吸血鬼のお宿~異世界転生して吸血鬼のダンジョンマスターになった男が宿屋運営する話~

夜光虫

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三章

娼婦(イースト村)

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 部屋に入って待っていると、三人の女の子がやってきた。女の子たちは、部屋に男が二人(片方はエリザだが)いるので戸惑っている様子だ。

 まずは自己紹介から、ということで、雑談を交えて話していく。

「ナーナと申します。よろしくお願いいたします」

 一人目の子は、編み込んだポニーテールの髪が特徴的な女の子だった。どことなく品のある感じの可愛い子だ。体型は普通。

 彼女の家は近隣の村の地主だったそうが破産したそうだ。それで身売りされてここで働いているそうだ。

 なるほど、元地主の娘でいいとこの出だから、それでどことなく品のある喋りなわけだね。
 家族を助けるために苦界に落ちるなんてね。そんな境遇でありながら擦れてなさそうな所を見るに、健気な娘であるようだ。

 美味しそうな子である。どんな血の味がするのだろうか楽しみである。

「ヤオです。元冒険者です」

 二人目の子は、お団子の髪型が特徴的な女の子だった。黒髪お団子ヘアーのせいか、どことなく中華娘っぽい雰囲気を感じる。栄養状態がいいのか生来の体質なのか、やや豊満な体型をしている。

 彼女は元鉄等級冒険者だそうで、借金を背負ってここで働いているらしい。

 レイラやメリッサとは違って、誰かに罠にハメられたってわけではないみたい。依頼達成後の飲み会で酔っ払ってテンション上がってはっちゃけて、店にある高価な魔道具をぶっ壊しまくっちゃったらしい。それで弁済のためにここで働いているようだ。とんだ酒乱うっかりさんだね。

 とんだドジを踏んで苦界に落ちたわけだが、不貞腐れず、この仕事を楽しんでいるらしい。なんと前向きなポジティブ娘だろうか。

 話通りだとすれば、さぞや美味しい血をしているに違いない。この子も楽しみだな。

「ココです。よ、よろしくです」

 三人目の子はやたら歳若く見える子であった。彼女の家族は流行り病で皆死んだらしい。それで身売りされここに来たそうだ。

 とんだ災難に遭ったというのに前向きに生きようと頑張っているらしい。健気な娘である。この子もまた、美味しそうな血を持っていそうだ。

(ふふ、早く食べちゃいたいな)

 三人共、美味しそうな子である。早速頂いちゃうとしますか。

「さあ三人共。ひと時の良い夢を見ようか。吸血鬼と共にね」

――スキル【魅了】発動。

「――あぅ♡」
「――はぁ♡」
「――あぁ♡」

 スキル【魅了】で三人の意識を奪う。
 前はエリザと二人がかりで魅了していたが、今は俺一人でも楽勝だな。まあ途中で術が解けたら面倒なので、念のためにエリザにも二重でかけてもらうけども。

 吸血鬼に魅了された三人は、呆けたような表情で固まるだけとなった。哀れな娘たちは、我ら夜の怪物に捧げれた肉人形と化した。では頂くとしよう。

「さて。エリザ――じゃなかったベート君、どの子からいく?」
「僕はココという子からいただきます」
「そうか。じゃあ俺は冒険者の子からいこうか。何か優れたスキルとか持っているかもしれない。楽しみだ」

 俺はヤオという中華娘っぽい子から頂くことにした。彼女の剥き出しとなったその無防備な首筋に、吸血鬼の歯を突き立てていく。

――ズブッ、ズブリ。

「あー、いいね。悪くない味だ」

 酔っ払ってドジして冒険者から苦界に落ちたヤオの血は、エネルギッシュで陽気な味がした。

 例えるならば、炭酸の抜けたビール。
 陽気な彼女には、夏という季節が似合っている。夏の太陽の恵みを受けて育った麦を使って作られたビールが、陽気な彼女の持つ血を表すのに相応しい。

 ヤオの血はビールのように美味しく感じられるのだが、どこか足りない気がする。酔っ払ってはっちゃけて奴隷落ちした彼女は、とんでもないうっかりさんで抜けている。だから例えるなら炭酸の抜けたビールだ。

 ヤオの血からはそんな味がした。エリザのような極上の血とは比べるまでもないが、今までに何度も味わってきた汚物のような血と比べると甘露であった。ご馳走様。

「さて。それじゃお次はナーナちゃんかな」

 ヤオの血を味わった後は、ナーナという娘の血を味わっていく。

「うん。この子も悪くない味だ」

 ナーナの血は上品ながらも癖のあるものだった。

 例えるなら、癖の強いワインかな。
 良い所の生まれながら地に堕ちてしまった悲運。それが上質ながらも癖の強い味を生み出しているのだろう。

 苦界から解き放たれれば、苦味がとれた澄んだ味になるのだろうか。魂の濁りが消えてすっきりとした味わいの血になるのかもしれない。

 そんなことを考えさせられる血であった。

「さて最後はココという子だな」

 最後にココという子の血を味わっていく。

「おぉ、純粋そうに見えて意外と癖が強いな。魂が濁りかけているぞ」

 若く一番純粋そうに見えるココ。だが意外にも、彼女が三人の中では一番癖の強い血の持ち主であった。

 例えるならば、濁り酒だろうか。上質な味が感じ取れると同時、雑味というか、凄い濁った感じもする。

 彼女の境遇を考えればそれは仕方のないことかもしれない。たとえどんなに生来の良い気質を持っていたとしても、耐え難い絶望を味わえばその魂に濁りも生じるというものだろう。

 このまま苦界の荒波に沈んでいけば、どんどん濁って腐敗していきそうだ。外道に堕ち、汚物のような味わいの血になっていくのかも。逆に救われれば、澄んだ味わいとなっていくのかもしれない。ココの血はそんな狭間にある血の味がした。

 癖は強かったが、これはこれで珍しく面白い味だな。今の不安定な状態でしか楽しめないレアな味と言えるだろう。ご馳走様。

――スキル【吸血】発動。経験値獲得。
――初めての対象であるのでボーナスを獲得。
――スキル【格闘】を獲得。
――最大HPが1、魅力が4増えた。

格闘:素手での戦い方の習熟が早まる。素手で戦う際に恩恵がある。

 三人の血から新たな力を得ることができた。
 ヤオの血から【格闘術】というスキルを得ることでき、あとの二人の血からはステータス値が伸びただけだった。ヤオは元冒険者だけあって、それなりに有用なスキルを持っていたみたいだな。

 スキル【格闘術】か。わりと素手で戦う場合は多いので、ありがたいスキルかな。
 レイラは素手での戦い方にも心得があるそうなので、今度エリザと一緒に習ってみるのもいいだろう。

「ぷはー、ご馳走様」
「ご馳走様です子猫ちゃん」

 俺とベートは三人娘の血をたっぷりと味わった。

 ベートの目利きは正しかったな。きっとあの山のようにいた娼婦の中では、この三人の血が一番マシだったに違いない。不快な思いをせず、吸血を楽しむことができたぞ。

「ブレンダちゃんの家で美味しいご飯食べたけど、やっぱ吸血は別腹だな。吸血鬼の本懐が果たせて大満足だ」
「ですね」

 俺とベートは満足して宿に帰ることにしたのであった。


♦現在のヨミトのステータス♦
名前:ヨミト(lv.4) 種族:吸血鬼(ハイ)
HP:698/698 MP:652/652
【変化】【魅了】【吸血】【鬼語】【粗食】【獣の嗅覚】【獣の視覚】【獣の聴覚】【獣の味覚】
【剣術】【我慢】【起床】【睡眠】【威圧】【料理】【伐採】【裁縫】【農耕】【投擲】
【風刃】【天才】【火球】【洗脳】【狂化】【商人】【販売】【交渉】【売春】【性技】
【避妊】【癒光】【洗浄】【解体】【斧術】【槍術】【穴掘】【格闘】
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