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六章
港町イティーバ12/19(救出)
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「いってぇ、あの黒服めぇ、何もぶつことないべなぁ……」
カイリはふらふらとした足取りで路地を歩く。
怖いお兄さんにぶん殴られたのか、その左頬は膨れ上がっている。アルコールとのダブルパンチで赤く染まっているな。
自分を殴った怖いお兄さんたちに文句を言うカイリだが、そんな彼に、もっと怖い連中が近寄ってくる。
「――おい田舎者」
「あん? 何だべ? おらに何か用か?」
マミヤの指令を受けた眷属たちは、誰もいなくなったところで、カイリに話しかけた。突然見知らぬ男二人に声をかけられ、カイリは訝しげに返事を返す。
「無礼な田舎者はここで死ぬがいい!」
「ご主人様への無礼、万死に値する!」
男たちはそう叫びながら抜刀すると、カイリに襲い掛かる。
「えっ、ひぃいい!? 助けてくれっぺぇ!」
「問答無用!」
「死んでマミヤ様に詫びろ!」
カイリは一気に酔いが冷めたようで、血相を変えると、慌てふためいて命乞いする。
だが男たちは容赦しない。主が侮辱された怒りで殺す気マンマンである。
「ベートいくぞ」
「そうだね」
すぐに助けに向かうとしよう。
「死ね田舎者――ぐふぅう!?」
「な、何だ――があっ!?」
俺たちはすんでの所で止めに入った。カイリを殺そうとした男たちを殴り飛ばし、半殺しにしていく。
「た、助かったべ……」
カイリは腰を抜かしたようで地面にへたり込みながら泣いていた。俺たちはそんなカイリを無視して、倒した男二人に近づいていく。
「おい、お前らはマミヤという奴の眷属なのか? マミヤとは何者だ?」
「っ!? な、何者だ貴様!?」
「我らにこんなことしてタダで済むと……」
「質問に答えろ」
「――ぐぅうう!」
「――がぁああ!」
男たちの腕を捻り上げ、軽い拷問を加えていく。
俺よりベートの方がえげつないな。いきなり指折ってるし。
「マミヤとは何者だ? 本当にダンジョンマスターなのか? 答えろ」
「――がぁああ! は、話せない! 話せないんだ!」
尋問しても男たちは何も答えなかった。
これは本人の意思で話すことを拒んでいるというより、眷属契約によって話せない状態となっているみたいだ。おそらく「ダンジョンマスターのことを決して他人に話すな」というような命令を、事前に受けているのだろう。
これで完全に裏がとれた。マミヤとはダンジョンマスターであり、この男二人はマミヤの眷属と見て間違いなさそうだ。
「ぐぁあ……いかん変化が……」
「うぐぅ……不味い……」
――ボフンッ。
死なない程度の拷問を加えて尋問していると、男たちが苦しそうに呻き出した。何事かと思っていると、男たちの姿が変化する。
男たちは、上半身が魚の化け物へと変化した。変化したというより、元の状態に戻ったというべきか。
「うげぇえ! マーマンでねえか! 何でマーマンが人さ化けてんだべ! しかもこれは上位種のマーマンナイトだべ!」
現れた化け物を見て、カイリが声を上げる。
「上位種マーマン? そうかこいつがそうか」
魚魔族(マーマン)。それは魚人族に似ているが、魚人族とは明確に区別される生き物だ。
魚人が亜人として扱われているのに対し、マーマンは魔物として扱われている。魚人族もマーマンも上半身が人間で下半身が魚であるが、マーマンの方がより化け物感がある。
男型マーマンに関しては、魚の化け物そのものである。女型はどちらも美しい人魚に見えて一見すると違いがわかりにくいが、尾びれの付け根付近に魔石があるかないか(魔物であるか否か)で魚人族かマーマンか区別されるらしい。
マーマンは海上や海辺では一般的に見られる海の魔物だ。陸で言うところのゴブリンみたいなありふれた存在である。陸の上ではゴブリン並みの力しかなく弱いらしいが、水辺ではかなりの力を発揮し、群れだと脅威度がぐんと上がるのだとか。
それら情報は既にこの町のギルドで知り得ているが、現物は初めて見るな。そうかこいつがマーマンか。
「どれ味見してみるか」
拘束したマーマンの腕に噛み付いて吸血してみる。
「うーん微妙だね」
ゴブリンよりちょっとマシって感じの味だ。オークといい勝負だね。
――スキル【吸血】発動。経験値獲得。
――初めての対象であるのでボーナスを獲得。
――スキル【魚語】を獲得。
――スキル【人化】を獲得。
魚語:魚魔族の言葉が理解できる。
人化:人間の姿に擬態できる。
味は微妙だったが、新しいスキルを手に入れることができた。
スキル【魚語】はそのまんまだな。マーマンの言葉が理解できるようになるスキルだ。
スキル【人化】は【変化】の劣化バージョンみたいなもののようである。【変化】が色んな生物に擬態できるのに対し、【人化】は人にしか擬態できない。
眷属に覚えさせるなら断然【変化】だ。ただ、【人化】にメリットがないわけではない。
ダンジョンマスター権限を使ってDMを消費して眷属にスキルを取得させる場合、【人化】の方がだいぶ安上がりだ。スキル性能が低い分、コストが安く済むというわけである。
おそらく、マミヤは一般マーマンに【変化】を覚えさせるのは勿体なさすぎると判断したのだろう。それで劣化バージョンであるスキル【人化】を取得させたと思われる。
「お前たち……吸血――ぐふぅ」
「余計なことは喋るなよ」
正体に勘付かれたか。まあ血を吸ったから当然だな。早めに始末しないとな。だがギリギリまで尋問させてもらおう。
「この町を騒がしているのはお前たちの仕業か?」
「言えないっ、言うことができない!」
「眷属の縛りによって喋れない――か。わざわざ口止めするということは、やはりそうか」
不漁騒ぎも海賊騒ぎも、やはりマミヤとその一味が関わっているらしい。騒動を起こすことで利益があるのだろう。
(せっかくの転生者を見つけたけど、こりゃ仲良くするのは無理だな)
少し馬鹿にされたくらいで癇癪を起こして人を抹殺するような輩は、同盟相手としては危なっかしくて仕方がない。マミヤは野心が大きいみたいだし、いつ裏切られて寝首をかかれるかわからない。
四方八方敵に囲まれて切羽詰った状態ならともかく、今の状態なら、マミヤとは無理して同盟する必要はないだろう。
(簡単に倒せたこのマーマン二匹を見る限り、それほど警戒する戦力ではないか。シブヘイ戦で失った兵力もとっくに回復したことだし、ダンジョンマスター相手に戦争を起こしてもいいだろう)
マミヤを潰してその生き血を啜る。俺がこの世界で生きるための糧とさせてもらうことにしよう。
マーマンに尋問を行いながら、俺はそんな悪魔的算段を立てた。
「なんだっぺ!? マーマンが人さ化けて人の言葉を喋ってるなんてありえねえだよ!?」
「カイリ君、この魔物はさっき君が盛り場で馬鹿にしたマミヤという男が仕向けた刺客だよ。あの男はダンジョンマスターだったんだ」
「あの男がか!? 伝説的存在のダンジョンマスター!? そんな男がなんでおらの命を狙うんだっぺ!?」
「さあね。プライド高そうな男だったから、田舎臭い君に馬鹿にされてめっちゃムカついたんじゃない?」
「んへあっ!? そんなことでだっぺかぁ!?」
「そんなことでも大事にはなるよ。王様を馬鹿にしたら殺されちゃうのが普通だからね。ダンジョンマスターってのは魔王。王様のようなことができる存在なんだよ」
「おら、知らず知らずの内に魔王に喧嘩さ売っちまってたんだべか……。何てことしちまっただよ……。まだ死にたくねえだよ……」
俺の話を聞き、カイリは絶句していた。口は災いの元。泥酔してるからといって慎まないとね。
「貴様……ダンジョンマスターのことまで知って……何者だ?」
「さあね。君らは知らなくていいことだよ。必要な情報は聞き出したし、もう用済みだから眠っててね」
「――ぐぅう!」
裏路地といえど騒ぎすぎて人が集まっては困る。尋問後、俺は速やかにマーマンたちの意識を奪って気絶させた。
「というかあんた、おらの名前、なんで知ってるんだべ? おらの知り合いか? でも見たことない人だべ? 上異種マーマンをザコ扱いできる人なんておら知らないべ?」
「話は後だカイリ君。君、このナイフを使ってこの魔物に止めを刺してくれる?」
「え? なんでだべ? あんたの仕留めた獲物だべ? 仕留めればエビス様から恩恵さ貰えるかも知れねえし、ギルドに持っていけばいくらか金になるべ?」
この世界の住人はレベリングの仕組みを大雑把だが理解している。魔物を倒していると女神エビスから恩恵が貰えると思っている。生命力が強くなったり(レベルが上がる)、スキルが貰えたりすることを経験則で知っている。
俺がその機会をみすみす捨てるような真似をしようとしているので、カイリは訝った目を向けてきた。
何故俺とベートが殺さないかというと、殺してもレベリングにならないからだ。この後眷属にスカウト予定のカイリのレベルを少しでも上げさせようという腹である。
「いやいいんだよ。君が仕留めてくれ。それでこいつらの死骸はこの場に放置していく」
「なんでだべ? ギルドさ持って行かねえのか? 勿体無いべ? 面倒ならおらがギルドさ持っていってやるべ。そうすりゃいい金に――」
「いいからさっさとやれ。俺の言う通りにして。さもないとマミヤじゃなくて俺が君を殺してしまいそうだ」
「は、はいぃい! わかっただよ!」
カイリは貧乏性なようでギルドに持っていけば金が云々とぐだぐだと言って面倒だったので、スキル【威圧】を使って黙らせた。
田舎者口調で煽られてぷっつんしてしまったマミヤの気持ちが少しだけわかった気がするぜ。
――ザクシュッ。
「うぉおっ、力が張るべぇえ。おら、エビス様から恩恵貰っちまってるだよぉ!」
カイリは相当ザコだったのだろう。マーマンナイト二匹仕留めたことで一気にレベルが上がっているようだった。レベルアップが即実感できるほどの変化があったようだった。
「よし、それじゃこの場から速やかに逃げ出すよ」
「えあっ、ちょっと!」
俺はカイリを抱えると、全速力で走り出した。昼間にレイラと吸血した場所――ボロ小屋、じゃなくて、カイリの工房へと向かう。
「は、早ぇええ! 人間の出す速度じゃないべぇえ!」
「黙ってないと舌噛むよ」
風のような速さで通りを駆け抜け、人目につかないように工房に駆け込む。そこで落ち着いて話をすることにした。
♦現在のヨミトのステータス♦
名前:ヨミト(lv.32) 種族:吸血鬼(ナイト)
HP:1657/1657 MP:1507/1507
【変化】【魅了】【吸血】【鬼語】【粗食】【獣の嗅覚】【獣の視覚】【獣の聴覚】【獣の味覚】
【剣術】【我慢】【起床】【睡眠】【威圧】【料理】【伐採】【裁縫】【農耕】【投擲】
【風刃】【天才】【火球】【洗脳】【狂化】【商人】【販売】【交渉】【売春】【性技】
【避妊】【癒光】【洗浄】【解体】【斧術】【槍術】【穴掘】【格闘】【毒牙】【硬化】
【舞踏】【鎚術】【怪力】【豚語】【咆哮】【免疫】【激励】【大食】【飢餓】【消化】
【暴食】【指揮】【弓術】【盾術】【騎乗】【魔笛】【血盟】【飼育】【夜目】【勇者】
【光矢】【集中】【雷撃】【短剣術】【堕落】【指嗾】【装備】【毒息】【火吸】【挑発】
【隠密】【奇襲】【冷息】【号令】【健脚】【水弾】【突進】【跳躍】【房中】【水泳】
【暗算】【海人】【魚語】【人化】
カイリはふらふらとした足取りで路地を歩く。
怖いお兄さんにぶん殴られたのか、その左頬は膨れ上がっている。アルコールとのダブルパンチで赤く染まっているな。
自分を殴った怖いお兄さんたちに文句を言うカイリだが、そんな彼に、もっと怖い連中が近寄ってくる。
「――おい田舎者」
「あん? 何だべ? おらに何か用か?」
マミヤの指令を受けた眷属たちは、誰もいなくなったところで、カイリに話しかけた。突然見知らぬ男二人に声をかけられ、カイリは訝しげに返事を返す。
「無礼な田舎者はここで死ぬがいい!」
「ご主人様への無礼、万死に値する!」
男たちはそう叫びながら抜刀すると、カイリに襲い掛かる。
「えっ、ひぃいい!? 助けてくれっぺぇ!」
「問答無用!」
「死んでマミヤ様に詫びろ!」
カイリは一気に酔いが冷めたようで、血相を変えると、慌てふためいて命乞いする。
だが男たちは容赦しない。主が侮辱された怒りで殺す気マンマンである。
「ベートいくぞ」
「そうだね」
すぐに助けに向かうとしよう。
「死ね田舎者――ぐふぅう!?」
「な、何だ――があっ!?」
俺たちはすんでの所で止めに入った。カイリを殺そうとした男たちを殴り飛ばし、半殺しにしていく。
「た、助かったべ……」
カイリは腰を抜かしたようで地面にへたり込みながら泣いていた。俺たちはそんなカイリを無視して、倒した男二人に近づいていく。
「おい、お前らはマミヤという奴の眷属なのか? マミヤとは何者だ?」
「っ!? な、何者だ貴様!?」
「我らにこんなことしてタダで済むと……」
「質問に答えろ」
「――ぐぅうう!」
「――がぁああ!」
男たちの腕を捻り上げ、軽い拷問を加えていく。
俺よりベートの方がえげつないな。いきなり指折ってるし。
「マミヤとは何者だ? 本当にダンジョンマスターなのか? 答えろ」
「――がぁああ! は、話せない! 話せないんだ!」
尋問しても男たちは何も答えなかった。
これは本人の意思で話すことを拒んでいるというより、眷属契約によって話せない状態となっているみたいだ。おそらく「ダンジョンマスターのことを決して他人に話すな」というような命令を、事前に受けているのだろう。
これで完全に裏がとれた。マミヤとはダンジョンマスターであり、この男二人はマミヤの眷属と見て間違いなさそうだ。
「ぐぁあ……いかん変化が……」
「うぐぅ……不味い……」
――ボフンッ。
死なない程度の拷問を加えて尋問していると、男たちが苦しそうに呻き出した。何事かと思っていると、男たちの姿が変化する。
男たちは、上半身が魚の化け物へと変化した。変化したというより、元の状態に戻ったというべきか。
「うげぇえ! マーマンでねえか! 何でマーマンが人さ化けてんだべ! しかもこれは上位種のマーマンナイトだべ!」
現れた化け物を見て、カイリが声を上げる。
「上位種マーマン? そうかこいつがそうか」
魚魔族(マーマン)。それは魚人族に似ているが、魚人族とは明確に区別される生き物だ。
魚人が亜人として扱われているのに対し、マーマンは魔物として扱われている。魚人族もマーマンも上半身が人間で下半身が魚であるが、マーマンの方がより化け物感がある。
男型マーマンに関しては、魚の化け物そのものである。女型はどちらも美しい人魚に見えて一見すると違いがわかりにくいが、尾びれの付け根付近に魔石があるかないか(魔物であるか否か)で魚人族かマーマンか区別されるらしい。
マーマンは海上や海辺では一般的に見られる海の魔物だ。陸で言うところのゴブリンみたいなありふれた存在である。陸の上ではゴブリン並みの力しかなく弱いらしいが、水辺ではかなりの力を発揮し、群れだと脅威度がぐんと上がるのだとか。
それら情報は既にこの町のギルドで知り得ているが、現物は初めて見るな。そうかこいつがマーマンか。
「どれ味見してみるか」
拘束したマーマンの腕に噛み付いて吸血してみる。
「うーん微妙だね」
ゴブリンよりちょっとマシって感じの味だ。オークといい勝負だね。
――スキル【吸血】発動。経験値獲得。
――初めての対象であるのでボーナスを獲得。
――スキル【魚語】を獲得。
――スキル【人化】を獲得。
魚語:魚魔族の言葉が理解できる。
人化:人間の姿に擬態できる。
味は微妙だったが、新しいスキルを手に入れることができた。
スキル【魚語】はそのまんまだな。マーマンの言葉が理解できるようになるスキルだ。
スキル【人化】は【変化】の劣化バージョンみたいなもののようである。【変化】が色んな生物に擬態できるのに対し、【人化】は人にしか擬態できない。
眷属に覚えさせるなら断然【変化】だ。ただ、【人化】にメリットがないわけではない。
ダンジョンマスター権限を使ってDMを消費して眷属にスキルを取得させる場合、【人化】の方がだいぶ安上がりだ。スキル性能が低い分、コストが安く済むというわけである。
おそらく、マミヤは一般マーマンに【変化】を覚えさせるのは勿体なさすぎると判断したのだろう。それで劣化バージョンであるスキル【人化】を取得させたと思われる。
「お前たち……吸血――ぐふぅ」
「余計なことは喋るなよ」
正体に勘付かれたか。まあ血を吸ったから当然だな。早めに始末しないとな。だがギリギリまで尋問させてもらおう。
「この町を騒がしているのはお前たちの仕業か?」
「言えないっ、言うことができない!」
「眷属の縛りによって喋れない――か。わざわざ口止めするということは、やはりそうか」
不漁騒ぎも海賊騒ぎも、やはりマミヤとその一味が関わっているらしい。騒動を起こすことで利益があるのだろう。
(せっかくの転生者を見つけたけど、こりゃ仲良くするのは無理だな)
少し馬鹿にされたくらいで癇癪を起こして人を抹殺するような輩は、同盟相手としては危なっかしくて仕方がない。マミヤは野心が大きいみたいだし、いつ裏切られて寝首をかかれるかわからない。
四方八方敵に囲まれて切羽詰った状態ならともかく、今の状態なら、マミヤとは無理して同盟する必要はないだろう。
(簡単に倒せたこのマーマン二匹を見る限り、それほど警戒する戦力ではないか。シブヘイ戦で失った兵力もとっくに回復したことだし、ダンジョンマスター相手に戦争を起こしてもいいだろう)
マミヤを潰してその生き血を啜る。俺がこの世界で生きるための糧とさせてもらうことにしよう。
マーマンに尋問を行いながら、俺はそんな悪魔的算段を立てた。
「なんだっぺ!? マーマンが人さ化けて人の言葉を喋ってるなんてありえねえだよ!?」
「カイリ君、この魔物はさっき君が盛り場で馬鹿にしたマミヤという男が仕向けた刺客だよ。あの男はダンジョンマスターだったんだ」
「あの男がか!? 伝説的存在のダンジョンマスター!? そんな男がなんでおらの命を狙うんだっぺ!?」
「さあね。プライド高そうな男だったから、田舎臭い君に馬鹿にされてめっちゃムカついたんじゃない?」
「んへあっ!? そんなことでだっぺかぁ!?」
「そんなことでも大事にはなるよ。王様を馬鹿にしたら殺されちゃうのが普通だからね。ダンジョンマスターってのは魔王。王様のようなことができる存在なんだよ」
「おら、知らず知らずの内に魔王に喧嘩さ売っちまってたんだべか……。何てことしちまっただよ……。まだ死にたくねえだよ……」
俺の話を聞き、カイリは絶句していた。口は災いの元。泥酔してるからといって慎まないとね。
「貴様……ダンジョンマスターのことまで知って……何者だ?」
「さあね。君らは知らなくていいことだよ。必要な情報は聞き出したし、もう用済みだから眠っててね」
「――ぐぅう!」
裏路地といえど騒ぎすぎて人が集まっては困る。尋問後、俺は速やかにマーマンたちの意識を奪って気絶させた。
「というかあんた、おらの名前、なんで知ってるんだべ? おらの知り合いか? でも見たことない人だべ? 上異種マーマンをザコ扱いできる人なんておら知らないべ?」
「話は後だカイリ君。君、このナイフを使ってこの魔物に止めを刺してくれる?」
「え? なんでだべ? あんたの仕留めた獲物だべ? 仕留めればエビス様から恩恵さ貰えるかも知れねえし、ギルドに持っていけばいくらか金になるべ?」
この世界の住人はレベリングの仕組みを大雑把だが理解している。魔物を倒していると女神エビスから恩恵が貰えると思っている。生命力が強くなったり(レベルが上がる)、スキルが貰えたりすることを経験則で知っている。
俺がその機会をみすみす捨てるような真似をしようとしているので、カイリは訝った目を向けてきた。
何故俺とベートが殺さないかというと、殺してもレベリングにならないからだ。この後眷属にスカウト予定のカイリのレベルを少しでも上げさせようという腹である。
「いやいいんだよ。君が仕留めてくれ。それでこいつらの死骸はこの場に放置していく」
「なんでだべ? ギルドさ持って行かねえのか? 勿体無いべ? 面倒ならおらがギルドさ持っていってやるべ。そうすりゃいい金に――」
「いいからさっさとやれ。俺の言う通りにして。さもないとマミヤじゃなくて俺が君を殺してしまいそうだ」
「は、はいぃい! わかっただよ!」
カイリは貧乏性なようでギルドに持っていけば金が云々とぐだぐだと言って面倒だったので、スキル【威圧】を使って黙らせた。
田舎者口調で煽られてぷっつんしてしまったマミヤの気持ちが少しだけわかった気がするぜ。
――ザクシュッ。
「うぉおっ、力が張るべぇえ。おら、エビス様から恩恵貰っちまってるだよぉ!」
カイリは相当ザコだったのだろう。マーマンナイト二匹仕留めたことで一気にレベルが上がっているようだった。レベルアップが即実感できるほどの変化があったようだった。
「よし、それじゃこの場から速やかに逃げ出すよ」
「えあっ、ちょっと!」
俺はカイリを抱えると、全速力で走り出した。昼間にレイラと吸血した場所――ボロ小屋、じゃなくて、カイリの工房へと向かう。
「は、早ぇええ! 人間の出す速度じゃないべぇえ!」
「黙ってないと舌噛むよ」
風のような速さで通りを駆け抜け、人目につかないように工房に駆け込む。そこで落ち着いて話をすることにした。
♦現在のヨミトのステータス♦
名前:ヨミト(lv.32) 種族:吸血鬼(ナイト)
HP:1657/1657 MP:1507/1507
【変化】【魅了】【吸血】【鬼語】【粗食】【獣の嗅覚】【獣の視覚】【獣の聴覚】【獣の味覚】
【剣術】【我慢】【起床】【睡眠】【威圧】【料理】【伐採】【裁縫】【農耕】【投擲】
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【暗算】【海人】【魚語】【人化】
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