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二章
チーム結成
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鉄等級昇級試験を受けた一週間後、試験の結果が通知された。
結果は見事合格だった。エリザも俺も、問題なく鉄等級に上がることができた。パープルもそうだ。
これで晴れて鉄等級になれた。デックと呼ばれるのも昨日までのことだ。
鉄等級になれば、冒険者らしい仕事がやっと出来るようになる。早速新しい仕事を受けたいところだけど、そう簡単にはいかない。
鉄等級以上の仕事はチームじゃないと受けられない場合が多いらしいので、チームが結成できるまではしばらくお預けとなった。
早く仲間を集めて冒険者らしい仕事をしたいところだが、仲間探しは難航している。
俺、エリザ、パープル以外のチームメンバーについては相変わらず未定である。俺たちと同期で鉄等級に昇格した者は多くいるが、パープルのお眼鏡に適う人材は中々見つからないらしい。
俺たちは別に誰でもいいんだが、パープルの要求水準はわりと高いみたいだね。彼自身出来る子みたいだし、さもありなん。
あるいは、急いで妥協して変な輩と誼を通じるのは、かえって損だと思っているのかもしれない。そういう考えも一理あるだろう。取引コストとかいう概念もあるしさ。
レイラとメリッサならパープルの眼鏡に適いそうである。
レイラとメリッサをチームに加えられれば話は一気に進むんだけど、彼女たちを身請けする金を稼がねばならないので、それにはもうしばらく時間がかかりそうだ。
まあ焦る必要はないだろう。俺たちは不老不死となった身だ。気楽にいけばいい。
俺にとって冒険者稼業は副業だ。あくまでダンジョンマスターとしての仕事(宿屋経営)が本業だしな。
そう思ってのんびり構えていたのだが、話は意外と早く進んだ。
「ヨミト様、先ほど宿にパープルさんが訪ねて参られましたよ」
「おおそうか」
鉄等級になって一週間経ったある日。ミッドロウの宵蝶に顔を出すと、カーネラからそう伝言を伝えられた。どうやらパープルが訪ねて来ていたらしい。
「用件は何?」
「冒険者チームの人員が揃ったそうです。詳しいことは直接会って話したいそうです。パープルさんが働いているギルド脇の酒場を訪ねて欲しいそうですわ」
「へえそうなんだ。それじゃ急いで向かうかな」
俺とエリザは仲間集めをそこまで熱心にしていなかったが、せっかちなパープルは連日仲間集めに奔走していたらしい。一週間経って、仲間集めを完了したらしい。流石仕事が速いな。
「エリザはどうする? エリザも行くか?」
「あの下郎の多い酒場には行きたくありませんわ。ご主人様、後で必要な事項だけお伝え下さいまし」
「わかった。じゃあ俺だけ行ってくるよ。エリザはダンジョンの留守番よろしく。何かあったら蝙蝠飛ばして知らせてね」
「かしこまりましたわ」
エリザは気が向かないということで、俺だけで出向くことにした。
小動物に変化した状態でミッドロウの宵蝶を出て、人気のない裏路地で人間の冒険者“ヨミト”の姿に変化する。それからパープルのバイトしているギルド脇の酒場へと向かった。
「パープル君は仕事中か」
昼過ぎという時間帯だからか、酒場はそこまで混んではいなかった。パープルはそれほど忙しくない様子で働いていた。
「あ、ヨミトさん!」
「やあパープル君」
俺の姿を確認するなり、パープルは朗らかな笑みを浮かべて出迎えてくれた。相変わらず女の子にしか見えないな。
「話すついでに何か軽いものを」
「わかりました」
適当な席に座り、軽食を注文する。
パープルは手が空いている時に近寄ってきてくれて、その時に話をすることになった。
「――新しい人員は、弓使いの女性が一人、それから少年が二人です。少年二人は、僕たちと同期で鉄等級に昇格した人たちです。女性は先輩です。いずれも人当たりが良くて問題なさそうな人だと判断しました」
「へえ。パープル君のお眼鏡に適ったなら問題なさそうだね」
パープルはこの一週間で件の人物に接触し、素行などに問題がなさそうなことを確かめておいたらしい。チームを組むことに関しても、既に先方の了承を取り付けてあるようだ。仕事が速いね。
「これでチームとしての体裁は整いました。近々、顔合わせをしたいと思うのですが、ヨミトさん、どうでしょう?」
「いいよそれで。顔合わせはこの店でする?」
「はい。込み入った話をするので、この食堂ではなく、僕の下宿している部屋でしようと思うのですがどうでしょう?」
「俺はそれでいいよ。エリザもいいって言うと思うし」
「わかりました。ではそういうことで話を進めさせていただきます」
話が済んだので、席を立つ。
そろそろ夕刻で客が増えてきたことだしな。パープルも仕事が忙しくなるだろうから長居しては悪い。
「それじゃ、俺はいつも通り例の花宿を拠点にしてるから、詳しいことが決まったらいつでも連絡してよ」
「わかりました」
パープルと別れて店を出る。
(新しいメンバーか。どんな奴だろうな)
優秀そうなら折りを見て眷属に勧誘してみてもいいだろう。新しいメンバーとは、近いうちに顔を合わせることになりそうだ。
結果は見事合格だった。エリザも俺も、問題なく鉄等級に上がることができた。パープルもそうだ。
これで晴れて鉄等級になれた。デックと呼ばれるのも昨日までのことだ。
鉄等級になれば、冒険者らしい仕事がやっと出来るようになる。早速新しい仕事を受けたいところだけど、そう簡単にはいかない。
鉄等級以上の仕事はチームじゃないと受けられない場合が多いらしいので、チームが結成できるまではしばらくお預けとなった。
早く仲間を集めて冒険者らしい仕事をしたいところだが、仲間探しは難航している。
俺、エリザ、パープル以外のチームメンバーについては相変わらず未定である。俺たちと同期で鉄等級に昇格した者は多くいるが、パープルのお眼鏡に適う人材は中々見つからないらしい。
俺たちは別に誰でもいいんだが、パープルの要求水準はわりと高いみたいだね。彼自身出来る子みたいだし、さもありなん。
あるいは、急いで妥協して変な輩と誼を通じるのは、かえって損だと思っているのかもしれない。そういう考えも一理あるだろう。取引コストとかいう概念もあるしさ。
レイラとメリッサならパープルの眼鏡に適いそうである。
レイラとメリッサをチームに加えられれば話は一気に進むんだけど、彼女たちを身請けする金を稼がねばならないので、それにはもうしばらく時間がかかりそうだ。
まあ焦る必要はないだろう。俺たちは不老不死となった身だ。気楽にいけばいい。
俺にとって冒険者稼業は副業だ。あくまでダンジョンマスターとしての仕事(宿屋経営)が本業だしな。
そう思ってのんびり構えていたのだが、話は意外と早く進んだ。
「ヨミト様、先ほど宿にパープルさんが訪ねて参られましたよ」
「おおそうか」
鉄等級になって一週間経ったある日。ミッドロウの宵蝶に顔を出すと、カーネラからそう伝言を伝えられた。どうやらパープルが訪ねて来ていたらしい。
「用件は何?」
「冒険者チームの人員が揃ったそうです。詳しいことは直接会って話したいそうです。パープルさんが働いているギルド脇の酒場を訪ねて欲しいそうですわ」
「へえそうなんだ。それじゃ急いで向かうかな」
俺とエリザは仲間集めをそこまで熱心にしていなかったが、せっかちなパープルは連日仲間集めに奔走していたらしい。一週間経って、仲間集めを完了したらしい。流石仕事が速いな。
「エリザはどうする? エリザも行くか?」
「あの下郎の多い酒場には行きたくありませんわ。ご主人様、後で必要な事項だけお伝え下さいまし」
「わかった。じゃあ俺だけ行ってくるよ。エリザはダンジョンの留守番よろしく。何かあったら蝙蝠飛ばして知らせてね」
「かしこまりましたわ」
エリザは気が向かないということで、俺だけで出向くことにした。
小動物に変化した状態でミッドロウの宵蝶を出て、人気のない裏路地で人間の冒険者“ヨミト”の姿に変化する。それからパープルのバイトしているギルド脇の酒場へと向かった。
「パープル君は仕事中か」
昼過ぎという時間帯だからか、酒場はそこまで混んではいなかった。パープルはそれほど忙しくない様子で働いていた。
「あ、ヨミトさん!」
「やあパープル君」
俺の姿を確認するなり、パープルは朗らかな笑みを浮かべて出迎えてくれた。相変わらず女の子にしか見えないな。
「話すついでに何か軽いものを」
「わかりました」
適当な席に座り、軽食を注文する。
パープルは手が空いている時に近寄ってきてくれて、その時に話をすることになった。
「――新しい人員は、弓使いの女性が一人、それから少年が二人です。少年二人は、僕たちと同期で鉄等級に昇格した人たちです。女性は先輩です。いずれも人当たりが良くて問題なさそうな人だと判断しました」
「へえ。パープル君のお眼鏡に適ったなら問題なさそうだね」
パープルはこの一週間で件の人物に接触し、素行などに問題がなさそうなことを確かめておいたらしい。チームを組むことに関しても、既に先方の了承を取り付けてあるようだ。仕事が速いね。
「これでチームとしての体裁は整いました。近々、顔合わせをしたいと思うのですが、ヨミトさん、どうでしょう?」
「いいよそれで。顔合わせはこの店でする?」
「はい。込み入った話をするので、この食堂ではなく、僕の下宿している部屋でしようと思うのですがどうでしょう?」
「俺はそれでいいよ。エリザもいいって言うと思うし」
「わかりました。ではそういうことで話を進めさせていただきます」
話が済んだので、席を立つ。
そろそろ夕刻で客が増えてきたことだしな。パープルも仕事が忙しくなるだろうから長居しては悪い。
「それじゃ、俺はいつも通り例の花宿を拠点にしてるから、詳しいことが決まったらいつでも連絡してよ」
「わかりました」
パープルと別れて店を出る。
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