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四章 雪闇ブラッド
僕にしかできないこと
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その直後に、僕の体に理久が触れる。
まるで刺さるように。
その手がまるで鉄のように冷えていたから。
だから鉄が触れたのかと思った。
いや、正確に言うと触れていた。
僕が不身であったからこそ生き永えただけ。
気が付かなかっただけ。
それが相当特殊な鉄で。
普通であれば即死級だっただけ。
僕は振り返る。
「なんだ。どうして庇っちゃうのかな。庇わなくて良いのに。本当に優しいよね。そういうところ、たまにいらつくよ」
そこにいたのはただの悪魔だった。
人の皮を被った。
酷く美しく残酷で、人から命を一滴残らず奪い取る悪魔。
ただの魔物。
何を考えてるのかわからない表情を浮かべながら立っている。
理久の背後ではまだ時計が音を奏でている。
いや、初めから被ってなんていなかったのかもしれない。
初めから悪魔だったじゃないか。
僕が召喚した時だって。
いつだって。
僕のそばにいたのは美しい悪魔だった。
ただ、僕に牙を向けなかっただけで。
いつも美しく光る真紅の瞳は光を失い、黒く澱んで見えた。
周囲にはキラキラと赤燐が舞っている。
角と羽は生えていないが。
魔の者とでも言う言葉が相応しい姿をしていた。
人ならざる雰囲気を持った子供。
少年。
同い年なのに。
いつもより幼く見えるのは何故だろう。
「理久、だめだよ。美空を殺そうとしちゃ。そんなの絶対にしちゃいけないから」
理久にそう言う。
だってダメだ。
そんなの。
美空が僕の知り合いでもなくても。
見知らぬ人であっても。
人を殺めるなんてしてはいけない。
そう常識を言ったけれど。
「目の前に虫が飛んでたらそれを殺すでしょ?それと同じだよ」
そう理久は淡々と述べる。
「別に俺は虫を殺さないぞ。なんなら逃してやるタイプだ。凪先輩も同じだぞ?」
美空が真面目な顔をしながらそう語る。
「いや、今その話はいいから」
そう理久が言った。
「それは後でお話ししてもらおうか」
いや、後で聞くんかい。
虫殺さないか殺すかなんてどうでもいいだろ。
理久が僕に突き刺したのは鉄の処女。
これはきっと彼の魔法。
処刑道具を組み込んだ。
組み込んでいるからこそ一撃必殺の最強技。
本当にすごいよ。
普通の人間がこの道具に触れたら寿命が一滴残らず吸い取られてしまうのだろう。
だから太刀打ちなんてできない。
チート技、と言うべき代物。
絶対に勝てやしない。
僕なら平気だ。
僕は不死身だから。
まるで刺さるように。
その手がまるで鉄のように冷えていたから。
だから鉄が触れたのかと思った。
いや、正確に言うと触れていた。
僕が不身であったからこそ生き永えただけ。
気が付かなかっただけ。
それが相当特殊な鉄で。
普通であれば即死級だっただけ。
僕は振り返る。
「なんだ。どうして庇っちゃうのかな。庇わなくて良いのに。本当に優しいよね。そういうところ、たまにいらつくよ」
そこにいたのはただの悪魔だった。
人の皮を被った。
酷く美しく残酷で、人から命を一滴残らず奪い取る悪魔。
ただの魔物。
何を考えてるのかわからない表情を浮かべながら立っている。
理久の背後ではまだ時計が音を奏でている。
いや、初めから被ってなんていなかったのかもしれない。
初めから悪魔だったじゃないか。
僕が召喚した時だって。
いつだって。
僕のそばにいたのは美しい悪魔だった。
ただ、僕に牙を向けなかっただけで。
いつも美しく光る真紅の瞳は光を失い、黒く澱んで見えた。
周囲にはキラキラと赤燐が舞っている。
角と羽は生えていないが。
魔の者とでも言う言葉が相応しい姿をしていた。
人ならざる雰囲気を持った子供。
少年。
同い年なのに。
いつもより幼く見えるのは何故だろう。
「理久、だめだよ。美空を殺そうとしちゃ。そんなの絶対にしちゃいけないから」
理久にそう言う。
だってダメだ。
そんなの。
美空が僕の知り合いでもなくても。
見知らぬ人であっても。
人を殺めるなんてしてはいけない。
そう常識を言ったけれど。
「目の前に虫が飛んでたらそれを殺すでしょ?それと同じだよ」
そう理久は淡々と述べる。
「別に俺は虫を殺さないぞ。なんなら逃してやるタイプだ。凪先輩も同じだぞ?」
美空が真面目な顔をしながらそう語る。
「いや、今その話はいいから」
そう理久が言った。
「それは後でお話ししてもらおうか」
いや、後で聞くんかい。
虫殺さないか殺すかなんてどうでもいいだろ。
理久が僕に突き刺したのは鉄の処女。
これはきっと彼の魔法。
処刑道具を組み込んだ。
組み込んでいるからこそ一撃必殺の最強技。
本当にすごいよ。
普通の人間がこの道具に触れたら寿命が一滴残らず吸い取られてしまうのだろう。
だから太刀打ちなんてできない。
チート技、と言うべき代物。
絶対に勝てやしない。
僕なら平気だ。
僕は不死身だから。
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