83 / 291
三章
王都ドルドローア
しおりを挟む
イースト村を出立し、一日中歩いた。夕刻前には、王都“ドルドローア”に到着することができた。
「凄い人ですね。流石王都……」
「うん。人がゴミのようだね」
「どういう感性してんだアンタは……」
王門前の人だかりを見て、レイラが呆気といった感じで呟く。人がうじゃうじゃいすぎて、俺は某大佐の名言をつい口走ってしまう。それを聞いていたノビルが、呆れた目で俺を見てきた。
吸血鬼メンタルだから本当に人間がゴミのように見える。あるいは食料か。人間の山がそういう風にしか見えないな。
(駄目だ駄目だそんなんじゃ。人間がゴミに見えるなんて社会吸血鬼失格だぞ。あそこにいる人たちはゴミじゃない。俺が王都に店をオープンした暁には、そのお店のお客様になる人かもしれないんだぞ。大切にしなきゃな)
俺は自分にそう言い聞かせることにした。
客商売をする者として、人間がゴミに見えるだなんてこと、あってはならないことだ。お客様は神様なのである。ゴミではないのだ。商売人の心得だ。
「スゲエ人だな。舐められねえようにしないとな」
人の群れを見て俺が心の中で商売人の心得を再確認している一方、メリッサは目に力を込めて群集を睨みつけていた。
見た目に違わず、メリッサは思考がヤンキーだね。人混みを見ると、舐められないようにするという考えが一番に浮かぶらしい。
「それにしても王都すげー」
「噂に聞いていたけど本当そうね」
「本当ですね」
ノビルとレイラとパープルはきょろきょろと忙しなく視線を動かしていた。
田舎者丸出しだ。同じ田舎者だと思われるとやだから勘弁して欲しいな。
エリザも視線をきょろきょろと動かしているが、あれは物珍しさからじゃないな。美味しそうな獲物を探しているような視線だ。お腹でも空いているのかもしれないな。
(もっと時間かかるかと思ったが、結構スムーズに進むな)
王門前の審査所は何箇所も設置されており、大勢の人がいるものの比較的スムーズに審査は進んでいく。しばらくして俺たちの番がやってくる。
「鉄等級冒険者六名か。いいぞ。通ってよし」
「どうも」
冒険者プレートがあるおかげで問題なく通ることができた。通行料も免除である。有難い。
「おお。凄いね」
王都はミッドロウなど比べ物にならないくらい賑わっていた。
正門から少し進んだ所にある大通りには、所狭しと出店や商店が並んでいる。店先を彩る魔道具の数も桁違いだ。王都だけあって凄い華やかだ。皆が憧れる気持ちがよくわかる。
「へぇ。変わった人種もいるんだな」
「あれは獣族兎人種の方ですね」
出歩いている人種は普通の人間が圧倒的に多いのだが、中には兎耳が生えた人とかも歩いている。ファンタジーな光景だ。
パープル曰く、獣族というらしい。獣王国出身の人らしい。
王都だけあって各国から人が集まっていて人種の坩堝のようだ。面白いぜ。
「お、あの城がロキリア城?」
「ですね。間違いありません」
俺の疑問にパープルが答えてくれる。
遠目に見える王城が、国王の住むロキリア城らしい。
「見事なもんだね」
「そうですね」
夕暮れに佇む城は幻想的で美しかった。ファンタジー世界って感じだね。
王城及びその周辺は貴族街なので、残念ながら俺たち一般人は基本的に立ち入れないらしい。
俺たちが活動できるのは下町のみだ。下町は公共地区、農業地区、工業地区、商業地区の四区画に分けられるらしい。
「色々目移りするのはわかりますが、とりあえずは宿を見つけましょう。ギルドはもう閉まっているので、ギルドに顔を出すのは明日ですね」
「そうだね」
パープルの進言通り、まずは商業地区にある宿屋を探していく。
商業地区以外にも宿屋はあるらしいが、とりあえず道に不慣れな俺たちは商業地区から探ることにした。
「ここでいいんじゃないか? もう日も暮れるし、これ以上の散策は明日にしよう」
しばらく歩いて検討し、“ドルドロの宿木”という名前の宿屋に泊まることにした。
可もなく不可もなくといった感じの宿屋である。宿泊代は村々の宿屋よりも高い。王都の宿屋だけあって、物価が高いようだ。
「そうですね。少しお高いですが、日も暮れますし今日はここにしましょう。長期拠点にする宿はもっと安いところがいいと思いますけど」
「ま、そこらへんは飯でも食いながら話そうよ」
宿屋に入り、二階の部屋に荷物を置き、一階の食事場で夕食をとる。
「お待たせしましたどうぞ~」
「はいどうも」
店員の女の子が、注文した料理を運んできてくれる。配膳作業の合間、店員の子と世間話をする。
「へえ。君は最近王都にやって来たんだ」
「そうなんですよぉ」
店員の女の子の名前は“リオ”といい、最近この王都にやって来たようだ。ブレンダと同じく王都の学校に留学に来たようだ。同じくこの宿で給仕として働いている“パンシー”という子も同様みたい。
二人共、春の新生活に合わせて既にバイトも始めているのか。勤勉で偉い学生だね。見た目も真面目な学生さんって感じだ。見た目通り真面目な子なのだろう。
「ブレンダちゃんの店のパンの方が美味いな。ここの料理もまあまあ美味いけどさ」
「ちょっとヨミトさん、声が大きいですよ。宿の自慢の料理なんですから、まあまあとか言わないで下さい。店主さん睨んでますよ」
「おっと、悪い悪い」
「もうっ、デリカシーないですよ」
俺の素直な感想に、パープルが咎めるような口調で注意してくる。
「これ何の肉だ?」
「おそらくラビンの肉でしょう。この時期に多く出回っているお肉と言えば、ラビンです。ここに来るまでの道中でもラビンが大量発生してましたしね」
俺の疑問に、パープルが答えてくれる。
夕飯のメインは肉の炒め物が挟まったパン料理であった。肉野菜バーガーって感じ。ブレンダの家で食った飯ほどではないが、そこそこ美味い飯であった。流石王都だな。食のレベルも高いようだ。
「凄い人ですね。流石王都……」
「うん。人がゴミのようだね」
「どういう感性してんだアンタは……」
王門前の人だかりを見て、レイラが呆気といった感じで呟く。人がうじゃうじゃいすぎて、俺は某大佐の名言をつい口走ってしまう。それを聞いていたノビルが、呆れた目で俺を見てきた。
吸血鬼メンタルだから本当に人間がゴミのように見える。あるいは食料か。人間の山がそういう風にしか見えないな。
(駄目だ駄目だそんなんじゃ。人間がゴミに見えるなんて社会吸血鬼失格だぞ。あそこにいる人たちはゴミじゃない。俺が王都に店をオープンした暁には、そのお店のお客様になる人かもしれないんだぞ。大切にしなきゃな)
俺は自分にそう言い聞かせることにした。
客商売をする者として、人間がゴミに見えるだなんてこと、あってはならないことだ。お客様は神様なのである。ゴミではないのだ。商売人の心得だ。
「スゲエ人だな。舐められねえようにしないとな」
人の群れを見て俺が心の中で商売人の心得を再確認している一方、メリッサは目に力を込めて群集を睨みつけていた。
見た目に違わず、メリッサは思考がヤンキーだね。人混みを見ると、舐められないようにするという考えが一番に浮かぶらしい。
「それにしても王都すげー」
「噂に聞いていたけど本当そうね」
「本当ですね」
ノビルとレイラとパープルはきょろきょろと忙しなく視線を動かしていた。
田舎者丸出しだ。同じ田舎者だと思われるとやだから勘弁して欲しいな。
エリザも視線をきょろきょろと動かしているが、あれは物珍しさからじゃないな。美味しそうな獲物を探しているような視線だ。お腹でも空いているのかもしれないな。
(もっと時間かかるかと思ったが、結構スムーズに進むな)
王門前の審査所は何箇所も設置されており、大勢の人がいるものの比較的スムーズに審査は進んでいく。しばらくして俺たちの番がやってくる。
「鉄等級冒険者六名か。いいぞ。通ってよし」
「どうも」
冒険者プレートがあるおかげで問題なく通ることができた。通行料も免除である。有難い。
「おお。凄いね」
王都はミッドロウなど比べ物にならないくらい賑わっていた。
正門から少し進んだ所にある大通りには、所狭しと出店や商店が並んでいる。店先を彩る魔道具の数も桁違いだ。王都だけあって凄い華やかだ。皆が憧れる気持ちがよくわかる。
「へぇ。変わった人種もいるんだな」
「あれは獣族兎人種の方ですね」
出歩いている人種は普通の人間が圧倒的に多いのだが、中には兎耳が生えた人とかも歩いている。ファンタジーな光景だ。
パープル曰く、獣族というらしい。獣王国出身の人らしい。
王都だけあって各国から人が集まっていて人種の坩堝のようだ。面白いぜ。
「お、あの城がロキリア城?」
「ですね。間違いありません」
俺の疑問にパープルが答えてくれる。
遠目に見える王城が、国王の住むロキリア城らしい。
「見事なもんだね」
「そうですね」
夕暮れに佇む城は幻想的で美しかった。ファンタジー世界って感じだね。
王城及びその周辺は貴族街なので、残念ながら俺たち一般人は基本的に立ち入れないらしい。
俺たちが活動できるのは下町のみだ。下町は公共地区、農業地区、工業地区、商業地区の四区画に分けられるらしい。
「色々目移りするのはわかりますが、とりあえずは宿を見つけましょう。ギルドはもう閉まっているので、ギルドに顔を出すのは明日ですね」
「そうだね」
パープルの進言通り、まずは商業地区にある宿屋を探していく。
商業地区以外にも宿屋はあるらしいが、とりあえず道に不慣れな俺たちは商業地区から探ることにした。
「ここでいいんじゃないか? もう日も暮れるし、これ以上の散策は明日にしよう」
しばらく歩いて検討し、“ドルドロの宿木”という名前の宿屋に泊まることにした。
可もなく不可もなくといった感じの宿屋である。宿泊代は村々の宿屋よりも高い。王都の宿屋だけあって、物価が高いようだ。
「そうですね。少しお高いですが、日も暮れますし今日はここにしましょう。長期拠点にする宿はもっと安いところがいいと思いますけど」
「ま、そこらへんは飯でも食いながら話そうよ」
宿屋に入り、二階の部屋に荷物を置き、一階の食事場で夕食をとる。
「お待たせしましたどうぞ~」
「はいどうも」
店員の女の子が、注文した料理を運んできてくれる。配膳作業の合間、店員の子と世間話をする。
「へえ。君は最近王都にやって来たんだ」
「そうなんですよぉ」
店員の女の子の名前は“リオ”といい、最近この王都にやって来たようだ。ブレンダと同じく王都の学校に留学に来たようだ。同じくこの宿で給仕として働いている“パンシー”という子も同様みたい。
二人共、春の新生活に合わせて既にバイトも始めているのか。勤勉で偉い学生だね。見た目も真面目な学生さんって感じだ。見た目通り真面目な子なのだろう。
「ブレンダちゃんの店のパンの方が美味いな。ここの料理もまあまあ美味いけどさ」
「ちょっとヨミトさん、声が大きいですよ。宿の自慢の料理なんですから、まあまあとか言わないで下さい。店主さん睨んでますよ」
「おっと、悪い悪い」
「もうっ、デリカシーないですよ」
俺の素直な感想に、パープルが咎めるような口調で注意してくる。
「これ何の肉だ?」
「おそらくラビンの肉でしょう。この時期に多く出回っているお肉と言えば、ラビンです。ここに来るまでの道中でもラビンが大量発生してましたしね」
俺の疑問に、パープルが答えてくれる。
夕飯のメインは肉の炒め物が挟まったパン料理であった。肉野菜バーガーって感じ。ブレンダの家で食った飯ほどではないが、そこそこ美味い飯であった。流石王都だな。食のレベルも高いようだ。
0
あなたにおすすめの小説
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
美醜逆転世界の学園に戻ったおっさんは気付かない
仙道
ファンタジー
柴田宏(しばたひろし)は学生時代から不細工といじめられ、ニートになった。
トラックにはねられ転移した先は美醜が逆転した現実世界。
しかも体は学生に戻っていたため、仕方なく学校に行くことに。
先輩、同級生、後輩でハーレムを作ってしまう。
男女比1:15の貞操逆転世界で高校生活(婚活)
大寒波
恋愛
日本で生活していた前世の記憶を持つ主人公、七瀬達也が日本によく似た貞操逆転世界に転生し、高校生活を楽しみながら婚活を頑張るお話。
この世界の法律では、男性は二十歳までに5人と結婚をしなければならない。(高校卒業時点は3人)
そんな法律があるなら、もういっそのこと高校在学中に5人と結婚しよう!となるのが今作の主人公である達也だ!
この世界の経済は基本的に女性のみで回っており、男性に求められることといえば子種、遺伝子だ。
前世の影響かはわからないが、日本屈指のHENTAIである達也は運よく遺伝子も最高ランクになった。
顔もイケメン!遺伝子も優秀!貴重な男!…と、驕らずに自分と関わった女性には少しでも幸せな気持ちを分かち合えるように努力しようと決意する。
どうせなら、WIN-WINの関係でありたいよね!
そうして、別居婚が主流なこの世界では珍しいみんなと同居することを、いや。ハーレムを目標に個性豊かなヒロイン達と織り成す学園ラブコメディがいま始まる!
主人公の通う学校では、少し貞操逆転の要素薄いかもです。男女比に寄っています。
外はその限りではありません。
カクヨムでも投稿しております。
男:女=1:10000の世界に来た記憶が無いけど生きる俺
マオセン
ファンタジー
突然公園で目覚めた青年「優心」は身辺状況の記憶をすべて忘れていた。分かるのは自分の名前と剣道の経験、常識くらいだった。
その公園を通りすがった「七瀬 椿」に話しかけてからこの物語は幕を開ける。
彼は何も記憶が無い状態で男女比が圧倒的な世界を生き抜けることができるのか。
そして....彼の身体は大丈夫なのか!?
荷物持ちの代名詞『カード収納スキル』を極めたら異世界最強の運び屋になりました
夢幻の翼
ファンタジー
使い勝手が悪くて虐げられている『カード収納スキル』をメインスキルとして与えられた転生系主人公の成り上がり物語になります。
スキルがレベルアップする度に出来る事が増えて周りを巻き込んで世の中の発展に貢献します。
ハーレムものではなく正ヒロインとのイチャラブシーンもあるかも。
驚きあり感動ありニヤニヤありの物語、是非一読ください。
※カクヨムで先行配信をしています。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
男女比1対5000世界で俺はどうすれバインダー…
アルファカッター
ファンタジー
ひょんな事から男女比1対5000の世界に移動した学生の忠野タケル。
そこで生活していく内に色々なトラブルや問題に巻き込まれながら生活していくものがたりである!
最強賢者の最強メイド~主人もメイドもこの世界に敵がいないようです~
津ヶ谷
ファンタジー
綾瀬樹、都内の私立高校に通う高校二年生だった。
ある日、樹は交通事故で命を落としてしまう。
目覚めた樹の前に現れたのは神を名乗る人物だった。
その神により、チートな力を与えられた樹は異世界へと転生することになる。
その世界での樹の功績は認められ、ほんの数ヶ月で最強賢者として名前が広がりつつあった。
そこで、褒美として、王都に拠点となる屋敷をもらい、執事とメイドを派遣してもらうことになるのだが、このメイドも実は元世界最強だったのだ。
これは、世界最強賢者の樹と世界最強メイドのアリアの異世界英雄譚。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる