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三章
唯一の手がかり
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「ねえ二人に聞きたいことがあるんだけどさ」
「何々~?」
「二人って確か学校に通ってるんだったよね?」
「そうだよ~」
ベッドに座りながら酒を飲み、二人に話をふる。実はこの二人、ブレンダも通っていた王都の学校に通っている。しかも料理学専攻で、ブレンダと同じ専攻らしい。
何か事情を知っているかもしれないと思い、それで今回話を聞きにきたのだ。今まですっかり忘れてたけど。
「学校の話とかしたくないんですけど~。つまらないし~」
「ごめんごめん。でも聞いて欲しいんだ。実は知り合いの子の彼女が行方不明になっててね。リオちゃんたちの学校の子だと思うんだけど」
「何それヤバ! 流行の神隠しじゃん!」
「超怖いんだけど~!」
宿屋でバイトしている時の二人はめっちゃ真面目そうで知性のある喋り方なのに、裏の状態ではなんともまあアホそうな喋り方である。元々アホな喋り方な上、酒が入っているせいで、時々話が脱線する。なんとか軌道修正しながら会話を続ける。
「ブレンダって子なんだけど、二人とも知ってる?」
「ブレンダ……知らないなぁ」
「ブレンダ……あっ、もしかしてあの子じゃない? 超真面目そうなあの子! 新入生代表で挨拶してた子!」
「あ~! あの子か! そういえばブレンダって名前だっけか!」
「二人とも見覚えあるんだね? 実はその子が行方不明になっててね」
「あー、そういや最近見ないね」
「その子が神隠しにあったの?」
「実はね――」
かくかくしかじかと事情を説明していき、彼女たちから情報をもらう。
二人はブレンダと特段仲の良い友達ではなかったようだ。
ブレンダが学校が用意した寮で生活をしていたのに対し、彼女たちは自分たちで借りたシェアハウスから学校に通っていて接点は少なかった。ブレンダが表も裏も超真面目な性格をしているのに対して、彼女たちは裏ではこんな感じなので、仲良くつるんで遊んだりはしていなかったようだ。教室で顔を合わせてたまに世間話をする程度の関係だったらしい。
「そういや一ヶ月くらい前から見なくなったね~」
「そっか。あの子も学校辞めたんだ」
「あくまで学校側の説明では、の話だけどね」
リオとパンシーがブレンダを見なくなったのもちょうど一ヶ月前くらいらしい。パオンが寮監から告げられたブレンダが寮を退寮して学校を辞めたとされる時期と合っている。
裏付けがとれたことで、一ヶ月前くらいを境にブレンダが忽然と姿を消したのは、間違いのない事実らしい。
ただその後のブレンダの足取りが全くつかめないというのは妙な話だ。
交友関係の広い彼女たちですら、まったくブレンダのその後を知らないとはな。それこそ、本当に神隠しに遭ったようにいなくなるなんてな。
この前ガンドリィがオカマバーで四方山話に話していたことがまさか身近で発生するとは思わなかったな。
「学校辞める子って多いの?」
「結構いるよ~。突然辞める子多いし。金がなくなったり、貴族の先公にセクハラされてウザくて辞める子もいるし」
「ウチらも毎回絡まれてブチ切れそうになってるもんね~。パンピー出身は辛いって。後ろ盾ないからやられ放題だもん」
二人は学校生活に多大なるストレスを抱えているらしい。もしかしたら、そのストレスのせいで夜の街で暴れているのかもしれないな。
「あっ、そういえば」
「ん? どうしたの?」
考え込んでいたパンシーが、何かを思い出したかのように口を開く。
「ブレンダって子、たしか校長とよく話してた気がする」
「校長? 学校の?」
「うん。王宮の元料理長だとかなんとか。デブで気持ち悪い、下級貴族のハゲ親父だよ」
「へぇ、そうなんだ。校長先生相手に酷い言い草だね」
「だってキモいんだもん。仕方ないじゃん」
ブレンダは校長とよくお話していたらしい。
優等生のブレンダが学校の先生とよく話してたという程度じゃ、関係性としては薄いかもしれない。だが現状、その校長以外に辿る術がない。
(他に情報が何もない以上、その校長って奴を調べてみるしかなさそうか。明日にでも学校に潜入してみるか)
そんなことを考えながら、俺は酒を飲み込んだ。未だ行方知れずのブレンダのことを思いながら飲む酒の味は、ほろ苦いものであった。
「ねえ、もう私たちの知ってることなんてないよ?」
「こんなところに呼び出したんだからさ、やろうよ?」
「ああ。そうだね」
これ以上、情報は得られないようだ。俺はスキル【魅了】を発動して、二人を夢の世界に閉じ込める。
「ついでだから血を頂いていこうか」
俺は二人の首筋に噛み付き、血を啜る。
「んー、相変わらず不味くはないけど微妙だな」
二人は悪い子ではないから悪人の味はしない。けど欲に塗れてるからか濁った味がするね。
例えるなら都会の水道水だ。一応そのまま飲めるんだけど、塩素臭くて美味しくなく、浄水器通せば美味しくなるのに、って思える――そんな感じの血だ。
「ご馳走様っと」
俺は倒れている二人をベッドに残し、水を撒いて事後に見えるように偽装工作した後、一足先に宿を出たのであった。
「何々~?」
「二人って確か学校に通ってるんだったよね?」
「そうだよ~」
ベッドに座りながら酒を飲み、二人に話をふる。実はこの二人、ブレンダも通っていた王都の学校に通っている。しかも料理学専攻で、ブレンダと同じ専攻らしい。
何か事情を知っているかもしれないと思い、それで今回話を聞きにきたのだ。今まですっかり忘れてたけど。
「学校の話とかしたくないんですけど~。つまらないし~」
「ごめんごめん。でも聞いて欲しいんだ。実は知り合いの子の彼女が行方不明になっててね。リオちゃんたちの学校の子だと思うんだけど」
「何それヤバ! 流行の神隠しじゃん!」
「超怖いんだけど~!」
宿屋でバイトしている時の二人はめっちゃ真面目そうで知性のある喋り方なのに、裏の状態ではなんともまあアホそうな喋り方である。元々アホな喋り方な上、酒が入っているせいで、時々話が脱線する。なんとか軌道修正しながら会話を続ける。
「ブレンダって子なんだけど、二人とも知ってる?」
「ブレンダ……知らないなぁ」
「ブレンダ……あっ、もしかしてあの子じゃない? 超真面目そうなあの子! 新入生代表で挨拶してた子!」
「あ~! あの子か! そういえばブレンダって名前だっけか!」
「二人とも見覚えあるんだね? 実はその子が行方不明になっててね」
「あー、そういや最近見ないね」
「その子が神隠しにあったの?」
「実はね――」
かくかくしかじかと事情を説明していき、彼女たちから情報をもらう。
二人はブレンダと特段仲の良い友達ではなかったようだ。
ブレンダが学校が用意した寮で生活をしていたのに対し、彼女たちは自分たちで借りたシェアハウスから学校に通っていて接点は少なかった。ブレンダが表も裏も超真面目な性格をしているのに対して、彼女たちは裏ではこんな感じなので、仲良くつるんで遊んだりはしていなかったようだ。教室で顔を合わせてたまに世間話をする程度の関係だったらしい。
「そういや一ヶ月くらい前から見なくなったね~」
「そっか。あの子も学校辞めたんだ」
「あくまで学校側の説明では、の話だけどね」
リオとパンシーがブレンダを見なくなったのもちょうど一ヶ月前くらいらしい。パオンが寮監から告げられたブレンダが寮を退寮して学校を辞めたとされる時期と合っている。
裏付けがとれたことで、一ヶ月前くらいを境にブレンダが忽然と姿を消したのは、間違いのない事実らしい。
ただその後のブレンダの足取りが全くつかめないというのは妙な話だ。
交友関係の広い彼女たちですら、まったくブレンダのその後を知らないとはな。それこそ、本当に神隠しに遭ったようにいなくなるなんてな。
この前ガンドリィがオカマバーで四方山話に話していたことがまさか身近で発生するとは思わなかったな。
「学校辞める子って多いの?」
「結構いるよ~。突然辞める子多いし。金がなくなったり、貴族の先公にセクハラされてウザくて辞める子もいるし」
「ウチらも毎回絡まれてブチ切れそうになってるもんね~。パンピー出身は辛いって。後ろ盾ないからやられ放題だもん」
二人は学校生活に多大なるストレスを抱えているらしい。もしかしたら、そのストレスのせいで夜の街で暴れているのかもしれないな。
「あっ、そういえば」
「ん? どうしたの?」
考え込んでいたパンシーが、何かを思い出したかのように口を開く。
「ブレンダって子、たしか校長とよく話してた気がする」
「校長? 学校の?」
「うん。王宮の元料理長だとかなんとか。デブで気持ち悪い、下級貴族のハゲ親父だよ」
「へぇ、そうなんだ。校長先生相手に酷い言い草だね」
「だってキモいんだもん。仕方ないじゃん」
ブレンダは校長とよくお話していたらしい。
優等生のブレンダが学校の先生とよく話してたという程度じゃ、関係性としては薄いかもしれない。だが現状、その校長以外に辿る術がない。
(他に情報が何もない以上、その校長って奴を調べてみるしかなさそうか。明日にでも学校に潜入してみるか)
そんなことを考えながら、俺は酒を飲み込んだ。未だ行方知れずのブレンダのことを思いながら飲む酒の味は、ほろ苦いものであった。
「ねえ、もう私たちの知ってることなんてないよ?」
「こんなところに呼び出したんだからさ、やろうよ?」
「ああ。そうだね」
これ以上、情報は得られないようだ。俺はスキル【魅了】を発動して、二人を夢の世界に閉じ込める。
「ついでだから血を頂いていこうか」
俺は二人の首筋に噛み付き、血を啜る。
「んー、相変わらず不味くはないけど微妙だな」
二人は悪い子ではないから悪人の味はしない。けど欲に塗れてるからか濁った味がするね。
例えるなら都会の水道水だ。一応そのまま飲めるんだけど、塩素臭くて美味しくなく、浄水器通せば美味しくなるのに、って思える――そんな感じの血だ。
「ご馳走様っと」
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