吸血鬼のお宿～異世界転生して吸血鬼のダンジョンマスターになった男が宿屋運営する話～

六章

港町イティーバ３/１９（娼婦の血）

「エリザ、どの子からいく？」

　姿を現したエリザと相談し合う。

「この処女の双子の片割れにしますわ」
「そうか。じゃあ俺もそうしよう」

　双子のイナとイパ。俺とエリザはそれぞれを選んで、首元にがぶりと噛み付く。ちゅうちゅう吸ったその後は交換して、もう片方の子の血も楽しむ。

　ああなんと悲しき運命にいる姉妹だ。そんな過酷な運命に、分身たる双子の片割れと共に健気にも立ち向かおうとしているわけだな。

　恐怖、絶望、幽かな希望――色々なものが混じった複雑な味わいをしている血だ。なんとも味わい深い。

　イナの方は僅かにネガティブ、イパの方は僅かにポジティブ。同じ見た目でほとんど同じ血の味がするが、ほんの僅かだけど違いがあって面白いな。同じ酒蔵の酒の利き酒をしているみたいだ。

　いずれも処女の血だけあって最高に美味い。ご馳走様です。

「さてお次は元下級貴族の子だな」

　イナとイパの血を堪能した後は、シティンという子の血を吸っていく。

「あぁ、これは腐敗間近だな」

　深い絶望と怒りの味。没落の原因を作ったらしい亡き父親に対する怒りだろうか。カニバルの娘ティルの血を初めて吸った時と似た感じがする。

　この子はこのままこの場所にいたら完全に暗黒面に囚われるだろう。そんな腐敗間近の血の味がする。

　だが腐敗寸前はすなわち一番美味しい時期でもある。人間の絶望は悪魔にとっては至極の珍味だ。悪堕ち寸前の子の血は凄い味わい深いぞ。

――スキル【吸血】発動。経験値獲得。
――初めての対象であるのでボーナスを獲得。
――精神が３、魅力が５増えた。スキル【暗算】を獲得。

暗算：暗算が簡単にできる。

　イナとイパの血からはステータス値上昇ボーナスが得られ、シティンの血からは新しいスキルがラーニングできた。

　スキル【暗算】はその名の通り暗算能力が強化されるスキル。宿屋経営の収支計算とかが楽になりそうだな。

　まあ収支計算なんて経理担当であるカーネラに任せているので、俺にそんなスキルがあってもあんまり意味ないけど。エリザも習得したようだから、カーネラにはエリザのスキル【共有】を使って必要に応じて貸し出してやればいいか。

「ふう美味かった。どの子の血も美味かったな」
「ええ。ですがまだ満足できませんわね」
「そうだな……」

　三人の血を吸い終わったがまだ小腹が空いている。まだまだ満ち足りないぞ。

　金には余裕がある。娼婦の血をもっと吸ってお腹を満たしつつ、レベリングに励むとするか。

「宿屋の親父がオススメしてた他の店にも顔を出してみるか」
「そうですわね」

　こうして俺とエリザは娼館をはしごすることにしたのであった。


♦現在のヨミトのステータス♦
名前：ヨミト（lv.30）　種族：吸血鬼（ナイト）
ＨＰ：1625/1640　ＭＰ：1479/1494
【変化】【魅了】【吸血】【鬼語】【粗食】【獣の嗅覚】【獣の視覚】【獣の聴覚】【獣の味覚】
【剣術】【我慢】【起床】【睡眠】【威圧】【料理】【伐採】【裁縫】【農耕】【投擲】
【風刃】【天才】【火球】【洗脳】【狂化】【商人】【販売】【交渉】【売春】【性技】
【避妊】【癒光】【洗浄】【解体】【斧術】【槍術】【穴掘】【格闘】【毒牙】【硬化】
【舞踏】【鎚術】【怪力】【豚語】【咆哮】【免疫】【激励】【大食】【飢餓】【消化】
【暴食】【指揮】【弓術】【盾術】【騎乗】【魔笛】【血盟】【飼育】【夜目】【勇者】
【光矢】【集中】【雷撃】【短剣術】【堕落】【指嗾】【装備】【毒息】【火吸】【挑発】
【隠密】【奇襲】【冷息】【号令】【健脚】【水弾】【突進】【跳躍】【房中】【水泳】
【暗算】