吸血鬼のお宿~異世界転生して吸血鬼のダンジョンマスターになった男が宿屋運営する話~

夜光虫

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一章

宿泊者名簿No.5 エデン村開拓団団長ゴルド(上)

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「さて。今日の仕事も終わりだ。野郎共、エレーナんとこ行くぜ!」
「おぉ!」
「ヒャッホー!」

 仕事が終わり、今日も可愛い子分共を引き連れてエレーナの宿へと向かう。

 昨日あれだけ楽しんだというのに、夕方になると滾って仕方ねえ。子分たちもきっと一緒だろう。

 ま、それも仕方ないわな。エレーナみたいないい女のことを考えると、それだけで昂ぶるってもんだぜ。

 俺様たちの野獣のような欲望を、今日もたっぷりとエレーナにぶつけてやるぜ!

「邪魔するぜぇ!」

――ドゴォン。

 宿の入口の戸を蹴り破って無理やり中に入る。
 わざわざ壊す必要なんてねえが、その方が楽しいからな。ノリでなんとなくぶっ壊すことにした。いつものことだ。

「ほう片付けてやがる。無駄な努力なのによくやるぜ」

 昨日あれだけボロボロにしてやったのに、宿の中は片付いていて綺麗になっていた。修繕費だって少なくないだろうによくやるぜ。どうせ客なんて来ないだろうによ。

 エレーナは美人な上に健気で真面目な女だ。そんな健気で真面目な美人をこれから好き放題に出来ると思うと最高だぜ。

 俺の可愛い子分共も迸って仕方ねえみたいだな。表情でわかるぜ。

「今日もゴルド様ご一行がお客様として来てやったぞ! 出て来いエレーナ! お客様をあまり待たせるんじゃねえよ!」

 エレーナがすぐに姿を現さないことに腹を立てた俺様は、近くにあったテーブルを蹴り上げて怒鳴り散らしてやった。さらには壁の飾り絵を引き剥がし、ビリビリに引き裂いてやる。花瓶も割りまくってやる。

「さっさと出てこねえとガキを犯しちまうぞ!」
「それでもいいのか! さっさと出て来いや!」
「俺たちはお客様だぞ! 客商売がそれでいいのか!」

 可愛い子分たちも好き勝手に騒ぎながら、店内の物をぶち壊し始める。我が子分ながらとんでもない奴らだぜ。

「遅れてごめんなさい。奥の部屋の掃除をしてたものですから」

 ある程度騒ぎ立てるとようやく観念したのか、店の奥からエレーナが現れる。
 エレーナ、相変わらずいい女だぜ。たまんねえ。

 エレーナの表情は憂鬱そうだった。無理もねえわな。連日俺様たちが大騒ぎして、俺様たちの慰み者になってるんだからな。

 以前はそれなりに元気があって愛嬌たっぷりだったエレーナだが、今ではこんな憂鬱そうな表情になってるなんて、まったくたまんねえな。美人の曇り顔は最高だぜ。

「部屋の掃除ねえ。真面目なこったなエレーナ」
「それが仕事ですから」
「こんな辺鄙な村で宿屋なんて儲からない商売なのによぉ。殊勝なこったな。んで、今日は何人の客がとれたんだ? 金は入ったのか?」

 俺様の言葉に、エレーナは顔をより一層曇らせた。最高だぜエレーナ。

「……ゼロです」
「ゼロぉ? そいつは大変じゃねえか。経営は火の車だろう。大丈夫かぁ?」
「……大丈夫じゃないです」
「げっへっへ。そうだろうなぁ」

 宿は大赤字らしい。当然だな。

 俺様たちが毎日荒らしているし、隣の宿の親父にも客を回さないように圧力をかけているんだ。この宿に客が入るわきゃねえわな。

 役所には賄賂を渡して事前に根回してあるから、仮にエレーナのやつが証拠を揃えて訴えたところで、その訴えが聞き届けられる可能性は低いだろう。
 エレーナ自身にはスキル【威圧】を使って訴えないように言いくるめてある。どんなことされようが、他人に助けを求めることはないだろう。

 俺様って、我ながら頭いいぜ。天才だな。

「エレーナ。お前さんの宿に客が入ろうが入らまいが、まあそんなことはどうでもいいんだ。とっとと借金返してくれよ」
「すみません。昨日も言いましたがお金はないんです」
「壁やテーブルを直す金があるのに金がないとはどういう了見だ?」
「知り合いに無料で直してもらったんです」
「ほう。そんなやつがいたとはな。どんなやつだ? 名前は?」
「存じ上げません。たまたま通りすがりの冒険者様に直して頂いただけです」
「ちっ、そんなお人よしがいるとはな。ムカつくぜ」

 この家に金はないはずなのに、店が直っていたのはそういうわけか。どうやらお人よしが現れたらしい。

 冒険者――なんてむかつく言葉だ。イライラする。
 夢見がちの糞野郎どもめ。困ってるやつを助けて英雄気取りのつもりか?

 むかつくぜ。冒険者め、いつもいつも俺様の邪魔ばかりしやがって。そんなやつ、道で出会ったら背後から奇襲してぶっ殺してやるぜ。いや、酒を一杯奢ってその酒に一服盛る、なんてのもいいかもな。

「金がねえなら利子ぶんだけでも払ってもらうぜ。その身体でな」
「はい……わかっています」
「ほう。物分りいいじゃないか。じゃあ俺たちが酒盛りしている間、水浴びでもしてこいや」
「……はい」
「うひひ、準備が出来たら教えろよ」
「……はい」

 エレーナに水浴びを言いつけて、その間、俺たちは酒盛りをする。厨房から勝手に食材を拝借して、それをつまみにする。楽しい宴の始まりだぜ。

「……準備ができました」
「おうそうか」

 酒盛りしていると、エレーナが呼びに来た。いつものように部屋で個別に相手してくれるらしい。

「よっしゃ、それじゃ今日もお前たちからでいいぞ」
「そりゃありがたいですが、ゴルドの旦那、本当にいいんですかい? 本当にあっしらが先で?」
「ああ。俺様は後でいい。お前たちに散々汚されて曇った表情になってるエレーナを抱くのが最高なんだ」
「ひひ、相変わらず旦那は良い趣味してますぜ。それじゃ、ありがたくお先失礼しますぜ」
「おうよ」

 可愛い子分たちに先にエレーナを抱かせてやる。俺様はその後だ。いつものことだな。

「今日はザイニの奴が最初か」

 子分たちはじゃんけんをして順番を決めると、勝った奴がエレーナの所に向かった。残った奴は酒盛りの続きだ。

「よっ、ゴルドの旦那! 世界一!」
「ガハハハ、当たり前だぜ!」

 夜が更けていく。可愛い子分の野郎共と、今日も楽しく宴会だ。
 月が綺麗だ。今夜も最高の夜になりそうだぜ。
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