吸血鬼のお宿~異世界転生して吸血鬼のダンジョンマスターになった男が宿屋運営する話~

夜光虫

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四章

牧場整備

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 俺たちがジョーア村で任務に励んでいる間、まさかあんな酷いことがメグミンたちの身に起こっていたとはね。

 事前に察知できれば防ぎたかったところだが、そんなのわからなかったからね。可哀想なことになってて申し訳なかったね。

「よしメグミンたちを救出しよう」
「おう!」

 メグミンたちの窮地を救わないわけにはいかない。事態を知った俺たちは、すぐに行動を起こすことにした。

「オージン、バカン、そして農奴諸君。君たちは今日から俺のダンジョンの家畜だよ。死ぬまで家畜として頑張ってね」
「ひぃいい助けてぇええ!」
「許してぇええ!」

 メグミンの叔父とその息子バカン。それと調子に乗っていた農奴連中を捕虜にし、ダンジョンの拷問部屋に移送した。彼らにはそこでダンジョンのレクリエーション用具兼DM生産家畜となってもらった。

 メグミンとアキを自分たちの都合の良い家畜のように扱っていた連中には、相応しい末路だろう。

 先日、オージンたちはその家畜としてのお役目を終え、天に召されたところだ。メグミンやアキに対する損害賠償金分くらいはDMを回収できたかなと思う。

 得られたDMはメグミンたちに優先的に分配することにしたよ。メグミンとアキを眷属にし、メグミンの牧場をダンジョン化させると同時、ダンジョン内部にもメグミンの牧場を設置した。

 メグミンたちが眷属になったのを機に、ダンジョンでは畜産事業も始めることにした。シブヘイのダンジョンを滅ぼしたことで捕虜にしたオーク娘たちの働く場も確保したかったからね。

「みんな、小屋に戻る時間だよ!」
「モー!」

 ダンジョン内牧場にて、アキが叫ぶ。アキが笛を吹くと、牧場エリアを自由に動き回っていた牛たちが一斉に小屋の方に戻っていく。

 アキは【魔笛】という動物を操れる珍しいスキルを持っていた。人間に友好的な動物にしか効果がないらしいが、畜産関係の仕事をするには便利なスキルだ。

 ちなみに、俺とエリザもそのスキルを持っている。アキの血を吸わせてもらったことでラーニングできたからね。

 アキは他にも【病弱】というバッドスキルも持っていたが、それは眷属になった時に消してあげた。だから今の彼はバッドスキルなしの健康体でピンピンしている。

 おまけにオージンたちを始末したことでレベルも上がったので、以前とは比べ物にならないくらい元気だ。目元にあった大きな隈も綺麗さっぱり消えて、生気に満ち溢れた顔をしている。

 体力が有り余っているのか、表のメグミンの牧場(王都の農業地区)の仕事を終えた後は、裏のメグミンの牧場(俺のダンジョン内部)の仕事まで精力的にこなしてくれている。

 メグミンと並び、我がダンジョンの畜産部門ではなくてはならない人材となっているね。

「お疲れアキ」
「ヨミトさん、お疲れ様です」

 俺が声をかけると、アキは朗らかに微笑みながら返事を返してくれた。

 メグミン共々、すっかり元気を取り戻したようだ。オージンを始末したことで一区切りついたのだろう。

「体力は大丈夫?」
「このままもう一日分の作業やってくれって言われても、へっちゃらなくらいですよ」
「ハハ、それは重畳だね」

 アキは一日の仕事を終えたというのに、力が有り余っている様子だ。病弱だった時の姿は見る影もない。

 冒険者をやっているノビルたちほどではないが、元気に溢れてて頼もしい限りだね。

「全てはヨミトさんのおかげです。ありがとうございます。僕たちを救ってくださったばかりか、牧場の存続にも手を貸してくれて。それに新しくこんな良い牧場も下さって。本当に感謝しています」
「気にしないでよ。牧場を整備したのは俺にも利があることだからさ」
「それでもです。本当にありがとうございます。元気になった分、精一杯働きますので」

 アキは重ね重ね感謝を述べてくる。こちらが恐縮するくらいだね。

「まあ働くのは程ほどにね。ワークライフバランスは大事だしさ。それより、アキはこれから銭湯?」
「はい。いつもの通りですね」
「そっか。じゃあ俺もたまには銭湯に行って眷属たちと交流しようかな」
「それはいいですね。お供しますよ」

 仕事を終えたアキと俺は、ダンジョンの銭湯施設へと向かう。

「いらっしゃいませアキさん、ご主人様」
「こんばんは」
「やあゴブリリ」

 銭湯に行くと、今日の番台であるゴブリリが迎えてくれる。

「銭湯では何か問題ある?」
「いえ特に何も。強いて言えば、あのきしょい三兄弟がお風呂上りのゴブリン娘たちをきしょい目でちらちらと見ていることくらいですかね。ホントきしょい。出禁にしようかと思ったくらいです」
「あーそう。だったら今度タロウたちを注意しとくね」

 シブヘイとの戦いを通して、タロウたち三兄弟はナイトクラスに進化した。それでさらに体力が向上したせいか、また盛りがついているみたいなんだよね。

 インディスとデュワというお嫁さんがいるんだけど、妊娠中はそういうことできないからか、精力を持て余しているらしい。それで銭湯に来た際、共用スペースで寛いでいるゴブリン娘たちをじろじろ見ているらしい。

 まあ英雄色を好むとか言うし、よほど変なことをしない限りは注意くらいに止めておこう。多様な人材を生かしてこその経営者だしね。

「ゴブリリさん、ウチの牧場のブル乳の売れ行きはどうですか?」

 俺がゴブリリと話し終わると、すかさずアキが口を挟む。

「ええ、好調ですよ。特にあのきしょい三兄弟はいつも買ってます。お嫁さんと小さい子どもたちの分のお土産だとか言って、余分にも買っていきます」
「そうですか良かった」

 ダンジョンの銭湯に卸している牛乳の売れ行きがいいと聞いて、アキは安心したように笑った。

 ダンジョンの牧場施設が整ったのに合わせ、採れた牛乳を銭湯で販売することにした。

 普通の牛乳は勿論のこと、コーヒー牛乳やフルーツ牛乳やらも売っている。眷属しか利用しない施設だから、かなり格安の値段で提供されている。

 今までは労働の対価は無償か現物支給だったんだけど、この世界の通貨が結構ストックできたんで、眷属たちにも給金として配布することにした。ダンジョンにも貨幣経済を浸透させ、ダンジョン内でも経済活動を行うことにした。

 ダンジョン外から外貨を獲得し、ダンジョン内の経済を発展させ、行く行くは一つの国くらいまで大きくしていきたいものだ。

 経済が大きくなってダンジョン内の生産能力が増えれば、外敵と戦う際にも有利になるだろう。

 ダンジョン内に俺だけの王国を築いていこう。夢は広がるな。

「よおアキ」
「ノビル。君も今からお風呂?」
「ああ。ドブ浚いの仕事を終えた後だ」
「そっか。お疲れ」
「お前もな。牧場仕事大変だろ?」
「うん。でも前より格段に楽になったよ。バッドスキルがなくなったからね。ヨミトさんのおかげさ」

 ゴブリリと話していると、ノビルがやって来た。ノビルとアキの二人は俺そっちのけで会話を始めた。

 相変わらず仲がよろしいようで結構なことだ。元バッドスキル持ち同士ということも、惹かれ合う要因になっているのかもな。

「ここで立ち話もなんだ。さあ二人共、風呂に入ろうじゃないか」
「ああそうだな」
「そうですね」

 俺はノビルとアキの肩を軽く叩き、男湯の暖簾を潜ったのであった。
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