
清水の手を取る東雲が清水を自身の膝の上に座らせて腰に手を回し清水を見上げた東雲が片手を頬へと滑らせる。
「こうやって触れるのは嫌?」
首を振る。
「抱きしめるのは?」
また、首を振る。
「じゃあ」
キスは、と言い終わる前に清水からキスをした。それが清水の精一杯の応えだった。東雲の瞳が三日月のように弧を描いて微笑みに変わる。清水からしたはずのキスはいつの間にか東雲に奪われて熱を持った舌が入り込んでくる。腰を持たれ逃げられないまま噛みつかれるようなキスに東雲の肩を持つ。
「嫌なら嫌って言わないと、ね?」
「や、じゃない…もっとしてほしい、」
「うん、いい子」
後頭部に添えられた手がゆるりと動き、カラーの下にあるうなじを撫でていく。力の抜けた体を支えている東雲の顔が離れ、大きく息を吸った。
「もう少しゆっくりしたら出かけよう、ショッピングとかどう?」
「ん……いいよぼくも行きたい」
くて、と体重を東雲に預け、返事をした。
「俺の家に置いておく服とか買おうよ」
「服?でもぼくあんまりセンスないよ」
「俺が選んであげる。あとは好みの歯ブラシとか化粧水とか」
「あんまり考えたことなかったかも…あ、東雲が塗ってくれたやつなに?あれすごい」
「あれ?清水に塗ったやつ?気に入ったなら使っていいよ清水専用にしよう」
「さすがに自分で買うよ」
「あはは、良いの良いの俺があげたいだけだから」
きっと東雲は世話好きなんだな、と抱きしめながらテレビを見る東雲を見て思う。「俺がしたいから」と言われてしまうと何も言えない。でも初めてだ、何も言えないのが嫌じゃないなんて。
東雲の言う通りほどよくだらだらと過ごした二人は買い物へと向かい、センスの良い東雲が選ぶ服はどれも清水が選ばないもので新鮮だったし、ああだこうだと言いながら見るショッピングは楽しかった
「じゃあまた月曜日ね」
「うん、荷物持たせちゃってごめん」
「これは俺の家で使うものだから」
「…ありがとう、また月曜日」
初めての泊まりは終了。くしゃりとまた頭を撫でた東雲が帰っていく。ひらひらと手を振る東雲に小さく手を振って、清水は帰路へとついた。
……こんなに楽しいなんて、ずるいなぁ。
東雲の恋人は、と言いそうになったのを堰き止めて、電車の窓から遠く空を見上げた。
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