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三章
チャラ男トミー君
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「ちょっと出かけてくるよ」
俺は手短に夕食を済ませると、出かける支度を整えた。
「待ってください」
家から出ていこうとすると、パープルに呼び止められる。
「ヨミトさん、まさかとは思いますが、夜の街に遊びに行くんじゃないでしょうね? パオンさんがこんなに苦しんでるというのに、まさか遊びになんて行かないですよね? エリザさんという素敵な方がいながら、まさか行かないですよね?」
「違う違う。夜の街には行くけど、情報収集のためだから」
「情報収集!? なら俺も付いていくっす!」
「いや、パオン君は来なくて大丈夫だよ。俺一人じゃないと行けない場所だからさ」
「そうっすか。じゃあ大人しく待ってるっす……」
「パオンさんの帯同を拒むなんて怪しい……。やっぱり花宿とかに遊びに行くつもりなんじゃ……」
「だから違うってパープル君。邪推しないでよ。天とエリザに誓って花宿になんて行かないよ。それじゃ行ってくるよ」
パープルの絶対零度のジト目に見送られながら、俺は家を出る。
最近、パープルに例の噂(俺が性豪という二つ名であること)が知られてしまったために、パープルの当たりが強い。悲しいぜ。俺は清き童貞吸血鬼だというのに。
「おっと、目的地に向かうその前にっと」
これから向かうは夜の歓楽街である。その前に、人気のない裏路地でスキル【変化】を使う。
「これでよし」
胸元が大きく開いた派手なシャツを着た、両耳ピアスの色男――トミー君。夜の町に遊びに行く時に俺がよく使うアバターである。容姿に釣られてホイホイやって来た女の子の血を吸う時に重宝している。
そんなチャラ男イケメン遊び人のトミー君に変身してから、目的地へと向かう。
これから向かう場所はトミーとして活動している時に出来たコネだから、パオンを帯同させるわけにはいかなかったのだ。スキル【変化】についてはパープルにも教えてないしね。
「確かここだな」
トミーに変身した俺は、夜の歓楽街にある、とある店にお邪魔する。ベート形態のエリザと何度も来たことがあるお店だ。前世で言うところのクラブみたいな場所だ。
店に入ると、煌びやかな光と共に喧騒が聞こえてくる。
この世界には、映像を映し出したり、音をかき鳴らしたりする魔道具というものが存在しているらしい。どれも田舎村にはなかったようなものだが、王都の店ではそれなりに存在しているようだ。
カーネラの宿に初めて行った時も思ったが、魔道具の沢山あるお店に行くと中世世界だとは思えなくなるな。まるで現代にいるかのように錯覚するよ。
「よおトミーちゃん。お久しぶりじゃん」
「やあしばらく」
すれ違ったトミー形態時の知り合いと陽気に挨拶を交わしながら、適当に酒を飲んだり、踊ったりしながら目当ての人物を探す。
(今日は来てないのか――――あ、いたな)
しばらくクラブ内を彷徨っていると、露出の多い服装で踊り狂う二人の女の子を見つけた。彼女たちが目当ての子だ。そちらへと近づいていく。
「リオちゃん、パンシーちゃん。ちょっといい?」
踊り狂う二人の女の子。まだ若いというのにドぎついメイクをし、娼婦と見紛うばかりの服装でいる。
実はこの二人、俺たちが初めて王都に来た日に泊まった“ドルドロの宿木”という宿屋でバイトしていた学生の子たちである。
真面目そうな子だと思ったが、裏ではこんな派手な遊びをしていたらしい。王都の夜風に当てられて変わっちゃったみたいね。あるいは元々そういった性格の子たちだったのかもだけど。
「トミー君、しばらくぶり~。今日はベート君はいないんだね」
「トミーじゃん。どうしたの?」
「ちょっと二人に聞きたいことがあってね。向こうで飲もうよ」
まだ踊り足りなさそうで若干渋る彼女たちであるが、軽くスキル【魅了】を発動させると、二人は大人しく俺についてくることになった。
魅了スキル使わないと、いつまでもぐだぐだ長話ばっかりしちゃうからね。いつもならそれでもいいんだが、今日は時間が惜しいので短縮しよう。
「二人借りてくよ~」
「またかよトミー。羨ましいぞ~」
クラブで可愛い女の子二人を連れ出すイケメン。そんないけ好かないやつは、普通だったら血気盛んなチンピラに絡まれて制裁されるところである。
だがそんな事態にはならない。このクラブに出入りした当初はそんなこともあったが、ベートと一緒に返り討ちにして一撃でのしたら、それ以来突っかかってくるやつはいなくなったのだ。
トミーとベートがクラブにちょこっと顔を出してお気に入りの女の子(あるいは男の子)を連れ出す――そんなことは、今となってはいつものこととして受け止められている。
遊び人トミーとベート。二人の名は、裏世界ではそれなりに顔が通っている。トミーというキャラは王都の裏社会で活動する時にかなり役立ってくれているぜ。
「羨ましいぞこの野郎~」
「もげろトミー!」
「このヤリチンが!」
知り合いの野郎共からの絡みをかわしながら、リオとパンシーの二人を伴ってクラブを出る。そのまま近くの連れ込み宿へとインする。
俺は手短に夕食を済ませると、出かける支度を整えた。
「待ってください」
家から出ていこうとすると、パープルに呼び止められる。
「ヨミトさん、まさかとは思いますが、夜の街に遊びに行くんじゃないでしょうね? パオンさんがこんなに苦しんでるというのに、まさか遊びになんて行かないですよね? エリザさんという素敵な方がいながら、まさか行かないですよね?」
「違う違う。夜の街には行くけど、情報収集のためだから」
「情報収集!? なら俺も付いていくっす!」
「いや、パオン君は来なくて大丈夫だよ。俺一人じゃないと行けない場所だからさ」
「そうっすか。じゃあ大人しく待ってるっす……」
「パオンさんの帯同を拒むなんて怪しい……。やっぱり花宿とかに遊びに行くつもりなんじゃ……」
「だから違うってパープル君。邪推しないでよ。天とエリザに誓って花宿になんて行かないよ。それじゃ行ってくるよ」
パープルの絶対零度のジト目に見送られながら、俺は家を出る。
最近、パープルに例の噂(俺が性豪という二つ名であること)が知られてしまったために、パープルの当たりが強い。悲しいぜ。俺は清き童貞吸血鬼だというのに。
「おっと、目的地に向かうその前にっと」
これから向かうは夜の歓楽街である。その前に、人気のない裏路地でスキル【変化】を使う。
「これでよし」
胸元が大きく開いた派手なシャツを着た、両耳ピアスの色男――トミー君。夜の町に遊びに行く時に俺がよく使うアバターである。容姿に釣られてホイホイやって来た女の子の血を吸う時に重宝している。
そんなチャラ男イケメン遊び人のトミー君に変身してから、目的地へと向かう。
これから向かう場所はトミーとして活動している時に出来たコネだから、パオンを帯同させるわけにはいかなかったのだ。スキル【変化】についてはパープルにも教えてないしね。
「確かここだな」
トミーに変身した俺は、夜の歓楽街にある、とある店にお邪魔する。ベート形態のエリザと何度も来たことがあるお店だ。前世で言うところのクラブみたいな場所だ。
店に入ると、煌びやかな光と共に喧騒が聞こえてくる。
この世界には、映像を映し出したり、音をかき鳴らしたりする魔道具というものが存在しているらしい。どれも田舎村にはなかったようなものだが、王都の店ではそれなりに存在しているようだ。
カーネラの宿に初めて行った時も思ったが、魔道具の沢山あるお店に行くと中世世界だとは思えなくなるな。まるで現代にいるかのように錯覚するよ。
「よおトミーちゃん。お久しぶりじゃん」
「やあしばらく」
すれ違ったトミー形態時の知り合いと陽気に挨拶を交わしながら、適当に酒を飲んだり、踊ったりしながら目当ての人物を探す。
(今日は来てないのか――――あ、いたな)
しばらくクラブ内を彷徨っていると、露出の多い服装で踊り狂う二人の女の子を見つけた。彼女たちが目当ての子だ。そちらへと近づいていく。
「リオちゃん、パンシーちゃん。ちょっといい?」
踊り狂う二人の女の子。まだ若いというのにドぎついメイクをし、娼婦と見紛うばかりの服装でいる。
実はこの二人、俺たちが初めて王都に来た日に泊まった“ドルドロの宿木”という宿屋でバイトしていた学生の子たちである。
真面目そうな子だと思ったが、裏ではこんな派手な遊びをしていたらしい。王都の夜風に当てられて変わっちゃったみたいね。あるいは元々そういった性格の子たちだったのかもだけど。
「トミー君、しばらくぶり~。今日はベート君はいないんだね」
「トミーじゃん。どうしたの?」
「ちょっと二人に聞きたいことがあってね。向こうで飲もうよ」
まだ踊り足りなさそうで若干渋る彼女たちであるが、軽くスキル【魅了】を発動させると、二人は大人しく俺についてくることになった。
魅了スキル使わないと、いつまでもぐだぐだ長話ばっかりしちゃうからね。いつもならそれでもいいんだが、今日は時間が惜しいので短縮しよう。
「二人借りてくよ~」
「またかよトミー。羨ましいぞ~」
クラブで可愛い女の子二人を連れ出すイケメン。そんないけ好かないやつは、普通だったら血気盛んなチンピラに絡まれて制裁されるところである。
だがそんな事態にはならない。このクラブに出入りした当初はそんなこともあったが、ベートと一緒に返り討ちにして一撃でのしたら、それ以来突っかかってくるやつはいなくなったのだ。
トミーとベートがクラブにちょこっと顔を出してお気に入りの女の子(あるいは男の子)を連れ出す――そんなことは、今となってはいつものこととして受け止められている。
遊び人トミーとベート。二人の名は、裏世界ではそれなりに顔が通っている。トミーというキャラは王都の裏社会で活動する時にかなり役立ってくれているぜ。
「羨ましいぞこの野郎~」
「もげろトミー!」
「このヤリチンが!」
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