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三章
宿泊者名簿No.10 気狂い校長カニバル6/8
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「こんなところに連れてきて、いったいどういうつもりですか!? カニバル校長先生!」
ワシはいつもの手口で、ブレンダなる娘を自宅の離れにある監禁部屋へと運び入れた。
庶民出身の娘は金に困っていることが多く、奨学金の話をすればすぐ釣れる。
ブレンダも同様だった。呼び出して睡眠薬を飲ませれば余裕だった。
「お主はスイーツとベイカーの娘なのか?」
「そうですけど、それが何か? というか、何故父と母の名を知っているんですか?」
「そうか。やはりそうか。ククク……」
「ひィ、き、気色が悪い……」
彼女の入学申請書等を調べて大方の予想はついていたが、やはりそうだったらしい。ブレンダはスイーツの娘だったのだ。
最高だった。
二度と手に入らぬと思っていたスイーツ。その彼女の血を色濃く受け継いだ少女が、ワシの目の前に哀れな獲物として捧げられているのだからな。
「つかぬことを聞くが、お主は純潔を保っているか?」
「何でそんなことを貴方に言わなければいけないんですか、この変態!」
「まあいい。確認すればいいことだからな」
「何を――ひぃっ、きゃあああ!?」
ワシは持っていた包丁を使い、ブレンダの衣服を切り裂いた。
彼女のしなやかな若い肉体が露となる。ついぞ見ることはなかったが、スイーツの服の下もきっとこのような感じだったのだろうな。
「やだ! 誰か助けて! お父さん! パオン!」
「パオン……誰だそいつは」
「婚約者よ! 私の大切な幼馴染で婚約者!」
「ほほう。それはそれは」
ブレンダにはパオンなる婚約者がいたらしい。それを聞いて、ワシは愉悦を感じずにはいられなかった。
(最高だ! 最高すぎる!)
今度はワシが奪う番だと思った。パオンとやらから婚約者を奪ってやる。ワシがスイーツを奪われたようにな。
「泣き叫びながらというのも乙だが、お主はスイーツによく似ておるからの。優しくしてやろう。新婚夫婦の営みはイチャラブでなければいけないからの」
「何がイチャラブで新婚夫婦よ! このド変態! 近寄らないで!」
「スイーツに比べて些か口が悪いの。あの男に似たのか。そんな悪いお口にはこれじゃ」
「うっ、うぐぅ!」
ワシはブレンダの口に媚薬を溶かした液体を注いでやった。
分量はちゃんと量ってある。前のようなミスは絶対に犯さない。この娘だけは絶対に調教に成功して自分のものにしてやる。ワシの大事な愛妾としてやる。
「あぁっ、身体がっ、熱いぃぃ♡」
「オホホホ。効果は抜群じゃな。結構結構!」
媚薬を口にしたブレンダは頬を赤く染めて悶え出した。
先ほどまでの五月蝿い態度はどこへやら。トロンとした女の顔になった。
最高じゃな。
「あはぁ、切ないのぉ……♡」
「準備万端のようじゃの。さて」
ワシは事を始める前に、とある魔道具を用意して映像を残すことにした。大事な瞬間は、永遠に保存しておかねばならないからの。
「パオンとやら。聞いておるかの」
ワシは魔道具の撮影器のレンズを自分へと向け、パオンという輩への伝言を送る。
犯行が露呈すると不味いのでパオンとやらに映像を見せるつもりなど毛頭ないが、自然とそういう行動をとってしまう。
そうすると脳が一番心地よく感じ、脳細胞が再生される気がするのだ。
「これからブレンダの処女は……このワシが奪い去る」
レンズの向こう側にいる男の姿を想像して悦に浸り、ワシは一人芝居を続けた。
「お主はそこで何もできず、ただひたすら無力感に苛まれながら絶望しておれ。婚約者の処女がわけのわからぬ小汚い爺に汚される様を見て慟哭し、怒り嘆き、脳細胞が破壊される感覚を味わうがいい!」
ワシは決め台詞を言い切ると、もはや何も語らなかった。
その後のことは言うまでもないことだの。
「パオンとやら、血涙を流しながらしかと見届けたか? ご覧の通り、ブレンダはたった今しがた、女になった。乙女から女になったのだ。ブレンダを女にしたのはお主ではない。このカニバル様だ! フハハハハハハ!」
この魔道具に記録されている映像をパオンとやらが見たらどうなるであろうか。きっと脳細胞が徹底的に破壊されるであろうな。
見せるつもりなどないが、そういう妄想をすると酷く興奮できる。
ワシは笑いを堪えることができなかった。高笑いを上げながら魔道具に向かって勝利のポーズを決める。パオンとやら震えて泣くがいい。
(ざまあみろ。ワシの思いを思い知れ。ワシは奪われる側ではない! 今度こそ奪う側に立ったんじゃあ!)
そう思うと、自分の脳細胞が物凄い勢いで再生されていく気がした。
最高じゃ最高すぎる。パオンとやらめ、徹底的に脳細胞が破壊されるがいい。そしてせいぜい脳細胞の回復作業を頑張るがいい!
みんな昔のワシと同じような目に遭えばいいのだ。ワハハハ。
「ブレンダよ。必ずお前をワシのものにしてやるぞ」
その後、ワシはブレンダを徹底的に調教した。
ブレンダは己の身体が汚されたと知った当初は激しく動揺し慟哭していたものの、わりとすぐに立ち直り、ワシのことを睨みつけて罵倒してきた。どんな状況でも抵抗することを決して諦めなかった。
なんという強い娘だろうか。あの銅等級冒険者の血を引いているだけあって気丈なもんじゃわい。
そんな気高い彼女の心を折って完全に屈服させるため、ワシは全力を尽くした。校長職は仮病を使って休んだりして時間を捻出した。充てられる時間の全てをブレンダの調教に使った。
恐怖、快楽――あらゆる手段を使い、ブレンダを調教した。今までに二人失敗して殺してしまった経験を最大限に活用しながら、徹底的に調教を行った。
(やはりダメか。ワシにはカバキのような調教の才能がないのか? 無念じゃ……)
そうして一ヶ月が過ぎていった。ブレンダはついぞ堕ちなかった。長く続く監禁生活でかなり精神的に参っていたようだったが、それでも堕ちなかった。
「ほらっ、食え。若いもんが食わんでどうする! お主の母親が作るスープと全く同じレシピのはずじゃ、ほっぺが落ちるほど美味しいぞ?」
「……」
ついには、ブレンダは与えられた食事を拒むという自傷行為にまで及び始めた。
どうやらこのまま餓死するつもりらしい。満足な栄養がとれず、ブレンダの身体はどんどんと弱っていった。調教に耐えられるものではなくなっていった。
(ここらへんが限界じゃな……。ティゴメの奴も離れに篭りきりのワシを最近怪しんでいるようだし、留守中に忍び込まれたりしたら敵わん)
食事をとらなくなったせいで、ブレンダは確実に死に近づいていた。調教開始から一ヶ月と少し経った頃、ワシはもう限界を感じていた。
近頃、学校周辺でブレンダの行方を捜している奴らがいるそうじゃ。先日は往来でよくわからぬ男に突然質問もされた。捜査の手が迫っているのは間違いない。
すぐにここの居場所がバレるとは思わぬが、万が一ということもある。調教の成功が絶望的となったからには、もはや次の行動に移さねばならない。犯行の証拠は出来るだけ消しておかねばならない。
(無念だがブレンダを処分するしかないか……)
ワシは意を決して包丁を手に取ると、ブレンダの元に向かった。苦渋の決断だった。
「やっと殺す気になったのね。さっさと殺しなさいよ……」
「あぁ。今日でお主ともお別れじゃ。一ヶ月と少しという短い新婚生活じゃったの」
「……御託はいいからさっさと殺して」
ブレンダは虚ろな瞳で殺してくれと言うだけだった。ワシの冗句にも反論する気も訂正する気もないようだった。
(どこで間違ったのかのぉ……)
ワシはブレンダを前にして包丁を構え逡巡した。
何故かつて愛した者と同じ姿をした彼女を殺さねばならないのか。そう考えると、脳細胞がボロボロに壊れていく気がした。
(せめて供養のためにも、全て美味しく食べてやろう。肉は当然として骨も内臓もしっかり食べてやろう。それしかない)
ワシはそう決意し、包丁を握り締めた。彼女が苦痛を感じないよう、いつもより大目の媚薬を口の中に放り込む。
「許してくれスイーツ」
「……さっさと殺して」
彼女を前にして思わず謝罪の言葉が出る。どうしてこうなってしまったのか。
そうだ……全てはあの男が悪いのだ。ワシの愛する婚約者を奪ったアイツが。
若かりし頃のワシの脳細胞を破壊し、脳細胞を変異させたあの男が悪いのだ。
あれから全てが狂ってしまったのだ。スイーツさえいれば、ワシは他の何だっていらなかったのに。それを奪ったアイツが悪いのだ。
「全ては君のお父上が悪いのだよ。恨むならお父上を恨んでくれたまえ」
搾り出すようにそう言うと、ワシは包丁を振りかぶった。祈りの言葉を呟きながらそれを振りかざす――そんな時だった。
「ブレンダちゃん、無事かッ!?」
見たことも会ったこともない冴えない男が、部屋に飛び込んできた。鍵付けされた頑丈な扉を蹴破って入ってきた。見た目は冴えないが、力はとても強いらしかった。
(こやつ何者だ!?)
ブレンダの名前を出していることから彼女の関係者であることはわかった。
もしやこやつがパオンという奴か。いや違うな。婚約者と会ったならばブレンダの表情にもっと動揺があるはずだが、それがない。
大方、パオンとやらに頼まれてワシを探っている冒険者やもしれんと思った。
どうしてここの場所がわかったのか。どうして貴族街にあるここに辿り着いたのか。
いやそんなことを考えている暇などない。それよりも目の前のこやつを始末しなければ。
ワシは包丁を握り締め、奴へと向かっていった。
「まずはお主から始末してくれる――なにィっ!?」
奴は驚いたことにワシの包丁を素手で叩き折りおった。
驚いている暇もなく、ワシの意識は奴の放った手刀で刈り取られていった。
(次に目覚めた時は牢獄かさてまた別の場所か……)
そんなことを考えながらワシの意識は闇に沈んだ。
ワシはいつもの手口で、ブレンダなる娘を自宅の離れにある監禁部屋へと運び入れた。
庶民出身の娘は金に困っていることが多く、奨学金の話をすればすぐ釣れる。
ブレンダも同様だった。呼び出して睡眠薬を飲ませれば余裕だった。
「お主はスイーツとベイカーの娘なのか?」
「そうですけど、それが何か? というか、何故父と母の名を知っているんですか?」
「そうか。やはりそうか。ククク……」
「ひィ、き、気色が悪い……」
彼女の入学申請書等を調べて大方の予想はついていたが、やはりそうだったらしい。ブレンダはスイーツの娘だったのだ。
最高だった。
二度と手に入らぬと思っていたスイーツ。その彼女の血を色濃く受け継いだ少女が、ワシの目の前に哀れな獲物として捧げられているのだからな。
「つかぬことを聞くが、お主は純潔を保っているか?」
「何でそんなことを貴方に言わなければいけないんですか、この変態!」
「まあいい。確認すればいいことだからな」
「何を――ひぃっ、きゃあああ!?」
ワシは持っていた包丁を使い、ブレンダの衣服を切り裂いた。
彼女のしなやかな若い肉体が露となる。ついぞ見ることはなかったが、スイーツの服の下もきっとこのような感じだったのだろうな。
「やだ! 誰か助けて! お父さん! パオン!」
「パオン……誰だそいつは」
「婚約者よ! 私の大切な幼馴染で婚約者!」
「ほほう。それはそれは」
ブレンダにはパオンなる婚約者がいたらしい。それを聞いて、ワシは愉悦を感じずにはいられなかった。
(最高だ! 最高すぎる!)
今度はワシが奪う番だと思った。パオンとやらから婚約者を奪ってやる。ワシがスイーツを奪われたようにな。
「泣き叫びながらというのも乙だが、お主はスイーツによく似ておるからの。優しくしてやろう。新婚夫婦の営みはイチャラブでなければいけないからの」
「何がイチャラブで新婚夫婦よ! このド変態! 近寄らないで!」
「スイーツに比べて些か口が悪いの。あの男に似たのか。そんな悪いお口にはこれじゃ」
「うっ、うぐぅ!」
ワシはブレンダの口に媚薬を溶かした液体を注いでやった。
分量はちゃんと量ってある。前のようなミスは絶対に犯さない。この娘だけは絶対に調教に成功して自分のものにしてやる。ワシの大事な愛妾としてやる。
「あぁっ、身体がっ、熱いぃぃ♡」
「オホホホ。効果は抜群じゃな。結構結構!」
媚薬を口にしたブレンダは頬を赤く染めて悶え出した。
先ほどまでの五月蝿い態度はどこへやら。トロンとした女の顔になった。
最高じゃな。
「あはぁ、切ないのぉ……♡」
「準備万端のようじゃの。さて」
ワシは事を始める前に、とある魔道具を用意して映像を残すことにした。大事な瞬間は、永遠に保存しておかねばならないからの。
「パオンとやら。聞いておるかの」
ワシは魔道具の撮影器のレンズを自分へと向け、パオンという輩への伝言を送る。
犯行が露呈すると不味いのでパオンとやらに映像を見せるつもりなど毛頭ないが、自然とそういう行動をとってしまう。
そうすると脳が一番心地よく感じ、脳細胞が再生される気がするのだ。
「これからブレンダの処女は……このワシが奪い去る」
レンズの向こう側にいる男の姿を想像して悦に浸り、ワシは一人芝居を続けた。
「お主はそこで何もできず、ただひたすら無力感に苛まれながら絶望しておれ。婚約者の処女がわけのわからぬ小汚い爺に汚される様を見て慟哭し、怒り嘆き、脳細胞が破壊される感覚を味わうがいい!」
ワシは決め台詞を言い切ると、もはや何も語らなかった。
その後のことは言うまでもないことだの。
「パオンとやら、血涙を流しながらしかと見届けたか? ご覧の通り、ブレンダはたった今しがた、女になった。乙女から女になったのだ。ブレンダを女にしたのはお主ではない。このカニバル様だ! フハハハハハハ!」
この魔道具に記録されている映像をパオンとやらが見たらどうなるであろうか。きっと脳細胞が徹底的に破壊されるであろうな。
見せるつもりなどないが、そういう妄想をすると酷く興奮できる。
ワシは笑いを堪えることができなかった。高笑いを上げながら魔道具に向かって勝利のポーズを決める。パオンとやら震えて泣くがいい。
(ざまあみろ。ワシの思いを思い知れ。ワシは奪われる側ではない! 今度こそ奪う側に立ったんじゃあ!)
そう思うと、自分の脳細胞が物凄い勢いで再生されていく気がした。
最高じゃ最高すぎる。パオンとやらめ、徹底的に脳細胞が破壊されるがいい。そしてせいぜい脳細胞の回復作業を頑張るがいい!
みんな昔のワシと同じような目に遭えばいいのだ。ワハハハ。
「ブレンダよ。必ずお前をワシのものにしてやるぞ」
その後、ワシはブレンダを徹底的に調教した。
ブレンダは己の身体が汚されたと知った当初は激しく動揺し慟哭していたものの、わりとすぐに立ち直り、ワシのことを睨みつけて罵倒してきた。どんな状況でも抵抗することを決して諦めなかった。
なんという強い娘だろうか。あの銅等級冒険者の血を引いているだけあって気丈なもんじゃわい。
そんな気高い彼女の心を折って完全に屈服させるため、ワシは全力を尽くした。校長職は仮病を使って休んだりして時間を捻出した。充てられる時間の全てをブレンダの調教に使った。
恐怖、快楽――あらゆる手段を使い、ブレンダを調教した。今までに二人失敗して殺してしまった経験を最大限に活用しながら、徹底的に調教を行った。
(やはりダメか。ワシにはカバキのような調教の才能がないのか? 無念じゃ……)
そうして一ヶ月が過ぎていった。ブレンダはついぞ堕ちなかった。長く続く監禁生活でかなり精神的に参っていたようだったが、それでも堕ちなかった。
「ほらっ、食え。若いもんが食わんでどうする! お主の母親が作るスープと全く同じレシピのはずじゃ、ほっぺが落ちるほど美味しいぞ?」
「……」
ついには、ブレンダは与えられた食事を拒むという自傷行為にまで及び始めた。
どうやらこのまま餓死するつもりらしい。満足な栄養がとれず、ブレンダの身体はどんどんと弱っていった。調教に耐えられるものではなくなっていった。
(ここらへんが限界じゃな……。ティゴメの奴も離れに篭りきりのワシを最近怪しんでいるようだし、留守中に忍び込まれたりしたら敵わん)
食事をとらなくなったせいで、ブレンダは確実に死に近づいていた。調教開始から一ヶ月と少し経った頃、ワシはもう限界を感じていた。
近頃、学校周辺でブレンダの行方を捜している奴らがいるそうじゃ。先日は往来でよくわからぬ男に突然質問もされた。捜査の手が迫っているのは間違いない。
すぐにここの居場所がバレるとは思わぬが、万が一ということもある。調教の成功が絶望的となったからには、もはや次の行動に移さねばならない。犯行の証拠は出来るだけ消しておかねばならない。
(無念だがブレンダを処分するしかないか……)
ワシは意を決して包丁を手に取ると、ブレンダの元に向かった。苦渋の決断だった。
「やっと殺す気になったのね。さっさと殺しなさいよ……」
「あぁ。今日でお主ともお別れじゃ。一ヶ月と少しという短い新婚生活じゃったの」
「……御託はいいからさっさと殺して」
ブレンダは虚ろな瞳で殺してくれと言うだけだった。ワシの冗句にも反論する気も訂正する気もないようだった。
(どこで間違ったのかのぉ……)
ワシはブレンダを前にして包丁を構え逡巡した。
何故かつて愛した者と同じ姿をした彼女を殺さねばならないのか。そう考えると、脳細胞がボロボロに壊れていく気がした。
(せめて供養のためにも、全て美味しく食べてやろう。肉は当然として骨も内臓もしっかり食べてやろう。それしかない)
ワシはそう決意し、包丁を握り締めた。彼女が苦痛を感じないよう、いつもより大目の媚薬を口の中に放り込む。
「許してくれスイーツ」
「……さっさと殺して」
彼女を前にして思わず謝罪の言葉が出る。どうしてこうなってしまったのか。
そうだ……全てはあの男が悪いのだ。ワシの愛する婚約者を奪ったアイツが。
若かりし頃のワシの脳細胞を破壊し、脳細胞を変異させたあの男が悪いのだ。
あれから全てが狂ってしまったのだ。スイーツさえいれば、ワシは他の何だっていらなかったのに。それを奪ったアイツが悪いのだ。
「全ては君のお父上が悪いのだよ。恨むならお父上を恨んでくれたまえ」
搾り出すようにそう言うと、ワシは包丁を振りかぶった。祈りの言葉を呟きながらそれを振りかざす――そんな時だった。
「ブレンダちゃん、無事かッ!?」
見たことも会ったこともない冴えない男が、部屋に飛び込んできた。鍵付けされた頑丈な扉を蹴破って入ってきた。見た目は冴えないが、力はとても強いらしかった。
(こやつ何者だ!?)
ブレンダの名前を出していることから彼女の関係者であることはわかった。
もしやこやつがパオンという奴か。いや違うな。婚約者と会ったならばブレンダの表情にもっと動揺があるはずだが、それがない。
大方、パオンとやらに頼まれてワシを探っている冒険者やもしれんと思った。
どうしてここの場所がわかったのか。どうして貴族街にあるここに辿り着いたのか。
いやそんなことを考えている暇などない。それよりも目の前のこやつを始末しなければ。
ワシは包丁を握り締め、奴へと向かっていった。
「まずはお主から始末してくれる――なにィっ!?」
奴は驚いたことにワシの包丁を素手で叩き折りおった。
驚いている暇もなく、ワシの意識は奴の放った手刀で刈り取られていった。
(次に目覚めた時は牢獄かさてまた別の場所か……)
そんなことを考えながらワシの意識は闇に沈んだ。
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