どうしようもない僕は報われない恋をする

月夜

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二章 美空ミカエル

死の恐怖

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全く分からなくて。
声をかけて、揺すってみる。
何も反応がない。
どうしたんだよ、なんて言いながら激しく揺する。
徐々に冷たくなっていく。
体温が失われていく。
一切動かない。
機能がすべて停止してしまった。
実に、あっけなかった。
命というのはこんなにもあっけなく消えてしまうものなのかと思った。
頭の上の数字が寿命だと気づいてしまった。
わかってしまったら自分のものを確認してしまうもので。
自分の数字は他人より遥かに少なくて。
あぁ、なんて言って、気が付いたら走り出していた。
胸の中に広がる感情は『絶望』なんて名前をしていた。
この現実から逃げたかった。
逃げ出してしまいたかった。
なんで 俺だけ、なんて思いでいっぱいだった。
きっと颯太も同じだったんだろうな。
けれど、俺は自分のことでいっぱいだったから、その時颯太の事を気に掛けることも、思い出すこともなかった。
他の人に会いたくなかった。
会うのが嫌になった。
嫌でも見ることになる頭の数字が、減る様を見たくなかった。
その人の死が近づいていく瞬間を見たくなかった。
人と関わるのが嫌になった。
その人がいつ死ぬのかがわかるし。
何より、自分よりも寿命の長い人々が嫌になるだろうから。
走り疲れて辿り着いたのは、森の泉。
どうやって辿り着いたのかわからない。
ほぼ半狂乱だったから。
とても美しい水に、澄み渡る青空が映っていた。
綺麗だと思った。
このまま、死んでしまえば楽になれるのだろうか?
このまま落ちてしまえたら。
この美しい青空に吸い込まれたら。
そんな事を思ってしまった。
らしくないなんて言う自分と、当然だという自分の二人いた。
どうでもいいか、なんて思った。
そう考えて、足を踏み入れる。
ひんやりと冷たくて、この冷たさが全身を包む瞬間を想像してしまった。
怖くなった。
けど、その恐怖心を殺そうと、深呼吸をした。
このまま生きるよりは、冷たさに身を沈めた方がまだマシだ。
波紋が広がる。
このまま数字に従うなんて嫌だ。
決意を固めてもう一度足を入れてしまえばそのまま進めるはずだから。
鎖でも巻き付けられたように固い足にそう言って見せる。
ほら、進めよ。
お前の決意は固いんだろ?
自分の中の何かがそう俺に語り掛けてくる。
ゆらゆらと揺れる水面に、もう一度足を踏み入れようとした。
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