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三章
チーム不死鳥結成
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「それで今後のことなのですが……」
飯を食いつつ、今後の話について、パープルが切り出す。
「拠点をどうするかについてですが、方法は大きく分けて二つあります。一つはこういった商業の宿と長期契約して借りる方法。もう一つは、空き家などを貸借する方法です」
「どっちがオススメなの?」
「一般的に言って、後者の方が初期投資がかかるものの時間が経つほど安上がりですね。長期間拠点を張るならば、断然そちらがオススメです」
「なるほどね。皆でまとまってどこかの空き家に住んだ方が安上がりか。ミッドロウよりも物価高いみたいだしね。そうしようか」
俺が「みんなそれでいい?」と聞くと、全員が頷いた。
「僕が冒険者になったのは王都に来たいがためだったので、しばらくここを離れるつもりはないです。皆さんがよければご一緒させてください」
「そうだったんだ。俺たちもしばらくはここにいる予定だよ。今後ともよろしくパープル君」
「はい。こちらこそ」
パープルが冒険者になった志望動機とか、何気に初耳だな。
今まで根掘り葉掘り事情なんて聞いてなかったからね。王都に来るのが目的だったらしい。意外と都会志向なのだろうか。
ともあれ、どこに滞在するかについては、全員一致でどこかの空き家を借り上げるということで決まった。明日情報などを集めて、それからどこを借りるか詳しく検討することにしよう。
「空き家を借りるとなると、初期費用もそうですが、月一で税金もとられてしまいます。皆さん、現在どれくらい予算がありますか? ちなみに僕はこれくらいです」
パープルは五本指を立てた。5ゴルゴンということだろう。結構貯めてるんだな。
レイラとメリッサはそれぞれ3ゴルゴン、ノビルは1ゴルゴンだった。
「俺とエリザは、合わせて30ゴルゴンだな」
「え、う、嘘!?」
30ゴルゴン持っていると言うと、パープルが驚きの余り声を漏らしていた。
レイラたちは事情を知っているから驚いてなんていないだろうが、パープルに合わせたのか、彼女たちも一応驚いたふりをしていた。
(100ゴルゴンとか言わなくてよかったな……)
本当はダンジョンに戻れば100ゴルゴン以上あるけど、何でそんな金持ってるんだってことになるので、これでも抑えた方である。
こんなに驚かれるなら、もっと抑えた金額を言えばよかったかもしれないな。まあいいか。
「実はここだけの話、俺とエリザは避妊魔法、浄化魔法、回復魔法が使えてね。それで裏神父の仕事で稼いでいるんだよ」
「そうだったんですか……。もしかしてお二人は元エビス教の神官だったんですか?」
「いや違うよ。ただ同じ魔法が使えるってだけだよ」
「そうですか。いずれにしても凄いですね」
金を持っている理由を適当に誤魔化しておく。
本当はエレーナの宿、カーネラの宿、乗っ取ったバッド商会などから齎される収入が原資であるが、まるっきし嘘というわけではない。実際に冬の間にミッドロウの町で裏神父の仕事をして小遣い稼ぎをしたりもしていたからね。
「30ゴルゴンあれば空き家を借りるのは簡単ですね。いっそ購入した方が安上がりかもしれません。ヨミトさんがよければですが、立て替えてもらって、我々が少しずつヨミトさんに返済していくというのはどうでしょうか?」
「うんそれでいいよ。じゃあそうしようか」
別に俺が全部払ってもいいのだが、パープルたちに異存はないようなのでそういうことにしよう。
「あとはチーム名を決めましょう。これから冒険者として稼いでいくには、チームとして売り出していく必要があります。ミッドロウの町で名乗っていた“新星”はありふれた名称なので、せっかく王都に来たのですから変更した方が良いかと思います」
「そっか。じゃあそうしよっか」
パープルがチーム名の変更を提案してくる。せっかく王都に進出したんだし、それに合わせて名前を変更するのもいいだろう。
「それでチーム名はどうしますか? ヨミトさんがリーダーなので、ヨミトさんにまず任命権があると思いますよ」
「うーん。そうだね……」
パープルにそう言われ、俺は頭を捻った。
吸血鬼大好きクラブ、吸血鬼同好会、吸血鬼友の会、吸血鬼と騎士団、吸血鬼と愉快な仲間たち――色々と浮かんでくるが、口には出さなかった。
口に出したら最後、エリザ以外の全員から怒られる気がする。
俺はもう一度頭を捻り、真面目に考えた。
「不死鳥――なんてのはどうだ?」
「不死鳥ですか?」
「ああ」
レイラやメリッサは大借金を負って奴隷身分となったがそこから不死鳥のように復活を果たした。ノビルも万年デックの死にかけ状態から見事に復活を果たした。俺自身も、前世で死んでこの世界に転生を果たした。死んで蘇ったようなものである。
不死鳥という名前は縁起がいいし、俺たちを表すのにピッタリだと思った。
「いいんじゃないでしょうか。素晴らしい名前だと思いますわ」
「いいですね。不死鳥」
「ああ」
「俺もいいと思うぞ」
「僕もいい名前だと思います。縁起いいですし」
エリザ、レイラ、メリッサ、ノビル、パープル――全員から了承を得られたので、俺たちのチーム名は“不死鳥”に決定した。
「それじゃ、不死鳥の新たな門出を祝して乾杯」
「「乾杯!」」
俺たちは杯を交し合う。その日の夜に飲んだ酒は、いつもより美味かった。
そうして初めての王都の夜は更けていった。
飯を食いつつ、今後の話について、パープルが切り出す。
「拠点をどうするかについてですが、方法は大きく分けて二つあります。一つはこういった商業の宿と長期契約して借りる方法。もう一つは、空き家などを貸借する方法です」
「どっちがオススメなの?」
「一般的に言って、後者の方が初期投資がかかるものの時間が経つほど安上がりですね。長期間拠点を張るならば、断然そちらがオススメです」
「なるほどね。皆でまとまってどこかの空き家に住んだ方が安上がりか。ミッドロウよりも物価高いみたいだしね。そうしようか」
俺が「みんなそれでいい?」と聞くと、全員が頷いた。
「僕が冒険者になったのは王都に来たいがためだったので、しばらくここを離れるつもりはないです。皆さんがよければご一緒させてください」
「そうだったんだ。俺たちもしばらくはここにいる予定だよ。今後ともよろしくパープル君」
「はい。こちらこそ」
パープルが冒険者になった志望動機とか、何気に初耳だな。
今まで根掘り葉掘り事情なんて聞いてなかったからね。王都に来るのが目的だったらしい。意外と都会志向なのだろうか。
ともあれ、どこに滞在するかについては、全員一致でどこかの空き家を借り上げるということで決まった。明日情報などを集めて、それからどこを借りるか詳しく検討することにしよう。
「空き家を借りるとなると、初期費用もそうですが、月一で税金もとられてしまいます。皆さん、現在どれくらい予算がありますか? ちなみに僕はこれくらいです」
パープルは五本指を立てた。5ゴルゴンということだろう。結構貯めてるんだな。
レイラとメリッサはそれぞれ3ゴルゴン、ノビルは1ゴルゴンだった。
「俺とエリザは、合わせて30ゴルゴンだな」
「え、う、嘘!?」
30ゴルゴン持っていると言うと、パープルが驚きの余り声を漏らしていた。
レイラたちは事情を知っているから驚いてなんていないだろうが、パープルに合わせたのか、彼女たちも一応驚いたふりをしていた。
(100ゴルゴンとか言わなくてよかったな……)
本当はダンジョンに戻れば100ゴルゴン以上あるけど、何でそんな金持ってるんだってことになるので、これでも抑えた方である。
こんなに驚かれるなら、もっと抑えた金額を言えばよかったかもしれないな。まあいいか。
「実はここだけの話、俺とエリザは避妊魔法、浄化魔法、回復魔法が使えてね。それで裏神父の仕事で稼いでいるんだよ」
「そうだったんですか……。もしかしてお二人は元エビス教の神官だったんですか?」
「いや違うよ。ただ同じ魔法が使えるってだけだよ」
「そうですか。いずれにしても凄いですね」
金を持っている理由を適当に誤魔化しておく。
本当はエレーナの宿、カーネラの宿、乗っ取ったバッド商会などから齎される収入が原資であるが、まるっきし嘘というわけではない。実際に冬の間にミッドロウの町で裏神父の仕事をして小遣い稼ぎをしたりもしていたからね。
「30ゴルゴンあれば空き家を借りるのは簡単ですね。いっそ購入した方が安上がりかもしれません。ヨミトさんがよければですが、立て替えてもらって、我々が少しずつヨミトさんに返済していくというのはどうでしょうか?」
「うんそれでいいよ。じゃあそうしようか」
別に俺が全部払ってもいいのだが、パープルたちに異存はないようなのでそういうことにしよう。
「あとはチーム名を決めましょう。これから冒険者として稼いでいくには、チームとして売り出していく必要があります。ミッドロウの町で名乗っていた“新星”はありふれた名称なので、せっかく王都に来たのですから変更した方が良いかと思います」
「そっか。じゃあそうしよっか」
パープルがチーム名の変更を提案してくる。せっかく王都に進出したんだし、それに合わせて名前を変更するのもいいだろう。
「それでチーム名はどうしますか? ヨミトさんがリーダーなので、ヨミトさんにまず任命権があると思いますよ」
「うーん。そうだね……」
パープルにそう言われ、俺は頭を捻った。
吸血鬼大好きクラブ、吸血鬼同好会、吸血鬼友の会、吸血鬼と騎士団、吸血鬼と愉快な仲間たち――色々と浮かんでくるが、口には出さなかった。
口に出したら最後、エリザ以外の全員から怒られる気がする。
俺はもう一度頭を捻り、真面目に考えた。
「不死鳥――なんてのはどうだ?」
「不死鳥ですか?」
「ああ」
レイラやメリッサは大借金を負って奴隷身分となったがそこから不死鳥のように復活を果たした。ノビルも万年デックの死にかけ状態から見事に復活を果たした。俺自身も、前世で死んでこの世界に転生を果たした。死んで蘇ったようなものである。
不死鳥という名前は縁起がいいし、俺たちを表すのにピッタリだと思った。
「いいんじゃないでしょうか。素晴らしい名前だと思いますわ」
「いいですね。不死鳥」
「ああ」
「俺もいいと思うぞ」
「僕もいい名前だと思います。縁起いいですし」
エリザ、レイラ、メリッサ、ノビル、パープル――全員から了承を得られたので、俺たちのチーム名は“不死鳥”に決定した。
「それじゃ、不死鳥の新たな門出を祝して乾杯」
「「乾杯!」」
俺たちは杯を交し合う。その日の夜に飲んだ酒は、いつもより美味かった。
そうして初めての王都の夜は更けていった。
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