232 / 291
六章
港町イティーバ13/19(悪魔の契約)
しおりを挟む
「あんた、いったい何者なんだべ?」
「俺はあのマミヤという男と同じダンジョンマスターだよ。魔王、いわゆる人類の敵ってやつだね」
「あ、あんたもダンジョンマスターなんだべか……。道理で強ぇはずだべ。おらの知らないこともいっぱい知ってるはずだべなぁ」
ひとまず冒険者ヨミト云々ということは伏せ、ダンジョンマスターであるということに関して話す。
「俺がダンジョンマスターだってギルドに通報でもするかい?」
「そんなことしねえべ。あんたが何者だろうとおらの命の恩人には変わりねえ。あんたがいなければ、おらはあのマーマンに殺されてたべ。マミヤの刺客に殺されてただよ」
「そうか。君は人が良いね」
「それに、仮に通報するって言ったらおらのこと、口封じで殺すんだべ?」
カイリは恐る恐る尋ねてくる。それに対し、俺とベートは真顔で答えた。
「うん」
「そうだね」
答えると、カイリは大仰に震え上がる。
「二人共、真顔でさも当然のように言うなっぺ。恐ろしいだよぉ……」
殺すなんて酷いことはしない。せいぜいダンジョンに監禁して死ぬまでDMを産み出す機械になってもらうだけだ。そう言ったら、カイリは頭を抱えながら地面を転げ回りガクブルと震えていた。無論冗談である。
リアクションが一々大袈裟で面白い子だ。つい苛めたくなってしまう。
俺は震えるカイリに再度「冗談」だと言って慰めると話を本題へと戻した。
「あのマミヤって男がこの町の騒ぎの原因って本当なんだべか?」
「たぶんそうだろうね。マミヤとヴェッセルという会社は繋がっている。この町を牛耳ろうとでもしているのかもね」
「ならあの噂は本当だったんだべな」
「あの噂?」
尋ねると、カイリは忌々しげに語り出す。
「ヴェッセルが役人に賄賂を贈っているって噂だべ。それで数多の不正を見逃してもらってるって噂だぁ」
「そんな噂があるんだね。まあ賄賂くらいは贈ってるかもね。どこにでもあるでしょ、そういうことは」
やはりヴェッセルには黒い噂があるようだな。
「おらの義母ちゃんは下級貴族の役人で、この町の上級警備兵だったんだけんども、ヴェッセルの悪事を告発しようとして、それで濡れ衣を着させられたって話なんだべ。今じゃ貴族位を剥奪されて奴隷となってマミヤのとこにいるって話だぁ」
「へぇそうなんだ。お気の毒に」
「それでおらの親父は自殺したんだべ。義妹は奴隷となった義母ちゃんを買い戻そうと躍起になって、自らの身を汚すようになっちまった……情けないけどもおらにはどうしようもなくて……おらは酒浸りで……うぅ」
「なるほどねぇ。そりゃまたお気の毒に」
何かめっちゃ重い話をさらっと告白された。
人に歴史あり。呑気そうな顔して気ままに生きてるのかと思ったら、そんな裏事情があったとはね。わからないものだ。
「ということは、あのマミヤはおらの仇だべ。父ちゃんと義母ちゃん、そして義妹の仇……許せねぇべぇ……」
めそめそと泣いていたカイリだが、一転、憎悪に支配された目で虚空を見つめる。真実を知って、怒りを抑えきれないようだ。
(くく、良い目だ。純朴そうな田舎青年が復讐の怒りに燃えるその姿は美しいな)
俺は悪魔だ。カイリの持つその闇を美しいと思う。大いに利用させてもらうことにしよう。
「カイリ君。提案があるんだけど……」
俺はスキル【魅了】を発動させながらカイリの説得にかかった。なんのことはない。すぐに篭絡できた。
「……わかったべ。おらの魂でも何でももらっていいべ。その代わり、マミヤに天誅を頼むべ!」
「ああ勿論さ」
マミヤを始末することを条件に、無事に眷属契約を済ませることができた。
それからというもの、俺はカイリの家と作業小屋をダンジョンとして整備したのであった。
「俺はあのマミヤという男と同じダンジョンマスターだよ。魔王、いわゆる人類の敵ってやつだね」
「あ、あんたもダンジョンマスターなんだべか……。道理で強ぇはずだべ。おらの知らないこともいっぱい知ってるはずだべなぁ」
ひとまず冒険者ヨミト云々ということは伏せ、ダンジョンマスターであるということに関して話す。
「俺がダンジョンマスターだってギルドに通報でもするかい?」
「そんなことしねえべ。あんたが何者だろうとおらの命の恩人には変わりねえ。あんたがいなければ、おらはあのマーマンに殺されてたべ。マミヤの刺客に殺されてただよ」
「そうか。君は人が良いね」
「それに、仮に通報するって言ったらおらのこと、口封じで殺すんだべ?」
カイリは恐る恐る尋ねてくる。それに対し、俺とベートは真顔で答えた。
「うん」
「そうだね」
答えると、カイリは大仰に震え上がる。
「二人共、真顔でさも当然のように言うなっぺ。恐ろしいだよぉ……」
殺すなんて酷いことはしない。せいぜいダンジョンに監禁して死ぬまでDMを産み出す機械になってもらうだけだ。そう言ったら、カイリは頭を抱えながら地面を転げ回りガクブルと震えていた。無論冗談である。
リアクションが一々大袈裟で面白い子だ。つい苛めたくなってしまう。
俺は震えるカイリに再度「冗談」だと言って慰めると話を本題へと戻した。
「あのマミヤって男がこの町の騒ぎの原因って本当なんだべか?」
「たぶんそうだろうね。マミヤとヴェッセルという会社は繋がっている。この町を牛耳ろうとでもしているのかもね」
「ならあの噂は本当だったんだべな」
「あの噂?」
尋ねると、カイリは忌々しげに語り出す。
「ヴェッセルが役人に賄賂を贈っているって噂だべ。それで数多の不正を見逃してもらってるって噂だぁ」
「そんな噂があるんだね。まあ賄賂くらいは贈ってるかもね。どこにでもあるでしょ、そういうことは」
やはりヴェッセルには黒い噂があるようだな。
「おらの義母ちゃんは下級貴族の役人で、この町の上級警備兵だったんだけんども、ヴェッセルの悪事を告発しようとして、それで濡れ衣を着させられたって話なんだべ。今じゃ貴族位を剥奪されて奴隷となってマミヤのとこにいるって話だぁ」
「へぇそうなんだ。お気の毒に」
「それでおらの親父は自殺したんだべ。義妹は奴隷となった義母ちゃんを買い戻そうと躍起になって、自らの身を汚すようになっちまった……情けないけどもおらにはどうしようもなくて……おらは酒浸りで……うぅ」
「なるほどねぇ。そりゃまたお気の毒に」
何かめっちゃ重い話をさらっと告白された。
人に歴史あり。呑気そうな顔して気ままに生きてるのかと思ったら、そんな裏事情があったとはね。わからないものだ。
「ということは、あのマミヤはおらの仇だべ。父ちゃんと義母ちゃん、そして義妹の仇……許せねぇべぇ……」
めそめそと泣いていたカイリだが、一転、憎悪に支配された目で虚空を見つめる。真実を知って、怒りを抑えきれないようだ。
(くく、良い目だ。純朴そうな田舎青年が復讐の怒りに燃えるその姿は美しいな)
俺は悪魔だ。カイリの持つその闇を美しいと思う。大いに利用させてもらうことにしよう。
「カイリ君。提案があるんだけど……」
俺はスキル【魅了】を発動させながらカイリの説得にかかった。なんのことはない。すぐに篭絡できた。
「……わかったべ。おらの魂でも何でももらっていいべ。その代わり、マミヤに天誅を頼むべ!」
「ああ勿論さ」
マミヤを始末することを条件に、無事に眷属契約を済ませることができた。
それからというもの、俺はカイリの家と作業小屋をダンジョンとして整備したのであった。
0
あなたにおすすめの小説
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
美醜逆転世界の学園に戻ったおっさんは気付かない
仙道
ファンタジー
柴田宏(しばたひろし)は学生時代から不細工といじめられ、ニートになった。
トラックにはねられ転移した先は美醜が逆転した現実世界。
しかも体は学生に戻っていたため、仕方なく学校に行くことに。
先輩、同級生、後輩でハーレムを作ってしまう。
男女比1:15の貞操逆転世界で高校生活(婚活)
大寒波
恋愛
日本で生活していた前世の記憶を持つ主人公、七瀬達也が日本によく似た貞操逆転世界に転生し、高校生活を楽しみながら婚活を頑張るお話。
この世界の法律では、男性は二十歳までに5人と結婚をしなければならない。(高校卒業時点は3人)
そんな法律があるなら、もういっそのこと高校在学中に5人と結婚しよう!となるのが今作の主人公である達也だ!
この世界の経済は基本的に女性のみで回っており、男性に求められることといえば子種、遺伝子だ。
前世の影響かはわからないが、日本屈指のHENTAIである達也は運よく遺伝子も最高ランクになった。
顔もイケメン!遺伝子も優秀!貴重な男!…と、驕らずに自分と関わった女性には少しでも幸せな気持ちを分かち合えるように努力しようと決意する。
どうせなら、WIN-WINの関係でありたいよね!
そうして、別居婚が主流なこの世界では珍しいみんなと同居することを、いや。ハーレムを目標に個性豊かなヒロイン達と織り成す学園ラブコメディがいま始まる!
主人公の通う学校では、少し貞操逆転の要素薄いかもです。男女比に寄っています。
外はその限りではありません。
カクヨムでも投稿しております。
男:女=1:10000の世界に来た記憶が無いけど生きる俺
マオセン
ファンタジー
突然公園で目覚めた青年「優心」は身辺状況の記憶をすべて忘れていた。分かるのは自分の名前と剣道の経験、常識くらいだった。
その公園を通りすがった「七瀬 椿」に話しかけてからこの物語は幕を開ける。
彼は何も記憶が無い状態で男女比が圧倒的な世界を生き抜けることができるのか。
そして....彼の身体は大丈夫なのか!?
荷物持ちの代名詞『カード収納スキル』を極めたら異世界最強の運び屋になりました
夢幻の翼
ファンタジー
使い勝手が悪くて虐げられている『カード収納スキル』をメインスキルとして与えられた転生系主人公の成り上がり物語になります。
スキルがレベルアップする度に出来る事が増えて周りを巻き込んで世の中の発展に貢献します。
ハーレムものではなく正ヒロインとのイチャラブシーンもあるかも。
驚きあり感動ありニヤニヤありの物語、是非一読ください。
※カクヨムで先行配信をしています。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
男女比1対5000世界で俺はどうすれバインダー…
アルファカッター
ファンタジー
ひょんな事から男女比1対5000の世界に移動した学生の忠野タケル。
そこで生活していく内に色々なトラブルや問題に巻き込まれながら生活していくものがたりである!
最強賢者の最強メイド~主人もメイドもこの世界に敵がいないようです~
津ヶ谷
ファンタジー
綾瀬樹、都内の私立高校に通う高校二年生だった。
ある日、樹は交通事故で命を落としてしまう。
目覚めた樹の前に現れたのは神を名乗る人物だった。
その神により、チートな力を与えられた樹は異世界へと転生することになる。
その世界での樹の功績は認められ、ほんの数ヶ月で最強賢者として名前が広がりつつあった。
そこで、褒美として、王都に拠点となる屋敷をもらい、執事とメイドを派遣してもらうことになるのだが、このメイドも実は元世界最強だったのだ。
これは、世界最強賢者の樹と世界最強メイドのアリアの異世界英雄譚。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる