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15 【過去編4】
しおりを挟む森に入ってから1週間。いつもは2週間前後で探索を終えている。ここまではいつも通りだ。あとは『御使い様』を見つけるだけ。そしてこの森は夜になると光は一切ない。しかしその日は違った。暗くなってきたところで寝床となる場所を探しているときだった。遠くの方で大きな何かが光っている。
「ねぇ…あれなに…?」
「なんか光ってるッスね」
「あの大きさだと家か?巨大樹の森に…?」
「どうしますか?1回近づいて様子を見ますか」
「そうだな、まだ距離もあるが一応警戒していこう」
一行は謎の光の元へ歩いていった。光までは意外と距離があり、もうすぐで何が光っているのか分かるという所まで来た。
ビリビリビリビリ!!!
「「「「痛っっっ!」」」」
「…何?…うっ、おえぇぇえ」
びちゃびちゃびちゃ
「なんか気持ち悪い…ゲホッゲホッ」
「震えが止まらないんすけど…どうなってんすか…」
突然、3人に異変が起きた。吐いたり、泣きだしたり、急に震えだしたり。魔物に襲われたりしてるわけではない。本当に突然の出来事だった。しかし、1人だけなんの異変も起きてないのがいる。魔法使いの女だった。異変が起きていなくとも、彼女も他の3人に何が起きているのか分からなかった。
強いて言うのなら、結界を通り抜けた時だろう。結界を通り抜けるには、その結界の魔力量にある程度近い魔力量を持っていなければならない。Aランクの冒険者の彼らは余程強力な結界でなければ、そのほとんどが問題なく通ることがなできる。
魔法使いの彼女だけが異変が起きなかったのは、他の3人より魔力量が多かったためだろう。彼女だけが結界の魔力量に近かった。Aランクの彼らがここまでの症状を出すほどだ。もし、魔力量があまりにも足りなかったり、結界を通り抜けることに慣れていなかったらこんな軽いものでは済まされなかった。
「ヒール!!!!!」
唯一無事だった彼女は混乱しつつも、全員に直ぐに回復を施した。怪我などではないため、効くかどうか不安だったが幸いなことに全員が回復した。
「おい!今のはなんだよ!こんな所になんで結界なんてものがあるんだ!!」
「随分強力な結界だったわね…こんなにダメージ受けたの久しぶりよ」
「あの光になんか関係してるんすかね?御使い様、本当にいるかもっすね」
「結界が破られたことに気づいたと思います。慎重に行きましょう」
結界には色々な機能を付与することが出来る。例えば、人間以外のものをはじき出す、悪意ある者の侵入を妨げるなど。そして最も役に立つのが、結界に侵入、または破壊をした場合に製作者に知らせる機能。もし光の先に結界の製作者がいるのなら、確認に来るかもしれない。
4人はまた慎重に光へと近づいて行った。そして確認出来る近くまで来た。
そこにあったのは少し小さいけれど立派なログハウス。庭が驚くほど大きく、小さな遊具や水溜りくらいの池もあるようだ。まるで小さな子供が遊ぶための庭だ。光がついてるということは、中に人がいると思われるが結界を作った人物なのか、そうではないのかすらわからない現在の状況では家に行くのは危険すぎる。
「あの、さっきの結界の魔力から製作者をたどって見たんですが…すいません、失敗しました。ですが近辺にいないことは確かです。おそらくここから相当離れた場所にいると思います。」
その場に残っている魔力からその魔力の持ち主をたどることは可能だ。しかしその行為は、もし魔力が持ち主の方が大きかった場合大抵失敗する。しかも気付かれる可能性も高い。魔力が低い人物なら気付かれることなく最後までたどれることができる。リスクが大きいためやるものは少ない。
「大丈夫なの?気付かれた?」
「大丈夫です。気付かれる前にやめました。この森にいないことさえ分かればよかったので。」
ということは、今あの家にはそれ以外の人物がいるといいことになる。もちろん誰もいない可能性もあるが。
「よし!結界の製作者がいない今が一番のチャンスだ。ここにいてもらちがあかねぇし、行くぞ!」
ここに『御使い様』がいる。その事を信じて。
コンコン
「誰かいますか。」
シーン
「おい、誰もいないぞ」
「でも明かりがついてるわ。居留守してるだけじゃない?」
「こんな山奥に家なんてあったんですね…」
「ホントっすよね~、俺も初めてこの森で家なんて見ました。」
「ちょっともう一回ノックして見なさいよ」
「はぁ、わかったよ」
4人はわざと声に出してやりとりした。中にいるのが『御使い様』の可能性がある限り、こちらが何人いるのか、どんな様子か、こちらがあまり警戒していないということ、それを少しでも示すことで警戒を解こうとした。
コンコン
「アルバ王国のコルニクスギルドの者です。中にいるのでしたら、返答をお願いします。」
「はい」
((((返事をした!!子供の声!!))))
「すみませんがドアを開けてもらってもいいですか。お顔を拝見したいのですが」
「なんでですか、ドアは開けられません。」
「実は俺たちが探している人物がいるんです。中にいないか調べさせて貰えませんか?」
「ここには俺以外いません。」
(引き下がっちゃだめよ!!絶対に開けてもらいなさい!!)
「すぐに帰りますので、どうしても無理ですか」
「ドアを開けることが出来ないんです。そちらから開いていいのでどうぞ。」
「(ドアを開けられないってどういうことだ?)分かりました。失礼します。」
(念の為、警戒はしろ。)
ガチャ
「え…」
「…嘘でしょ…」
「本当にいた…」
「本物っすよね…ってか人間なんすか…」
瞬間、4人は自身に雷が落ちたかと言うほどの衝撃を受けた。ドアを開けた先にいた人物は、眩しいとさえ思わせる光輝く白銀の髪、パッと見でも分かる金の瞳と銀の瞳。公爵家から聞かされた『御使い様』の特徴を持つ者。小柄だが明らかに纏う空気が違う。恐怖から絶対的な強者にひれ伏してしまうのではなく、何を考えるわけでもなくこちらからひれ伏してしまう圧倒的存在感。
ザッ
「御使い様!俺たちはずっとあなた様を探しておりました!誘拐された7年前から!我々とともに帰りましょう!公爵様もずっとあなた様を待っておられます!」
ついに見つけた。7年。ここまで7年かかった。嬉しくて、ちょっぴり涙目の4人であった。
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