【完結】あれだけ尽くしたのに偽聖女だと言われて婚約破棄されて処刑されそうになったので魔王とよろしくやります

夜光虫

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プロローグ

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 大陸を分かつ二国家、魔国まこく人国じんこく
 両大国は長い歴史の中において、戦争と休戦を幾度となく繰り返してきた。

 個々の力で勝る魔国。数で勝る人国。

 どちらか一方が優れているということはなく、長らく戦いは膠着状態が続いていた。この膠着状態が終わることはないかとも思われたが、新たな転機が訪れることとなる。

 マザー歴1000年。人国において新たなる聖女が生まれる。

 聖女とは、女神の力を受け継ぎし聖なる乙女である。人でありながら魔王にすら匹敵する魔力を持って対等に戦える人間。人類の光となる救世主。

 その聖女が二百年ぶりに生まれたのだ。
 人国の人々は聖女の登場を心から祝福した。神は魔族ではなく人類にこそ歴史の勝利者の栄誉を授けたのだと喜んだ。

 聖女の登場により、長らく続いた戦いは人類の勝利に終わる――――かと思われた。

「ふん、何が聖女よ。あんなの偽者に決まっているわ。処刑してやるわ」

 決定付けられたかに思われた人類の勝利――だがそれは、一人の愚かな女とそれに誑かされる王子がいなければの話であった。

 その女の愚行により、人国は戦いに勝利するどころか、亡国の憂き目に遭うのである。

 これは、そんな聖女を追放して人国を亡国に導いた悪女と誑かされた愚かな王子、王妃となるはずだったのに数奇な運命により魔王の妻となった聖女と魔王――彼女らの物語である。
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